物音一つしない部屋の中で、今、私はベッドを前にしています。
 眼下には直枝さんの穏やかな寝顔。時折男性にしては長い睫毛がぴくりと動き、どことなく色気を感じる声で「んぅ……」と呻いては軽く頭を揺らしていました。
 布団を被った首から下がどうなっているか、この状況ではわかりません。
 なるべく起こさないよう静かに、私は身を乗り出します。
 毛布に手を掛け、そっと足の方へとめくりました。
 些か野暮ったい寝間着姿です。こういうのを見るのも新鮮ですが、しかし、ここで注視すべきは別のところにあります。
 下半身、腰の辺り。
 股間の部分が、不自然なほどに盛り上がっていました。
「……これは」
 一種の生理現象だというのは理解しています。いわゆる不可抗力、この痴態も直枝さんの意思によるものではないのでしょう。
 ですが、情報として知ってはいても、やはり――恥ずかしさを感じずにはいられません。
「想像していたよりも、大きいですね」
 起こしてはしまわないでしょうか、と少し迷いましたが、好奇心に負けた私は、慎重にその膨らみへ手を伸ばしました。
「……っ」
 指先が触れた瞬間、厚い布を押し上げているモノが震えました。
 思わず身を引き、がたんと音を立ててしまいます。これはまずい、としばらく息を殺して直枝さんの様子を窺いましたが、かなり眠りは深いらしく、まだ起きる様子はありません。
 もう一度。
 今度は先ほどよりも大胆に、握るくらいの勢いで触れました。
 厚い布越しに伝わってくる熱と鼓動が、私の胸を高鳴らせます。
 ……あまり褒められた行為でないことは、無論承知です。
 でも、こんなにも可愛らしく無防備な姿を見て、何もせずにいるのは逆に失礼でしょう。
 いっそここは脱がしてしまおうか――思考が危ない方向に逸れ始めた直後、直枝さんが身体を横に捻りました。
 こちら側、私の方へと。
「…………あ」
「……え? 西園さん?」
 辛うじて、本当に辛うじてですが間に合いました。
 慌てて両手を背中に隠した私は、小さく息を吸って、笑みを浮かべます。
「おはようございます、直枝さん」
 ――頬の赤みが、誤魔化せているといいのですが。




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