『なぁ、三成。月と太陽が一緒に出たらどうなると思う?』

 

 それは今となっては遠い昔、戯れに訪ねた一つの問いかけ。

 それを聞いた友はいつも通りの仏頂面でこちらを睨んできたのを良く覚えている。

 なんてことはない簡単なとんち。取るに足らない些細な問答。

 それでも……。

 

 それでも、それは……。

 

 

 

 太陽の東 月の西 

 

 

 

 「……い。……す……。家康!!」

 唐突に強く名を呼ばれ、はっと徳川家康は顔を上げる。

 見るといつの間にやってきたのか、目の前には独眼の蒼い青年が立っていた。

 今となってはよく見知った顔。共に戦うことを決めてくれた大事な仲間が其処に居た。

 「Hey. Are you ok?これから大事な戦が始まるっていうのにどうした、一体」

 流暢な異国語交じりの独特な喋り方をする青年―独眼竜伊達政宗が静かに問いかけてくる。心配しているというわけではないだろうが、気に掛けてくれたようだ。家康はすぐに「ああ」と答えた。

 「すまない独眼竜。少しぼーっとしていたようだな」

 そう、苦笑交じりに答えると政宗はわざとなのか大仰な様子で溜息をつく。

 「ったく。しっかりしてくれよ。あんたはこの『東』を背負ってんだろう?……ま、別に俺はアンタがやる気が無いならそれでかまわねぇけどな。代わりに俺が東の大将になるだけだ」

 冗談なのか本気なのか。政宗は憶することなく東軍総大将である家康にそう告げる。家康ははは、と小さく笑い声をあげた。

 「いや、スマンがそれは御免蒙る。ワシもこの位置だけは譲れんよ」

 「ならそれらしくする事だな。俺とアンタの立場は対等だ。隙を見せるといつでも俺が大将を名乗らせてもらうぜ」

 家康も家康でいつも通りの堂々とした態度で政宗にそう告げると、政宗は即座にそう返してきた。「肝に銘じておくよ」と家康は苦笑交じりで答える。

 この政宗という青年はとある理由から東軍に属すことになったのだが、その際に家康の傘下に入ることをきっぱりと断っている。あくまで政宗と家康の立ち位置は対等。それが政宗の東軍に入る際に出した条件であった。

 家康もそれで構わないと思っている。だから快くその申し出を受け入れ、こうして今一緒に同じ場所に立っているのだ。天下分け目の決戦地、関ケ原へと。

 世は戦国、乱世の時。各地で様々な戦が起こり、多くの人々が傷付き倒れていった戦乱の中。太閤豊臣秀吉が現れたことにより一度この戦乱は収束を迎えたが、平穏な時は長くは続かなかった。

 その原因を作ってしまったのが他ならぬ徳川家康であり、その結果ついにこの日ノ本を二分とする大戦が起こってしまった。

 各地に存在する武将たちはそれぞれの信念、思惑、願い、目的の為に西と東に分かれ、西軍と東軍として何かに導かれるようにこの関ケ原へと集まった。

 今家康と政宗が立っているのは関ケ原より少し離れた場所に造られた東軍の陣営の隅。高台となったこの場所からはこれから戦いが始まる関ヶ原の地を見渡すことが出来る。日ノ本の東を統べた総大将家康はそこで関ヶ原の地を静かに見つめていた。

 

 ここが決戦の地。この戦いを制した者が事実上日ノ本を制することになる。そして家康はこの戦いに負けるわけにはいかなかった。

 家康はまっすぐに決戦の地を見る。その目には微塵の迷いもない。

 もう間もなく始まるであろう戦のことを思っているのか、それとも……。

 「……何を考えている?」

 ふいにそう問いかけられ家康は再び我に返ったように目を見開いた。

 自分でも知らないうちに思考の中に捕らわれていたのか。家康は自分の傍らに立つ青年を見る。伊達政宗は相変わらずの冴えた独眼で家康を見ていた。

 「今更怖気づいた、ってわけじゃねぇだろう?アンタは迷ってもいないし、後悔もしていない。けれどそれでもアンタの心はここに無ぇ。それは何故だ?」

 痛いところを突かれ、家康は思わず口籠ってしまう。やはりすごい男だと家康は改めて思った。

 いつも家康の周りにいる者たちは皆自分を気遣って、確信に触れるようなことは聞いてこない。あえて聞かないというのもあるだろう。けれどこの独眼竜はそんなことはまったく気にせず、真っ直ぐに家康の心に問いかけてきた。まるでかつての友の様に……。

 家康は思わずぽりぽりと頭を掻いた。

 「いやなに……。ちょっと昔のことを思い出してしまってな」

 「An?昔?」

 異国交じりな言葉で政宗が即座に訪ねてきた。

 家康は三度苦笑を浮かべ、小さく頷く。

 「そう。もう、随分昔のこと……いや、正確な年月を数えるとたぶんそうではないと思うのだがな。それでもワシにとってはもう、遠い昔の話だ」

 不意にそうつぶやいた家康に政宗はわずかにその独眼を細める。

 特に話を促すことも、訪ねることもしない。けれどその意識がこちらに向いていると分かった家康は再び顔を上げ、関ケ原の地を見つめた。

 目の前に広がる広大な地、関ケ原。この地を挟んだ反対側にこれから自分たちが戦う西軍が陣を構えている。

 その総大将のことを誰よりもよく知っている家康は僅かに目を伏せた。

 

 (三成……)

 そう、心の内でその名をつぶやいた瞬間。自分でも気づかないうちに家康は組んでいた腕に力を込めてしまった。

 石田三成。西軍の総大将であり、これから家康が戦う相手。そして、かつての友……。

 そう、三成と家康は友であった。

 秀吉の治める天下を共に過ごし、互いに唯一無二と言っても良い位心を許し通わせた相手。幼い時分を孤独に過ごした家康にとって三成は初めて出来た対等な存在であり、己を高める為の良き好敵手であった。

 家康と三成は共にいた。同じ場所で同じ時間を過ごし、同じものを見ていた。しかし、今の家康の隣に三成は居ない。

 今の三成は家康にとって最大の敵であり、倒さねばならない相手となって自分と対極の位置にいる。

 その事自体に何ら疑問は持たない。それが当然であり、必然のことであると分かっていたから。最初からこうなることを分かっていて、家康は手を下したのだ。その先にある未来を掴むために。

 

 「なぁ、独眼竜。月と太陽が一緒に出たらどうなると思う?」

 しばしの間沈黙していた家康は、不意にそう政宗に問いかけてきた。先と異なり、今度は問われた政宗の方が驚きに目を見開く。政宗の独眼が改めて家康へと向けられた。

 「Why?なんだ急に」

 「いや、特に深い意味はないさ。ただの簡単な謎かけだ」

 いきなりそんなことを言われたからか、政宗はしばしの間押し黙る。

 その謎かけ自体は難しいものではない。いや、むしろ簡単だ。誰でもわかるような実に単純なものである。わからないのはそんなことを今、聞いてきた家康の心だった。

 政宗は思わずじっと家康を見つめる。

 実際の右眼を失ってもう随分と経つが、それ故に政宗は己の眼に絶対の自信を持っている。自分の優秀な『右眼』もそうだが、それ以上に政宗は己の持つ残された独眼を信じているのだ。

 その独眼が見出した徳川家康というこの男。いつも自信に満ち溢れ、誰にでも気さくに接するこの男の底の無さを政宗はよく知っていた。

 痛みも苦しみも、悲しみも怒りも、全てを受け止め受け入れて、皆をその先へと連れて行こうとする強い心の持ち主。空に浮かぶ孤高の月の様に、頂点に君臨するわけではない。この世の全てに等しく降り注ぐ太陽の様に皆に笑顔を振り撒き、人の心に直接語りかけてくるその様は正に『東照権現』の名に相応しいだろう。けれど、同時にこの世の全てを受け入れようとする家康が時々政宗はわからなくなる。

 その心がどこにあるのか。本当は何を想い、何を考え、何を求めているのか。その光が強すぎて、眩しすぎて、見えなくなってしまう。

 今もそうだ。政宗は家康と三成の関係を知っている。政宗は三成に対して決定的な思いがある為この戦を心憶なく戦える。けれど家康は政宗とは違う。敵は同じでも戦う理由も、その決意も、何もかも全てが異なるのだ。

 その家康が決戦を前に何を思っているのか。そして何故政宗にこんな謎かけをしてきたのか。

 政宗はそれがわからなかった。

 

 「……答えはlight.『明るくなる』だ」

 一拍置いた後、政宗は静かにそう告げる。

 家康は何も答えなかったが代わりに小さく微笑んだ。

 「日と月を文字にすると明。つまり太陽と月が同時に上ると世は明るくなる。それが謎かけの答えだ」

 実に単純な謎かけ。何故家康がそんな簡単な問いかけをしたのかわからないまま政宗は家康の出した謎かけの答えを告げる。

 家康の真意は未だにわからない。だから政宗は深くを探らず、一般的な回答を口にすることにした。

 今目の前にいる家康の心は此処にはない。遙かずっと先、もしくは遠い遠い過去にあるのだろう。そのカギを握るのがこの問いだと政宗は気づいていた。 

 恐らく今のこの瞬間。天下分け目の合戦が始まるこの時だからこそ、その問いかけには意味があるのだ。

 「そうだ。それが正解だ。さすがは独眼竜」

 「Ha.ガキでもわかるだろう、こんなもん」

 当てたところで大して嬉しくもない。政宗は言葉の裏にそんな感情を滲ませたが、家康は特に何も言わず満足そうに微笑んだ。

 「ではな、何故『明』という文字が月と日、つまり太陽で現されていると思う?」

 さらなる問いかけに政宗はすぐには答えず再び家康を見る。この男は底が知れない。何を想い、何を考えているのか政宗にはほんの一部しか見えない。

 だから政宗は

 「何が言いたい」

 とストレートに訪ねた。

 家康に腹の探り合いをしたところで無意味だ。そう思った政宗は真っ直ぐに家康に問いかける。家康もそれがわかっていたのだろう。政宗の言葉に気を悪くした様子もなく静かに微笑んだまま目を伏せた。

 「月と太陽が一緒に出ると明るくなる。先人は何を思ってこの文字を作ったんだろうな」

 不意に家康がそうつぶやいた。政宗は黙ってそんな家康を見つめる。

 漢字は遙か昔この日ノ本ではない大陸から伝わったものだ。そこで作られたこの文字の成り立ちに関しては諸説いろいろ言われているが、最も有力なのは明の日とは太陽ではなく月明かりを示す言葉から作られたとされている説である。

 しかし家康が言いたいのはそういうことではないだろう。

 「……さぁな。どちらも地上を照らしているからなのか、それとも」

 そこで一度言葉を切ると政宗は家康を見た。

 「あるいは対極な存在を同列にすることで、何かを示唆しているのかもな」

 そう、政宗が静かに答えると家康は静かに伏せていた目を開いた。

 

 政宗は知っている。この家康が太陽と称され、そして敵対している三成が月と称されていることを。

 実際その表現は適格だと政宗は思っていた。

 家康も自ら己が陽であることを告げているし、三成が月であるということも認めている。

 陽の光の如く世を照らし、皆を導いてく家康。三成とは全てが対極であることからも十分に納得がいくというものだ。しかし家康が言いたいことはそれとは少し違う気がする。そんなことを考えた時であった。

 「ワシはな、思っていたんだ独眼竜」

 不意にそんな声が聞こえ、政宗は思わず家康を見る。家康は政宗を見ていないが、それでもその言葉は自分に向かって語りかけられたものだということに政宗はちゃんと理解していた。

 「文字の成り立ち自体にはさまざまな謂れがあるだろう。けれどワシは初めてこの問いかけを聞いた時に思ったのだ。まこと、その通りだと」

 政宗は何も言わなかった。ただ無言で家康の話の続きを待つ。

 家康にもそれがわかったのだろう。すぐに口を開く。

 「昼を統べる太陽と夜を統べる月。この二つが同じ空を照らすことで世はさらなる光に包まれる。決して叶わない事だが、だからこそ其処に無限の可能性が存在するのではないかとな」

 政宗は無言のまま家康を見つめた。

 一瞬何事か告げようと思わず口を開いたものの、結局は何も言わず政宗は静かに口を閉じる。

 家康が何を言いたかったのか。何を想い、何を考えていたのか。少しだけわかった気がした。

 先人たちが何を思い、この文字を作ったのかなんて政宗にはわからない。知りたいとも思わない。けれど家康は違うのだろう。

 だから政宗は言わなかった。家康の言葉を聞いてすぐに思った。けれど声に出して告げることが憚れた。

 それはアンタの願いなのか……?と、政宗は家康に聞くことはできなかったのだ。

 

 

 「……輝いていたよ」

 ふいに耳朶を打ったその言葉に政宗は思わず目を見開いてしまう。

 家康は変わらずに関ヶ原の地を見つめている。けれどその瞳に映っているのは違うものであるということに政宗は気づいていた。

 家康は見つめ続けている。政宗の方へは決して視線を向けず、けれど確かに語りかけるようにして、一つ一つ言の葉を紡ぐ。その目に映っているのは此処ではない。

 もう戻ることの叶わない遠い、遠い、過去。

 「ワシは知っている。昔……、太陽と月は共に存在していたことがあった。そしてその時、間違いなく世界は明るく……いや、輝いていたんだ」

 そう、静かに紡がれる家康の言葉を政宗はただ無言で聞く。家康は政宗の言葉を待っているのではない。それがわかるから政宗は何も言わなかった。

 家康は僅かに目を伏せた。

 

 ―そう。

 家康は知っている。

 その昔、本当に太陽と月は共に存在していた。

 決して相容れず、存在することが叶わないはずのもの。けれど確かにその二人は同じ空の下、共に存在してのだ。

 家康の眼にその時の……、今となってはもう遠すぎる光景が映る。

 『三成!!三成!!』と、その名を呼ぶといつも不機嫌そうに顔を顰め、切れ長の鋭い視線を投げかけてきた。

 誰よりも純粋で真っ直ぐで、それ故に融通が利かず、妥協することも許さない少年に家康はいつも「うるさい」と文句を言われたものだ。そして口ではそう言いつつも、三成は決して無視をすることはせず、家康の呼びかけには必ず答えてくれた。

 そんな不器用で、真っ直ぐな三成に家康は惹かれ、共に居ることを望んだ。

 三成はいつも文句を言い、事あるごとに家康を罵っていたがそれでも一緒に居てくれた。

 太陽と称される家康と、月と称される三成。その二人は共にいた。確かに二人は同じ場所で、同じ時を過ごし、同じものを見て、同じ空の下に居たのだ。

 その世界はあまりにも眩しくて。とても鮮やかで光り輝いていて。……とても、幸せであった。

 けれど、そんな輝きに包まれていた世界はもう存在しない。

 太陽は東に、月は西に。それぞれの願いと想いを抱いた両者は別々の道を歩むことを決めた。もう共に存在することは出来ない。しかし、それでも。

 

 「……それでも。ワシは信じている。太陽と月がこの世を明るくするのなら、この戦いの先に光り輝く未来が存在すると」

 政宗は何も言わなかった。

 静かに呟かれたその言葉は傍らに立っていた政宗にもしっかり届いている。政宗はしばしの間、身じろぎ一つせず家康を見ていたが、何かを言うより先に遠くの方から自分たちを呼ぶ声に聞こえてきた為、結局は何も言わなかった。

 どうやら時間のようだ。もう間もなく文字通りの天下分け目の決戦が始まる。政宗は今一度、家康を見た。

 どっしりと構え、自信と揺るぎない信念に満ち溢れた東を統べる大将の姿が政宗の独眼に映る。政宗がよく知る、いつもの家康の姿だ。

 その姿は相も変わらず眩しくて、東照権現の名に恥じぬふさわしい姿であると政宗の眼からも思えた。けれど、ほんの少し前とは何かが違って見える。

 それはきっと……。

 きっと家康の思いが、その心が何を望み、何を求めているのか分かったから。

 

 ……しかし、それがわかったところで政宗には関係ない。

 石田三成に対する政宗の気持ちは変わらないし、譲る気もない。家康がこの戦いの先を目指すのと同じように政宗にもその先を目指す理由がある。

 「Time outだ。……俺は行くぜ。先に石田の首を取っても文句は言わせねぇ」

 「もちろんだ。思う存分戦ってきてくれ」

 愛用の弦月を抱く兜を被りながらそう告げると、家康は堂々とした言葉で答える。その言葉には微塵の揺らぎも存在しない。政宗は静かにその場を後にした。

 

 

 

 

 政宗の去っていく足音を聞きながら、家康は僅かに天を仰ぐ。

 空が色を変え始めていた。夜明けが近い証である。

 もう間もなく戦が始まる。太陽と月が同じ空に昇る時が来る。家康は静かに目を閉じた。

 

 耳に、声が響いてくる。どこか遠い場所から、あるいはすぐ近くから。

 同時に一つの光景が脳裏に浮かんで見えた。

 

 それは過去の情景。今となっては手の届かない、己が壊してしまった輝く世界。

 いつものように『三成、三成』と名を呼ぶと、かつての友もまたいつものように仏頂面を浮かべたまま『なんだ』と答えてくれた。

 

 

 

 『なぁ、三成。月と太陽が一緒に出たらどうなると思う?』

 『なんだそのくだらない質問は』

 『いいからいいから。ただの謎かけだよ。……で、どうなると思う?』

 『くだらん。答えるまでもない』

 『なんだ。わからないのか?それならそうと……』

 『誰がそんなことを言った!!それ位わかっているに決まっているだろう!!答えは明るくなる、だ。阿呆』

 『お、正解だ。さすがは三成』

 『貴様……、私を馬鹿にしているのか家康……』

 『ははは、そう怒るな三成。そうだ、月と太陽が一緒に出れば明るくなる。だから三成……』

 『なんだ!?』

 『ワシと一緒に……』

 

 

 

 「ワシと一緒に、皆が笑って暮らせる平和な世を作ろう。……そう、あの時告げた言葉に偽りはないんだぞ。……三成」

 

 誰に言うでもなくそう告げると家康は小さく笑みを浮かべ、何かを振り切るように静かに頭を振ると上着と一体になっている頭巾を目深に被った。

 光り輝く時間。それは家康の胸に確かに存在している。

 あの時の三成の驚いた顔も。直後に浮かべた怒りの顔も。『何をくだらないこと言っている!!』と木刀を振り回す三成の姿も、年甲斐もなく子供の様にはしゃいで回ったことも、こんなにはっきりと思い出すことが出来る。

 何も知らずにいれば家康は今もきっとあの光輝く時間の中にいたのだろう。そう、考えたことは何度もある。けれどその答えはきっと否だということもわかっていた。

 例え何も知らず、ずっとあのまま太閤秀吉の治める天下が続いていたとしても、遅かれ早かれ家康と三成は離れ、戦う運命にあっただろう。

 

 何故なら自分は太陽で、三成は月だから。

 

 月と太陽は決して相容れない。同じように家康と三成が共にこの世に存在することは出来ない。同じ空に存在することがもう許されない以上どちらかが消えなければいけないのだ。

 それが自分たちの選んだ道だから。そして。

 「この戦こそ、お前とワシを繋ぐたった一つの『絆』だ。三成」

 そこで言葉を切ると、家康は踵を返し歩き出した。

 その足取りに迷いはない。真っ直ぐに、己の居る場所、目指す場所へと向かっていく。

 太陽は東へ。月は西へ。分かれた二人が出会う時、世は明るく照らされる。

 激しい火花を散らし、世界を揺るがす程に強い光を生み出してこの日ノ本を明るく照らすことだろう。そうしてそれがこの戦乱の世に終わりを告げ、その先に広がる光輝く未来への光明となる筈だ。

 

 

 ―さぁ、三成……。ワシと一緒にこの世を明るく照らそう。

 

 

 天下分け目の決戦が終わった時、空に輝くのは月か太陽か。それは神のみぞ知る事。

 

 けれどその先に、あの日太陽と月が夢見た世界があるのだと、東の太陽は信じている。

 

END


あとがき

なんだろう、これは。
とりあえずBASARA3やアニメBASARA弐に滾って家光ものを書きたくなり、頭に浮かんだものを書き起こしてみたもののなんだかよくわからないものになってしまいました。実に申し訳ない。

関ヶ原直前の家康、らしい。そして家三と言いながらも三成は名前のみの登場っていう。なんかもうちょっと家康の心情を掘り下げるとかすればよかったんですが、完全タイトルを使いたかっただけの作品になってしまいました。あーっ!!ちょっと三成に斬滅されてきます。
でもこのタイトルの言葉(っていうか大元はノル君(ノルウェー)ところの童話タイトルなんですが)、マジで家三を現す言葉だなと思いまして。でも見てのとおり撃沈です。

筆頭がいつも以上におかしいYO。書き慣れていないのがバレバレですな!

一応、今回は家康視点です。じゃあ三成視点は!?って話ですが、あんま考えていないのが現状。何か浮かんだら、書くかもしれません。本当、慣れないことはするもんじゃないっていことですね。反省します。でも多分またちょこちょこ二次創作ものも書いていこうと思いますのでよかったらまた読んでやってください。

2010 10/13