三章 「いつの日か〜Meet again〜」


フェイトちゃんのお家に戻った。負けた悔しさがそれぞれあった。
「…でも隠されてる部分が多すぎて何がなんだか…。」
正直言って私たちみんなは事態の把握をし切れていない。
そして、作戦会議の中で、砲撃を撃たれた次の日に戦いを再びすることに決まった。それぞれ魔力消費をしているにも関わらず、再戦への決意はとても強かった。
その作戦会議中に
「うーん…これは言うべきなのかなぁ…」
となのはちゃんがボソリと独り言を呟いていたけど、聞いても「ううん、なんでもないよ」ってはぐらかされちゃったから結局わからなかった。
ただなのはちゃんが、カリストさんを倒すために全力でやっても大丈夫ということがわかった時の目が少し怖かった。

「ふぅーまぁこんなもんやな。」
ある程度の打ち合わせを済ましたところでお開きになった。
「…あ、そういえば。」
フェイトちゃんが何か思いだしたように言った。
「エリオは寝泊まりはどうするの?」
「あ、確かにそうでしたね。」
エリオ君も思い出したように言った。できれば一緒にお泊まりしたいけど、私もフェイトちゃんに泊まらせてもらっている身だからワガママは言えない。
「じゃあ私の…」
「ほな、私の家に泊まろうか。」
フェイトちゃんが言いかけた所ではやてちゃんが言った。少しフェイトちゃんは残念そうな表情を見せている。で、エリオ君は…
「え、えぇ?」
あれ?別に一緒にお泊まりするだけなのに顔を赤くしている。
「ご飯なら大丈夫よ。うちには仰山食べるのがいるし、私がいつも作るから味の保証はあるで。…あ、もしシャマルが先に作ってたら…うん。」
機動六課の時からそういった話は聞いたことはあったけど、はやてちゃんがそう言うんだから、本当にすごいんだろうなぁ…
「でも、男が家に上がり込むのは…」
「あぁ、大丈夫やで。ザフィおるし。」
「あ、そうなんですか…ならよかった。」
ふぅ…と息をついた傍らではやてちゃんの目が少し光ったのを私は見逃さなかった。…はやてちゃん、何をするんだろうか…。
「はやてちゃんいいなぁ〜私のお家に泊まっていけばよかったのに。」
なのはちゃんがそう言うと、エリオ君の顔は今度はガクガク震えていた。…多分悪い方に想像しているんだろうね。そうして、それぞれのお家に帰っていった。

そして、次の日。
「……………。」
プシューと気が抜けたような顔のエリオ君がいた。そしてその傍らにはニコニコと満面の笑みを浮かべたはやてちゃんがいた。
「いやぁ…エリオ君、昨日は楽しかったなぁ。」
「……えぇ…そうです……ね…」
はやてちゃんの話す限りだと、帰ってからはシグナムさんと稽古をつけてもらっていたらしいんだけど、稽古の後にお風呂入ったのはいいんだけど、着替えを持ってきていなかったらしく、仕方ないから代わりの服を持っていった。ということらしいんだけれど。
「で、はやてちゃん、どうしてエリオ君はあんな表情をしてるの?」
「あぁ、それはな。ザフィの洋服じゃあ入らんしなぁ。それで、シャマルとどの服が良いか色々着させていたんよ。結局私のお古のパジャマで落ち着いたんだけど。」
「…………お婿にいけない…。」
本当にエリオ君は落ち込んでいるみたいで可哀想だった。
多分エリオ君は女の子ものの洋服を着せられたんだろうね。…でも想像してみると、エリオ君の女装姿も可愛いかも。見てみたかったなぁ。

そうして、あの戦いの次の日の夜。
また同じ場所に私たちはいた。そして、カリストさんもそこにいた。
「久し振り…といっても一日ぶりね。」
彼女が言うとおり、一日だけど少し長く感じた。そして、様々な気持ちが胸の中で交錯していたけれど、それを捨ててカリストさんに気持ちを向け直した。
「カリストさん、あなたを倒します。」
その言葉と私の真剣な表情に、にカリストさんは少し驚いたような表情を見せたけど、すぐに戦闘態勢に入った。
「…できるのなら、やってみなさい。」
剣を構え、戦いは始まった。
「バルディッシュ、ザンバーフォーム!」
『Zamber form』
フェイトさんが剣を構えて迎撃をする。
ガンッ ガンッ
速さではほぼ互角。なのはちゃん、はやてちゃん、エリオ君もそれぞれのポジションについた。
「我が求めるは、戒める物、捕らえる物。言の葉に答えよ、鋼鉄の縛鎖。錬鉄召喚、アルケミックチェーン!」
「…無駄よ。」
バリンという音を立てて、片手でアルケミックチェーンは弾かれてしまった。やっぱり一度使った技は通用しないみたい。
「レイジングハート、エクセリオンモード!」
『Exellion Mode』
「エクセリオンバスタースタンバイ。」
そのなのはちゃんの言葉を合図に再び練った作戦を決行した。
「ストラーダ、フォルムドライ!」
『Unwetter form』
エリオ君は前回と同じく前線に。そして、機動性を確保するために…
「我が乞うは、疾風の翼。若き槍騎士に、駆け抜ける力を」
『Boost Up Acceleration』
「我が乞うは、清銀の剣。若き槍騎士の刃に、祝福の光を」
『Enchant Up Field Invade』
「ツインブースト!」
『Empfang』
私のツインブーストをストラーダが受託する。
「ありがとう、キャロ。いくよ、ストラーダ!」
『Ja wohl』
ガシュン ガシュン!
カートリッジのリロード音が響く。
「いっけええぇぇ!」
エリオ君が、カリストさんにつっこんでいく。
「くっ」
ドオオォォン!
AMF解除を行って、貫通して攻撃を受けているんだけれども、カリストさんはバリアでエリオ君と同時にフェイトちゃんを受け止めている。けれど
「エクセリオンバスターカウント3 2 1…」
キュイィィン…
カウント3と同時に、フェイトちゃんとエリオ君はとっさにカリストさんから離れる。
「…! そうくるのね。」
『…Count zero, Exellion』
「バスター!」
『Buster』
ドゴオオオォォォン!
凄まじい音を立ててカリストさんに命中。
「くっ…強いわね。さすがはエース…」
煙と共にカリストさんは相当なダメージを受けていた。でもまだ表情にはどこか余裕が見えた。
「真の悪役というのは、何枚も隠れたものをもつことによって強いのよ…!」
あの時のセリフ。そのセリフとともにサァーと周りの空気が冷えたように魔力がカリストさんから溢れてくる。
今度は持っている剣がフェイトちゃんのバルディッシュ・ザンバーぐらいの大きさになり、仮面を被っていた時に浮かんでいたようなナイフではなくて、なのはちゃんの唱えるアクセルシューターの弾のようなものが浮かんでいる。
「…シュート!」
そこからカリストさんのその一言で、弾はレーザーに変わって私たちに向かってきた。とてつもない威力で避けるのが精一杯だった。
そして、弾を撃ちながら剣を持ったカリストさんがフェイトちゃんに迫る。
ガキン ガンッ ガンッ
「くっ…。」
フェイトちゃんも多少押され気味だった。
「ウィングシュート!」
フェイトちゃんを援護する形でウィングシュートを放つ。うまくカリストさんの動きを鈍らせることができて、フェイトちゃんが距離を取れた。
それでもいつのまにかカリストさんは、フェイトちゃんが距離を取っている合間に詠唱を開始していた。
その魔力の気配になのはちゃんが気づいた。
「まずい、大きいのくるよ!」
距離からして、攻撃でその出されると思う魔法を止めるのは不可能に近かった。
「キャロちゃん、補助お願い!」
「うん!」
シュウウゥゥ…
カリストさんの周りの魔力光が強くなる。
「守護する楯 風を纏いて鋼と化せ すべてを阻む 祈りの壁 来たれ我が前に……」
ガシュン ガシュン
「ワイドエリアプロテクション!」
広域防御魔法を展開する。そして、
「エナジーブースト!」
私が防御魔法を強化したのと同じようなタイミングで向こうからも詠唱が完了した。
「フレース・ヴェルグ!」
無数もの弾が放たれる。
ドンッ ドンッ ドンッ ドンッ…
「くっ…凄いきつい…。」
防御をしているなのはちゃんもすごく辛そう。私も魔力を供給するのが大変になってきた。そして、
ドゴオオォォォンッ!
「きゃあっ」
防御魔法もむなしく壊されて、弾が炸裂した。
「はぁ…はぁ……。みんなごめん、守りきれなくて。」
「ううん…なのは、大丈夫だから。はぁ…はぁ。攻撃が強すぎたから、仕方ない。」
それぞれ、私も含めてダメージを受けた。まだ防御魔法を強化していた分だけダメージを軽減できていたと思う。直撃していたことを考えるととても恐ろしく感じる。
それに、間髪なくカリストさんがレーザーを撃ってくる。それに対して私たちは避けるしかない。
「…なのは、このレーザーを止められる自信は?」
「多分、ディバインシューターでどうにか止められるぐらいかも。」
「それじゃあかんなぁ。」
多分、あのレーザーは何発も打てるはずだから、この手しかないのかな。
「みんな、私なら何とかできるかも。」
その言葉を聞いて、三人とも少し驚いたような、それでいて期待する眼差しで顔を上げた。そして、エリオ君は頷いて「キャロ、頼むよ」と声をかけてくれた。
そして、フェイトちゃんとなのはちゃんとエリオ君がレーザーを避けながら、そしてかつ相殺しつつ、はやてちゃんにバリアを張ってもらって、詠唱を開始した。
「天地貫く業火の咆哮、遥けき大地の永遠の護り手、我が元に来よ、黒き炎の大地の守護者。竜騎招来、天地轟鳴、来よ、ヴォルテール!」
ゴオオオォォォォォ!
「ヴォルテール、お願い!」
シュウゥゥゥ……ドオオォォォン!
ヴォルテールのレーザーがカリストさんのレーザーと相殺し合う。それでも、カリストさんは苦戦することなく、対等に三人と渡り合っている。私もなんとかしなくちゃ…!
「フリード、お願い。ブラストフレア!」
キュオオォォ
前線の三人をすり抜け、真っ直ぐにカリストさんへフリードのブラストフレアが伸びる。
「ふっ!」
ドォンという音を立ててブラストフレアも相殺する。けど、これで…
「ほな、いくでぇ!」
戦闘の間、私の防御以外ではやてちゃんは戦闘に参加していなかった。それは何故かというと。
「仄白き雪の王、銀の翼以て風を起こし、彼(か)の者の動きを妨げんことを…ベルゾゲルド・アイセス!」
「な、なに!?」
それは、遅延魔法を唱えるためだった。
「くっ、動かない…」
遅延魔法をかけられつつもシールドを張っているところにカリストさんの強さが窺える。
「はやてちゃん、ナイス!」
なのはちゃんは親指を立てて、はやてちゃんにウインクを送った。
「キャロちゃん、全力全開でいくよ!」
「うん、なのはちゃん!」
エリオ君も態勢を立て直して、いつでもいける準備をしている。フェイトちゃんはザンバーが心なしか長く見える。
「あの戦い以来やな…あの時はリィンを助けるため。それで今回はキャロを無事に元の時代に送り届けるためか。」
少し懐かしげな表情を浮かべたはやてちゃん。
「レイジングハート、全力全開スターライトブレイカーいくよ!」
『All right, master. Count start 10…』
なのはちゃんのカウント開始と同時に、フェイトちゃんも儀式呪文を開始。はやてちゃんも詠唱を開始し始めた。そしてエリオ君はストラーダにカートリッジリロードを施して、いつでも準備万端。
そして、私は…
「我が身に祝福の光を…」
『8』
レイジングハートのカウントが響く。
「全ての者に猛き力を」
「無事、あなた達は打ち解けあえたのね。私はとても嬉しいわ。」
『6』
「若き槍騎士の刃に全てを受け入れる力を」
『Magic Enhanced Acceptation』
『Ja wohl』
『4』
それぞれのデバイスのチャージ音が響く。
「フリード大丈夫?」
キュオオォォォ!
『Count 3…』
「2」
同時になのはちゃんもカウントをする。
「「1」」
『Count 0』
「全力全開!」「雷光一閃!」「響け終焉の笛、ラグナロク!」「ブラストレイ!」
『Starlight Breaker ex』『Plasma Zamber Breaker』
それと同時にエリオ君が加速をつけてカリストさんへ、ストラーダと一緒に突進をする。そして、三人のトリプルブレイカーとフリードのブラストレイがエリオ君のストラーダに向かって落ちる。私がさっき唱えた攻撃受託補助魔法で、ストラーダが魔力をそのまま受け入れるようにした。
「うおおぉぉぉぉぉ!」
グオオオォォオォという大きな音を立ててエリオ君が加速していく。ものすごい光がエリオ君の周りに光り輝く。
「負け…なのね。」
「一閃必中!紫電一閃!」
最大魔力が唸りをあげて放たれる。
シュウウゥゥ…ドガアァァァァァァアァァァン!

そして、その攻撃によって戦いは終わった。

煙が上がると、カリストさんは倒れていた。
「あなたたち…良い魔法だったわ…。本当に…ありがとう。キャロ…あなたは最後の最後まで…魔法少女らしい働きをしていたわ。お姉さん、この戦いでのあなたの可愛さを…同人誌に描き記したかったわ…。楽しい時間をありがとう…キャロ。」
私が何も言える間もなく、カリストさんは光と共に消えた。最後まで彼女は手を込んだことをする人だと思う。

それから地球に戻って、その戦いに関する事後処理を行いそれから、別れの時間が迫ってきた。
「…そっか、もうキャロちゃんとエリオ君帰らないといけないんだね。」
「残念やったなぁ…。」
「キャロ、エリオ、こっちの時間は楽しかった?」
「うん、楽しかったよ。」
「戦いは辛かったですけど、勝てたから本当によかった。」
そうしたやりとりの後、とうとう別れの時がきてしまった。
「帰る手段はこれでいいの?」
なのはちゃんが指さしたのは、私が持っている懐中時計。
「うん、確信は持てないけど、カリストさんが渡してくれたものだから。」
「そっか。」
改めて三人を見た。未来。彼女たちは今よりもさらに強くなって、そして小さい時の私を助けてくれて、そして幾多もの難事件を解決していくストライカーズになる。
小学校の時のなのはちゃん達は私が思っていたより、普通の女の子達だった。けど、持っている熱い気持ちと勇気は昔も今も変わらず胸に秘められていた。
「なのはちゃん、フェイトちゃん、はやてちゃん。」
三人とも微笑んでいる。
「今度は私たちと一緒によろしくね!」
「「「うん!」」」
「時の門よ開け…我が名、キャロ・ル・ルシエの下に於いて命ず……!」
そうして記憶を消すという行為も含めた、時間跳躍をして私とエリオ君はなのはさん、フェイトさん、はやてさんがいる居場所へ帰っていった。