「例え困難であっても信じ続ければ未来は応えてくれるのよ!」
 ゆかりんが前触れもなく今時漫画でもありえないような台詞を声高に叫んだ。
 私とれいちゃんはゆかりんの奇行に戸惑って目を合わせたけど、れいちゃんはまるで何事も無かったかのように再び雑誌に目を落とした。私もそれに習うようにして長机の中心に置かれたポッキーに手を伸ばした。ぽきっ。
 「コラそこ真面目に聞けぇー!!」
 何やら興奮状態のゆかりんにれいちゃんはしょうがないとばかりに膝の上に広げていた雑誌を閉じた。どうやらゆかりんの相手してあげるみたいなので私もゆかりんの話に耳を傾けることにした。ぽきっ。
 「ようやく聞く気になったわね、ってそこ!ポッキー食うな!ていうかそれ買って来たの私だし!しかもよく見たらあと一本しかない!」
 ゆかりんは悔しそうに最後の一本を咥えながら部活のミーティングとかで偶に使うホワイトボードに『佐々美様救出作戦会議』と汚い字で大きく書き出した。
 「はっきり言ってあの直枝理樹という男、佐々美様に相応しいとは思えないわ!」
 ホワイトボードを手の平で叩いて宣言するゆかりん。そこそこに迫力はあるのだけれど、叩きつけた手の平が丁度文字に重なって汚かった文字がさらに歪んでしまった辺りがどうにも締まらなかった。
 「そーですねー」
 れいちゃんは興味ないのかお昼の人気バラエティ風に棒読みで返していた。明らかにやる気のない返事なのにゆかりんは満足そうにうんうん、と頷いていた。結局、相手して欲しいだけなのかもしれない。
佐々美様が直枝先輩と付き合い始めた頃はれいちゃんもこの手の会議には積極的に取り組んでいたんだけど、最近はもう二人の仲を裂くどころか映画のチケットを献上したり空気を読んで二人っきりになれる状況を作ったりと佐々美様を後押しするようなことが多い。そう考えると、もしかしたらゆかりんは女子ソフト部で一番空気の読めない子なのかもしれないことに気付いてしまった。
「ゴメンね、ゆかりん。ゴメンね」
「え、何!?なんか急に同情みたい顔しないでよ!」




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