「立夏」

 

 

 

 「…もう、こんなに暑くなってきたのね。」

 「えぇ、暦の上では立夏ですからね。」

 魂魄妖夢が答える脇で、西行寺幽々子は暑そうに胸元をパタパタとあえて妖夢に見せるように幽々子は服で仰いだ。

 「ちょ、ちょっとゆゆこ様。そんなはしたないこと…」

 あたふたしている妖夢がとても可愛らしいのか、幽々子は笑いながら、

 「うふふ。そうやって止めつつも、チラッと私の胸見てたでしょう?」

 ポンッという音が出ててもおかしくないようなほどに妖夢は顔を赤くさせてブンブンブンと手を振った。

 「い、いいえ!断じて、そのようなことは…。」

 「そうやって強く否定されても何だか悲しいわ。」

 少し幽々子が表情を曇らせると、妖夢はまた慌て始めた。この様子を見てまた幽々子も内心ニヤリと

しているのだろう。口元が少し緩んでいるのがよくわかる。

 「…もう、ゆゆこ様はいじわるです。」

 幽々子の口元が見えて、妖夢は拗ねた表情を見せた。

 「うふふ、ごめんなさいね。でもね、慌てている妖夢の姿が可愛いんですもの。」

 袖で口元を押さえつつ幽々子は笑う。

 

 

 少し時間を置き、妖夢はお茶を入れ、縁側で景色を眺めている幽々子にお茶を出した。

 「…あら、ありがとう。頂くわね。」

 幽々子は妖夢から湯飲みを受け取り、ふぅふぅと冷ますとそのまま口をつけた。

 「ん、おいしい。新茶?」

 「えぇ、八十八夜のお茶です。外界では立春から数えて八十八日に摘んだ茶は上等なものとされ、

その日にお茶を飲むと長生きするとも言われています。本当は三日前に飲めばよかったのですが……

って私たちにはあまり関係のないお話しですね。」

 「そうね。でも、季節を味わうところがやっぱり味があっていいじゃない。」

 やんわりと幽々子は微笑むと、再びお茶に口をつけた。とくとくと喉が動くところがどこか艶めかしい。

 「妖夢、そこに立ってないで一緒に座ってお茶を飲みましょう。」

 「あ、はい。」

 妖夢も自分の湯飲みにお茶を用意して、幽々子の隣に座った。

 黙々とお茶を飲んでいたが、少し暑く感じる。お茶を飲んだからなのか、それとも立夏の陽だまりが暖めているのか。

 もしかしたら、隣に座っている人物がいて心が暖まっているのかもしれない。そんな恥ずかしいことを頭の中で

振り払いつつも、片隅に置いて、立夏のせいだとお茶を濁すことにした。