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「相沢。少し打ってくれね?」
 そう言ってきたのは杉田だ。武は頷いて一緒に客席の場所から体育館
の共有スペースへと出る。
 試合も終盤で、朝のうちはたくさんいた基礎打ちの面々も、いまは武
達しかいない。
「随分寂しくなったな」
「いつものことだろ」
 武は言いながらシャトルを低い弾道で打った。やることは分かってい
る。杉田も「何を」とは問わずにドライブを武へと打ち込んだ。武も体
勢を低くして強くシャトルを打ち返す。
 シャトルが二人の間をピンボールのように弾かれ続ける。何度も打っ
ている間に武の背中にじわりと汗が浮かび始めた。自分がそうならば杉
田もまた体は温まっているはず。
「相沢。俺、どうしても刈田に勝ちたいんだ」
 杉田がシャトルを打つ合間に言う言葉を、武は一つ一つしっかりと聞
く。相手に勝ちたいという気持ちは誰もがあるだろう。だが、杉田から
聞くのは意外な気がしていた。強くなって、初めて全道大会に参加して
も、あまりいつもと変わった様子はなかった。第一シードの淺川に負け
てもドライでいたはずの杉田。
 そんな杉田が刈田を意識している。
「ジュニア予選で負けてからなんかあいつと試合するのが楽しみでさ。
卒業までに絶対、勝ちたい」
長編「Fly Up!」第百八十六話より抜粋
本日の更新
2012/02/12
長編「Fly Up!」第百八十六話掲載


過去の更新
2012/01/29
長編「Fly Up!」第百八十五話掲載

2012/01/08
長編「Fly Up!」第百八十四話掲載
掌編「バスタオルを離さないで」掲載

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