一章 「魔法少女が魔法少女と。」


白い光に包まれてから、いわゆる時空転移にかかる時間はほんの一瞬だった。瞬間移動魔法をかけられたのと同じ感じかもしれない。
目を開けてみると、目の前にはなのはさん達の世界によくある平屋や二階建ての家が並んでいた。ミッドチルダとは似てるけど、ちょっと違う感じ。けど海が見えて、六課の雰囲気とどことなく似ている。
「そういえば、なのはさんからメモ帳を渡されていたんだった。」
過去世界は勝手が違うから、なのはさんがその時・場所にいたので色々とそういったことに関することをまとめてくれた。見てみると、周辺地域の地図と地名や、9歳当時のなのはさん達の写真もあった。
「えっと、まずは……なのはさんに会わないとこれからのことについて始まらないと思うし、なのはさんを見つけよう。」
ちなみに、フリードも連れてきているけど、この世界で姿を見せるとパニックを起こすので持ってきたバッグの中に身を隠している。ごめんね、フリード。

 歩いていると大体それらしい住所が書かれている柱――こっちの世界では電柱っていうんだっけ。それらが立っていた。
「えーっと……ここを曲がればいいのかな……?」
とメモを見ながら歩いていると
「キャッ!?」
どんっと、誰かにぶつかって転んじゃった。
「「いたた……大丈夫ですか?」」
前を見ると、まさに目の前に9歳のなのはさんがいた。
「私の前方不注意で、ぶつかっちゃって、ごめんなさい。」
私は立ち上がって、なのはさんの手を取った。立ち上がったなのはさんを見ると学校帰りであろう、白を基調にしたワンピースのような小学校の制服を着ていた。
「こちらこそごめんなさい。大丈夫ですか?」
こっちを見ているなのはさんは少し心配そうな表情をしていた。
「うん、大丈夫。」
(そうだ、ちゃんと聞かないと)
こっちを見ているなのはさんは不思議そうな表情をしていた。
「あの……お聞きしたいんですけど、高町なのはさん……ですよね?」
案の定、少し驚いたようで不思議そうな表情をしていた。
「えっと……」
カバンのポケットから、管理局所属IDを取り出した。
「時空管理局機動六課所属、キャロ・ル・ルシエ三等陸士です。」
いきなり過ぎてびっくりしているのか、なのはさんは「え、えーっと……」と冷や汗まじりに左頬を指で撫でていた。
 場所を変えて、人通りのない公園で詳しい話をさせてもらった。
「なるほど……要するにキャロちゃんは歴史改変をする人からの妨害を阻止するために来たんだね。」
「うん、そういうことになるね。」
ちなみに、キャロさんって呼ばれるのは何だか慣れないから、互いに敬語とかそういうのを使わないで良いよって言ったら、ちゃん付けになった。それでもくすぐったい感じだけど。
「時空管理局が動き出しているということは相当な犯罪人っていうことになるのかな?」
ユーノ君が言った。ユーノ君と言われたから、あの考古学者のユーノ・スクライアさんの9歳時の姿かと思ったら、フェレットの姿で現れたから私はとてもびっくりした。
「いえ、今回は違って、カリストという謎の人が現れて、私を指名してこっちの世界に来たんです。」
「なるほど……。」
「一応、私はこの世界でのなのはちゃん達の助けをするつもりですが、歴史的な事件や大きく関わることには極力干渉しないつもりです。」
「ということは私たちの未来に関しても……」
「禁則事項です♪」
そう聞かれた時はこう答えればいいっていうのをカリストさんから教わったんだけど、会話の流れ的にちょっと……。二人を見てみると何とも言えない苦笑まじりの表情に、私は「あはは……」と笑うしかなかった。

 それから、私はなのはさ……じゃなくてなのはちゃんのお家にお邪魔させてもらい、ご家族に挨拶をして、色々と事情をごまかして一日だけお泊まりすることになった。
ジュエルシードを探しに行く前のなのはちゃんの表情を見てみると、暗い表情をしていた。聞こうにも聞けない雰囲気で、躊躇っている所で「じゃあ私、今からジュエルシードを探しに行くね。」と言って家を出ようとした。何もする訳にはいかないから邪魔にならないようについていくことにした。
繁華街をなのはちゃんと一緒に歩き回っていたけれども、夕御飯の時間が近いということで、なのはちゃんと私は引き返そうとした。けどその時、魔力流が発動された。自分でもわかるけど、魔力の大きさがひしひしと伝わってくる。暗くなった街中からジュエルシードが一際に目立つ。
「ここからはなのはちゃん、頑張って。」
一応援護魔法を使ってもよかったかもしれないけれど、この時代のなのはさんは大砲撃型のスタイルで……なおかつ精度が良くない。私の援護魔法だと、威力次第ではフェイトさんが危ない。
このことをユーノ君に念話で伝えると、ユーノ君は二つ返事で了解してくれた。その傍らで私は別の魔力を感じていた。おそらく、結界内にいる全員が察知していると思う。みんなジュエルシードが優先事項でそっちに向かうつもりだから、接触する可能性が高くはないと思う。
「ケリュケイオン、お願い」
私はいつも通り、変身をしてその魔力の元へ向かった。

 段々と近づいていくと、発生源はジュエルシードやなのはちゃん、フェイトさん(この時初めて9歳の時のフェイトさんを見たけど、今のフェイトさんとは思えなかった……)が見渡せる位置に近づいていた。そして人影が見えた。
「そこにいるのは誰?」
と私が声をかけると、その人影は素早く逃げようとした。
「フリード、ブラストフレア!」
フリードにも家からバッグに隠してついてきてもらったんだけど、援護タイプの私だと絶対負けるから、ついてきてもらって正解だった。
けど、フリードの攻撃は当たることなく、その人影は消えて行ってしまった。
「やっぱり、今のってカリストさんが言っていた歴史改変をしようとする人……だよね。」
ふと視線をなのはちゃん達が戦っている場所に向けると、レイジングハートとバルディッシュがぶつかり重なって、次元震が……起きた。

 いくらその歴史に極力干渉しないように。と言われても、壊れたレイジングハートとそれを見つめるなのはちゃんの表情を見ていると、胸がとても苦しかった。そしてもしケリュケイオンが傷ついたら……私の両手が少し疼いた。それを振り払うように
「なのはちゃん、お風呂入ろう?」
私は落ち込んだなのはちゃんと一緒にお風呂に入ることにした。

「ユーノ君も、一晩すれば修復するって言ってたし……ね?」
「うん……」
「背中洗うよ。」
機動六課でのなのはさんは毎日私たちのためにメニューを組んでくれて、しかもとても強くて大きな存在だったけど、なのはちゃんはやっぱり私とかと同じ女の子だな。というのを実感した。
ゴシゴシ……
スポンジで背中を洗っていたんだけど、力加減が弱いのかそれか変なのかなのはちゃんは……
「きゃっ、くすぐったいって、きゃんっ」
「えーちゃんと洗ってるのになぁ」
「脇、脇がきゃはは。もう、わざとでしょ……きゃは、ストップストップー」
くすぐったがって笑っているなのはちゃんの表情は少し明るくなったみたい。背中を流してあげて、私が髪の毛を洗ったあと、なのはちゃんの反撃が待っていた。
「え……ちょっとなのはちゃん……?待って……あっ、きゃっ」
「それっ!」
「いや、くすぐったいって、ストッ、あはは、あんっ」
「降参って言うまでやめないよ〜」


「もう……なのはちゃん激しいよ……」
「ブォッ!?」
「ユーノ君どうしたの?」
私はさっきのお風呂のことを言ったつもりだったんだけど、何故かユーノ君は鼻血を垂らしていた。フェレットでも鼻血を垂らすんだね。
なのはちゃんの部屋でお互いに髪をとかしあいながらさっきのお風呂の話をしていた。
「あ、ああ……お風呂で体洗ってた時の話だったんだね……」
なんだかユーノ君は顔を赤らめたような少しびっくりしたような表情をしていた。どうしたんだろう。
「だって、キャロちゃんがくすぐるからいけないんだよー。」
イタズラっぽい笑みを浮かべながら鏡越しになのはちゃんは言った。七分丈でオレンジ色のパジャマがとても可愛らしくてなのはちゃんに似合っている。髪をとかし終わったところでお互い疲れていたし、寝ることにした。寝るところはなのはちゃんと同じベッドで寝ることになった。一緒のベッドで誰かと一緒に寝るということは小さい頃にフェイトさんが添い寝してくれた時以来で、同い年ぐらいの人と寝ること自体は初めてだった。
「じゃあ、電気消すね。」
パチッ
部屋が暗くなって、私の隣になのはちゃんが同じ布団に入って、お互い向かい合う形になった。
「お友達と一緒のお布団で寝るのは、アリサちゃんっていう子とすずかちゃんって子と一緒にお泊まりした時以来だなぁ……。」
「そうなんだ、私はお友達と一緒のお布団で寝るのは初めて。」
さっきまで気付かなかったけど、私となのはちゃんはお友達と呼べるようになった。お友達って意識して呼び合うのは特別なことだけど特別じゃないと思う。お互いを知り合って、名前を呼んで……。儀式なんて必要ない自然なこと。
「そうなんだぁ、こういうのってドキドキするよね。」
暗がりでよく見えないけど、喋っているなのはちゃんの表情はまだ暗かった。例えるなら薄い雲に隠れたお月様みたいに。
しばらく喋っているうちに疲れがあったみたいで、いつの間にか眠りに落ちていた。

「ん……」
時計を見ると午前六時半を少し過ぎたぐらいを指していた。目が覚めると傍らに寝てたはずのなのはちゃんはいなかった。どこに行ったんだろうと疑問に思っていた所でなのはちゃんが帰ってきた。
「なのはちゃん、どこに行ってたの?」
「あーごめん、ただいま。ちょっとお姉ちゃんの朝練を見てたの。」
そう言っていたなのはちゃんの表情はどこかスッキリしたような表情だった。昨日とは全然違う。私の少しホッとしたような表情を見てか、
「……私、決めたよ。」
なのはちゃんの目は、なのはさんのように真っ直ぐな目をしていた。


その夕方、なのはさんはフェイトさんと再び戦いの場に立った。なのはさんは決意や想いを真っ直ぐに、フェイトさんに伝えた。けれどもフェイトさんは応えてくれなかった。けれど、彼女の心には伝わっていると、私は思う。フェイトさんが手にしているバルディッシュを見るとちゃんと修復されていた。
戦いが進むにつれて二人の魔力が大きくなっていくのを感じた。私はそれにつれて焦ったんだけれども、対峙する形になって割り入ることはできないと悟った。二人の間に入ったら、少なくとも私一人では止められない。そして、二人の距離が近づき……
「ストップだ!」
私だけではなくて戦っていた、ユーノ君とアルフもなのはちゃんとフェイトさんがいるはずの場所に視線を向けていた。それを見たユーノ君のセリフが
「あれ……キャロと同じような声をしているな……キャロの弟さん?」
「声優さんが一緒だからって弟とかそういうのは関係ないっ!」
と黒い服を纏った魔導士……クロノ提督(9歳時)が言った。
「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。ここでの戦闘は禁止されている。戦闘行為を停止しろ!」


そこから私となのはちゃんとユーノ君はアースラに入った。(ここで初めてユーノ君が人の形態になってなのはちゃんはとても驚いていた)
「詳しい事情を色々と聞かせてもらおうか。」
まずはなのはちゃんとユーノ君の事情から話し終わり、私の事情を大体かいつまんで話をした。
「……なるほど。でもそれは理解しづらいな。未来のことは話せないのか?」
「……禁則事項です♪」
前の時と同じような仕草でそれを言うと、クロノさんは鼻を押さえていた。傍らにいる女の人、エイミィさんは笑っていた。
「クロノ君ったら〜。キャロちゃんだっけ?そのポーズいただきっ!」
親指を立ててエイミィさんは言った。とてもイタズラっぽい表情だ。
「まったく、エイミィは……。コホン。それで、何か未来から来たという証拠を見せてもらえないか?」
私は当たり障りないところで、時空管理局のIDを見せた。一応生年月日が載っているからこれで納得してもらえるだろう。
「……なるほど。疑ってすまない。」
クロノさんは一礼をして、再び話し始めた。その内容はなのはさんのジュエルシード集めの停止の提言。私の処遇。処遇といっても悪いことではなくて、今後どうしていくのかということの相談。それで相談の結論はどのようになったかというと……
「なるほど。つまり、キャロは時空犯罪者を逮捕するために、この時代に来たというわけか。近い未来のうちに時空飛行が可能な技術ができるのか……」
「いえ、そういうわけではないです。なんらかの魔力で飛んだみたいです。私が住んでいる世界ではまだそのような技術はないのですが……。」
「なるほど。まぁとにかくそこらへんは複雑な事情みたいだな。」
そう頷くクロノさんは一つ下とは思えなく、年上に見えるような雰囲気をもっていた。そういえば私一つ上だったんだ。今更どうかと思ったので私はその後ずっと敬語で話していた。

 それから、なのはちゃんはジュエルシードを集めることを続けると言って、私の時空犯罪者を捜す+逮捕に協力してくれることになった。もちろん、なのはちゃんのジュエルシード集めに支障をきたさない程度に。
なのはちゃんのジュエルシード集めは順調だった。だけど、私の任務の動きは全くなく数日が過ぎていった。
訓練をしつつ、なのはちゃん達、エイミィさん、リンディさんの艦内のお仕事の手伝いをしていた。楽しく思えていたんだけど、アースラのレーダーにフェイトさんとは違う魔力源が引っ掛かった。ようやく私の出番だ。
戦闘に入るまでの間、戦うなのはちゃんの姿となのはさんの姿を重ね合わせて思い出していた。9歳であんなに厳しい戦いを一人(正確にはユーノ君も一緒だけど)で経験して、さらに敵じゃない敵に立ち向かって。とても悩んだと思う、そういった経験があったからこそ今ここにいるなのはちゃんと、今のなのはさんは強いと思う。そんな気持ちを抱きながら私はフリードと魔力源の元へ向かった。
 降り立った場所は、夕闇に染まる建物だった。それはどことなく見たことあるようなないような……。
「あっ、そこって私の通っている小学校だよ!」
アースラにいるなのはちゃんが通信で驚いたような声で言った。大きな白い建物。もう学校には児童は誰も残っていない時間帯のはずだから、進入して結界を張れば敷地にいる先生達にも危害は加わらないはず。
私は、魔力の発する方向へ向かった。その場所は学校のグラウンドだった。これならおそらく、大丈夫だろう。そう思っているうちに結界が張られた。
敵の姿は全く見えない。張りつめる空気に加え、魔力反応が一カ所に定着するんじゃなくて、敵は転々と移動していた。私は神経を研ぎ澄ませて……目を閉じる。
「……フリード、ブラストフレア!」
「キュクルッ!」
移動する敵に焦点を合わせる――
「ファイアッ!」
私の手を正面から右にずれた所に向けて、フリードに指示する。
「ブオォォォッ!」
ドゴーンという音を立てて、シールドが現れ弾いた。それと同時に相手の姿が現れた。
「ふっ……よく当てたね。」
そうやった現れたのは仮面をつけた黒装束の人だった。
「こんなに暗いのに、そんな格好で歩いてたら警察に捕まりますよ?」
「うるさいっ!これは私のポリシーなんだっ」
私のボケに果敢につっこんでくれた。案外面白そうな人みたい。
「そんなボケはおいといて、私を誰だと思って攻撃を仕掛けてきたんだ。」
「……えーっと、地球でよく有名な変態さんですか?」
仮面なのに、こっちから見てるのもわかるぐらいにその仮面の人の顔は怒りに震えているみたいだった。
「……そろそろマトモな話の路線に戻そうか?」
努めて声は冷静に装っているけど、ピクピクと怒っている様子がわかる。
「えーっと、歴史を改変しようとしている人……で合ってますか?」
「その通りだ。」
「でもなんで、この日この場所にあなたは現れたのですか?」
よくぞ聞いてくれましたばかりな表情(仮面なのに何故か表情がわかる)で仮面の人は喋り始めた。
「それはだね……作者の」
「だめぇー!それ言っちゃ作者がすごいへこむからだめー!」
「おっと失礼。これはその場のジョークだ、うん。要は先に邪魔をするものを片づけてから、私の本来の仕事をやらせてもらうことにした。」
今回の敵はすごいおしゃべりな人みたい。今までは何でも語ってくれる敵があんまりいなかったから、複雑な気持ちで戦わないで済む。仮面を何故つけているのかが気になるけど。どちらともなく、適度な距離を取って臨戦態勢を取った。相手の戦闘スタイルはわからないけど、さっきのスピードを見る限り私は不利だった。
『キャロちゃん、今私向かうからそれまで頑張って!』
念話でなのはちゃんがそう言ってくれたのでそれまでどうにか距離を保ちつつ戦うことにした。
『……蒼穹を奔る白き閃光。我が翼となり、天を翔けよ。来よ、我が竜フリードリヒ。竜魂召喚!』
「キュオォーッ!」
私はフリードに乗り、極力不利にならないよう空中で迎え撃つことにした。
「空中に行った所で何ら変わりないよ…………フッ!」
シュッ シュッ
敵の攻撃を避けてみる。攻撃は飛び道具……ナイフみたい。そう思っているうちに、何本も飛んでくる。
『Protection!』
ガンッ ガンッ ガンッ
「……ッ」
思ったよりもナイフの威力が強い。バリアが破られる前に何か手を打たないと……
「守ってばかりじゃあ無駄だよ。ハァッ!」
バアァン!
「キャッ!」
ただのナイフじゃないのがわかるように、シールドが壊れると同時に爆発した。
「フリード、大丈夫?」
「ギュオォォ」
大丈夫なのを示すために、バサバサと翼をばたいて示してくれた。よし、ひとまず、この状況を打破するためには攻撃を……。
「フリード、ブラストレイ!」
「ギュオオォォォッ!」
「――ファイアッ!」
ゴオオオォォォッ
ドガアアァァァン!という大きな音を立てて仮面の人に命中したみたい。
「くっ……なかなか良い攻撃だ。悪くない。」
「やっぱり、守りが堅い……。」
このままじゃ、埒が明かない。そう思った時、
「ディバインシューター、シュート!」
ガァン ガァン!
「なのはちゃん!」
なのはちゃんが増援にきてくれた。肩にはフェレットモードのユーノ君も一緒にいる。
「遅れてごめんね!」
片手でゴメンのポーズを作ってなのはちゃんは言った。
「ううん、全然大丈夫!」
そう言って仮面の人を向くと、さっきの攻撃をものともせずにいた。
「仲間か……まぁいい。二人だからといって大したことない。」
仮面の人はまだ余裕があるみたいだった。多分、なのはちゃんのデータは知っているみたい。けど、私のデータは知っているんだろうか……。
(なのはちゃん、聞こえる?)
(うん、聞こえるよ?)
(作戦を思いついたんだけど…………こういう作戦はどうかな?)
私が念話でなのはちゃんに伝えると、二つ返事でOKサインを出してくれた。
「ユーノ君、一旦キャロちゃんの方に乗って後方援護よろしく!」
「わかった。」
今の状況としては、仮面の人に対して前線はなのはちゃん一人で、後方に私たちとユーノ君。三人(正しくはフリードも含めて三人+一匹)で、バックス型が二人に対して本来ならセンターガードの役割であるなのはちゃんがトップフォワードになる。多分今のなのはちゃんはそういったポジション意識はないと思うからわからないと思うけど、少し大変になると思う。けど、今言った作戦ががっちりはまれば、いける……!
「おや、高町なのは……君が前に出てくるのかい?」
そう言いつつ、仮面の人はナイフを投げてくる。それを避けながらも、なのはちゃんは反撃を放つ。
シュッ シュッ シュッ
ドンッ ドンッ ドンッ
そうやって戦っている最中にもどうにか敵を妨害するために必死にブラストフレアを何度か放つ。それにも仮面の人は対応してきて、なのはさんだけでなく私たちにもナイフを放ってくる。それを守るようにユーノ君がバリアを張る。
「……っ、なかなか強いね、この人。」
ユーノ君のバリアはそれでも強かった。多少の衝撃で済むぐらいで、壊れることはなかった。けど、それにしても気に掛かるのが、敵の攻撃がまだ一種類しか出ていない。多分何か手の内があるのかもしれない。
(なのはちゃん、まず作戦Aいくよ!)
(わかった。)
ひとまず、敵のシールドをうまく破るためには、一つ。
「フリード!」
「ギュオォー!」
(キャロちゃん、こっちはもうOK)
(わかった。カウント5、4、3、2……)
「ファイアッ!」「シュートッ!」
同時にブラストフレアとディバインシューターを放つことで、打撃を与えられると私は思った。その通りに……
ドゴオオオォォォンッ!
「ぐあぁっ」
良い感じにヒットしたみたい。煙が上がると仮面の人はダメージを受けながらも立っていた。
「ぐ……なかなか強い…………だがそれがいい。」
この状況でもまだ不適な笑みを浮かべていた。やっぱりまだ何か裏があるみたい。
「なかなかやるな……多分彼女、キャロ君は薄々気づいていると思うのだが、私はまだまだ本気ではないのさ……ふふふ。」
その笑い方はなんだかあの人〈ドクタースカリエッティ〉を見るみたいで心がざわついた。
「真の悪役というのは、何枚も隠れたものをもつことによって強いのだよ……!」
そうやってどこから取り出したのか、杖を持っていて、周りにはさっき持っていたナイフが浮かんでいる。
「なのは!気をつけて!」
「うん、わかってる。」
仮面の人は杖を振ると、ナイフには炎がつきこっちに向かってきた。心なしか、速度も速い。
「我が乞うは城壁の守り。若き魔導師に、清銀の盾を。」
『Enchant Defence Gain』
「キャロちゃんありがとう!」
『Protection!』
グワァン!グワァン!
鈍い音を立てて炎をまとったナイフは弾かれた。
「何!?」
攻撃をした仮面の人は驚いていた。……つまりこれはいける!
しかし、それをわかった途端、仮面の人は私に狙いを定めてきた。ある意味、これも予測していたことで……
「我が幾多もの鋭刀よ……舞え!」
「なのはちゃん!」
「OK……ディバインシューター!」
『Divine Shooter Full Power!』
元からチャージしていたなのはちゃんのディバインシューターがまとまった軌道を描き、こっちに向かってくるナイフに対してぶつかり合って……
ドゴオオオォォォン!
相殺し合う。その合間を見計らって
「我が求めるは、戒める物、捕らえる物。言の葉に答えよ、鋼鉄の縛鎖。錬鉄召喚、アルケミックチェーン!」
「な、何!?」
見事に仮面の人は罠にかかっていた。どうにか鎖を外そうとしているけれども、そうならない。
「なのはちゃん、大丈夫?」
「大丈夫!キャロちゃんよろしくっ!」
なのはちゃんとアイコンタクトを取ると、私はなのはちゃんに極力負荷をかけないための一つの方法、補助方法を選んだ。スターライトブレーカーを放つと将来のなのはちゃんだけじゃなくて、後の決戦を控えたなのはちゃんにはとてつもない負荷になってしまう。だから、それを考えた上での策。私は詠唱を開始する……。
『Boost up Barret Power』
『Accept』
「ありがとう、キャロちゃん。いくよ、レイジングハート!」
『Yes, my master!』
「ディバイーン……バスターッ!」
「ふ……そういうことだったのか……。良い技だ。」
ドガアアァァァァァンッ!
多分そこまでなのはちゃんも魔力を使わないで、ディバインバスターを放ったハズだけど、凄まじい威力だった。さすがは、未来の不屈のエース……。間近で見るだけでも本当に凄かった。
しかし、煙が上がった所を見ると仮面の人は跡形もなく、いなくなっていた。
「あ……逃げられちゃった……。」
「相手も一枚上手だったみたいだね……。キャロちゃん、どうする?」
少し心配そうになのはちゃんは私の顔をのぞき込んでいた。
「……うん、きっと大丈夫。多分……」
と言った所で
『キャロ、お疲れ様。』
カリストさんの声が聞こえた。多分見ていたのであろう。
「キャロ、この声の人は?」
「あぁ、ユーノ君。前に話したカリストさん。」
「なるほど……」
腕組みをしながらユーノ君は答えた。フェレットモードで腕を組んでいると可愛らしい。
『なのはさんの攻撃を受ける前に敵は時空跳躍をしたみたい。多分もう次の時代に行ってると思うわ。次の時代の転送魔法をかけるから、懐中時計を出して。すぐ行きましょう、キャロ。』
「なのはちゃん、ユーノ君。あとアースラの皆さん、そうみたいです。」
「そうなんだ……展開が急すぎて把握しづらいんだけど……わかった。」
(カリストさん、記憶のほうは?)
(まだ、大丈夫よ。次の時代に……消すことになっちゃうけれど。)
「なのはちゃん、また会おうね!」
「え、本当?また会えるの?」
「うんっ。またお世話になるけど、よろしくね。」
戸惑っていた表情だったなのはちゃんだったけど、安心した暖かい表情にもどった。そうして握手を交わすと、
「「また会おう!」」
そうして、私は白い光に包まれた。