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……。
……ん?
あれ、珍しいな、こんなところに人がやってくるなんて。
どうしたんだい、何か辛いことでもあったのかい?
それとも、単に暇を持て余しているだけかな?
え、別にどっちでもないって?
うん、まあいいや。
それよりも、せっかくこうしてここで巡り合うことができたんだ。
今はただ、この些細な奇跡に感謝することにして、その記念といっては何だけれど、
僕が、
君に、
おとぎばなしを、
してあげよう。
ほんの暇つぶしくらいにはなると思うから、よかったらぜひ聴いていってほしい。
それじゃ、始めるよ?
えーとね、何から話そうかな。
……うん。よし、決まった。
***
今でない時、ここではない場所。
これは、世界の危機に立ち向かった小さき勇者の、戦いの記録である。
せかいにさよなら
「我誘うは冷厳にして荘厳なる儀式、求むるは古より伝えられし神託の担い手!」
聖騎士クドリャフカは、右手に愛剣”69の奇跡”を天高く掲げ、左手の宝具”ょぅι゛ょ”を眼前に構えながらそう叫んだ。と同時に、クドリャフカの足元に刻まれた魔法陣が眩い光を放ち始める。光は徐々に陣の中心に立つクドリャフカに向かって収束し、やがて聖なる騎士の全身を覆うように照らし始めた。
「ついに、このときが来るのですね……」
傍に控えていた、クドリャフカの親友にして偉大なる大神官、西園美魚が感嘆の想いを口にする。
「伝承にて伝わりし異世界への門。文献にはあれど、その実在は疑われ続け、とうとう今日に至っては単なる御伽噺として語り継がれるに過ぎなくなった、巨乳たちの棲家への道が解き放たれるときが……!」
目も眩むほどの白光は、”ょぅι゛ょ”――掌ほどの大きさの丸い金属板――に向かって渦を巻くような形を成していく。想像を絶する負担を強いられているのか、騎士の額には汗が滲み出ていた。
「はぁ……はぁ……」
息は乱れ、全身を襲う強い疲労感に眩暈を感じ、崩れ落ちそうになるクドリャフカ。体の震えにあわせ、身に纏った白銀の鎧が弱々しげにカタカタと鳴っている。しかし、その眼に宿った強い意志だけは揺らぐことがなく、構えた剣もまた、騎士の気迫に呼応するかのように微動だにしなかった。
”負ける……もんですかっ”
周囲で自分を見守っている従者たちに軽く眼を走らせる。自らを慕い集ってくれた彼らに格好悪いところを見せるわけにはいかなかった。聖なる騎士は、自らを鼓舞するように心の中で叫ぶと、奥歯をかみ締め、振り絞るように呪文を紡ぎ上げていく。
「其は楽園を追われし偽印の使徒 されど我願う その心は遥か時を越え 今を紡ぐ道標とならんことを! 我が呼びかけに応えよ! 来たれ!」
王国第三騎士団長の身分を有するクドリャフカ。その誉れ高き地位に相応しいとは到底思われない、あどけなさを残す唇から紡がれていく呪文には、しかし世界の理を外れた、並々ならぬ力が込められていた。彼女の言葉に共鳴するように、宝具に向かって収束していた光が発散し、周囲を隙間なく塗り替えていく。常人ではとても直視することの適わぬ破壊的な白光は、いっそ攻撃的なまでに獰猛な性格を有しており、辺りの者たちの視力を根こそぎ奪いつくそうと暴れまわり――その光に目を焼かれるかのような痛みを感じた従者たちは次々と顔を手で覆って転げ、発狂せんばかりに絶叫を上げ――まさに阿鼻叫喚の様を呈している。
その中で、腕で顔をかばいながらも、上位神霊の加護のおかげか何とか片目だけを開くことのできた美魚は、幸か不幸か、目の当たりにすることとなった。光渦巻く中心に佇む聖騎士の姿、そしてそれだけではない、この世の如何なる存在にも例えようのない絶対的な威圧感を持った何者かの存在を。
美魚はその何者かに原始的な、抗いようのない忠誠心を感じ、気づけば頭を垂れて地にひれ伏していた。頬から流れ落ちるこの涙は、どこから来たものなのか。その意味も、由来もわからぬままに、彼女はただただ流れ落ちる雫をじっと見つめていた。
***
「――? ――ぞのさんっ!」
「……え?」
「西園さんっ!? しっかりしてくださいっ!」
「能美……さん……?」
「よかったです、気がついたのですね」
クドリャフカは身に纏っていた白銀の鎧の肩当をもどかしそうに脱ぎ捨てると、気を失っていた友人の胸へと勢いよく飛び込んでいった。無垢なる騎士の抱擁にされるがままになっていた美魚は、すぐに置かれていた状況を自ずから悟り、申し訳なさそうに眉をひそめた。
「わたし、気絶して……? そうですか、だいぶご心配おかけしてしまったようですね、すみません」
「そんな、謝らなくてもいいのです。私と西園さんの仲ではないですかっ」
「そう、でしたね」
二人はそう言うと、お互い申し合わせたように微笑を漏らし、そしてそのまま、互いの温もりを確かめ合うようにじっとしていた。
生まれた時より姉妹のように育ってきた、その軌跡を辿っているかのように。
「それで、儀式のほうは?」
「はい。無事成功しました」
ひとしきり互いの無事を確かめ合った後の彼女らは、もう既に年不相応なまでに厳しい顔つきで己が使命を全うしようと動き出している。この機転の速さこそが、彼女らが若くして重要なポストに重用される理由の一つなわけであるが、閑話休題。
「そうですか。では、もう?」
「ええ、すぐにでも出立できます。ですがその前に王への謁見を果たそうと思いまして……」
「なるほど……それで、許可が得られるまでの暇つぶしとして、わたしの看病をしていたというわけですか」
「そ、そ、そ、そんなつもりじゃないのですっ!?」
美魚の些細な悪戯心にも真正直に反応し、わたわたと両手を振りながら慌てて弁解を始めるクドリャフカ。その昔から変わらない姿に、美魚はくすりと笑いを漏らした。
「に、に、西園さん?」
「冗談です」
「わふっ!? 相変わらず西園さんのじょーくは心臓に悪いのです……」
「まあ、それはそれとしまして」
「軽く流されましたっ!?」
『もうそろそろ許可が下りるころなのでは』
そう美魚が口にしようとした矢先に、ドタバタと騒がしい音を携えて一人の兵士が”儀式の間”へとやってきた。
「失礼! 聖騎士はおられるか!?」
「此方に」
呼びかけに、ぺタリオンと呼ばれた少女は、先ほどまでとは打って変わった静かな声で応え、優雅な仕草で音も立てずに起立する。そうして美魚の方へ顔を向けると、わずかな間、親しみを込めた穏やかな笑みを浮かべ、すぐに謹厳な態度で敬礼し、
「それでは。我が親愛なる大神官」
「はい。”あなたに神の御加護がありますように”」
短い別れの挨拶を告げた。
王都ぺタロン。ペタリ―ヌ王国の首都として知られるこの街の中でも、とりわけ美しいとされている中央通りを、クドリャフカは王城へ向けて足を運んでいた。通りに沿って植えられた木々は、春の訪れを祝福するかのように、人々の目を奪うほどに美しい花々を咲かせていたし、その周囲を飛び交う小鳥たちも、人々の心を捉えて離さぬような美しい声で唄を歌っている。そんな頭上の光景に感化されたように、通りを行き交う人々の表情も、心なしか弾んで見え、ある者はパンや果物を手に楽しげに、またある者は友と語らい合いながら、人生最大の幸福を味わっているかのように、ゆっくりと歩を進めていた。しかし、そんな華々しい道を過ぎ行くクドリャフカの表情は――さすがに他人に悟らせるようなへまはしなかったものの――確実に陰鬱さを仄めかしている。
それも無理はあるまい。この平和に満ちているかのように見える世界も、決して目に見えているほどに保証がされているわけではない。遅効性の毒のようにじわじわと、しかし確実に、災厄はこの世界を蝕もうとしている。その事実に気づいている者は、決して多くない。大多数の人々は、無事に今日という日を迎えられたのと同じように、明日が来るものと信じて疑わないのだ。王国の名を冠する主神ペタリ―ヌ――というよりは神の名にちなんで名づけられたのが王国であって、それ故に王の地位は名目上のものでしかないわけで、実質的には神権国といって差し支えないのだが、細かいことはどうでもいいので閑話休題――への信仰が篤いこの国にあっては、明日を疑うことは神を疑うに等しい意味を持つ。故に、彼らにとって明日が来るということは、初めから疑いようもない、確定済の現実に過ぎないのであった。
王都の中心から少し外れたところにある”儀式の間”から王城までは、決して歩けない距離ではない。が、それなりの時間と労力を要することもあって、使いの者が馬車で迎えに来ていたのだが、クドリャフカは丁重にそれを辞退していた。考えければならないことがあったためだ。しかしそれを正直に言うことはせず、”日々、是、訓練也、ですから”という騎士の言葉にあっさりと納得した様子の兵士は、疑う余地なく馬を駆らせて王城へと戻っていった。クドリャフカはそれを複雑な表情で見送ると、逸る気持ちを抑えて駆け出さないように細心の注意を払って歩き出す。
(門が完全に開き切ってしまうまで、後どれほどの時が残されているのでしょうか)
(門……まだ見ぬ異世界への扉……)
門――異世界への扉。
遥か昔、”誇り高き孤高の胸元”と冠された勇者が封印したと伝えられている、巨乳たちの世界への水先案内の役割を果たしているといわれるが、現代においてその実在は専ら疑問視されている。今ではすっかり御伽噺として扱われ、まともに取り合う者もいなくなってしまった――極めて少数を除いて。
(私たちは、この国は、どうなってしまうのでしょうか……)
王国に古くから伝わる古文書には、王国暦1000年――”誇り高き孤高の胸元”が門を封印したのがちょうど1000年前と言われている――に再び門は開かれ、災いが世界を満たすだろうという予言めいた詩が残されており、実際のところ現代――すなわち王国暦1000年――に入ってからというものの、災害などに見舞われることも多くなり、最近では行方不明者が多発するなどといった怪事件も各所で起きつつあった。
(って、私がここで立ち止まってしまってどうするのですか!)
(そう、私は聖騎士。騎士団の中でもとりわけ胸の小さな者にのみ与えられる、至上の栄誉を持つ者)
(戦うこと。戦い続けること。それが私に与えられた使命なのです……)
(それでも……それでも私は……)
考えなければならない多くのこと――国のこと、人々のこと、災厄のこと――それらに一つ一つ自分なりの解答で区切りをつけることはできたものの、最後の最後まで解決しそうにない問題を胸に抱えたまま、クドリャフカはついに王城の前へ到着してしまった。荘厳な構えで眼前に聳え立つ建物を眺め、クドリャフカはどこか胸が弾むような嬉しさ、そしてそのように感じてしまうことへの背徳感に苛まれながら、自らの想い人が待ち構えているであろう謁見の間のあたりへと目を移す。もちろんその姿を捉えることはできるはずもないのだが、彼女はその姿を脳裏に鮮やかに思い浮かべることが出来た。もう幾度となく目に焼き付けてきた光景。幼少のころは彼の良き友人として、彼が即位してからは忠実なる僕として、半年前の事件で塞ぎこみがちになっていた頃は慰め手として、幾星霜の時を経て、王への想いは募るばかりで――そしてそれは、決して届くことはない。所詮自分は幼馴染であると同時に彼に仕える忠実な騎士にしか過ぎないのであって、王の心はいつでも、半年前に行方不明になってしまった王妃へと向けられていたのだから。
クドリャフカは自らの煩悶が表に出ないように苦心しながら城門をくぐり、王城へと足を踏み入れる。質素ながらも頑健な作りを誇る城内には、有事の際かと思われるような物々しい警備がなされており、災厄の時が間近に迫っていることを実感させた。
「ペタリ―ヌ第三騎士団長、聖騎士クドリャフカ、ただいま参上いたしました!」
「うん。入っていいよ」
謁見の間へと続く扉の前で、騎士が声を張り上げて自らの到来を告げると、返ってきたのは若き王としての凛々しさと、親しみが込められた気軽さが入り混じった不可思議な声。あまりこの場に相応しい文句とも思われない言葉ではあったものの、いつもと変わらない様子にクドリャフカは微笑みを浮かべ、扉に手をかけた。
頭上に大きく広がる王国の紋章を象ったステンドグラスと、所々に散りばめられた絵画などの調度品の数々が織り成す壮麗さは、さすがは謁見の間といったところか。もう何度も出入りしているとはいえ、騎士は変わらぬその美しさに少しの間心を奪われていた。
ようやく自分のいる場所に気づいたクドリャフカが慌てて目線を上げると、そこには穏やかな微笑で彼女を見守る青年の姿があった。ほんの数年ほど前までは華奢で頼りない印象の強かった少年も、今では頬の筋肉も引き締まって精悍さを感じさせる王の顔へと変化している。しかしその顔に現れる表情は、クドリャフカの最も古い記憶から少しも変わらず、今もここに存在し――それが彼女をより一層強く縛り付けていた。
もちろんペタリーヌ王・直枝理樹にその自覚は全く垣間見えず、良き友人の無事を祝う喜色の笑みでもって騎士を出迎えた言葉は、
「おかえり。よく僕の元へと帰ってきてくれたね、クド」
頭をぽんぽんと優しく撫でつけるという無自覚極まる仕草と共に紡がれていた。
「怪我はない?」
「は、はい……って!? わふーっ!? まままままったくもって問題ないでござりまするですっ?!」
あまりにも自然な動作で歩み寄られ、かつあまりにも無造作に手を置かれたためか、刹那の間反応の遅れたクドリャフカは、次の瞬間茹でだこのように頬を紅潮させ、舌を盛大に噛みながらムーンウォークで後ずさるという世にも奇天烈な動きをして見せた。やがて騎士が大理石の柱に後頭部をしたたかに打ちつけて悶絶するまでの間、じっとその様子を見つめていた理樹は、『わふーっ!?』という彼女特有の叫び声と同時に笑い声を上げ始める。といってもそれは、他者の失敗を嘲笑うような陰湿なものでなく、ごく近しい人に対してのみ見せるような、快活で爽快なものだ。
「あっはははは! クドってば、なにしてるのさ。相変わらずそそっかしいんだから」
「わ、わふー……」
誰のせいだと思ってるんですかっ、などとはもちろん言えるはずもなく、クドリャフカは羞恥と不甲斐無さとで消えてしまいたいほどの思いで縮こまってしまった。が、
「で、あの”儀式の間”で何が起こったのか、話してくれるよね?」
真剣な王の一言で、
「はい――」
姿勢を正し、語り始めた。
***
――ツルペタン・サーガ 第二章第一節より抜粋――
判断は的確に、かつ速やかにせよ。
人々言うだろう。
張り子のようなこの世界で、しかしあなたは知ることになる。
苦痛も、苦悩も、悲哀も、その身に纏わりついたありとあらゆる呪いが、摩擦になるのだと。
泥が足元を支え、氷床となったこの大地の上を、真っ直ぐに歩かせているのだと。
***
――時は遡り、再び儀式の間――
「……っ!」
宝具から解き放たれた光の奔流が周囲へ攻撃的に広がるまでの、ほんの刹那。
瞬き一つ満足にできぬそのあまりに短い時間でもって、しかし聖騎士は、とっさに防護の術を自らに施すことに成功していた。
簡易術式による初等のものではあったが、クドリャフカは対象を自らの眼だけに限定することで、効果を何倍にも引き上げたのだ。
あの僅かな間で術を行使できたのも、対象を絞り込んだのも、彼女の類稀なる才気と鋭い勘のなせる業。それゆえに光が止んだとき、儀式の間に立っていることができた者は、騎士を除いて一人も存在しなかった。
とはいえ騎士自身にもダメージがまったくないわけではなく、強烈な光の後遺症か、眩む視界にやや覚束ない足取りでふらついている。
「ふう……びっくりしました。まさかここまでとは……皆さんには悪いことをしてしまったのです……」
周囲をぐるりと見渡し、懺悔するように瞳を閉じる。立会いは本人らが強く望んだこととはいえ、やはり自らの判断が甘かったことは否めないのだろう。古代の宝具を解き放つからには、それ相応のリスクがあると考えるべきだったのだ。
「今更言っても仕方ありません……治療はもうちょっと待ってくださいね」
ぺこり、と一つお辞儀をすると、クドリャフカは正面へと向き直り、宝具”ょぅι゛ょ”の中から現れた物体を直視する。
「これは……石像? でも材質は石とは違う感じですね……もっと軽いみたいです」
高さは騎士自身とそう変わらないだろうか。
彼女の目の前に現れたのは、女性を象った像だった。
クドリャフカが、恐る恐るといった感じでこんこんとノックするように像を叩くと、不思議な響きを奏で周囲を満たしていく。
しかし、そんな材質よりも何よりもまず特筆すべきなのは、
「気のせいか私に似ているような……」
体の凹凸が少ないところや顔立ちなどが、そっくりとは言えないまでも騎士に似ているところだ。面影がある、といった程度に過ぎないものではあったが、その偶然の一致にどこか気味の悪さを感じ取ったクドリャフカは、少し離れようと体を引こうとして、
「わふっ!? なんですかなんですかー!?」
その瞬間、像が再び強い光を放ち始めた。
騎士は慌てて防護の術をかけようとして――しかし光に害意がないことを感じ取ると、手を止めた。
それと呼応するように、像から放たれている光が、触れている部分から橋渡しのように騎士の体へと伝わっていき、全身を包み込んでいく。
「わふー、なんだか物凄くあったかいのです……」
騎士が恍惚とした表情でうっとりと目を細め、光に身を委ねていると、唐突に光が弱まっていく。
「あ、あれ? 消えてしまうのですかっ?」
問いかけに応えることもなく、とうとう光は消え、像も沈黙を保ったままぴくりとも動く様子が無い。
「ま、待ってくださいっ! せっかく見つけた門への手がかりなんですから、もうちょっとこう、何かないんですか!?」
苦労の末にようやく探し当てた成果が、何も残さずに今にも消えようとしている。
そんな状況に慌てふためき、藁にも縋る思いで像にしがみ付こうとして、騎士は気づいた。
「これ……中に入れるのですか……?」
触れた部分がズブリと沈み込み、どこか別の世界へと自らを引き込もうとしていることに。
まるで自分の体に触れているかのようにしっくりと馴染む感触に、どこか不気味さを覚えながらも、騎士は意を決して、
「……入ってみましょう!」
像へ向けて、体ごとぶつかっていくように勢いよく飛び込んでいった。
「……っ! ……っ!」
瞬間、全身を八つ裂きにされたあげく、ミキサーでかき混ぜられているかのような感覚が騎士を襲う。
神経の一本一本を磨り潰されているかのような激痛に、何度も気を失いそうになっては、またその痛みで我に返り、そして再び全身を苛む悪夢に心をくじかれそうになって――そんないつ終わるとも知れない螺旋階段をぐるぐると回っている。
――本当に終わりは来るのでしょうか?
――ひょっとしたらここが既に終着点で……つまり、永遠にこの痛みが続くということではないでしょうか?
ほんの一瞬、そんな弱音がクドリャフカの胸の内をよぎった。
騎士がそんな自分に恥じ入り、心の中で強く念じると、
――開けっ! 異空の扉っ!
まばゆい光が解き放たれ、世界が黄金色に輝いていく。
いつしかクドリャフカは、五体満足の体で地に足をつけて立っており、体を蝕んでいた苦痛も嘘のように消え去って、後にはただ、解放感から来る穏やかな、凪のような静寂が身も心も満たしていた。
「あれが……門……」
森の真中にでも放り出されでもしたかのように、周囲に生い茂る多種多様な木々。クドリャフカが立っているのは、そんな彼らに囲われ、天然の要塞じみた作りとなっている小さな空き地のような場所だった。
そして、その空き地から細く長い道が真っ直ぐに続いたその先に、僅かに垣間見える虚穴が、招き寄せるようにぽっかりと口を開けて騎士を待っていた。
「とりあえず、戻りましょう。報告とか、治療とか、それに準備も必要ですし」
逸る気持ちを抑え、冷静に状況を分析すると、騎士は像の元へと歩み寄り、手を当て、
「……さっきの痛いの、初回限定版ってことでどうにかまかり通りませんか? あ、無理ですか? そうですか……ですよねー……」
なんとも情けない本音を吐いたのだった。
***
「なるほど……」
騎士の話を聞き終えた王は、そう一言だけ呟くと、何事かを考えるように天井を仰ぎ、あとはもう何も口にすることなく黙り込んでしまった。
「……」
王の深慮を邪魔するわけにもいかず、聖騎士もまた黙ったまま控えている。
「クドに似た像かぁ……見てみたいものだね」
「そ、それはいけませんっ! 危険です!」
唐突に口を開いたかとおもえば、その内容の突拍子も無さに騎士は慌てふためいて押し止めようとする。
何しろあの場所にいた者は自分を除いて全員が気絶し、今も目を覚まさない者もいるのだから、その慌てようも無理はなかった。
「あはははは、冗談だってば」
「わふ……西園さんにしろ、リキにしろ、どうして私の周りの人たちは心臓に悪いじょーくを平然と口にするのでしょうか……」
「あ、久しぶりにそう呼んでくれたね。”リキ”って」
「わふーっ!? い、い、い、今のは物のはずみというか、その、今のなし! 今のなしです!」
「そんなに慌てなくってもいいじゃないか。昔はそう呼んでたんだし」
「ですが、その、あの頃とはもう立場が……」
「相変わらずお堅いなぁ」
「わふ……」
幼馴染であり、現ペタリ―ヌ王・直枝理樹との距離感に、かつては夜も眠れぬほどに悩んだ自身に比べ、こうも屈託なく笑いかけられては、クドリャフカとしてはもう何を言っていいやら、といった様子で苦笑いを浮かべていた。
「それで、やっぱり行っちゃうの?」
「はい、それが私の使命ですから」
改まった様子の王に対し、聖騎士は毅然とした態度でそう返答する。
「心配だなぁ……昔からクドって、どこかで何かしらやらかすし」
「うっ……そんなの、もう昔の話じゃないですか……今の私は王国第三騎士団長なのですよ? 騎士団の長として、遠征に行くのは当然です」
「まあ”儀式”もあれだけ反対したにも関わらず強硬な態度崩さなかったぐらいだし、半分諦めてはいるけどさ。でも、これだけは一つ、約束して欲しいんだ」
「何をでしょう?」
「絶対、生きて帰ってくること。いいね、これは”命令”だ」
「……はいっ!」
「もう誰かを失うのは、嫌なんだ。この気持ち、クドならわかってくれるよね?」
「はい」
王の真摯な問いかけに、聖騎士は静かに同意の意を示し、最後に敬礼をすると、後ろ髪引かれる思いを振り切って謁見の間を後にする。
王座に取り残された王は、姿が見えなくなるまでの間ずっと、白銀に煌く背中を瞬き一つせずに見つめていた。
***
謁見の間を後にした聖騎士が、次に向かった先――いわゆる詰め所――では、騎士の親友にして大神官の称号を持つ西園美魚が騎士を待ち受けていた。
「お待ちしていました」
「西園さん……どうかしたのですか?」
「いえ、ただお見送りができればと思いまして」
「そうでしたか。ありがとうございます」
そうして軽く挨拶を交わし、早速支度にとりかかった騎士を、美魚は静かに見守っている。二人の間に会話はなかったが、特に気にした様子も無い。時折目を合わせ、微笑み合うだけで何もかも通じ合っているかのように。
「それでは、行って参ります」
「本当に、一人でよろしいのですか?」
「はい。危険な旅になるでしょうから」
「……そうですか」
危険だからこそ一人で行ってしまおうとすることに懸念する者と、危険だからこそその身で全てを背負おうとする者。
対極な二人はどこまでも交わらず、惜別を軽い抱擁で済ませると、
「「あなたに神の御加護がありますように」」
祝福の言葉と共に離れ、互いに背を向け、それぞれが行くべき場所へと歩み始めた。
***
「どうかしましたか?」
「とれないの」
「ええと……あ! 木にボールが引っかかってしまったのですか」
「うん。いっしょうけんめいてをのばして、うーんとせのびして……でもやっぱりとどかないの。とれないの」
「それなら私が取ってあげましょう。うんしょ……はい、とれましたっ」
「ダメなの」
「え?」
「わたしがとるの。わたしがとらなきゃいけないの。ズルしちゃだめなの。ちゃんとわたしのてでとらないとだめなの」
「で、でも」
「だからもどして」
「その、言いにくいことなんですけど、絶対届かないと思うのです……」
「それでもいいの」
「……いいのですか?」
「わたしのてでとれないのなら、あきらめなきゃいけないの」
***
儀式の間に置かれた像が導く悪夢の螺旋階段の先、人の気配など感ぜられるはずも無い深緑の森の中で、一人クドリャフカは門へ向けて足を運んでいた。頭の中では、先ほど街を歩いている時に出会った少女との会話が再生されている。
「そういえばこんな寓話がありましたっけ。高いところに葡萄が生っていて、それを見つけた狐さんが、がんばってとろうとしたけどどうしてもとれなくて……おしまいには、「あの葡萄はすっぱいに違いない」なんて架空の理由にかこつけて去っていくなんていうお話」
道を塞いでいる草木を剣で刈り取り、生い茂る雑草を足で踏みならしながら、騎士はひたすらに行進していく。
「あの女の子を見ていたら、そのお話を思い出してしまいました」
どこからともなく吹きつける風に、木々が一斉に身を揺らしてざわめく。漣のようにも聞こえてくる大自然の合唱に、ふと海の底へ迷い込んでしまったかのような不安と息苦しさを覚え、騎士はありもしない錯覚を隅へ追いやるように頭をふった。
「でもあの女の子の眼は……そういうのじゃなくて、もっとこう異質な……」
――欲しい。けど手に入れられない。それならせめて、静かに見つめ続けよう。
一際開かれた空間へとたどり着いた騎士は、後ろを振り返って自分が歩んできた道のりをまず確かめると、次いで正面へと向き直り、初めよりも大分近づきつつある門を視界に捉えた。このままのペースで歩いていけば、もう間もなく踏み込めるはずである。余計なことを考えている暇は無い、と騎士は己が姿勢を正し、身の回りの品を再度確認する。
この門の向こうには、まだ見ぬ異世界が待ち受けている。
鬼が出るか、蛇が出るか。
聖なる騎士は、一瞬頭によぎったろくでもないイメージを追い出すように大きく首を振ると、今はただ使命を果たさんと決意を胸に再び歩み始めた。
門は、遠くからではただの大きな虚穴にしか見えないが、騎士が近づくにつれて気づいたことには、それは薄い膜で覆われた通り道のようなものだった。様々な色合いの靄が多層に渡って積み重ねられて作られたその薄い膜は、どこかこの世ならざる神秘さを感じさせる。好奇心に駆られた騎士が手で触れてみると、ふよんと柔軟に形を変え、手を戻すと、それに合わせてぷるんと元に戻っていく。
「うーん、この感触、以前どこかで味わったような……」
そうひとりごちると、クドリャフカは触った右手を開いたり閉じたりするのを繰り返してはうんうんと唸り始める。足を踏み入れる前の緊張感などどこ吹く風、彼女は膜を指で突付いて見たり、軽く拳を突き入れたりしてしばらく遊んでいた。
やがてそれにも飽き、そろそろ本気を出そうと騎士が愛剣を改めて握りなおしたところで、彼女の脳内に、まるで天啓のような閃きが突然湧き上がってきた。
そうだ、この感触……道理で覚えがあると思ったら……。
間違いない、これは――
「おっぱいの感触ですっ!」
胸のつかえが取れたクドリャフカは、確認のために自らの胸を揉みしだこうとして、しかしそうするだけのボリュームに乏しいことに気が付き、いやいやしかし自分は鎧を身に着けているのだから触れられないのは当然だと思い直して、それきり忘れることにしたのだった。
半刻ほど変わり映えのしない景色の中を歩いていると、突然、ここまでとは全く異質な空気をクドリャフカは感じ取った。自然、騎士は右半身を押し出し、剣を眼前に突きつける形で半身になって構え、じっと息を殺して周囲の気配を探り始める。
「……?」
そうしてクドリャフカが油断することなく警戒を続けていると、その眼前で、靄が収束し何かを形作り始めた。騎士がその様を呆然と眺めていると、統一感のない色彩でもって象られていくのは、形状から察するにどうやら扉のようなものだ。
とうとうこの時が来たのだ、とクドリャフカは予感する。扉が開かれれば、真の戦いが始まるのだ。古来より伝承にて伝えられてきた巨乳たちが住まう国。奴らを打倒し、そして願わくば、地上に永久なる平和を――
「え……?」
そうして決意を改め、眼前の不可思議な現象を迎え入れようと気を張っていた騎士の口から、突然驚きの声が漏れた。気づけば構えも解かれ、ただ足を棒にして扉を見つめるその姿は、お世辞にも聖騎士の称号を持つ、第三騎士団長にふさわしいとは思われない。
しかし、それも無理はなかった。
「これって……」
騎士の目の前に顕現したのは、一枚の豪奢な装丁の、大きな両開きの扉。
彼女が見つめるその扉――獅子を象った取っ手の、その両目に散りばめられた煌びやかな宝石に騎士の視線は固定されたまま動かない。紅と蒼とで対となったその宝石眼が、彼女の身体を射抜き、留めてしまっているかのように。
「そんな、この宝石は……王と来ヶ谷さ――王妃との婚儀を祝して献上された、世界にただ一つしかない一品のはずでは……」
聖なる騎士は、己が世界の崩壊を、まるでコマ送りで見ているかのようにゆっくりと感じていた。一つ一つの記憶が弾けては混ざり合い、脳を蝕むかのように伝染していく。堪えきれないほどの激しい頭痛にこめかみを押さえ、激しく叫喚するその姿は、王国騎士にもっとも相応しくなく、同時に年相応の少女にこの上なく相応しいもので――気がつけば彼女は、みっともなくぼろぼろと涙を流していた。
やがて全てを理解すると同時に頭痛も収まってきた頃、クドリャフカは泣き濡れた顔を乱雑に手で拭い、愛剣”69の奇跡”を正眼に構えると、宝石の双眼を見据え、扉に向かって気合一閃、
「たぁっ!」
縦一文字に切りつけた。
獅子の額がぴしり、と音を立てて崩れ始める。
と同時にクドリャフカの、晴れた日の澄み切った青空をそのまま閉じ込めたような美しい瞳が、ほんの一瞬だけ揺らいだ。何かを迷うように。何かに躊躇うように。
が、それも束の間、騎士は口を真一文字に結んで、目前に広がっていく光景から目を逸らすまいと歯を食いしばる。
ぎしり、と大きな音を立てて扉が開かれたその先の世界。まだ見ぬはずの、異世界。そこで一番初めにクドリャフカが目にしたのは、彼女の瞳が乗り移っているかのように美しく澄み渡った青空の下、王都の中央通りを楽しげに語らい合いながら行き交う人々の姿だった。
「やっぱり……そういうこと、だったんですね……」
聖なる騎士は、目の前に広がる、あまりにも美しすぎる光景を、諦念と嫉妬と羨望と、自嘲と羞恥と自己嫌悪が入り混じった複雑な表情でほんの少しだけ眺めると、突然背を向けて駆け出していった。
騎士が駆けていくその背後では、賑やかな町並みが、まるで切り取った絵のようにいつまでもその存在を主張していた。
***
ペタリ―ヌ城・謁見の間。
宝石の双眼を持つ獅子が出迎える扉の先、豪奢に誂えられた王座に、ペタリ―ヌ王・直枝理樹が座っている。
物憂げな表情の彼がその手に持つものは、古くより王国に伝わりし古文書。
理樹は、もう既に読み飽きるほどに読破してしまったそれを静かに閉じると、とりわけ彼のお気に入りの一節を静かに諳んじてみせた。
「『判断は的確に、かつ速やかにせよ』」
「『人々は言うだろう』」
「『張り子のような世界で、しかしあなたは知ることになる』」
「『苦痛も、苦悩も、悲哀も、その身に纏わりついたありとあらゆる呪いが、摩擦となって支えているのだと』」
「『泥が足元を支え、氷床となったこの大地の上を、真っ直ぐに歩かせているのだと』」
「”ツルペタン・サーガ”ですか」
「うん。この第二章第一節にはちょっと思うところがあってね」
自分以外は誰もいなかったはずの謁見の間に突然降って沸いて出た声に、しかし理樹は特に驚いた様子もなく頷いてみせた。
「クドは? 何か感じない?」
親しげに呼びかけられ、クドリャフカは不快そうに眉を顰める。平時と何ら変わらぬその声が、かえって騎士の神経を逆撫でにしていた。そしてその感情の爆発は、次の瞬間、彼女の激昂の叫びとともに吐き出され、
「いい加減にしてくださいっ!!」
静謐な空間を切り裂くような悲鳴が轟きわき起こる。四方の壁に乱反射して飛び交う音の塊。しかし理樹は、意にも介さず、静かな眼で少女を見守るだけだった。
「ねえ……もう、いいじゃないですか……」
「……」
先ほどとは打って変わった騎士の弱々しげな声にも、やはり理樹は応じない。
「こんな茶番はもう、たくさんなのです……もう終わりにしませんか? ねえ、リキ。いえ――”私”」
焦点の定まりすぎた理樹の、ガラス玉のような瞳が、静かに聖騎士を射抜いていた。
「やっぱり、気づいてしまったんだね」
「はい。全部、”嘘”だったんですね」
「それは違うよ」
「何が違うって言うんですか? 全部、全部、作り物だったんじゃないですか。本当の世界は門の向こう……あっちに存在して……聖騎士だとか、ペタリ―ヌ王国だとか、ペタロンだとか、みんな、みーんな”私”が作り上げた幻の世界だった……ってことじゃないですか!」
聖騎士は再び沸き起こった激情を剣に込め、勢いよく振り下ろして地面に突き立てた。それは、騎士の胸の内にわだかまるやりきれない想いの咆哮のように力強い音を奏で、紅の絨毯が敷き詰められた謁見の間の中心を穿ち、停止し、静かに沈黙する。
聖騎士は、荒い息をつきながら俯き、しばらく床に刻まれた傷の模様を眺めていたが、
「それで、」
天から降って沸いたような声に――実際には段差にして一段分の高さの王座からの声だったが――反応し、面を上げた。
「それが一体どうしたっていうんだろう?」
「え……?」
続いて放たれた言葉がよほど予想外だったのか、騎士は思わず声を失う。
「だって、僕らは今、確かにここに存在している」
「こうして触れ合うこともできるんだよ?」
呆然とする聖騎士の前にゆっくりと降り立った王は、そう言うと優雅な仕草で騎士の頬を撫でまわす。
「なっ……やっ!」
「クドのほっぺた、あったかくて柔らかいね。クドだって、感じるよね? 僕の指先が持つ触感だとか、そういうの。これも皆、全部嘘だっていうの?」
「だって……だって……こんなのっ!」
「大神官も心配してたよ。良い友達を持ったじゃないか。騎士団だって皆、クドのことを尊敬してる。仲間にも恵まれていて――それで一体、何が不満なのさ」
「だからっ! ここはっ! ”私”が作った偽者の――」
「じゃあさ」
王はどこか哀れむような瞳でじっと聖騎士を見つめると、静かに問い正す。
「”あっち”の世界は本物なの?」
「え……」
「向こう側こそが本物の世界だっていうこと。クドにはそれが証明できるのかな」
「だって、だって、そんなの……そんなの、証明のしようがないじゃないですかっ」
「つまりはそういうことなんだよ。誰も本当のことなんて知らないんだ。知らないから、証明のしようがない。知ってるフリをして、認識しようと努めてるだけ。真理なんてそんなものだよ。皆が皆、自分にとって都合の良いように世界を解釈しているだけなんだ。『こうであればいいな』『こうでなければならない』『こうにちがいない』 形はそれぞれだろうけどね」
――ねえ、だからさ、クド
――”偽者”を”本物”にしちゃおうよ
耳元で囁かれる言葉は、小さな棘となって騎士の胸にじくりと沈み込む。こらえるように奥歯をかみ締めたその口元からは、一滴の紅い滴が垂れ落ちていた。
「何もかもが思い通りになって、誰にも邪魔されることがない。ここには、全てがある」
「行こうよ、クド。そうだ、何なら王妃は君ってことにしたらどうかな? わざわざ向こうの世界と同じ設定に――僕と来ヶ谷さんがくっついてる必要なんてないじゃないか。ね、そうしよう? それで、二人で幸せになろうよ」
そこで言葉を止め、王は聖騎士に向かって右手を差し伸べ、微笑んで、
――ぱしんっ!
次の瞬間痺れるような痛みを手のひらに感じ、振り抜かれた聖騎士の右手を呆然と見つめていた。
「どうして?」
呟かれた言葉に、憎悪や怨嗟の響きはなく、
「だって、ここでは全てが実現するんだよ? 何もかもが、ここにはある」
ただ純粋な驚きだけが存在していた。
「僕とクドだけじゃ寂しいなら、もっとたくさんの人たちを作ろうか。皆が皆、僕たちを祝福してくれる。気に病むなら、自分の記憶は封印してしまえばいいさ。なんだってできるんだから。そして――」
「それでもここには、私しかいません」
遮られ、虚を突かれたように王は沈黙する。
「ここには、私しか、いないんです……!」
「そんな世界なんて――お断りですっ!」
聖騎士は、振り絞るようにそう叫ぶと、突き立てられていた愛剣を引き抜きざま、その反動を利用して体全体で独楽のように回って真横に一薙ぎ入れると、間髪いれずに体勢を整え、軸足でステップを踏んで間合いをとった。
半身になり、睨みつけるように王を見据える聖騎士。そんな彼女とは対照的に、落ち着き払った様子の王は、
「――残念だ。やはり同じ僕とはいえ、分かり合えないものなんだね」
諦念の篭った晴れやかな笑みを浮かべると、何も無い空間へ向けて手をかざす。
「こうなるってわかっていたから、あれほど強く止めたのに。まあそれも今更の話だけどね」
周囲がぐんと揺らぎを見せたかと思うと、次の瞬間にはもうすでに、どこからともなく取り出した剣を手に、王が聖騎士へと斬りかかり、
「というわけで、出来損ないの君には……消えてもらう!」
「それもお断りしますっ……!」
戦いの火蓋が今、切って落とされていた。
斬撃の耳障りな悲鳴が、謁見の間に鳴り響く。
一方が上空から斬りかかれば、他方は地上から対空技でもって返し、また一方が横薙ぎに斬りかかれば、他方は剣を盾に受け流す。合間に放たれる徒手空拳は、その全てが同じタイミングで弾かれ、術式による遠距離攻撃も、容易く相殺し合えるのは、自らの技故か。実力は拮抗し、互いに攻め手に欠けたまま打ち合うこと数十合。疲弊による消耗をはさんだ小休止の間に、王は聖騎士に問うた。
「やはりわからないな……どうしてそこまでして抗おうとするの?」
「……」
「”あっち”の世界が本物で、”こっち”が偽者だからかな? さっきも言ったけれど、そんなものは主観にすぎない。君さえ望めば、すぐにでもこちら側が本物になるんだよ?」
「違います」
「何が違うっていうのさ」
「前提からして、です。私は別に、本物や偽者だということそれ自体にこだわってるわけじゃないのです」
「……? じゃあ、何が問題なの?」
「リキだってもう、気づいているんじゃないですか? どうして私がこの世界の秘密に気づいたんだと思いますか?」
「……」
「”本体”がそう望んだから、じゃないんですか? 役割を演じてるだけの作られたあなたや私じゃなく、”本体”が気づくことを望んだからなんじゃないんですか?」
「……」
「門への道のりで、私、一人の女の子に出会ったんです。背が小さくて、どれだけ手を伸ばしても手に入れられないものをずっと見つづけていた女の子です。今思えば、あれも”本体”が作り出した出来事なんでしょうけど――彼女はこう言っていたんです。『ズルしちゃだめなの』って。『ちゃんとわたしのてでとらないとだめなの』って」
静まり返った広間で、二つの吐息が静かに重なる。両者ともに構えは解かれ、両腕をだらりと無防備に下げ、見詰め合ったまま、ぴくりとも動かない。特に何の反応も示さない王に対し、気にした様子もなく聖騎士は続ける。
「つまり、そういうことなんだと思います。”本体”はコンプレックスの塊で、手に入れたいと望んだものほど掴むことが出来なくて、全てが嫌になって、そうして塞ぎこんでいるうちにやがて夢を見るようになって、その世界に逃げ込むようになって――それでもやっと、今、気づいたんです」
「ズルして自分だけの思い通りになる世界なんて、作ってはいけなかったんです。大好きな人たちがいる、自分が生まれた世界を否定してはいけないんです。思い通りにならないからって、閉じこもって逃げ込んでいたって、いつまでも夢を見続けているわけにもいかないじゃないですか。ちゃんと私自身の手で掴み取らなくちゃいけなくて……もし取れないのなら、諦めなくちゃいけないんです……そうやって世界を見つめ続けていかなくちゃ――だからこの誰もいない、夢見る世界とはお別れしなきゃって」
――それだけです
最後にそう静かに締めくくると、もはや何も語ることは無い、と剣を構える聖騎士。
「――けるな」
対する王は、
「……え?」
能面のような表情になったかと思うと、
「ふざけるなああああっ!!」
突然爆発したような叫び声を上げ、四方八方へ向けて上位魔術を乱発し始めた。飛び交う炎や雷の塊に、美しかった謁見の間が焼かれ、破壊され、見る影もなくなっていく。これまでは自分自身に対する遠慮があったためか、無意識下で加減があったのだろう。しかし、その精神的なタガが外れた今、その身から放たれるのは、一つ一つが必殺となりうる殺意の塊。
阿鼻叫喚の巷となった中心で、聖騎士はひたすら防護の術式と治癒の魔術で耐え忍ぶより他に手が無かった。
「ふざけるなっ! 望んでもいないのに勝手に始めておいて、勝手に生み出しておいて、間違いだったって!? 失敗だったから消し去るだって!? そんなこと、僕は認めない!」
どこからともなく現れた黒く濃厚な霧が、王の体を包み込んでいく。やがて全身は闇に染め上がり、漆黒の妄者と化したその姿に、聖騎士は自らの醜い部分を吐露させられたかのような羞恥を感じると同時に、僅かながらの共感を覚えてもいた。
(望んでもいないのに勝手に生み出されて、都合が悪くなったら勝手に消される……確かに、そうなのかもしれませんね)
もはや”本体”からは離れたところで思考し、行動するようになった彼らは、それぞれ別個の人格を持ち、生命としての活動をするにまで至っており――そしてそれ故に、自らの危機に対して本能的に抵抗するようにまでなっていた。程度の差こそあれ、聖騎士もまた、王のようにどす黒い感情が胸の奥で燻るのを感じている。
「本体が僕を消そうというのなら、逆に僕が本体を消し去ってやる! そして――僕が”本物”になるんだっ!!」
一際力強い叫びと共に放たれた炎の矢が、渦を巻いて中空に留まる。
「……?」
術式のミスかと疑った聖騎士の表情は、しかし、中空に浮いたまま消えそうだった炎が咆哮を上げるように再び燃え盛り始めると、一転して青白く染まった。
「そんな、まさか……”召喚魔術!?」
騎士の叫びと同時に、炎が大蛇の姿へと変わり果てる。体長10メートルはあろうかと思われる巨大な炎蛇が、獲物を見定めるように唸りを上げ、主の命を待っていた。目算では大分離れた距離にいるはずなのに、まるで間近に存在しているかのような、焦げ付いた空気が肌をちりちりと焼いているかのような、錯覚と実感が入り混じった不可思議な感覚を騎士は感じていた。
(このクラスの召喚を何らの媒介もなしに、しかも瞬時に行うなんて……執念、でしょうか。……ってこんなこと考えてる場合じゃないのですっ!?)
今までに無い最大レベルの危機を感じ取った聖騎士は、自身の持つ最高の防護陣を編み上げようと指先に力を込め、
「まずはお前からだっ! 死ねっ!」
しかしそれより先に召喚者の命が下され、炎蛇は待ちかねたとばかりに騎士の小さな身へと襲い掛かっていく。
(間に合いませんっ!?)
圧倒的な質量を持ったこの炎の塊に対しては、簡易の術式では対抗しきれるはずもない。かといって大規模な防護の術を行使するには詠唱の時間すらもなく、炎はもう目前と迫っており、避けようも無い。為す術を失った騎士は、とうとう目を瞑り、己が最期を受け入れようとする。
(悔しいですが、どうやらここまでのようです……)
聖騎士は、光の届かぬ真っ暗な世界に、身を委ねようと全身の力を抜いていき、
(ごめんなさい、本体)
わずかに残された悔恨をも手放して、
「……え?」
そこで突如として現れた不思議な感覚に身を包まれ、驚きの声を上げた。
足元が不確かとなって、自分が立っているのか座っているのか倒れているのかもわからなくなる感覚。
”ここに自分がいること”それ自体に懐疑的になって、身も凍るような恐怖にとらわれ、
にもかかわらず、それがどこか懐かしくもある。
ああ、間違いない、この感覚は――
「”あなたに”」
――忘れるはずがない。
「”神の御加護が”」
――たとえこれが、一時の幻だったとしても。
「”ありますように”」
――植え付けられた記憶だったとしても。
――大神官と交わした友情は、今もなおこの胸に残されているのだから。
「空間転移……」
大神官の扱う術式の中でも、とりわけ習得には困難を極める大魔術。
「でもこれはまだ未完成のはずで……自分と対象の位置を入れ替えるのが精一杯って……まさか……」
目を見開いた聖騎士は、自身に背を向けて哄笑する王、燃え盛る炎蛇へと視線を移していき――最後に、炎の中で崩れ落ちていく人影を、見た。
影は、灼熱の中を、ぐらりと前のめりに倒れたかとおもうと、光の粒となって天へと還っていく。
「ふはははははは! 炎よ、焼き尽くせ! 燃えろ、燃えろ、みんな燃えてしまえ! お前など、消えてしまえ! お前も、お前もだ! 本物も、偽者も、みんな消えてしまえばいい!」
足元に残された転移術式用の魔方陣に向けてぺこりとお辞儀をすると、聖騎士は両手で剣を握って、疾駆する。
「お前たち全員、消し去ってやる! そして僕だけが残り、僕だけが世界を支配し、僕だけが本物になるんだ!」
今もなお叫びつづける王の下へと。
もう既に身に纏っていた黒い霧も晴れ、醜くちっぽけな姿をさらけ出しているに過ぎない哀れなる王の下へと。
騎士の胸のうちには憎悪も、怨嗟もなく。
ただ哀しみだけが、そこにはあった。
「やああああああああああ!!!」
そして裂帛の気合とともに繰り出された渾身の突きは、
「なっ!?」
直前で気づき振り向いた王の正面腹部へと、深く、深く突き刺さった。
「がっ、はっ、ぐ、あ、あ、あ……」
喉を掻き毟るように手を動かし、酸素を求めてぱくぱくと口を開いては閉じ、開いては閉じる王を、聖騎士は静かな眼で見守っている。
「く、そ……」
腹から背中へと突き抜けた剣から、ぽたりと一つ、赤い滴が舞い落ちる。
それは焼け残っていた紅い絨毯に飲み込まれ、初めから存在しなかったかのように、消えていく。
「なんの……いみが……ある……」
口から血の泡を吹き、咳き込みながらも、王は聖騎士を見据えたまま、一つ一つ区切るように力強く言葉を吐き出していく。
騎士もまた、目を逸らさずに見つめ返し、最期の言葉を待っている。
「自分が……報われない……せかいに……なんの、いみが、ある……」
言葉は呪いとなって騎士の胸の中に一つの痕を残し、後はただ、王の姿と共に四方へと静かに霧散していき、
「さよなら、”私”」
残された少女のぽつりと呟かれた”さよなら”が、誰へ向けるともなく放たれる。
それは受け止めるはずだった相手を探して広間を飛び交って、やがて力尽きたように、壊れかけた壁面へと吸い込まれていった。
***
天高く昇りつめた太陽の、偉大なる恩恵に包まれた青空の下。
通りに沿って植えられた葉桜が、過ぎ行く春を見送るように、風に吹かれて揺らいでいる。
木々のざわめきに小鳥たちの囀り、闊歩する人々の足音や話し声が、交響曲を奏でるように一つとなって世界を包んでいく。
そしてその中を、今、一組の男女が、とある場所へ向けて我先にと競うように駆け抜けていた。
「その話、本当、なのだろうな!」
一頭身分だけ前を走っていた、長く美しい黒髪を持つ女性が、少し後ろで遅れるようについてきていた青年のほうを振り返り、何事かを叫び散らす。
しかし、呼びかけられた青年はというと、彼女が振り返った際に目に飛び込んできた豊満な胸元から零れ落ちる楽園への片道切符を、直視するべきかちらりと覗うべきか、それとも見ないようにするのがもっとも礼儀に適った作法だろうかと葛藤しており、女性の言葉は耳を素通りしていた。
「ふんっ!」
「あいたっ!」
女性はポケットに無造作に突っ込まれていた五円玉を取り出すと、青年の頭目掛けて邪な空想を刈り取るように鋭く投げつけた。それは見事に青年の額に的中し、軽快な音を立てて道路へと転がっていく。
「なにをするのさ……」
「馬鹿なことを考えているからだ。それより、本当なのか?」
「えっ、何が?」
「だから、――――君が、――――したことだ!」
「ああ、それなら間違いないってば! ――から直接知らせがあったんだから!」
「そうか……」
青年の返答を、どこか複雑そうな表情で受け止めた女性は、もう振り返ることもなく、まっしぐらに目指すべき場所へと向かっていた。青年のほうも、もう無駄口を叩くことなく黙々とその背中を追っていく。
やがて一つの建物の前へとたどり着く。片や悠然と、片や少し息切れした様子で、しばし扉のノブのあたりを見つめている。
「……開けないの?」
「君こそ、開けないのか?」
「いや、流れ的にここは――さんが開けるのかなって」
「む……」
こういうのって先に着いたほうが開けるものじゃない? という呼びかけに、ぐうの音も出ないといった様子の女性は、少し躊躇いがちにノブを掴んで、ゆっくりと押し出していく。
きぃぃぃと微かな音を立てて扉が開かれ、
企画・原案
クドリャフカ・アナトリエヴナ・ストルガツカヤ
爽やかな春風が、開け放たれた窓から玄関へと向かって通り抜け、女性の頬を擽って空へと還っていく。
シナリオ
クドリャフカ・アナトリエヴナ・ストルガツカヤ
開けてしまった後で、呼び鈴から先に鳴らすべきだったのではと思い立った女性は、しかしそれも今更かと開き直り、中へ向けて呼びかける。
CAST
王:クドリャフカ・アナトリエヴナ・ストルガツカヤ
聖騎士:クドリャフカ・アナトリエヴナ・ストルガツカヤ
大神官:クドリャフカ・アナトリエヴナ・ストルガツカヤ
その他大勢の人たち:クドリャフカ・アナトリエヴナ・ストルガツカヤ
「――――君? いないのか?」
BGM/SE/背景
”ふりー素材”なるものを拝借しましたっ
応えるものもなく、途方に暮れ、しばし視線をぶつけ合った二人は、やがてどちらからともなく足を揃えて中へと踏み込んでいく。
その他いろいろ
省略
「……ん? こっちか?」
微かな物音を聞き取った女性が向かったその先、寝室の隅に置かれた小さなベッドの上で、
一人の少女が、プラチナブロンドの長い髪を手櫛で整えながら、
澄み切った青空をそのまま切り取ったかのように美しい瞳で、二人をにこやかに見つめていた。
Fin
***
「ふう……」
陳腐なEDテーマと無機質なエンドロールが流れる画面を、虚空を見つめる時ような、光の灯らない眼で眺めていたクドリャフカは、全てが”Fin”という文字で締めくくられると同時に、長く重苦しいため息をついた。
クドリャフカはのろのろと亀のように鈍い動きでマウスを手に取ると、ウィンドウモードで起動していたゲーム画面の右上隅の、クローズボタンにカーソルを合わせ、左クリックし、
”終了しますか?”
と表示された画面をきっかり三秒だけ見つめると、そのままカチッとクリックして終了させた。
そうして少女はDVDドライブのトレイを開けてディスクを取り出すと、2Dキャラが剣や杖を手に明後日の方向へ誓いを立てているような、どことなく間抜けなデザインのピクチャーレーベルの表面を軽く指でなぞり、なんともいえない気持ちになって頭を抱え始めた。
「何をやっているんでしょうか私は……」
どこへともなく向けられた独り言のようなその呟きは、拾い手を求めて部屋の中を一周ほど彷徨うと、諦めたかのように四散していく。
「すっげー虚しくなったのです……」
クドリャフカは、がくりと肩を項垂れて、先ほどまで自分で生み出したゲームに夢中になっていた自らの姿を思い浮かべ、恥ずかしさのあまりベッドに寝転がって悶絶したくなる衝動と闘っていた。
「何でこんな同人ゲーとか作っちゃったんでしょう……」
彼女はひどく自虐的な笑みを浮かべ、訥々と念仏のようにしばらくブツブツと呟いていたが、
「でも、仕方ないじゃないですよね……」
PCデスクの隅に立てかけられた写真立てに目を遣ると、そこに移された二人の男女の幸福に満ちた顔を、苦々しく、そしてそんな風穿ってしまう自分自身に吐き気を催しながら眺める。
「新婚旅行にグァムとか……もうね……どんな勝ち組ですか……」
回転椅子の背もたれに体を預け、小さな体で精一杯伸びをしながらひとりごちる。窓ガラスに映った陰鬱な自分の表情と、写真の中の自分のいない世界とを対比して、クドリャフカはますます憂鬱そうに顔を顰め、
「やっぱり、現実なんてつまんないのです……」
「もしも夢を見続けられるという選択肢が存在して、それを選ぶことができるとしたら――私はそれでもこの”世界”を選び抜くことができるのでしょうか……?」
「クドリャフカー? ごはんよー?」
「あ、はいっ! 今行くのですー」
しかし同居人の二木佳奈多の呼びかけに、何事もなかったかのようにぱあっと花が咲いたような笑みを浮かべ、
「きょ〜のごっはんはな〜んでしょ〜♪」
音程の外れた自作歌を歌いながら、台所に立っている犬のエプロン姿の佳奈多の元へ、スキップで向かっていった。
<了>
あとがき
クドリャフカ先生の次回作にご期待ください!
というわけであとがきなどを。
初めは純粋に、捻くれたクドが作成する厨2病設定のバトル物(巨乳国VS貧乳国)な感じで進める予定だったのですが、どういう経緯か妙に風刺的なお話になってしまいました。うわー誰も得しねぇと思いながらも、気づけば60kb近いボリュームのお話となっていたという。
世界観の構築がかなり必要だった話なので、それでも足りない部分が多々あったり、急展開すぎる場面もあったかとは存じますが、そこは想像とか妄想の糧にでもしていただくこととしてご容赦をば。初めからどんなに長くなっても60kbは超すまいと決めていましたし。
ここで楽屋裏のネタにでもしようと仕込んでいたのを紹介。
「判断は的確に、かつ速やかにせよ。
人々言うだろう。
張り子のようなこの世界で、しかしあなたは知ることになる。
苦痛も、苦悩も、悲哀も、その身に纏わりついたありとあらゆる呪いが、摩擦になるのだと。
泥が足元を支え、氷床となったこの大地の上を、真っ直ぐに歩かせているのだと。」
割と適当に作ったので(作中における固有名詞の90%は適当です)気づいた方もいるかもしれませんが、実はこれ縦読みでして、
「判人張苦泥→はん にん は く ど→犯人はクド→全部クドの自演だったんだよ!」
はい、誰も得しませんね。
完。
最後の最後に、元ネタとなったタイトルの曲を軽くご紹介させていただき、あとがきとして締めたいと思いまする。
『ユメミルクスリ』より せかいにさよなら
”今いる世界にさよならしようか””夢見る世界にさよならしようか”
そんな現実逃避のお話でした。僕たちの得意技ですね!