失明した親牛

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黒毛和牛“豊後牛”の飼育シリーズその13


失明した親牛



緑内障を発症して視力がまったくなくなった親牛がいます。
原因は良く分っていないと云いますが、時々見かけるようです。

ところが、牛舎の柵の中の行いは、まったく他と変わりなく
そう説明されても、気付かないほどです。
意識して眼を覗き込んでみると、確かに視点が定まらず、透明さがないことに気付化される程度です。

耳と鼻を使って違和感なく食べ物をあさり、干し草を食む姿や
牛舎の外の草地で草を食んでいる姿からは、まったく違和感を感じません。

耳と鼻と、目が見えなくなる前の記憶を、しっかり使って
草場でも他の牛と同じように事故もなく行動しているんですね。

それでも、さすがに、広大な“稲葉牧場”への放牧は、あまりに危険であり
牧場の牧番さんや関係者に迷惑をかけることになるため
失明以降は牧場はあきらめ、牛舎と、牛舎のすぐ外の草場が行動範囲になっています。

牛舎の自分の柵から通路を通って牛舎を出て、草葉への入り口までの、50mほどの込み入った通路は
家の主人が鼻グリを軽く引くことで、道案内をします。

試しに主人が、手放しで歩かせると、壁が潰れるほどぶつかりながら
それでも、草場恋しさか、歩くのを止める気配がありません。
堪り兼ねてまた鼻グリを取りました。壁が先に潰れるか?この牛が傷だらけになってしまうか?

道を覚えるのはもう困難でしょう。人間のように道具が使えませんから。

他の健康な牛たちは、草場から牛舎への帰りも夫々に自分の柵へ帰って来ますが
その失明した牛は、他の牛たちの気配を感じながらも、いっしょに行動して
牛舎の入り口付近まで自力で帰って来てからは
主人の導きをじっと待つようになった といいます。


ところが、この牛は目が見えなくても
毎年、いい子牛を産み落としているバリバリの現役です。

これまで、目が見えなくなって以降も、既に4頭の子牛を育てている実績の持ち主なんですね。

取材した頃は、4頭目の子牛を育てているときでしたが
その4頭目の子牛を育て終えてからは、手が掛かるとのことから
この記事を書く頃には、成牛市場に出荷してしまい、廃牛処分されてしまったとのことでした。


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