「はぁ…はぁ…」
走って乱れた息を整える。
「こ、ここまで……これば、きっと……」
息を整えながら彼女はポツリと言う。
元々、人気のない校舎裏だから大丈夫だとは思うが一応確認をしてみる。
「大丈夫。誰もいないです」
ふぅと大きく息を吐く。
そして、上を見る。
空は曇っており、今にでも雨が降りそうだった。

私は教室にはあまり居たくないです。
教室に居るだけで胸が苦しくなるからです。
告げ口のように聞こえる、いやもう悪口に近い言葉。
それが私になら我慢すればいいだけです。
でもそれはリキ、井ノ原さん、鈴さんなど周りに伝染していきます。
能美さんたちと居るあの集団も何々だよねーとかいやでも聞こえてしまいます。
私はそれが苦しくて堪らないです。
私のせいで皆さんが不愉快な気持ちにさせる。
それだけはいやなのです。
だから、私は教室を走るように去っていきました。
リキが止めるのを無視して……。

最近、眠れないです。
瞼を閉じると悪口を思い出してしまうから。
それをモンモンとしているせいで気づいたら朝になっている場合も少なくないです。
眠れたとしても夢の中でも悪口が蘇ってすぐ目を覚ましてしまいます。
ルームメイトの佳奈多さんにばれない様に外に出て夜の空気を吸って気持ちを落ち着かせます。
そうすると、少しはマシになるから……。

目の下にはクマが出来て佳奈多さんに心配されます。
私は嬉しい反面、いつ佳奈多さんにも毒牙がいくか分からないので大丈夫とだけ返します。
でも、佳奈多さんは世話焼きです。
それだけでは納得してないので、私は何か言っている佳奈多を無視してます。
ほんとは嬉しいんです。
私を心配してくれてるんだと実感するから。
顔を洗って戻ると佳奈多さんは、はぁっとため息を吐いて
「クドリャフカ。相談ならいつでも乗るからあんまり思いつめないようにね」
と言ってそれ以降はクマについては追及してきません。

空は自分の気持ちを表してると思います。
私が落ち込んでいれば曇り、楽しいときは晴れる。
そんな気がします。
今の私は悩んでいるので曇りなのです。
目を閉じる。
今は何も感じません。
頭はモヤモヤと霧がかかっているのに、体が寝ればいいと言っている。
私はそれに身を預けてゆっくりと瞼を閉じる。
意識が遠くなるのはそう遠くありませんでした。

そこは、闇でした。
周りは全て闇。
それは、私の気持ちを表しているようでした。
そこに歩いてくる一人の人影。
そこには私が居ました。

「あなたは何を迷っているのですか?」
――何も迷ってないです。
自分が自分に言葉を返すのは少しおかしい気がするが特には関係がない。
「自分のせいで皆がいやな気持ちになるのがいやなんでしょ?」
――そうです。今は悪口ですんでます。でも……
「それは皆に聞いたんですか? いやな気持ちなのかって」
――聞けるわけないです。だって……
「じゃああなたは逃げるのね。皆にいやな気持ちを押し付けて」
――そんなわけないです! 私が居れば悪口もないなるはずですっ。
「それは真実かしら? 私にはあなたの想像としか思えないのだけど」
――あなたに……あなたに私の何が分かるんですか!?
「私は何もかも知ってるわ。だって、私だもの」
――っ!
「もう一度言うわ。あなたは現実から逃げているだけ」
もう一人の自分が私に冷たく言います。
「皆に相談すればいい。それからでも遅くはないはずよ?」
――で、でも……
「あなたは弱くない。ただ自分に自信が持ててないだけ」
――でも、私は……
「すぐに答えを出せとは言わない。だからまずは相談しましょ?」
――出来るでしょうか、私に。
もう一人の自分は微笑んで、
「出来るわ。だって、『私』だもの」

「……ド。ク……ってば」
誰かが私を呼んでます。
「ほら、王子様がお呼びよ?」
「はい、言ってきます!」
私は最後にもうひとりの自分にありがとうと言いました。
「いい仲間にめぐり合えて良かった」
そこで意識が現実に戻ってきました。
目を覚ますとリキが目の前に居ました。
「リキ……私は皆さんにとって迷惑なのでしょうか」
「ど、どうしたのさ。いきなり」
いきなりだったのかリキは驚いた顔をしています。
「だって、私だけじゃなく、周りにいる皆さんにまで悪口が伝わってます。だったら私はいないほうが……」
パシン!
頬に衝撃が走ります。
「僕たちがいつ、クドに迷惑だって言った!?」
「そ、それは……」
「僕はいつだってクドの仲間だよ。クドの苦しみは僕の苦しみだ。だから一人で悩まないでよ。僕たち仲間でしょ!?」
リキの言葉が胸に刺さります。
「クドが自分勝手に思い込んでいるだけだよ。言葉じゃ理解出来てないようだから思わず手を上げちゃったけど……」
私はもう一人の自分の言葉を思い出します。
――あなたは逃げてるだけ。皆に相談をすればいい。
「そうですね。私は一人で悩んでいたのかも知れないです」
「クド?」
「リキ。こんな私ですけど、悩みを聞いてもらえますか?」
「うん、いいよ。聞いてあげる」
すぅと息を吸って気持ちを落ち着かせます。
「私は、リキたちが私と一緒に悪口を言われてるのに我慢出来なかったんです。だったら自分がどこかへ行けばいいんじゃないかって思いました。でもそれじゃだめだったんですね。何も解決してないんですから」
リキは静かに私の言葉を聞いてくれます。
「でも、さっき私は言われたんです。もう一人の自分に。私は逃げてるだけだって。誰かに相談すればいいって言われました」
「……そっか。だから相談しようと決めたんだ」
「はいです」
「クド」
「なんですか?」
ぎゅっとリキが私を包み込むように抱きしめてくれます。
それは暖かく嬉しいものです。
「クドはひとりじゃない。僕や恭介たちが居るよ。僕はクドが笑っているだけで嬉しいんだ。だって……僕はクドのことが好きだから」
その言葉に目からじわりじわりと涙が滲み出てきます。
「僕はクドと笑って行きたいと思うし、悲しいときは一緒に泣いてあげたい。僕はずっとクドのそばにいるよ」
「はい、はいです……」
「皆も大丈夫だよ。そんなに弱くないし、むしろクドの相談に真剣に乗ってくれるよ」
「そうですよね、リキ」

そうです。
私はひとりじゃないです。
自分から一人になりにいっていただけなんですね。

「よし、第一回能美を励ますぞ大会を開催する」
「まったく、何がやりたいんだ。お前は」
「でも、その割に楽しそうじゃねーか、謙吾」
「ふっ、祭りや大会と聞いて燃えない俺ではない」
恭介さん、井ノ原さん、宮沢さん。

「クーちゃん。元気になーれ」
「クド公が落ち込んでるとこっちまで気分が落ちちゃいますしね」
「そういってクドリャフカを手駒にしないように」
「お姉ちゃん。厳しいなぁー」
小毬さん、三枝さん、佳奈多さん。

「何をやればクドは喜んでくれるんだ」
「あら? そんなことも分かりませんの? おーほっほっほ」
「うっさい! ささみには分かるのか?」
「え? も、もちろんですわ。あなたとは違いますから」
鈴さん、さささーさん。

「クドリャフカ君なら私の胸でむふふと言ってもいいんだぞ」
「それ、犯罪ですよ。来ヶ谷さん」
「なんだと!? そんなはずはない。私のところでは普通だったぞ」
「そこの国はもう終わってますね」
「でも、そんな国あったかしら? あたしも結構、転々としてるけどそんなところ聞いたことないけど」
「まあ、それは嘘だ。クドリャフカが喜ぶことをすればいいのだろう。だったら簡単だ」
「え? ほんとに?」
「ああ、理樹君と一緒に居ること。それが彼女の一番の喜びだと思うぞ」
来ヶ谷さん、西園さん、朱鷺戸さん。

皆さんのおかげで私は一人じゃないです。
食堂でわいわいしている。
少し周りに迷惑をかけているものの皆さんが楽しそうなのです。
「クド」
それよりも嬉しいことがありました。
「なんですか? リキ」
「好きだよ」
「はい、私もリキのこと好きですよ」

私はリキと恋人同士になりました。
悪口も少しずつ言われなくなり、代わりにバカップルとからかわれるようになりました。

終わり




あとがき
訳分かんないですね、分かります。
リハビリとかいいつつもやはり微妙になるのが俺クオリティ。
話の内容的にはクドルートの途中。
告げ口っぽいのがあるシーンですね。
なんかネタは浮かんでいたけど文に出来ず間に合わないという始末。
のわりにクオリティは高くないです。
祭りなのでこんなシリアス書くなよって話ですね、分かります。
これでも祭りに貢献できることを信じて書きました。
俺の実力ではこんなもんです。
では、くどふぇす2、皆さん楽しんでくださいな。