
PERISH
因縁の始まり
気づけば大会はあっという間ですでに各ブロックは決勝を終え、大会の決勝戦を迎えようとしていた。
Aブロックでは或玖、Bブロックではシャティが決勝に出ることになった。
そしてその決勝戦は翌日行われることとなった。
シャティは久しぶりに会ったセドナと村の公園で話をしている。
少し気が楽になったのかシャティの表情は柔らかくなっているようだ。
あたりは静かで鳥の鳴き声と風のざわめきが心地よい。
少し暖かい風がシャティの髪をやさしくなでる。
「今日は暖かい日だね・・・なんだか眠くなってきちゃうよ」
「そうね、いろんな国に行ったけど私はやっぱりこの国が一番いいわ」
「外国ってどんな感じ?ボクは外国どころかこの国すら知らないから・・・」
少し寂しげな表情のシャティを見てセドナは軽くシャティの肩に触れる。
「これから、自分の目で見れば良いじゃない」
「え・・・でも・・・」
「大丈夫・・・私が・・・」
シャティの顔を見つめながらセドナは優しい笑顔で言う。
「私が、あなたを守ってあげるわ・・・」
ざわざわと風が吹く、シャティとセドナの周りを包み込むように。
シャティとセドナは静かに見つめ合う。
「うん・・・ありがとう、セドナ」
「いいのよ。今までしてあげられなかった事たくさんあるもの」
そのころ村の一角でタブリスが厳しい形相で歩いていた。
タブリスの目線の先には黒いコートを着た男がいた。
その男はタブリスよりは年下だろうか、コートのポケットに片手を入れうつむきながら歩いている。
「あの男・・・なぜこんなところにいるんだ・・・?この村になにかあるのか・・・?」
タブリスは男に感づかれないよう距離をとりながら後をつける。
しばらくしたところで男は建物の影に消える。
その後をタブリスも続く。
ジャキッ!
鈍い金属音。
狭い通路にこだまするこの音は確実に拳銃だろう。
タブリスは反射的に両手をあげる。
「後をつけて、何をする気かしら?」
「・・・!?女・・の子?」
「女が銃を持っちゃいけないかしら?」
タブリスの背後で銃口が光る。
少女の声が銃を偽物だと疑わせる。
タブリスは両手を挙げたまま後ろに振り向く。
「っ・・・!」
目の前には少し背の高めの少女だった。
アーミージャケットを着こなしブローバックタイプの銃をタブリスに向けている。
「質問の答えがまだだったわね。どうして後をつけてたの」
「き・・・君に言う意味はあるのかな?」
パァン!
乾いた銃声があたりに響く。
思わず目をつぶってしまったタブリスが恐る恐る目を開くと、
少女はもう一丁の拳銃を取り出し一丁でタブリスを狙ったままもう一丁で空を撃っていた。
「あなたが質問する権利は無いわ。さぁ、質問に答えなさい」
タブリスはしぶしぶ口を開く。
「あの男はルーシー・・・ルーシー・ベルフェゴールだな?」
「だとしたら・・・?」
「なぜレアハンターがこんな村にいる・・・」
レアハンター。
それは数年前に世界中に存在していた犯罪組織の隊員の総称。
グールズと呼ばれた世界中のレアカードを非合法に入手し複製したり密売をしていた組織である。
突然の頭領の失踪でグールズは自然消滅するかと思いきや、世界中に散らばったレアハンターは各方面で集まり、多くの組織が誕生していたのである。
この国にも、そうしてできたレアハンターの組織が存在していたのである。
銃を持つ少女もまたレアハンターであろう。腰にはデュエルディスクが下がっている。
「そんな銃を捨てて・・・デュエルで話をつけないか・・・?」
タブリスの言葉に少女は銃を向けたまま鼻で笑う。
「お前みたいな雑魚と、デュエルする価値などないわ」
「雑魚かどうか・・・やってみないとわからないんじゃないかな?」
しばらくして少女は銃を腰にしまう。
「ふん・・・もうルーシー様の後も追えないでしょう。じゃあね」
「なっ!まて!!」
少女は一瞬にして壁の突起物などを足場に建物の屋根に消えていった。
緊張のほぐれたタブリスはゆっくりネクタイを締めなおす。
「ふぅ・・・やれやれ・・・」
ルーシーと呼ばれる男は銃を持つ少女が時間を稼いでいる間に黙々と村を歩いていた。
そしてルーシーは村の公園を横切る。
そこにはシャティとセドナもいた。
「今度ゆっくり時間があるときにいろんなカードを見たいなぁ・・・」
「いいわよ?いろんな国を見て回って珍しいカードいっぱい手に入れたのよ♪」
それを通り過ぎざまにルーシーは聞き逃さなかった。
「珍しいカード・・・だと・・・?」
鋭い殺気にセドナは感づきルーシーに目をやる。
「あなた・・・何者・・・?」
「・・・・・」
「ルーシー様、こちらにいましたか」
ルーシーの背後から先ほどタブリスに銃を向けた少女がルーシーに駆け寄る。
「この人たちは?」
「・・・例のプロデュエリスト・・・セドナ=ファルネウス・・・」
セドナはその言葉にデュエルディスクを構える。
その口元は若干笑っているようだ。
「私をつけていたのね・・・レアハンター・・・」
ルーシーのコートについている鍵爪のようなデザインのバッチが光る。
シャティが怪しい空気に感づきセドナに駆け寄る。
「セドナ・・・!」
「シャティ・・・彼らはレアハンターよ、危ないから下がって・・・」
「相手は二人なんだよ・・・?」
「大丈夫よ、プロリーグでアジア大会優勝してるんだから」
そうこうしているうちにルーシーが前に出てくる。
「二人対二人・・・まとめて片付けてしまえば良い。タッグでかかってこい・・・!!」
「この"ベレッタ=スプリングフィールド"、ルーシー様の援護をするわ」
ベレッタとルーシーはデュエルディスクを構える。
「"アンティー"だ・・・一番価値のあるカードを提示しろ」
アンティーとは"アンティールール"といい勝者が敗者の持つ最もレアなカードを手に入れられるルールの事。
デュエルする前にお互いカードを提示し、互いの了承のもとに行われるルールで公式ルールでは現在禁止にされているルールなのだ。
セドナがアンティーと聞いた瞬間デッキケースから一枚引き抜く。
「これが私の一番のレアカード"ニードル・ソウル"を提示するわ」
「ボクは・・・"大天使-カマエル-"を提示するよ」
【カード名】ニードル・ソウル
【種類】速攻魔法
【効果】手札を全て捨てて発動する。
自分のデッキからモンスターカードを引くまでドローしてモンスターカード以外のカードをドローした場合全て墓地に送る。
この効果で自分が墓地に送ったカードの枚数分相手のデッキからカードを墓地に送る。
【カードの絵柄】大地に巨大な穴が開いており穴の奥にニードル・ワームの眼が怪しく光っている。
【カード名】大天使-カマエル-
【属性】光属性【種族】天使族【星】7
【攻/守】2500/1800
【効果】このカードの生贄召喚に成功した時、手札又はデッキから星4以下の光属性天使族のモンスターを3体まで特殊召喚できる。
(このターン他のモンスターの特殊召喚は行えない)
このカードと戦闘を行った悪魔族、又はアンデット族のモンスターは破壊される。
【カードの絵柄】4枚の翼で全身に金の鎧をまとった雄雄しき天使。
十字架の絵柄が縫いこまれた旗をつけた槍を右手に、戦う天使に命令を下すラッパを左手に持っている。
シャティとセドナはカードを提示するとベレッタもカードを取り出す。
「私は"リロード・レヴォリューション"を提示するわ」
【カード名】リロード・レヴォリューション
【種類】速攻魔法
【効果】「一ターンに一度」発動できる効果モンスターの効果をこのターンのエンドフェイズまで手札を一枚墓地に送ることでもう一度使用することができる。
【カードの絵柄】ヒゲを生やしたガンマンがリボルバーに高速で弾を込めている。
それを見るとセドナは指を立てて左右に振る。
「チッチッ・・・あなた達からはカードを取らないわ。レアハンターのカードなんていらないもの」
「ふふ・・・後悔するわよ・・・?」
セドナ達のカードを見たルーシーはただ黙って何かを考えているようだ。
「・・・(あれは世界でも数少ないレアカード・・・それにあの金髪のカード、あれは見たこと無いぞ・・・)」
「どうしましたかルーシー様・・・?」
「・・・なんでもない、いくぞ」
こうしてシャティとセドナ、ルーシーとベレッタのタッグデュエルが行われることになった。
そしてシャティとルーシー、彼らの因縁はここから始まるのであった・・・