
KAMUI
10話・変化(後編)
結局最初の戦い以外これといって苦戦は強いられず、
カムイはその圧倒的な炎魔法で同級生をなぎ払っていった。
最終的にシデンと戦う気でいたがシデンは途中で負けていて最後も大してよい試合と呼べる戦いではなかった。
結果、最初のスウィンクルとの戦い以外カムイは苦戦することは無かった。
当然この結果でカムイは魔術大会に1年の部で出場する代表になった。
この大会の代表に選ばれた生徒は通常の授業をせず、大会が終わるまで特別講師と特別授業を受けることになっている。
結局シデンは代表に選ばれずカムイにとってはしばしの安息が約束されるということになった。
「ふぅ・・・」
カムイは購買部などで旅に必要な道具をそろえていた。
町の外には魔物や盗賊がいたりするからだ。
特別講師の授業の一環として北の極寒の地に修行しにいくことになったのだ。
急な事でカムイも珍しく忙しそうに学校中を歩き回る。
ただひとつ問題なのは2年、3年の代表も一緒に行動するということだ。
この場合どう考えても風紀委員は除いておいて明らかにホープは代表だろうということだ。
あの温室での出来事以来二人の間は少し距離があるのだ。
「カムイさん」
「ん・・・!?」
いろいろ考えながら歩いていたカムイは気づかぬうちにホープとすれ違っていたのだ。
表には出さないがカムイは少し動揺する。
「なにか・・・?」
「ふふ・・・代表入り、おめでとうございます」
とても明るい表情のホープにカムイは余計焦ってしまった。
あれだけの騒ぎをしておいてホープは忘れているのだろうか。
それとも許したのだろうか。
ホープがカムイに紙切れを手渡した。
「これは・・・?」
「この星から遠く離れた星にある様々な星の人たちが集まる闘技場で行われる大会の観戦チケットだよ」
チケットにはSS{ダブルS}と書かれている。
とてもシンプルな青と白のストライプ柄で日にちが書かれていない。
「この"SS"っていうのはなんだ」
「闘技場では強さによってランクがあってね、だいぶ昔からの伝統ある戦いを見られるはずだよ」
「そうか・・・」
そう言うとホープはそのまま立ち去ろうとする。
カムイは思わず・・・
「あの・・・」
呼び止めてしまった。
ホープは微笑みながら振り向く。それは裏の無いやわらかい暖かさがあった。
「はい?」
「どうして・・・」
「ボクはただ・・・君が気になってるだけだよ」
「え・・・」
ホープはそのまま立ち去る。
その場に立ったままカムイは黙ってチケットをズボンのポケットにしまい込んだ。
しばらくして遠出の支度を済ませたカムイはホープからもらったチケットを手に取る。
「・・・ん?」
指で少しずらすとチケットがずれてもう一枚のチケットが出てきた。
「これは・・・二人分か」
二人一部屋の寮なので同室の仲間と一緒に見て来いという気遣いなのだろうか。
カムイはシデンの事が頭によぎるがそれは一瞬の事でチケットを持って歩き出す。
そして自然にカムイは温室の前に立っていた。
温室の前に立ったと同時にホープが温室から出てきた。
そしてカムイに気づいたのか万遍の笑みを浮かべて小走りでカムイに近寄ってきた。
「こんなところでどうしたの?」
「え・・・いや・・・」
「とりあえずここじゃなんだしどこか行こうよ」
二人はそのまま歩き出す。
互いに無言だが自然にカムイは自分の部屋に向かっていた。
ホープもまた自然にカムイについて歩く。
二人が部屋の中に入るとホープから口を開いた。
「ボクに何か用事があるのかな?」
「まぁ・・・」
カムイは徐にホープがくれたチケットの1枚をホープに差し出した。
ホープはキョトンとした顔でカムイを見つめる。
「あの・・・一緒に見に行ってくれないか?」
「え?かまいませんけど・・・ボクなんかでいいのかな?」
「先輩の解説がいると思うし・・・」
「そういうことですか」
とてもうれしそうな表情のホープはその1枚のチケットを受け取ると大切そうに制服のポケットにしまいこんだ。
するとホープは部屋を出ようとする。
そのときホープはカムイのほうに振り向く。
「それじゃ、今度の休みの日の朝に正門で!」
ホープはそう言うとうれしそうにカムイの部屋を後にした。
カムイはほっとした表情で早めに床についた。
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