二章 「Before but After」


再び、転送されると目の前にはさっきまでいた同じ地球の景色。けど、少しじめじめしていて暑い。日本特有の気候、梅雨。雨は降ってないけど、曇りがちな天気でグレーの空が広がっている。
着いたのはいいけど、どうすればいいのか迷っていた。こういう時はなのはちゃんがいるであろう、なのはちゃんのお家に行けばいいのかな。
迷っていられないから、私はすぐさま行動に移していた。少しだけ慣れてきた景色。私が過ごしている世界とは違う世界だけれど、軒並みってすごい整然としてて綺麗といったら違うかもしれないけど、独特な感じ。
歩いていると、進んでいる方向の向こう側に金髪のツインテールを結んでいる女の子がこちらに歩いてきた。……ってあれってフェイトさんの子供の頃!?今のフェイトさんってすごく大人びてるから、この時代の制服を着ているフェイトさんって可愛すぎます!……あれ?鼻からつーと何か……って鼻血?
そう思って、鼻を抑えようとしていた所をフェイトさんが気づいたらしく、こっちに近づいてきた。
「……大丈夫?」
そう言ってフェイトさんはティッシュを差し出してくれた。やっぱりフェイトさんは優しい……って最初の出会いがこれって恥ずかしい……。
「……?顔が赤いけど大丈夫?」
「い、いえっ!大丈夫ですっ。ありがとうございます!」
少し慌てつつも、もらったティッシュで鼻を抑えた。少し視線を上げると心配そうなフェイトさんの顔が見える。
「私の名前は、フェイト・テスタロッサっていうんだけど、あなたのお名前は?」
「……キャロ・ル・ルシエです。」
あぁやっぱりと納得したような表情でフェイトさんは軽く頷いた。……もしかして時空渡航のことがフェイトさんにはバレてるの……?
「服装が、ここ(地球)のとは違うから、おかしいなって思ったんだ。それと……あの時いたよね……?」
あの時というのは、ジュエルシード集めをしていてなのはさんと衝突していたあの戦闘の事を指しているんだろう、少し表情が曇っていた。
「……はい。そうです。」
多分時間軸では同い年なんだろうけど、フェイトさんはフェイトさんだからフェイトさんも敬語になってしまう。……あれ、ちょっと自分で何を言ってるのかがわからなくなってきた……。……それはおいといて
「あの、なのはちゃんは知ってますよね?」
「うん、そうだけど?」
「なのはちゃんに話せば一発で話が通じると思います。」
そんなこんなで、なのはちゃんの家に向かうことになった。ちなみに、私が歩いていた道はなのはちゃんの家から真逆の方向に進んでいたらしく、あやうく海鳴市の外に出るところだった。
なのはちゃんの家の近くにいくと、女の子と、ポニーテールに束ねたピンク髪の背の高い女の人が家の呼び鈴を押そうとしているところだった。
「はやて、シグナム!」
……もしかして。
そう思った通りに、振り向いたのは八神部隊長(子供の頃)とシグナムさんだった。シグナムさんは変わらない感じだった。
「あぁ、フェイトちゃん。フェイトちゃんもなのはちゃんの所に行くところだったん?」
ほんわかしたような優しい口調は昔から変わらずだった。
「テスタロッサ、隣にいる女の子は?少なくとも、日本にいる子には見えないのだが。」
キリッとした口調はシグナムさんそのものだった。少し、私のことを警戒しているような表情にも見えて少し視線を合わせづらかった。
「シグナム、表情が硬くなってる。恐がってるから。」
フェイトさんがそう言うと、すまんと言って、シグナムさんは軽く目を閉じて咳払いをした。
「……えっと、キャロ・ル・ルシエです。その……シグナムさんがおっしゃられている通り、違う世界出身です。詳しいお話しはなのはさんとするので、その時によろしいですか?」
そう言って、呼び鈴をシグナムさんが押して、私たちはなのはちゃんのお家に入っていった。
 私がなのはちゃんと対面すると、互いに抱きついて久し振りだね。という言葉をかけあって再会を果たした。少し、視線が突き刺さっていたけど、あまり気にしたら駄目だよね……?
それから、なのはちゃんの説明もつけた私がここにいる理由と経緯の説明をした。みんなこういった事態には慣れているようで、相槌を打って理解してくれた。
「……そういえば、その仮面の男っていうのは一人だったの?」
疑問に思っていたのか、フェイトさんは言った。
「うん、そうだったよ。魔法もナイフだけで、バインド魔法もしてこなかったから、ロッテさん達じゃないと思う。それに、私達が初めてロッテさん達と会ったより前の事だから。」
似たような人が、闇の書事件の時にいたみたい。
少し仮面の男の正体についても気になっていたけれども、ひとまずは相手が出てこないことには私は先に進めない状況にある。
「……多分、敵は近いうちには出てくると思います。けど、それまでをどうするかなんですけど……」
「じゃあ、私達のお家に泊まりましょう。」
そう言ったのはリンディさんだった。多分その笑顔を見ている限り、断ることはできないんだろう。……というか、いつの間になのはちゃんのお家に?
一応断りの言葉を言ってみたけど、全く通じなかった。

そして、その夜。
「キャロは、10歳だっけ?」
「はい、そうですよ。」
フェイトちゃんの部屋に泊まることになった。急遽だったこともあり、フェイトちゃんと同じベッドで寝ることになった。今は一緒にベッドに腰掛けてお話しをしている。
「じゃあ私と同学年だね。」
あれ……?
「フェイトさ……ちゃんは9歳で小学三年生じゃなかったっけ?」
フェイトちゃんとも、さん付けで呼ぶんじゃなくて、違う呼び方で呼ぶことになった。子供の頃のフェイトさんはフェイトさんだけど、どことなく雰囲気とかも執務官のフェイトさんに似ていて、さん付けが未だに残る。
「ううん、小学四年生だよ。歳は……作者さんの都合……というか、法規的措置によって9歳……かな?」
とてつもなく、この小説の作者にツッコみたいようなセリフが出てきたけど、一学年下だと思っていただけに……ああ、そういえば闇の書事件後の6月ということは一年経っているんだね。
「そうなんだ。フェイトちゃんと同学年かぁ。」
「……ならさ、なのはとはやても同学年だからさ、一緒に学校に行かない?」
「え?」
急な提案に私はびっくりした。一緒に行けるのはそれもそれで面白いかもしれないけど……
「でも、大丈夫なのかな?」
「それなら、大丈夫よ。」
と、開いていた扉からの声の主はリンディさんだった。リンディさんはやはり不敵に微笑んでいる。やっぱりどうにかしちゃうんだろうね……。それと同時にこの小説の作者の暴走ぶりに、カリストさんが重なった。
「フェイトちゃんも、途中で転校してきたっていうことだし大丈夫よ。そこらへんは私に任せて♪」
リンディさんはウィンクをして、部屋から離れていった。短い時間の中で展開が早すぎるんだけれども、学校に一緒に通えるというのはとても楽しみだった。そして、その後はフェイトちゃんと、お風呂から上がってきたアルフさんと一緒にお話しをして、途中で切り上げてベッドの中へ入った。
ベッドの中で繋いだフェイトちゃんの手はとても温かかった。

そして、次の朝。
「フェイト、キャロ、おはよー」
アルフさんの声で私は目を覚ました。起きあがろうとしたんだけれども、何かが私の胸元に乗っかっていて……ってフェイトちゃん!?
「すー……すー」
昨日の夜は、手を繋いでいただけなのにいつのまにかフェイトちゃんが私に抱きついているような体勢になっていた。
「フェイト、キャロ、起きてる?」
「あ……アルフさんおはようございます。」
動きが取りづらい状態だから、ひとまず顔を上げて挨拶だけをしてみた。多分誰がどうみてもこの状況はおかしいと思うんだろうなぁ。
「……あ、もしかしてフェイト?」
大体の状況を見てアルフさんは察したんだろう、アルフさんは掛け布団を剥ぐと
「すー……なの……は……すーすー……ダメだって……なのは……」
なんだかとてつもなく、凄い夢を見ているようだった。掛け布団を取られてから、フェイトちゃんの抱きしめる力がさらにかかっている。
「もう……フェイトったら、なのはちゃんとお泊まりをして以来、一緒のベッドに入るとこんな感じなのよ。」
……なのはちゃん何をしたの?と、激しく疑問に思ったけど、今はそれより起きないと。
「フェイトちゃん、朝だよ。起きて。」
「ん……ふあ……おはよう……」
少し眠たげな表情でフェイトちゃんは起きた。
「フェイト、また抱きついてる。」
少し苦笑い気味の表情でアルフさんは言った。抱きつき癖っていうのかな?そういうのがフェイトちゃんにできるとはアルフさんは思っていなかったんだろう。
「あ……キャ、キャロごめん!」
バッ!と凄まじい勢いでフェイトちゃんは離れた。恥ずかしげに頬を赤く染めている。
「本当にごめんね……。」
すまなさそうな顔でそれを見ているとこっちも謝らなくちゃいけないぐらいに、フェイトちゃんは謝った。
「フェイトちゃん、大丈夫だから。……それに学校もあるから急がないと……ね?」
と言って、改めて気づいたんだけど、私も学校に行くことになったんだっけ。手配するってリンディさんは言ってたけど……大丈夫なのかな。
そう思ってリビングに行くと、
「おはよう、キャロちゃん。」
とても爽やかな笑顔でリンディさんが出迎えてくれた。その両手には大きな長方形型の箱があった。
「はい、これ。」
リンディさんが箱を開けると、そこには真っ白な、なのはちゃんが着ていたあの制服があった。……まさか着れるとは思わなかった。
フェイトちゃんの部屋で着替えてみるとピッタリだった。鏡でどんな感じか見てみた。いつもは、陸士部隊の制服とかでピシッとした制服だから少し窮屈だけど、ワンピースだから窮屈じゃなくて楽。
「あ、キャロも着替えたんだね。」
振り返ると、制服に着替えたフェイトちゃんがいた。別の所で着替えていたみたい。フェイトちゃんもとい、フェイトさんは執務官の服とか普段の服装は黒い服が多いから、こういう白を基調にした服を着てるととても新鮮で、とても可愛らしい。
それから、朝ご飯をごちそうになって学校の支度をして家を出た。

家を出るとすぐ近くになのはちゃんのお家があるから、なのはちゃんを迎えに行ってそれから学校に向かう。フェイトちゃんとなのはちゃんはいつもそうしているらしい。
「おはよう、フェイトちゃん、キャロちゃん。」
「おはよう、なのは。」
「おはよう、なのはちゃん。」
挨拶を交わして歩き出す。
「そういえば、よく昨日の今日で色々とできたよね。」
なのはちゃんも手配の早さに驚いているみたいだった。それだけ、リンディさんの手腕の凄さと管理局の力が裏で動いているみたい。何だか犯罪みたいな感じがするけど、これもツッコんだら負けなのかな……?
学校に着くと、職員室に行かないといけないので、なのはちゃんとフェイトちゃんに連れて行ってもらった。
職員室に入ると書類とかプリントが積み重なった机がたくさんあって、先生達が授業の準備や話をしていたりした。
「4年1組の高町なのはですけど、○○先生いらっしゃいますか?」
と、なのはちゃんが言うとその担任の先生がこっちまで来た。女の先生みたいだ。
「先生、おはようございます。」
「おはよう、高町さん、フェイトさん。で、この子がフェイトさんのお母さんから昨日連絡が来た、キャロさんね?」
「はい、そうです。」
担任の先生は微笑むと、一枚のプリントを渡してくれた。それを見ると『じかんわり』と書いてあって、表の中には科目が漢字で書いてあってその上にふりがなが振ってあり、漢字の読めない私には助かった。
「これが私の受け持ってるクラスの時間割表ね。あ、高町さんとフェイトさんはそろそろ授業が始まるから教室まで戻ってね。」
先生がそう言うと、はいと言って二人は教室へ戻っていった。
「キャロさんの生まれはどこなの?」
「あ、えっと、アルザスです。」
二人が出たあと急に質問をされたので思わずこっちの地名を出してしまった。知らない地名を出されたらおそらく困ると思ったけど……
「あぁ、フランスね。」
あれ……
「じゃあワインとかそういうのは……ってまだ大人じゃないから飲めないわね。」
と先生は笑った。そういえば、こっちの世界にもアルザスという地名があるというようなお話しを昔なのはさんがお話ししてくれたような気がする。
そうしているうちにチャイムが鳴り、出席簿とチョーク入れを持って準備万端になった先生の後ろを私はついていった。

「えー急なお知らせだけれども、新しく転校生が来ることになりました。」
先生のこの一言に教室中はわーっとなった。廊下で立っている私は少し緊張していた。
「フェイトさんのお家に一時的にホームステイをしていて、短い期間だけど皆さん仲良くしてあげて下さいね。じゃあ、キャロさん入って下さい。」
ドキドキして少し教室のドアが重く感じた。ドアを開けて先生の近くまで行くと「自己紹介よろしくね。」と言われて、みんなの前に向いた。少しドギマギしながら視線を回すと、なのはちゃんとフェイトちゃん、はやてちゃんの三人とも微笑んでくれた。これで肩の力が抜けてくれて、自己紹介はちゃんとできた。
席は先生がなのはちゃんの隣に座るように言ってくれたお陰で授業とかに困ったことはなかった。

そして、休み時間。
なのはちゃん曰く、転校生への洗礼と言われる質問攻めが待っていた。
「ねぇねぇ、キャロちゃんってどこから来たの?」
「日本語上手なんだね。」
「音楽とか聞く?」
とかとか、その他たくさん。答えるのが大変だったけど、波が収まってくれたので助かった。そのタイミングを見計らってか、フェイトちゃんとはやてさ……ちゃんと……アリサさんとすずかさん……?
「初めまして、月村すずかって言います。キャロちゃんよろしくね。」
「よろしくね、キャロ。私はアリサ・バニングス。」
「こちらこそよろしく。すずかちゃんにアリサちゃん。」
軽い挨拶を交わすと、フェイトちゃんが声をかけてくれた。
「やっぱり、質問攻めに遭っちゃったね。私も転校してきた時は大変だったから。」
「私も復学したときはそうやったなぁ。まぁそういうのもあって、緊張も抜けたんやけどな。」
少し苦笑いをしながらフェイトちゃんとはやてちゃんは言った。そのまましばらく話しているうちにチャイムが鳴って授業が始まった。
そして、帰りのホームルーム。
「来週の体育ではプール開きをやって、しばらく体育の授業は水泳の授業になるから、皆さん水着と水泳帽を忘れないようにして下さいね。」
はーい。という声を聞いてから先生は「じゃあ今日はこれで。日直号令お願いします。」と言って、今日の学校の授業は終わった。
水泳かぁ……私そういえば泳ぐのは苦手だったんだよね。フェイトさんに泳ぎの練習をちょこっとだけしてもらったけど、そこまで泳げないし……。
そう思ってる所で、なのはちゃんが声を掛けてきた。
「お疲れ様。どうだった?」
「うーん、国語の授業はやっぱり大変だったかな。」
「漢字とかもあるから、そうだよね。……あ、そういえばキャロちゃんは泳げる?」
「私、泳ぎは苦手なんだよね。」
その言葉を聞いて、なのはちゃんは、ぱぁと表情を輝かせて、私の手を握った。
「もしかして……なのはちゃんも?」
うんうんと首をコクコク縦に振った。
「よかったぁ……水泳の時は一緒によろしくね。」
そうして、教室を出て校門でアリサちゃんとすずかちゃんは車に乗って別れて、なのはちゃんとフェイトちゃんとはやてちゃんの三人で下校することになった。学校では話しづらい話(魔法のこと)が話のメインになった。
「キャロちゃんが使う魔法ってどんなん?」
「えっと、竜使役と補助魔法だね。」
ほー。と珍しそうな表情ではやてちゃんは言った。
「じゃあキャロは完全に後衛型かぁ……。この四人でも前衛が少ないから少し大変そうだ。」
考えてみたら、フェイトちゃんはミドルレンジを中心とした前衛型。なのはちゃんとはやてちゃんはロングレンジ・アウトレンジを中心としたセンターポジション型。なのはちゃんは前の戦闘を見ている限り前衛もできるみたいだけど。それで私は完全なフルバック。
「キャロちゃんと一緒に戦うの面白そうやなー。」
とはやてちゃんは言った。けど、三人ともこの歳でAAAクラス以上だから凄い足手まといになりそうな……。
そうやって話しているうちに、はやてちゃんは家への分かれ道で別れた。そのままフェイトちゃんの家まで三人で帰った。
「ただいま。」
と玄関に上がると出迎えてくれたのはエイミィさんだった。
「おかえり〜。おっ、キャロちゃん久し振りだね。」
「久し振りです。」
エイミィさんも変わらず元気いっぱいな感じだった。
「エイミィ、お母さんは?」
靴を脱ぎながら、リビングに入っていく。
「あぁ、リンディさんなら管理局のほうまで行ってるよ。」
リンディさんが管理局に行っている代わりにエイミィさんがこっちに戻ってきているようだった。
「そういえば、キャロちゃん。またこっちの時代に来たってことは……」
「あ……それは」
そうです。って言おうとしたのに
「禁則事項?」
「違いますって」
エイミィさんはあのポーズをやっていた。否定しながらも思わず笑ってしまった。
「あはは、冗談冗談。」
笑いながら、エイミィさんはキッチンへ行き、お茶を出している。
「あ、そうだエイミィさん。お願い事があるんですけど……」
「なになに?」
「えっと、来週から学校の授業で水泳の授業があるみたいで、水着を用意しなくちゃいけないんですけど……」
あぁそういえばそうだったね。と横の二人が頷いた。
「あぁそっか。リンディさんがいないから、私に頼むしかないもんね。」
お盆に人数分のお茶を乗せてエイミィさんは言った。
「そういえば、水着って指定あるの?」
「うん、学校指定の水泳用水着があるよ。」
なのはちゃんがそう言うと、エイミィさんはなんだぁ。と少し残念そうな声をあげた。
「指定がないなら、男子を悩殺するためのヒモビキニを買ったのに……。」
「小学生にそんなのを着せないで下さい!」
危うく凄まじいものを着させられるところだった……。
「でも、スク水かぁ……」
エイミィさん、健全な目で見て下さい……。

 そうして、水泳の日になった。
プールの授業は全クラスの合同授業になっているらしく、プールの周りにはクラスごとに固まって座っていた。
「これから、水泳の授業を始めます。Aクラスの人はあっちのところに。Bクラスの人はそっちに。それでCクラスの人は私の所まで来て下さい。」
水泳の授業は泳げる人とかとのレベルが分かれていて、Aが凄い泳げる人(フェイトちゃん、アリサちゃん、すずかちゃん)でBは少し泳げる人。Cはそれ以下の人。私となのはちゃんとはやてちゃんは仲良くCクラス。
屋外プールだけど、設備がとても凄くて25mプールが10コースもある。Aコースの人達は4コース使って早速競争を始めていて、とても盛り上がっている。一方のBコースはそれぞれ泳いでいたり、先生にフォームを見てもらっているみたい。
それで、私たちCコースはというと、すごいほんわかした雰囲気で、先生に泳ぎ方を教えてもらっていたり、ビート板で泳いでいる人もいれば、一人で泳いだり、泳げなくて歩いている人もいる。私たち三人はそれぞれ手を取り合って泳ぎの練習をしていた。
バシャバシャバシャ
「キャロちゃん、ちゃんと泳げてるよ。」
「身につくの早くてえぇなー。」
手を取って引っ張ってくれている二人が言った。そんなことないと思うけどなぁ。
「じゃあ次ははやてちゃんね。」
そう言って交代した。
バシャバシャ、バシャバシャ
「そうそう。はやてちゃんもちゃんと泳げてるよ。」
「ホンマか?」
はやてちゃんは少し嬉しげな表情で顔を上げた。
そうして、泳ぎに慣れてきた私たちは人が少ないコースを使って補助なしの、けのびで泳いでみることにした。コースの半分ぐらいの所に二人が立っていて、そこまで泳ぐようになっている。
「キャロちゃん、無理しないようにね!」
「うん、わかってるよ。」
壁を蹴って泳ぎ始めた。
バシャバシャバシャ……ぱっ……バシャバシャバシャ……ぱっ
バタ足をしながら顔を上げて息継ぎをする。とても順調にいっていた。よし、もう少し……!と思った所で。
ピキッという、張るような音がして足が動かなくなった。あれ……と思った時にはもう溺れて意識がなくなっていた。

……あれ?私どうしてたんだっけ。
そう思って目を開けると心配そうな顔をしたなのはちゃん達の顔があった。
「キャロちゃん、目が覚めたみたいだね。大丈夫?」
とすずかちゃんが言った。とても心配そうな顔をしている。
「うん、大丈夫。……もしかして私、溺れてた?」
みんな、うんと頷いた。大変なことをしちゃったみたいだ。
「キャロが溺れたのも大変だったんだけど、その後も大変だったんだからっ。」
少し困った表情でアリサちゃんが言った。その困ったということとは……
「キャロが溺れてから、それに気づいたフェイトがすぐさまに飛び込んで、あたふたしていたなのはとはやてより先にキャロを引き上げたの。それで上に上げて五人で少しどうしようっていう風になって。それですぐに人工呼吸をしようってことになってね。
最初はそれに気づいた私がしようとしたんだけど、四人ともやるって言い始めて……。それで色々あって、何故かフェイトがやることになって、人工呼吸をしたってワケ。」
大体の事情をアリサちゃんが説明してくれた。……ってつまり……
ふとフェイトちゃんを見ると、赤くなった表情でうつむいていた。傍らのなのはちゃんとはやてちゃんは何故か「したかったのになー」と少し残念そうな表情をしていた。
「で、でも……フェイトちゃんが助けてくれなかったら……ね?」
顔を赤くしたフェイトちゃんを見たせいで何故か私も慌てていた。慌てる必要なんてないのに。
「あーキャロちゃんまで顔赤くしてるー。」
「お、照れてる顔もかわえぇなぁ。」
なのはちゃんと、はやてちゃんに顔が赤いのをからかわれつつ、そんなこんなで初めての水泳の授業はこんな感じで終わった。

 水泳の授業が終わってからというものの、これといったことは起こっていなかった。ただ、水泳が終わってから、その日はフェイトちゃんと顔を合わせると少し気まずいような空気が流れていたんだけど。
そろそろ、何か起こるんじゃないかなとそう、教室でぼーっと考え事をしていると。
ふにゅっ
「ひゃうっ!?」
後ろから誰かに胸を揉まれて思わず変な声が出ちゃった……。ってこういうスキンシップをするのは……
「はやてちゃん!」
機動六課でもこういったスキンシップをたまに八神部隊長がするから、何となく予想はついていたけど、まさかこの歳からやっているなんて思わなかった。
そのはやてちゃんとはいうと、「すまんな〜」と笑いつつ両手を合わせて謝っている。……もう、はやてちゃんったら……。
「それで、キャロ。」
「うん、何?」
はやてちゃんが教室の時計の針を指しながら
「もう、お昼休みやで?」
あ……。考え事してたらいつの間にかお昼休みになっていた。取っていた板書も途中のままだった。
「悩んどらんで、昼飯食べてそれから考えよう、な?」
手を引かれつつ、みんなのところへ行き一緒にお弁当を食べた。はやてちゃんが大人っぽくてしっかりとしているところはまたこの時からなんだと思った。
そう思っているさながら、はやてちゃんはなのはちゃんやフェイトちゃんにも同じように胸を揉んでいっていた。まさに疾風の如くセクハラをしていくといった表現があっていた。それに私は苦笑いを浮かべるしかなかった。


「……もうここは相手を無理矢理引き出すしかないのかな?」
となのはちゃんが提案した。
今いる所は私が居候させてもらっているフェイトちゃんのお家。
「確かに、それもありやなぁ。」
はやてちゃんと同様に私となのはちゃんは頷いた。実際の所このまま待ち続けるとなるといつになるのかわからなく、現れた時への対応が多少違う。
そこからは話が早かった。四人で作戦を練って、ポジションの確認をしてその日を費やした。
選んだ日時は作戦を練った週の土曜日の夜。場所はエイミィさんにお願いして異世界に転送してもらった。なぜ、地球の日本じゃないのか。それは作戦会議の時に戻る。

「なぁ……私思ったんけど、その敵ってさ。」
ポジションを確認しているときにふとはやてちゃんが思い出したような感じで言った。
「ちょっとばかりユーノ君にお願いして調査してもらったんだけど、最近の時空犯罪者のリストを調べたところで、指名手配されている人物でそういった人に該当するのがいなかったんよ。」
それって……
「まったくわからん。」
ドサアァァァ
一斉に私含め、みんなが滑った。
「ちょ、ちょっと……はやてちゃん。すごく真面目な表情で言うからその犯人がわかったかと思ったじゃん。」
なのはちゃんがすかさずツッコんだ。
「すまん、すまん。けど多分私たちがこれからどうするか相手に知らせるために、そして私たちが有利に状況が働くように被害がおよびづらい別世界でやるべきだと思う。」

そういう経緯によって異空間転送をしてもらって今に至っている。
「でも……本当に現れるかなぁ。」
なのはちゃんがそう言うように、私も少し不安であった。一応、相手にわざと気づかれるように魔力を散在させたけどどうなるか……。
それからしばらくの間、敵を待っていた。緊張感を保ちつつも、談笑をするぐらいの余裕は持っていた。
そして一時間近く経とうとしている時、目の前が光った。
「これは!?」
光が収まり、目を開くとそこにはエリオ君が立っていた。
「エリオ君!」
「キャロ!」
「エリオ君も転送してもらったんだね。」
「うん。向こうの魔力も回復したみたいだから。」
そのやりとりを傍らに三人は
「キャロ、この子は?」
「もしかして、彼氏?」
「ホンマか〜?キャロちゃんませとるなぁ。いるなら、はよう言っとき。」
と、三人から集中砲火を……。
「ち、違うよぉ……」
エリオ君を見ると顔を赤らめている。私も相当赤くなっているんだろうなぁ。
「冗談、冗談。」
と三人は笑いながら言いつつも、少し顔がにやにやしている。
「キャロ、もしかしてこの三人って……」
「うん。なのはちゃんとフェイトちゃんとはやてちゃん。」
そう私が言うと、エリオ君はとても驚いていた。特にフェイトちゃんに対してはポーッとしたような表情も見せていた。
そして、こっちに振り返ってひそひそ声で
「フェイトさんの10歳の時は今と違って大人っぽいんじゃなくて、可愛い……ね。」
多分『今と違って』という言葉をフェイトさんが聞いたらショックを受けるか、怒りそうだからあまり言えない。
けれど、私もフェイトちゃんと初めて会った時は鼻血を出しちゃったし、エリオ君がそう言うのは頷ける。
そして、そうこうしているときに
「……!」
『Protection』
ドオォン ドオォン!
なのはちゃんがすぐさまに敵からの攻撃に反応をして、シールドを張ってくれた。
「久し振りだね、キャロ・ル・ルシエ」
「あ、あの時の変態仮面さんだ」
「だから違うっ!」
相も変わらず、ツッコミの切れ味がよかった。
「キャロ、この人が例の仮面をつけた……?」
「うん、その人だよ。」
仮面の男は前回と同じく黒装束の格好でいた。いつでも戦闘ができるような態勢で、こうやっているときにも気が抜けない。実を言うと既に、私たちのほうでも作戦が始まっている。既に変身は済ませてあり陣形は組んでいないけれども、それぞれはいつでも戦う準備はできている。
「エリオ君、いける?」
「うん、いつでも大丈夫!」
その言葉を合図に戦いが始まった。
前回の戦闘を見る限り、そしてこっちの人数を見る限りではこっちが優勢に見えた。けれど
「あ……!これってAMF!?」
そのせいで魔法を出しづらい状況になっていた。最前列で戦っているフェイトちゃんとエリオ君の動きも心なしか遅くなっている。
「キャロ、大丈夫だから。」
相手の攻撃を避けながら、それでもフェイトちゃんはこちらに声をかける余裕がある。
「バルディッシュ、ハーケンフォーム!」
『Yes, sir. Haken Form』
「……ほう、なかなか良いデバイスを持っているな。」
攻撃を放ちながら、仮面の男は言った。そして、身構えていた杖に何かの詠唱を唱えると、杖は剣に変わった。依然として、仮面の男の周りにはナイフが浮かんでいる。
「アクセルシューター!」
ドォン!
なのはちゃんが不意を突く形で数発撃ったがナイフと相殺される。
そして、フェイトちゃんとエリオ君が接近戦で戦っているが剣でうまく抑えられている。ある程度予想はしていたけれども、まさかこんなに苦戦するとは思わなかった。
そして、私とはやてちゃんはと言うと当初の作戦の行動を起こしていた。仮面の男から飛んでくる攻撃はなのはちゃんが防いでくれて、上手くいっている。
そして、当初の作戦というのは、なのはちゃんとフェイトちゃんが相手の攻撃を防いで、はやてちゃんで遠隔魔法を唱えるのを私がサポートする。AMFがかかって少し辛いけれど、エリオ君が来てくれたお陰でどうにか対応できている。
(キャロちゃん、しんどいと思うけど頑張ろう)
(うん、はやてちゃん)
術式を念入りに組み立てていく。AMFのせいで体と魔力を動かすのが重く感じる。
戦況は前線のエリオ君がやっぱり苦戦を強いられている。仮面の男の一振り一振りの威力が強くて防御で精一杯だった。
「くっ、フェイトさんなかなかこの人強いですね。」
「うん」
「ははは、まだまだ喋る余裕があるのか。」
仮面の男も喋りながら二人を薙ぎ払う。
「うわあぁ」
「くっ」
威力が強く二人ともはじき飛ばされた。風がこっちまで靡いてくる。
「フェイトちゃん、エリオ君大丈夫!?」
なのはちゃんが援護射撃を送りながら、二人のフォローに回る。
「シュート!」
何発も連発して撃つけれど、全て打ち消される。早さになのはちゃんがついていけていない。
「そうか、時間稼ぎという訳か。」
こちらに気づき向かってくる。なのはちゃんのアクセルシューターも簡単に弾かれる。
(まずい、キャロちゃん詠唱どうにかなりそうか?)
(頑張ってみます。)
「我が乞うは全てを貫く白き槍。夜天の主に強き力を」
『Energy Boost Enhance』
「よっしゃ、いくで!」
「させるか!」
早い!どうにか間に合うように、詠唱をしたけれども。はやてちゃんお願い!
「彼方より来たれ、やどりぎの枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け。石化の槍、ミストルティン!」
「我が剣よ、堅き守りを貫け!」
ドゴオオォォン!
凄まじい音を立てて、お互いの攻撃がぶつかりあった。倒せた……?
煙が上がると、そこには仮面の男が立っていた。仮面の男の人、短期間のはずなのに強くなっている。
けれど、その仮面の男を見てみると、体の数カ所にはやてちゃんの攻撃が当たって、石化が起こっている。
「はぁ……はぁ……この男、強いなあ。」
はやてちゃんの顔も魔力を消費したせいで、笑いながらも心なしか辛そうだ。正直、私も補助魔法に費やした分で少し辛い。
そして再び仮面の男に目を向けると、服や体一部の石化した部分がボロっと落ちた。そして、その落ちた部分からは肌が見えた。その肌はとても白く透き通るような綺麗な肌だった。
「……もしかして……」
なのはちゃんの言葉が察している通り、私も同じ事を考えていた。
「良い───」
バサッ
「推理力ね。」
仮面の男がどうやってやったのかわからないけど、服を引きはがすと
「カリストさん!?」
「お久しぶり、キャロ。」
あの笑いは初めて現れた時と変わらなかった。……けど
「どうしてですか……?」
私がそう聞くと、また変わらない笑った顔で答えた。
「歴史を改変すること自体が面白いからよ。」
「え……。」
一瞬、場の空気が凍り付いてそれからピリっとした空気になった。
それを見てカリストさんは苦笑いをして、
「まぁ、理由は元の世界に戻ってから聞いてみるといいわ。」
また拍子抜けをする答えだった。
「カリストさん……ちゃんと答えて下さい。」
「あら?私はいつだってマトモよ?」
もう苦笑いをするしかなかった。
「……でも、なんでそのそれぞれの時代なんですか?」
「最初の時代は大人の事情。」
一呼吸おいてさらに
「そして、今の時代なのは私のため。」
これじゃあ聞いた意味がない。隠されている部分が多すぎるよ。
「どうして……ですか?」
「これも元の世界に戻れたならわかるわ。戻れたならの話だけれど。」
わからないことだらけの説明。きっと私が暮らしている時代に何か答えが隠されていると思うんだけれども、カリストさんは答えてくれない。とてももどかしい気分だ。
「元の時代に戻そうという気持ちはないんですか?」
「あなたが、この時代でその三人の子たちと本当に打ち解けあえたなら。それなら私を倒せると思うわ。」
「なら私は本当のことを知るために、そして元の時代に戻るために倒さないといけないんですね。」
そして、私たちは身構えた。……が
「きゃっ」
「わっ!」
戦いをする間もなく、私たち全員はバインドをかけられた。……身動きが取れない。
「私はあなた達にもう少しこの時代にいてもらうのを望むわ。私の目の保養にもあなた達のような可愛い子と戦うのが好きだから。……でも戦いはそれとこれとは別。……しばらく、寝ていなさい。……シュート!」
ドオォォォン!
魔弾が私たちに向かって飛んでくる。
「きゃああぁぁぁぁ」
そうして、私たちはその一撃に沈んだ。