KAMUI

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  6話・天使(後編)  

 「ボクに話ですか?」
カムイは温室にいるホープを見つけた、
ホープは花に水をあげて痛んだ花の手入れをしている。
カムイはベンチに座ると話を切り出した。
 「この前の不審者退治を見ました。」
 「そっか、あの人には悪い事をしたな・・・」

ホープはそう言って落ち込んだ表情をした。
カムイはその気持ちがわからなかった。
ただの他人でしかも学校に侵入した不審者に同情でもしているのかと思ったのだろう。

 「相手は不法侵入者でしょう、ただの・・・」
カムイはそう言うと不機嫌そうな顔をする。
 「確かに、客観的に考えたらそれだけかもしれないね・・・」
 「客観的・・・?」
 「この国は世界一大きくて繁栄してるけど・・・路地裏や工場地帯を見たことはある?」
 「いや・・・」
ホープは少しため息とつくとカムイに悲しげな表情で話し始める。
 「この世界は常に"0"なんだよ、何かを得られる時、必ず何かを失う・・・」
 「どういうことだ・・・?」
 「君にもわかる時がくるよ、それで君はボクに何のようなのかな?そんな事を聞くために来たわけじゃないんでしょう?」
ホープがそういうとカムイはベンチから立つと単刀直入に聞いた。
 「あなたの無詠唱の事を教えてもらいたい、そのためなら・・・」
カムイは短めの呪文を唱えるとカムイの手が炎をまとう。
その炎をホープは悲しげに見つめる。
 「ボクをどうにかしても、無詠唱を会得する事はできないよ・・・」
その言葉にカムイは苛立ちを覚える。
カムイの精神と連動するように炎がさらに荒く燃え盛る。
 「俺にはできないというのか・・・!?」
 「違う・・・できるできないの問題じゃないんだ、ボクじゃないと・・・」
 「特殊な血統だからか?」

カムイがそれを言うと、ホープは驚いたようで表情が固まる。
一瞬だが温室全体が冷たくなった感覚がカムイに襲い掛かる。

 「そっか・・・それを知ってしまったからボクに近づいたんだ・・・」
 「ついさっき知ったが、無詠唱を得るこんなチャンス他には無いだろう」

 「君は違うと思ってたのに、みんなとやっぱり同じなんだね・・・」
 「何・・・!?」

ホープが口を閉ざすと体から凄まじい冷気が辺りに包み込む。
冷風がホープを中心に吹き荒れ辺りの植物は一瞬にして凍りつきバラバラに砕けてしまう。

 「ちっ・・・!(無詠唱ではこっちが不利か!)」
 「ごめんなさい・・・!」

一瞬にしてカムイの前に巨大な氷の壁が出来上がりホープの姿が見えなくなる。
氷の向こうにホープは消えてしまった。

 「逃がすか・・・!!」

カムイはすばやく詠唱すると手のひらから巨大な炎の弾を放つ。
すると巨大な火炎が氷の壁を溶かし始め次第に周囲に水蒸気が充満して視界が悪くなってしまった。

 「二重の罠か・・・、今度こそ無詠唱の秘密を暴いてやる・・・」

カムイがその場から去ろうとすると水蒸気ではっきりしないが3人分の人影が見えた。
その影の方から声がする。

 「魔法の練習にはずいぶんな場所でやってるなぁ〜?」
 「なんだ・・・お前は・・・」
 「先輩にその口の聞き方はきにくわんなぁ・・・まぁいい!教えてやろう!!」

水蒸気の中から金髪のツンツン頭の男子が出てくる。
そして手で髪を軽くかきあげる仕草をすると男子生徒はフッと鼻で笑う。
非常にキザっぽい態度にカムイは呆れて脱力する。

 「俺の名は[キール・ライト]!この学園の風紀委員長にして学園一のハンサム魔法使いさぁ!!」

意味も無くキールの周りにキラキラとエフェクトが入る。
カムイはまったく聞く耳持たないようだ。
あまりの馬鹿さ加減に呆れてため息をつく。

 「・・・で、なんなんだいきなり」
 「貴様、俺のホープをいじめたな?」
 「『俺の』ってなんだ・・・」
 「俺のホープをいじめたお礼だ、たっぷりかわいがってやるぜ!」
 「人の話を聞け・・・」

そういっているうちにすでにキールは詠唱を済ませて魔法を放つ。
手のひらを上にかかげると辺りが暗くなり雷がカムイに襲い掛かった。

 「っ!風紀委員というわりには奇襲が好きなようだっ!」
間一髪雷をかわすと体勢をすばやく立て直し、すぐさま炎を召還しキールに向けて放った。
 「先輩だろうが・・・燃え尽きろ!」
 「ふん・・・この水蒸気の中、炎など怖くも無いわ!・・・トウガ!」
 「あいよぉ〜」
炎がキールの目の前まで飛んできた瞬間、いつのまにかキールの後ろに控えていた生徒の一人がキールの前に立って炎を弾き飛ばした。
青いニット帽をかぶったその生徒の容姿はシデンにそっくりだった。

 「シデン・・・?」
 「あぁ、シデンはオレの弟だが?友達かぁ?」
 「いや・・・」

キールの雷が二人の話に割って入ってきた。
雷は周囲の水蒸気を伝ってかすめるだけでも大きいダメージをもっている。

 「ちっ!俺のほうがだいぶ不利なようだな・・・」
 「貴様ごとき先輩でしかもイケメンのこの俺が負けるはずがなかろう!ハーッハッハッハァ!!!」

キールが高笑いをするとトドメの一撃を放とうと長い詠唱を始めるが、
それを守るためトウガともう一人の風紀委員が守りを固める。
その守りをなかなかカムイは突破できない。

 「これはまずい・・・」
 「トドメだ!くらえぇ!!!」

キールは言い放つとカムイの頭上に雷雲が集まりだす。

 「この水蒸気の中だ!避けても無駄だぞ!!」
 「この野郎・・・」

 「弱い者いじめとは感心しないな・・・」

誰かの声が聞こえ、その瞬間まばゆい斬撃と共に雷雲が真っ二つになり消え去ってしまった。
そして雷雲の切れ目から黒いコートの男がカムイの目の前に降り立つ。
その手には禍々しい巨大な鎌を握っている。

 「お前・・・」
 「大丈夫ですか?カムイ様」
 
黒コートの男は[ヨミ]と言い、[デス]と言うなで世界的に有名な死神で、
カムイの父親代わりをしているヘルの使い魔である。
ヨミの持つ禍々しい鎌はこの世の全てを切り裂くことができると言われている。

 「ちっ!ヘルの使い魔かよ!!」
 「先生に呼び捨てとは風紀委員として自覚が足りないようだ・・・
  さて、どのくらい体に叩き込めば自覚してくれるのかな・・・?」

ヨミはそういうと大鎌を構えてキールを睨みつける。

 「・・・みんな、帰るぞ」
 「あいよっ」

キール達はすぐに立ち去ってしまった。
キール達が何もせず立ち去ってしまうほどヨミ一人に3人でかかっても勝てないという実力の差があるのだ。
カムイは不機嫌そうな顔をする。

 「助けろとは言って無いぞ・・・」
 「私はヘル様に仕えているがあなたはそのヘル様の養子、あなたに仕えているのと同じです」
 「だから別に助けなんて・・・」

するとヨミは無表情のまま鎌を異次元にしまい、その場から消えてしまった。
ヨミの声だけがこだまする。

 「主人が危険なときに黙ってみているわけにはいかないのですよ」

しばらくして水蒸気の霧も晴れていつもの温室に戻ってゆく。
一部の植物は凍って砕けていたり燃えていたりはしたが・・・

 「余計なことを・・・」

カムイは惜しい気持ちを抑えつつ温室を後にした。

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