最近、小毬さんが鈴と仲が良い。いや仲が良い、というのは前々からだったけれど……なんというか度が過ぎているというべきか、ちょっと怪しく見えるというか。そんな感じだ。仮にも僕は小毬さんと付き合っているはずなのに……。
 こうした場合も嫉妬、と呼ぶべきなのだろうか。あんまりそういうことをしたことがないので、ちょっと判別が付かない。だけどこの、鈴に対する嫌悪感に近いものは……うん、そう呼ぶべきなのかもしれない。だから僕は、ちょっとだけ目で二人を追ってみる。


" 小毬と仲が良すぎる鈴に嫉妬する理樹とか "


 ここ最近、放課後はリトルバスターズとしての活動が少ない。一番の理由は恭介の就職活動だろうけど、その他にも謙吾の部活復帰等の要因もある。そしてその「等」の中に、小毬さんと鈴の仲の良さがある。
「最近よぅ……なーんか鈴の奴、付き合い悪くねえ?」
 委員長の号令とともに放課後が始まると、隣でダルそうに座る真人がそう話しかけてきた。そしてその話こそ、僕が今考えていたことそのものだったためにドキリとなる。それでも冷静を装い、「……そうだね」とだけ返すことにした。
 二人の席は既に人影はなく、丁度今し方教室を出て行くのが見えた。もちろん、二人揃ってだ。真人はまだ席を立つ気配がないが、逆に好都合だ。
「ごめん、先行くよ」
「おー……お土産よろしくな」
 そんな見当違いな返事に苦笑いしつつ、急いで廊下に出た。真人の様子から察するに、もうしばらくは寮室には戻ってこないだろう。それまでに事を済まさなくてはならない。二木さん辺りに見つからないといいな――そう思いながら、廊下を駆けた。



「うわ……」
 自分で言うのも難だが、絶句した。鏡に映る自分の姿に。女子用のブレザーに学年リボン、それにスカート……おまけにそう長くもない左右の髪を縛ってみて、情けない長さのツインテールにしてみた。極めつけは黒縁の眼鏡。
 鏡に映っているのは直枝理樹ではなかった。いやそれ以前に、自分自身すら男性なのか女性なのかわからないぐらいに中性的に仕上がってしまっている。ある意味完璧。完璧過ぎて困るけど。
 小毬さんと鈴は放課後、すぐに女子寮へと引っ込んでしまう。しかし男子生徒である僕はよっぽどの用がない限り入れないし、もし誰かに用事があるといって入れたとしても、「直枝理樹が女子寮に入った」なんて事実、すぐに広まってしまう。そこで考えたのが、「僕が誰でもない女性とになってしまえばいいんだ――」ということだった。
 そんなわけで文学少女っぽく扮装した僕は、誰か知り合いに出会う前に男子寮を出、女子寮へ向かわなくてはならない。制服はクローゼットにしまったし、「あれ、理樹の奴全裸で出かけたのかな……仕方がねえな」とか真人に思われずに済む。革靴を履き、ドアノブを回した。
「「……あ」」
 そこにさっき見当違いな会話をした相手がいた。

<できれば続いて欲しくないけど続いてしまったら書きます>




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