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落葉広葉樹林の一年


 
ヒメギフチョウの生息地は落葉広葉樹林です。赤城山ではミズナラやクリ、ミズキなどの林で、夏は葉をいっぱいに広げますが、冬には全ての葉を落としてしまいます。
 このような林に適応したのが、カタクリのようなスプリングエフェメラルと呼ばれる植物です。スプリングエフェメラルは木々の葉がまだ茂らず、林床まで充分に日が差し込む早春の
2カ月で芽を出し、葉を広げ、花を開き、実を結びますが、初夏になり木々の葉が茂り、林床には光が届かなくなる頃には枯れてしまい休眠に入ってしまいます。早春の日射しを最も有効に利用する生活をしています。ヒメギフチョウはこんなスプリングエフェメラルに似た生活をしています。
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月末の光が落葉広葉樹林の林床に柔らかく差し込む時期に成虫が羽化し、交尾し、産卵します。卵から孵化した幼虫も林床が日陰になる前に急いで成長し、6月末には蛹になります。そして、それから10ヶ月間、蛹のまま夏、冬を越し、翌年の春、再び成虫が羽化するのです。夏の間、落葉広葉樹林の木々の葉は、ヒメギフチョウの蛹を強い日射しから守ってくれます。
 春の舞姫、ヒメギフチョウはこのような
落葉広葉樹林の一年と同調した生活を送っているので、落葉広葉樹林の中でなければ生きていけないのです。