KAMUI

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  9話・変化(前編)  

相殺しあった巨大な氷柱と火球はフィールドのバリアの中で視界をさえぎる

蒸気と化して消え去った。
互いに位置を確認できない状態で牽制しあう二人。
無詠唱で魔法を連発できるリースは視界が悪い中で手当たり次第に氷柱を作

り出しては放ってゆく。
まったくといって良いほどに手ごたえが無い事に段々不安と焦りがつのって

くる。

 「いったいどこにいるんだ・・・(とにかく今はバリアを背にしたほうが

得策か・・・)」
 「どうした?手当たり次第に氷を飛ばしても俺にはかすりもしないぞ」

カムイはリースを挑発する。
それがこの状況で有利なことだと理解していたのだ。
自分の才能に自信がありすぎるものにとって自分の予想外の戦況にうろたえ

る事はカムイには分かっていた。
さらに対人戦の経験が皆無に等しいリースには更に効果的なのだ。
カムイの挑発にリースはあっさりとつられてしまう。

 「くっ!僕だって・・・戦えるんだ!!」
 「・・・(兄とは大違いだな。馬鹿な奴・・・)」

カムイは以前の戦闘と同じ決め技をする気でいた。
蒸気のあるうちにフィールドに魔法陣を焼きこんでゆく。
リースの放つ氷柱を炎で相殺し、蒸気を保ちながら丹念に慎重に魔法陣を完

成させる。

 「こうなったら詠唱に時間がかかるがフィールド全体を凍らせて・・・」
 「詠唱する暇は無いぞ」
 「え・・・!?」

カムイは一瞬の詠唱で火球を作り出しリースに投げつける。
リースはあっさりその火球をかわすが自分の足元を見て背筋が凍った。
自分の足元に魔法陣の絵柄が見えたのだ。

 「そこを書きたかったんだ、よけずに相殺しておけばよかったのにな」

リースが元いた場所に炎で地面を焼く。
そしてそれと同時に蒸気が薄れて視界が晴れてゆき、フィールド全体が見え

るようになった。
フィールドが見えると同時に地面に刻まれた巨大魔法陣が姿を現す。

 「これはスウィンクルさんとの時の・・・!?」
 「終わりだな」

カムイが魔法陣に触れて詠唱すると魔法陣が赤く輝きだす。
そして周囲が熱気に包まれ一瞬にして轟音とともに大爆発が起こった。
一瞬の爆発でリースはその場に倒れてしまう。
カムイは倒れているリースを背に控え室に颯爽と戻っていった。

 「格が違うんだよ、格が・・・」

倒れたリースの元に教員が駆け寄り外傷がないことを確認して医務室に連れ

て行った。
そしてその戦いを観客席でホープとキールが見ていた。

 「あのカムイって後輩、調子に乗ってやがるな・・・!」

キールは非常に不機嫌そうに眉間にしわを寄せて腕を組んでいる。
その隣でホープはただ黙ったまま座っている。

 「お前の弟だろ?悔しくないのかよホープ」
 「リースには良い経験だったと思えばいいよ・・・」

そう言うとホープは徐に席を立ってどこかへ去ってしまった。
キールはなんだかやるせない気持ちでいっぱいになった。

 「ったく・・・俺がやられてたとしてもそれですませちまうのかな・・・




そして1年の控え室。
カムイが入るとそこにシデンが待っていた。
いやにハイテンションのようでカムイはあまり相手にしたくなかったのだが

・・・

 「なぁなぁ!2回もキメたあの魔法なんていう名前なんダ!?」
 「は?名前?」

唐突な質問にカムイは呆れたそぶりをする。

この世界の魔法はいちいちテレビアニメのような必殺技のようなものも無い

し名前なんて存在しない。
あったとしても分類としての名前で"炎属性上級攻撃魔法・魔法陣タイプ"と

でもなってしまうのだ。

シデンはまるではアニメの主人公と出会った子供のように目を輝かせている


そんなシデンにカムイはあっさりと牽制する。

 「あいにく俺にはネーミングセンスは無いんでね(そんなガキみたいな発

想よく出てくるなこいつ)」
 「へへーン!オレなんてもう決めてるんだもんね!必殺技ー!」
 「あぁそうかい・・・」

本気で呆れたカムイはため息をつくと誰も座っていない長椅子に寝転んだ。
そのままカムイは少しぼやく。

 「お前はいいな、能天気で」
 「いやぁ〜!それほどでもないサ!」
 「褒めてねぇよ、それ以前に突っ込みどころ満載だっつーの」

カムイのそのボソッと言った言葉にシデンはしばらくして何を思ったのか大

いに喜んでいる。
どんな人間でもわかるくらいに異様なテンションで喜んでいる。むしろ泣い

ている。

 「カムイが・・・カムイが立っタ!」
 「は?(こいつ馬鹿か?)」
 「あぁ、いや間違えタ!」
 「何をどう間違えたらそうなるんだ・・・」

さらにシデンのテンションは上がってゆく。
小躍りしながら感動して泣き笑いをしているその様子はかなり奇怪だ。

 「待ってたんだヨ!カムイからのその良いツッコミ!!」
 「・・・は?」
 「いっつもクールな顔して黙ってるからサ!なんだか嬉しくテ嬉しくテ!!」

やれやれと言った感じにカムイがため息をつくとシデンに背を向けてごろ寝をし始める。

 「なぁカムイ〜、そんなにゴロゴロしてて次の試合まで余裕なのかァ?」
 「俺の試合は結構後だからな、休息も必要だろ」
 「そうかァ〜」
 「そうかじゃないだろ、わかったなら静かにしてろ」

そして次の試合までしばらく寝ることになった。
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