夕暮れの校内見回りは、風紀委員としての一日最後のお勤め。
 薄暗い校内を一人で見回るのはあまり好きでは無いのだけれど、自分の好き嫌いで仕事の手を抜くなんてことはもってのほか。だから、例え日が短くなっても毎日隅々まで見回っている。
 たまにあのお騒がせ集団がいたりするけど、大体この時間には校内に人など残ってはいない。残っているのは、それこそ生徒会や寮会のあーちゃんセンパイとか、ほぼ決まりきってるし、許可証も出しているから問題の無い人たちだ。
 だから、ほとんど何事も無く終わるのだけれど…。

 ごとっ。
 
 物音がする。

 緊張が走る。
 偶然かとも感じたけれど、明らかに人が起こした物音に違いない。経験から推測できる。
 なら…誰かいるのだろう。
 
 こちらは堂々としていればいいんだろうけど、その音の主を逃してはならないと、知らず知らず忍び足になっていた。
 確か……二つ先の教室の中からだ。
 私は、気づかれぬようにその教室を伺おうとした。
 すると…。

「しっ。理樹君、静かにっっ」
「えっ?! 何? 何?」

 そこにいたのは…一人は見覚えがあり過ぎる人物。
 リトルバスターズ!の主要メンバーである直枝理樹。
 そしてその直枝理樹の口を塞ごうとしてるのは…見覚えの無い女生徒。
 
 誰? 一度見た生徒なら記憶してると思うから、全く問題を起こしてないのか、あるいは最近転校してきたのか?
 否。転向してきたのなら、全寮制の学校だから寮会の仕事をしてる自分にも伝わるはずだ。あいにくそういう話を聞いたことはない。なら、全く問題を起こしていないとか?
 それも否、だ。だって、今目の前で問題を起こしてるから。こんな時間まで、見回りの私から隠れようとしてるなんて、それこそ常習犯の行動だから。それに、あの問題集団リトルバスターズ!のメンバーと行動しているのだ。優等生のそれからは遠く外れている。
 じゃあ、誰なんだろう?
 
 私はもう少し教室の中が見える位置まで移動した。
 女生徒の姿がもっとよく見える位置に。
 
 すると…やはり全く見覚えの無い外見だった。
 しかも、鳥の翼みたいな派手な髪飾りや髪型をしていて、一度見たら忘れられないような姿かたちだった。
 やはり見覚えが無い。そう確信できた。
 
「執行部の連中かしら…。これだけ気配を消せるなんて只者じゃないわ」

 執行部…風紀委員のことだろうか?
 やはり、校則違反の常習者らしい。
 どうしても捕まえてお灸を据えないと気が済まなくなってきた。

「なら…じっとしてても無駄か。理樹君は先に行ってて」
「えっ?! 沙耶さんはどうするの?」

 女生徒の名前は沙耶というらしい。
 聞き覚えの無い名前だ。

「私は…連中を撃ち殺してから行くから」

 そういうと、スカートの裾から…ピストル?!

「そ、そう…。じゃああんまり無理しないでよ? 僕、浅い階で待ってるからさ」
「オーケー。敵も一人っぽいから余裕だわ。ま、愛しい理樹君が怪我したら嫌なだけだから」
「ごめん…。僕も沙耶さんのこと心配なんだからねっ」
「ありがと」

 直枝理樹は、黒板の先へ…消えていった?!
 そもそもこの教室の机がありえない積み方をされているのだけど?!!
 
 様々な疑問はあれど、この女生徒を捕まえて問い詰めればいいだけのこと。
 直枝理樹と不順異性交遊でもしたかったのかもしれないけれど、この私に見つかった時点で諦めることね。そう思いながら出て行く機会を伺っていたのだけれど…。

「そこっ」

 パーンっ。
 
 乾いた音がしたかと思うと、私が覗いていた窓を何かが貫通していった。
 
 …。
 
 実弾?!
 どういうこと?!

「ちっ…。手ごたえが無かったわ。仕留められなかったわね…」

 仕留めると言うことは、本気で撃ち殺す、という意味なのか。
 少し肝を冷やしたけれど、この異常な世界ならそんな非現実もありえるのかもしれない。
 ならば、もう少し大胆に行動しても良いかもしれない。
 撃ち殺されるのは勘弁だけど。




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