魔法少女リリカルキャロ
〜時を翔る魔法少女〜


魔法少女リリカルキャロProjecT

文:Sky-blue
絵:SATOMI 


プロローグ 「時を翔る魔法少女」


それは白い夢。夢を見た。私が見る限りでは視界は全て真っ白だった。夢にしてはとてもリアルに近くて、自分が思うとおりに体を動かせる。そうしていると、耳に誰か女の人からの声が流れてきた。
『今、歴史が改変されようとしています……それはとてつもなく大きくて邪悪な力。私ではどうすることもできない。それによって世界が終わってしまう。』
私は少し耳を疑った。
「それは本当のことなんですか……?でもなんで私に。」
声の主は優しい声で私の質問に答えてくれた。
『えぇ、本当よ。キャロ・ル・ルシエ、あなたは唯一の魔法少女なのです。邪悪な力から世界を守れるのはあなたしかいない。』
何故か唯一のっていう部分を強調されたけれども、私はそれとなく頷いていた。多分現実なら疑問を抱いたままだろうけど、夢の中だというのが私を納得させているんだろう。
『キャロ、あなたに世界を救って欲しい。』
そのまま夢はプツンと切れた。

 朝、起きた時の私はベッドの上だった。周りを見てみるといつも通り何も変わらない。洗面所に行って、歯を磨いているとスバルさんとティアナさんがやってきた。
「おはよ〜キャロ。」
「おはよう、キャロ。」
「おはようございます、スバルさん、ティアナさん。」
歯を磨いている間、夢のことを言おうか迷ったけれど、これはみんなに聞いてもらった方がいいかなって思ったから朝食の時に言うことにした。
今日も朝練が終わった。汗を流すために軽くシャワーを浴びてから朝食をとりに行った。
朝食……というより食事の席は基本的に私たち新人四人が同じテーブルで、別のテーブルでなのはさんとフェイトさん、その間に座っているヴィヴィオちゃん、ヴィータさんが一緒に食べていて、時折八神部隊長がリィン曹長と一緒に四人のテーブルで食べている。
私たち四人は会話を楽しみながら、食事をしていた。スバルさんは相変わらずとてつもない量のご飯を食べていて、エリオ君にも多い量のご飯を盛っている。それを食べるエリオ君もエリオ君だから、やっぱり男の子ってすごいんだなぁ。
そうボーっとしてられないので、すぐに私が見た夢のことをみんなに話してみた。
「うーん……夢っていうのがちょっとアレなんだけど、リアリティのあるっていうところがどうともいえないんだよね。……けど、唯一の魔法少女っていうのは……!」
恐ろしい笑顔をしたなのはさんを見た気がしたが、フェイトさんが苦笑いしながらなだめていた。なのはさん怖いです……。
「で、キャロ。朝起きてから何か変化とかなかったの?」
なだめていたフェイトさんが聞いてきた。
「いえ、特にないんですが……。」
と私がそう言い終わった瞬間
「え……」
「キャッ、どうしたの!?」
いきなり光によって部屋が白く包まれた、みんなの声が聞こえるけど、眩しくて目が開けられない……

 少しの間目を開けられなかった。目が慣れたところで目を開けると、周りにはちゃんとみんながいた。みんなをみると、視線はみんな上のある一点を見つめていた。私もその視線の方向を見てみると、そこには女の人がいた……というよりも幻影が投影されているのか、膝より下は見えなかった。それに加え、多少彼女は見えづらかった。そして何より、私はその女の人の声を聞いた瞬間、わかった。
「おばちゃん、だぁれ?」
ヴィヴィオちゃんの言葉にその女の人は眉をピクッと吊り上げかけたけど、「この子に悪意はない、この子には……」と独り言を呟いて耐えているみたい。
「こらこら、ヴィヴィオ。」
なのはさんは少し苦笑いをしてヴィヴィオに口の前で「しーっ」っと指を立てて注意した。
「あなたは……?」
一旦振り返り、警戒感を帯びた厳しい声でなのはさんはその女性に問いかけた。
「いきなり驚かせてごめんなさい。これはとても緊急性があって、私が違う世界から情報を投影させているの。私の名前はカリスト。」
「あの……もしかして、私の夢の中に入ってきたのはカリストさんなんですか?」
「えぇ、私よ。その時は緊急性がなかったけど、事態が急変してあなたに来てもらう必要が出てきた。だから……」
「あの……」
カリストさんがそう言いかけた時、少し困惑気味な顔で苦笑いしているティアナさんが手を上げた。傍にいるスバルさんはもう頭の上にクエスチョン・マークが浮かんでいる。
「私たちは展開が急すぎて、いまいち事態を把握しきれていないのですが、さっきキャロの話を聞いた限りでは何者かによって歴史改変がされようとしているから、つまりキャロに助けを求めているんですよね?」
「えぇ、そういうこと。」
「なら、キャロだけじゃなくて、私たちが一緒でも大丈夫だと思うんですが……」
「魔法少女じゃないといけないの」
「は?」
いきなりの変な回答にティアナさんは間の抜けた声を出してしまった。一同共々首を傾げている。
「あ、あのーどうしてですか……?」
ティアナさんは表情を強張らせながらカリストさんに聞いた。
「だって、通例こういうお話しって、大きいお兄さん方のためにキャロみたいな可愛い女の子が敵を倒して一生懸命頑張っている姿にキュンときちゃうものでしょ?」
と、カリストさんはさっきからの表情を崩して力説していた。
「……コホン」
重々しいため息をつくなのはさんと、苦笑を浮かべるみんながいた。
「……でも原作者さんは心がキラキラしてれば少女なんです。ってとあるパーティで言って……」
私は一応言い繕ったけど……
「魔法少女は12歳以下限定という決まりよ。」
…………黒いオーラが漂う片隅で、私は色々とこの人は凄い人なんだとこの瞬間悟った。

「で、それが本音と建前の、建前の方なんだけれど。」
「はぁ……」
カリストさんが現れた時からの緊張感は全く持って抜けていた。
「今私に残されている魔力エネルギーと、歴史渡航に関しての条件が合うのはキャロ・ル・ルシエと、エリオ・モンディアルのみが当てはまるの。」
先ほどからの表情を元に戻し、声色も張りつめている。それを察して一同に緊張感が戻った。
「歴史渡航に関しては、まず前提条件が合って、本人と本人同士が出会ってはいけない。出会った後の歴史が狂ってしまうから。そして、その渡航する時間軸というのが、高町なのはとフェイト・T・ハラウオン、八神はやてが小学生だった時。しかも、プレシア・テスタロッサ事件と闇の書事件後の二つの時間軸において改変が行われようとしている。」
「でも、私がその世界の9歳のなのはさん達と会ったとして、その会った記憶というのはなのはさん達にも残るはずだと思うんですが……」
私がそう聞くと、カリストさんは微笑んで答えた。
「良い質問ね。本人同士が会った時には、情報爆発が起こる可能性がうまれて、できないんだけど、記憶消去をすれば大丈夫。結局歴史の経過はあなたが一緒に加わっていることになっているけど、結果から見ると、人の記憶にはキャロという人物がいなくて、高町なのは達が事件を解決した。っていうことになるの。」
スバルさんを除いた全員が頷いた。スバルさんには後々ティアナさんがわかりやすく説明をしてくれると思う。

 それからカリストさんは、準備ができたら思念するようにということと、魔力供給のためにエリオ君は遅れて時空転送をすることを言って、一旦消えた。
元の空間に戻った後のみんなの表情は一者一様でした。狐につままれたような表情をしたティアナさんとスバルさんとエリオ君。『魔法少女』という言葉に関して腹を立てているなのはさんと、それに苦笑いをしながらなだめているフェイトさん。そしてその傍らで「おばちゃんいなくなっちゃったよ?」とカリストさんが聞いたら怒り出すであろうセリフを言っているヴィヴィオちゃん。そして、急に使命を託されて驚いているけれど不思議とやらなければいけないという義務感が私の頭の片隅に出てきた。
 準備をする前に、八神部隊長の所へ報告に行ったら多少びっくりしていたけど、二つ返事で承諾をしてくれた。
そして、準備の時にはフェイトさんが「これは大丈夫?それは?うん……これはよし、困った時はお母さ……当時のリンディ提督に頼るといいよ。……あ、キャロ、替えの服は大丈夫?」
といった具合に心配性な母親のように忙しなかった。
 準備が終わり、転移する時が来た。幻影は出てこなかったけど、カリストさんの声が聞こえた。
「準備はできたみたいね。そこに浮かんでいる懐中時計を持って。時空転移に必要なものだから。じゃあ時空転移開始するわね。」
(歴史改変、私一人では大変だろうけど、後からエリオ君も来てくれる。だから大丈夫。)
「時の門よ開け……我が名の下に於いて命ず――!」
瞬時にどこともなく白い光が現れ、その光に私は包まれた。
魔法少女リリカルキャロ、始まります。