秋深し――サラサラと音を鳴らしつつ地を走り、空を舞う落ち葉はそれを象徴するもので、少々冷たいぐらいの風が心地良い。つい先日まで大汗を流しながらグラウンドを走り回っていた日々が嘘のようだ。
 体育祭の代休を利用しての紅葉狩りはまさにベストタイミングだった。どうしても僕らは大人数になってしまいがちだし、空いている時期の方が都合がいい。きっと11月頭の連休は遠出せず、何かしらのイベントを用意することだろう――主に恭介が。さて、それはさておき。
 いくら僕らが一団体として活動しているとはいえ、その行動を強制することはできない。する団体でもないし。よって着いた時点で「正午まで自由行動」というアバウトな命令を受け、僕らは各々好きなように行動を開始した。
 で、唯一の命令である「正午の集合」なわけだが……うん、集まらない。というか命令を出した人間すら来ない。結局正午丁度に集まったのは僕を含め、たったの三人しかいなかったのだ。
 少々待ってみたものの皆が集まる様子はなく、仕方なしにクルマからビニールシートとピクニックボックスを下ろし、三人で腰を下ろしたわけなんだけども――その集まった、僕を除く二人というのが問題だった。
「理樹、あーんしろ」
 僕の右に座る鈴が僕の頬に手を置き、自分の方へ向かせようとする。ちょっと力が入りすぎてて痛い。
「直枝さん、こちらを向いて下さい」
 ……が、それを僕の左に座る笹瀬川さんが阻む。しかも反対の頬に手を置き、自分の方へ向かせようとする――いや痛い。ちょっとじゃなくて痛い痛い痛いねじ切れるねじ切れるねじ切れる!
「……ささこ、理樹が痛がってる。離せ」
 そう言いつつ、鈴は更に手に力を込めるあだだだだ!
「あなたの方がお離しなさいな、直枝さんのことを想うのなら尚更です!」
「なっ……!?」
 そうして笹瀬川さんは更に力いだだだだ! ホントに取れる! こう竹とんぼの要領で飛んでくマジで!!
 ……と、本当に首が取れるか折れるかの寸前――まぁ、比喩だけどそれぐらい痛かったってことで、とにかくそれぐらいの勢いの時に、突然二人とも手を離してくれた。というか、離した。主に争うために。
「理樹はあたしのを食べるんだ!」
「いいえ、わたくしのをお食べになるのです!」
 ちなみに、今日のお弁当を作ったのは小毬さんだったりするわけだけど……鈴と笹瀬川さんは勢いよく立ち上がり、僕を挟むように睨み合う。二人の膝がべしべし僕の肩を叩き、ちょっと痛い。いやさっきよりはマシだけども。
「こんな時まで争いたくはありませんでしたが……いいでしょう、今日こそ決着を着けましょう!」
 笹瀬川さんはそういうとクルマの方へ歩いていき、リアハッチを開けて中からバットを取り出し――ってなんで紅葉狩りにバット持ってきてるのっ!?
「よし、しょーぶだ!」
 鈴もそう返すとクルマの方へ歩いていき、後方座席を開けてシートに置いてあったグラブとボールを――って持ってきてるのが当たり前なのっ!?
 笹瀬川さんが薄く笑う。鈴が睨み付ける。僕はサンドイッチに手を付ける――あ、美味しい。
 まぁ、それはさておいて……妙なところで、妙な対決が始まろうとしていた。
「理樹、ミットとレガースだ」
「なんで持ってきてるのっ!?」




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