〜プロローグ〜
『命』……これ以上重く…かけがえのないものはこの世には存在しない。
戦いにより、命は簡単に失われてしまう。
戦いで相手の命を奪うとき、彼等は命の大切さを忘れているのかもしれない…。
命は奪うものではない…護るべき尊いものである…。
光と闇の激しい戦いから一年…。
闇は光により滅ぼされ…長年続いてきた戦いに終止符が打たれた。
光闇世界から戦いは無くなり、平和が続いていた。
光の世界は活気に溢れ、闇の世界は廃れ寂しき世界と化した。
しかし闇の世界は、闇の王を失っても、まだ残っていた……。
光の世界の守護団体『光の守護者たち(セイントガーディアンズ)』
闇との戦いが終わっても…彼等が消えることはない。
これは一年前の戦いで活躍した少年少女が織り成す物語。
彼等の生きる姿を綴ったこの物語第二章。その名は……
第二章 ――命の守護者たち――
『貴方には…守りたいものはありますか?』
『貴方がこの世界で一番守りたいと思うもの…それは何ですか?』
第1話 〜新しき守護者〜
アル、レン、リーナの三人が闇の王を倒してから、早一年が経とうとしていた。
彼等は光の世界で英雄とされ、その存在は多くの人に知れ渡っていた。
そんな彼等は今、ポケモン食堂で朝食を摂りながら、会話を楽しんでいた。
アル「…しかし…早いものだな。オレ達が初めて出会ったあの日から、もう一年が経つのか」
レン「だな〜。オレさ、11歳くらいまでは結構時が遅く進んでるように思えたのに、何か今の歳になって最近時間が経つのが早いように思えるぜ。オレ等ももう15歳か〜、歳くったな〜ハッハッハ!」
リーナ「フフフ、レンったらお爺さんみたいなこと言っちゃって…。15歳はまだまだ若いよ」
アル「だけど、オレ達もかなり変わったな。レンにいたってはこの一年で進化したからな」
そう、レンはこの一年で修行などを繰り返しヒコザルからモウカザルへと進化を遂げていた。
小さく華奢な体だったが腕も筋肉が少しつき、長い尾も生え、顔もしっかりとした顔つきになっていた。
ここ一年、この三人の中で一番変わったのは彼かもしれない。
レン「しっかし、本当に一年は早いよな〜。何ったって今日は新しい光の守護者の就任式だぜ」
アル「オレ達にもう後輩ができるのか…。どんな奴等なんだろうな?」
リーナ「きっと可愛い後輩だよ、一年前の私達のように」
そんな風に三人が話していると、ピンポンパンポンと音がし放送が入った。ラグナの声だ。
ラグナ「連絡する、まもなく光の守護者就任式が始まる。本部にいる光の守護者は集会場へと集まれ。以上だ」
再びピンポンパンポンと音がし放送の終了を知らせた。
アル「そろそろ時間のようだ。行こうレン、リーナ」
レン・リーナ「ああ(うん)」
自分達が使っていた食器を片付け、三人は集会場へと向かった。
――集会場――
アル達がついた頃…既に新人も含め沢山の光の守護者が集まっていた。
新人は緊張した雰囲気を見せ、彼等の先輩となる者も新人ほどではないにしろ少し緊張していた。
暫くして集会場の舞台の袖からミュウツー…総長ラグナが姿を現した。
去年と同じように彼は大声で『新人諸君!君達を今、光の守護者と認める!』と言って、また舞台の袖のほうへと消えていった。
新人の職務認定も終わり、また去年と同じようにカイリキー…ギルガがチーム発表を始める。
『独断と偏見で決めさせてもらった!』というギルガの言葉で新人が去年と同じくザワつく。そしてそこにギルガの怒号が入る。これは毎年恒例のことのようだ。
改めてチームが発表された。次々とチームが発表されていき、最後のチームの組み合わせが発表される。
ギルガ「そして最後…グレイ・マーディー、ダルク・ザン、シエル・ライト。以上だ、では同じチーム同士で固まれ」
新人達が発表されたように自分と同じチームの者達と集まる。
大移動が終わり再びギルガが話し始める。
ギルガ「これを持って就任式は終了する。ここからは君達の先輩が本部の施設を案内してくれる。それが終わったら自由行動だ。では、頼むぞ。先輩クンたち」
先輩一同「はい!ギルガさん!!」
新人達の先輩にあたる者達が次々と自分達が担当する後輩の所に着く。
アル達も事前に渡されていた用紙を見て、自分等が担当するチームを確認する。
アル「…オレ達は…グレイ、ダルク、シエルというメンバーのチーム…。最後に発表されたチームだな」
レン「この中の一人は女の子なんだよな〜。可愛い後輩だといいぜ〜」
リーナ「じゃあ、探そうか。え〜と…あっ、あの子達じゃないかな?ほらっ!」
三匹のポケモン達をリーナが指差す。
その先にはブイゼル、ヨーギラス、ミミロルがいた。
アル「うん、きっとそうだ。行こう」
アル達は三匹のポケモンがいる所に着いた。
『先輩だ〜』という顔をしながら後輩がアル達を見つめる。
アル「君達が…オレ達が担当する後輩か?」
ブイゼル「はい!あっ、えっと…は、初めまして!僕はブイゼルのグレイ・マーディーといいます。宜しくお願いします」
ヨーギラス「オレの名はダルク・ザン。種族はヨーギラス。宜しくお願いします、先輩…」
ミミロル「私の名はシエル・ライトで…種族はミミロルです。宜しくお願いします」
三人がアル達に向かって大きく礼をする。
アル「こちらこそ宜しく頼む。次はオレ達の自己紹介だな。オレの名はアルクロード・ヴァンセンス。種族は見てのとおりリオルだ」
レン「オレはレン!種族はモウカザル、後輩達〜宜しくな!」
リーナ「私はリーナ・サーレイと言うの。種族はキルリア。宜しくね、フフフ」
グレイ・ダルク・シエル「はい、よろしくお願いします」
アル達三人の後輩への自己紹介が終わり、また後輩達が大きく礼をする。
アル「それではオレ達が本部の施設を案内しよう…。今年度に入って本部の施設は去年に比べて少し変わった。よく覚えるようにな。それでは着いてきてくれ」
グレイ・ダルク。シエル「はい、先輩!」
★To be continued★
■光の情報局■
レック「ヤッホ〜!どうもです。第二章でもこのボク、レックウザのレックが光の情報局を担当させていただきます。
よろしくお願いします。さて第二章になり闇が消え、一見必要が無くなったと思われる団体『光の守護者』ですが…実は光の世界には必要な機関なのです。
この団体は闇からの防衛の他に、この世界と別世界にある救助隊と呼ばれる団体さんがやっているような仕事をしています。
本部に来る依頼を請け負い、任務を行う…そんな集団になっています。ですが、またいつか闇が襲ってくるのか分からないのでこうして残されているわけです。
今回はこれで以上です。それでは次回もお楽しみに!」
■作者から■
第二章記念すべき第1話なのに、全然ダメですね((
でも、期待はずれだとは思わないでください。まだまだ二章は始まったばかりです。
なので…これからの展開を楽しみにしていてください。
第2話 〜新・本部案内〜
アル達は後輩達の本部施設の案内をしていた。
廻ったのはポケモン食堂、総長室、究極の図書館、占い部屋、闘技場……。
残すはポケモン商店、ポケモンの湯、神殿、セイントガーディアンズ寮と呼ばれている施設だ。
アル達が今後輩達を連れてきたのはポケモン商店だ。
店の脇に商品があり、その数は半端ではない。
ここ昼でも暗くて少し狭くて灯りは満月型の電球が一つ。
カウンターに招きニャースが置いてあり、寂しげながらも利用者が絶えない場所の一つだ。
リーナ「えっと…それじゃ次はポケモン商店だよ。何でも売ってる万屋みたいな所だね。店長はニャースのジョズさんだよ」
ジョズ「は〜い、私がジョズです。ポケモン商店の店長をやっております。新人の皆さん、宜しくお願いしますね」
後輩三人はジョズの挨拶に『宜しくお願いします』と、会釈しながら言った。
リーナ「ジョズさん、最近になって何かここで新たなサービスを始めるって言ってましたが本当ですか?」
ジョズ「はい、ここはですね、今年になって少し変わった施設の一つです。リーナさんの言うとおり新しいサービスを始めます。
実はですね、私は材料さえあれば何でも作れるのです。ですから、店に置いてないものでも皆さんが欲しいと望むものを、皆さんが持っている所持品から作る…というようなサービスです。
一度アル君に頼まれて魔石を作ったことありますからね、それと同じようなことをします。このサービスなら材料や商品入荷をうまくいけば待たなくても済みますし、商品仕入れ代もかからず無料でやりますから、私にとってもお客にとっても良いサービスなんです。まさに一石二鳥ですね。
だから、皆さんもここへ買い物目的で来るときであっても、とにかく何か自分の持ってるものを持ってきたほうがいいかもしれませんね」
グレイ「すごいなぁ、ジョズさんは。さすが本部で働く人なだけはありますね」
ジョズ「いえいえ、私なんか大したことありませんよ」
手を横に振ってジョズが謙遜する。
レン「さってと…んじゃ次行くか〜!ありがとなジョズさん」
グレイ・ダルク・シエル「有り難うございました〜」
ジョズ「こちらこそ有り難うございました。では、我がポケモン商店をごひいき願います」
お辞儀をするジョズを背にアル達と後輩はポケモン商店を出た。
少し歩いて次にやってきたのはポケモンの湯だ。
普通の温泉のように左に男と書かれた暖簾(のれん)、右に女と書かれた暖簾が垂れていた。
周りにはマッサージ椅子、浴衣…まさに温泉そのものといった感じだ。
本部の施設一つ一つの充実さが見て取れる。
レン「さぁ――って来たぜ!ここはポケモンの湯だ、暖簾の置くには脱衣場があって…その奥に温泉が湧いてんだ。
効能は万能で傷とかも癒せるんだ。任務で疲れた日には一風呂浴びてスッキリするのが一番だぜ!!温泉はさ露天風呂式なんだ。男湯と女湯は隣り合ってんだが、竹で作った壁で分断されてるぜ。
月とか眺めて入ると気分とか出るかもな!雨の日は寒いからちゃんとパラソルみたいなのが出てくるから心配ないぜ」
ダルク「レン先輩…オレは岩、地面タイプだから水関係が苦手なんだが…そういう奴等はどうしたらいいんですか…?」
レン「ああっ!大丈夫大丈夫!ここの湯はどんなタイプの奴が入っても体に沁みないようになってんだ。だからといって疲れがとれない…なんてことはないから安心してくれよ」
シエル「わぁ!本当に本部って良いところですね〜!養成学校とは大違い!」
レン「だろ〜?後さ、今年になって新制度ができて、月に一回チーム一組に混浴が許されるんだ。毎月一組混浴券ってのが配布されてよ。
それをカードリーダーでリードすると秘密の扉が開いてそこから混浴風呂にいけるみたいだ。最近掘れた温泉らしいぜ。普通の温泉と違うのは温泉の脇に少し岩壁があって、人一人隠れれるくらいのスペースがあるぜ。
普段は男と女で別れちまうけど、一度チーム全員で風呂入ってみて―っ!って時に利用するといいぜ。そん時はちゃんとマナーを守って入れよ」
グレイ・ダルク・シエル「はい、先輩」
アル「さて…ポケモンの湯の紹介も終わったところで、次は神殿を案内しよう」
ポケモンの湯を後にしアル達と後輩は神殿へと向かった。
また少し歩いてやってきたのは神殿。
だが、そこは神殿というのはほど遠い造りとなっていた。
壁画はなくなり石壁となり、床には赤絨毯が敷かれ、そしてたくさんの横長の椅子。
そして一番目に付くのは奥の壁にある綺麗な三つなステンドグラス。
それぞれ左からユクシー、エムリット、アグノムが描かれていた。
神殿と呼ばれたここは誰がどう見ても神殿とは思えず、どちらかというと教会、大聖堂といった感じだ。
アル「ここが神殿だ。去年までは本当に神殿という感じだったが、ここに棲む神達の要望で全て改装されたんだ」
グレイ「神ってまさか…あのステンドグラスに描かれたポケモン達のことですか?」
アル「そうだ、以前までは皆の前にその姿を現すことは無かったが、最近では本部の多くの者が存在をしっている。もはや本部の者からしたら当たり前の存在になってしまったのだ」
ダルク「…そうなのか…。…?…アルクロード先輩、奥のほうに魔方陣が一つありますが…あれは何なのですか?」
アル「あれは…神の住処の湖に繋がる転移魔方陣だ。総長が神からの要望で作ったものだ。神の姿を見たいなら行ってみるといい。最近じゃ誰も神に会いにいかなくなって、寂しがっているだろうからな。
彼等は話をするのが好きだから、自分の事や自分の悩みなどを話したりすると相談に乗ってくれるかもしれないぞ」
シエル「じゃあ、今度私会いにいってみようと思います」
アル「そうしてやってくれ、彼等も喜ぶだろうからな。それでは残り最後、セイントガーディアンズ寮を案内する。着いてこい」
グレイ・ダルク・シエル「はい、先輩」
神殿の紹介を終え、アル達と後輩はセイントガーディアンズ寮へと向かった。
またまた少し歩いてやってきたのは巨大な寮。
寮といってもアパートのようなものではない。ホテルとかマンションといった感じだ。
アル達が寮の入り口から中へと入ると、外観が凄いだけに中身もすごかった。
高さは百階まであるほどだろうか。中にはいくつもの扉と、壁に張り付いた四角い螺旋階段…。
一階ごとにも沢山の扉があり、扉には『アルクロードの部屋』といった感じに、誰の部屋か分かるようプレートがかけらていた。
アル「ここがオレ達、光の守護者が利用する寮だ。一人一部屋個室を持っている。建物自体大きいし部屋もたくさんあるから、どれが自分の部屋かを覚えておくようにな。
自分の部屋がかなり上のほうにあるという奴は、転移魔方陣の上に乗って自分が行きたい階を言うとそこへワープすることができる。覚えておけ」
グレイ「はい。…しかし大きいな…。ずっと上向いてて首が痛くなってきたよ…」
グレイの他二人も寮の大きさに唖然とした顔をしていた。
見慣れないものは最初はこの寮の大きさに驚くのかもしれない。
アル「そうそう、部屋は模様替えは自由だ。ポケモン商店で家具を買うなりして自分なりのコーディネートをしてみてくれ。
それから今年になって部屋にシャワールームが設けられた。朝シャワーを浴びたいという者や任務の後さっと汗を流したいと言う者が多くてつけられたんだ。自由に使うといい」
シエル「へぇ、何から何まで徹底されてますね〜本部って」
アル「オレ達は毎日戦ったり任務を行ったりで忙しい日々を送ることになるから、これくらいしないと辞めるものが出てきてしまうんだ。だから、本部はできるかぎり皆の要望には応えているのさ。
さあ、これで全ての紹介が終わった。ここからはお前達後輩は自由行動だ。好きに施設を廻ったりしてみるといい」
グレイ「あっ、じゃあ先輩。よろしければ僕達と一緒にポケモン食堂へとご飯食べにいきませんか?ご飯を食べながら先輩達といろんな話とかしてみたいんです。ダルクとシエルもそうしたいみたいで…。いいですか?」
少しアルが考える。自分では決められず、レンとリーナに訊いてみた。
アル「レン、リーナ。お前達はどうだ?後輩と一緒に飯を食べながら話とかしたいか?」
レン「構わないぜ。実はオレ朝あんま食ってないから腹減っちまって…」
リーナ「私もいいよ。後輩達と仲良くなるいい機会だろうしね」
アル「…分かった。それじゃあ後輩達、オレ達の意見も一致した。一緒にポケモン食堂へ行こう」
グレイ・ダルク・シエル「はい、ありがとうございます先輩!」
★To be continued★
■作者から■
第二話もどうしようもない話…。しかし、本部施設の詳しい構造とかを知っていただくためにはいい機会になったんじゃないかと思います。
実は作中で今年から変わった施設とされている施設は、作者である私が後々こうしたいな…と思った施設です。
その中で特に変えたかったのは神殿です。第一章第146話でエムリットが『神殿ぶっこわして』と言っていたのは作者である私の思いを少し込めて、この展開に持っていくための伏線だったのです。
上手いこと話に繋げれてよかったです…。案外話と話はうまく繋がるものですね。
第3話 〜進化の悩み〜
後輩達の提案でポケモン食堂へとやってきたアル達。
時刻は正午より少し前あたりか、少し早い昼食となった。
六人はガルーラに注文をした後、数秒で作られた料理を受け取りテーブルに着いた。
アル「…美味い飯だ。…で、話がしたいって言ったが…どんなことを話したいんだ?」
グレイ「えぇっと…あれからふと思い出してみたんですが、アルクロード先輩、それにレン先輩とリーナ先輩。
三人はもしかして一年前に闇の王を倒したって言われているあの三人の光の守護者なんですか?」
レン「ああっ、確かにオレ達はお前の言うとおり、闇の王を倒したチームだぜ」
シエル「わぁ、すごい!私達、そんなすごい先輩に施設の案内してもらってたんだ!すごい、有名人が私達のすぐ目の前にいるなんて…」
リーナ「そんなに驚かなくてもいいよ。私達だってまだ二年目だし、君達とそんなに変わらないから普通に接して」
ダルク「はい……えっと……リーナ…先輩……」
こんな風に会話は弾み、食事も皆食べ終えてテーブルには水が入ったコップと料理が綺麗に平らげられた食器。
少ししてアルバイトの人らしき店員の人が、食器を下げていった。まるでレストランのようで、本当に本部は充実している。
食器が片付けられてからも、六人は話を続けていた。
グレイ「しかし、本当に先輩たちはすごいなぁ〜。進化もしているし…。あれっ、よく見るとアルクロード先輩だけ進化してないですね?他の二人は進化しているのに…」
アル「……!……」
彼の言葉にアルの耳がピクッと動く。
ダルク「そういえば…そうだな……。先輩…早く進化したほうが…いいです。背も小さいですし…少し…先輩っていう風には……見えませんよ…」
アル「…!…!!…」
またアルの耳がピクピクと動く。
シエル「ちょっと二人とも、先輩に失礼よ!ごめんなさい…先輩…」
アル「いや……いいんだ。オレもそれは薄々感じていたことだからな…」
シエル「そうですか…。でも、確かに二人の言うとおりかもしれませんよ…。ちょっと先輩として見栄えがあまりありませんし、少し浮いて見えます…」
グレイ「シエル!君も十分失礼だよ!」
横からグレイがツッコむ。
シエル「あっ、ごめんなさい!」
アル「……大丈夫だ。そんなに気にしなくてもいい。……それじゃ、そろそろ時間ここらで解散しようじゃないか。いいか後輩?」
アルが訊くと後輩は『はい、ありがとうございました』と返事を返してポケモン食堂を去っていった。
その場に残されたのはアル、レン、リーナの三人だ。
アル「…ふぅ……」
大きく重い溜め息をアルが漏らす。
彼の様子を見て心配になったレンが彼に訊いてみた。
レン「お前本当に大丈夫か?お前、自分だけが進化してないこと結構気にしてただろ?」
リーナ「そうだよ。少し精神的に疲れたならマダムさんの所に行くといいよ。マダムさん精神科の医者だから…」
アル「いや…いいんだ。心配してくれてありがとう…レン、リーナ。……悪い…オレは一度自分の部屋に戻るよ。二人はそれぞれ自分の好きな様にしていてくれ…。じゃあな…」
元気のないさよならを二人に言い、アルは一人自分の部屋へと戻っていった。
――アルの部屋――
自分の部屋へと戻ってきたアル。
相変わらず家具は少ない部屋ではあったが一年前よりは増えていた。
最初から置いてあるもの以外はテーブルと壁掛け鏡だけだったが、一年間で稼いだ金を使い壁掛け時計と写真立てを購入していた。
一年もあればもっと家具があってもいいではないかと思うかもしれないが、金はほとんどリーナが自分のために使ってしまうのでアルが使う金はほとんどしかなかったのだ。
そんな家具の少ない部屋に戻るや否や、アルはベッドの上で仰向けになり天井を見つめながら考え事を始めた。
アル「(進化…か。オレだってできるものならしたい……しかし、どうすれば進化できるのだ……)」
彼が進化したいのは、ただ単に強くなりたいだけではなかった。
進化をすると体は大きく変化し、当然体の身長や体重も大きく変化する。
アルは今まで0.7mとチームの中で一の背丈をもっていたが、他の二人が進化した今では一番背が小さい。
レンにいたっては通常のモウカザルより0.2m大きく、リーナもアルよりたった0.1m差ではあるが大きい。
男の子はともかく女の子より背が小さいというのは彼の中のプライドが少し許さなかったのだ。
アル「…進化…。もしかしたら“究極の図書館”に何か進化に関する本があるかもしれない…」
ふと考え付いたアルは少し進化への希望と期待を手にした。
ベットからふっと飛び起き、アルは自分の部屋を飛び出し即座に究極の図書館へと向かった。
アル「あそこは世界中から集めたどんな分類の本でも置いてある…。進化の本も絶対に置いてあるはずだ…!」
確信と期待を胸にアルは究極の図書館へと進む足を更に速めた…。
★To be continued★
第4話 〜なつき進化〜
究極の図書館へとやってきたアル。
本が整頓された沢山の棚といくつかのテーブル…。
沢山の棚からアルは進化に関する本を探した。
案外その本は早く見つかった。題名は『進化の種類と方法』だ。
早速アルは近くテーブルに着き、本を読んでみた。
――進化の種類と方法――
進化にはたくさんの方法があります。
“レベル進化”“道具進化”“時間帯進化”“場所進化”“技持進化”“なつき進化”“環境変化進化”があります。
“レベル進化”はポケモンの中で一番多い進化方法であり、戦闘経験や人生経験が一定まで溜まると進化します。
“道具進化”はある特定の道具の力で進化する進化です。ロコンやガーディなどが当てはまり、ロコンの場合“ほのおのいし”を使うと進化可能です。
“時間帯進化”に当てはまるポケモンは朝、昼、夜のどれかの時間帯に進化できません。スボミーやリオルなどが当てはまります。
“場所進化”に当てはまるポケモンは特定の場所でしか進化できません。レアコイルやノズパスなどが当てはまります。
“技持進化”に当てはまるポケモンは特定の技を取得していないと進化できません。ヤンヤンマやイノムーなどが当てはまります。
“なつき進化”に当てはまるポケモンはある条件を満たさなければ進化できません。詳しくは次ページへ…。リオル、トゲピーなどが当てはまる。
“環境変化進化”は自分が棲む環境が変わると進化します。ユンゲラーやゴーストなどがこれに当てはまります。
アル「一通り様々な進化方法を読んだが…オレが当てはまるのは“なつき進化”と“時間帯進化”か…。
“なつき進化”は次ページに詳しく書かれているのか…。次のページを見てみるとするか…」
――なつき進化について――
“なつき進化”は数ある進化の中でも特に進化に時間がかかる進化です。
“なつき進化”のためには二つの条件をこなさなければなりません。
条件その一は、自分の身の周りの人に自分がこれ以上無いというほど懐かれる、好かれる、信頼される事がが必要です。
身の周りの人に当てはまる人は、2人以上だと効果が薄れるのでご注意ください。
因みに“やすらぎのすず”という道具を持っているとその効果が格段に上がります。
アル「…なるほど…そうか…。しかし…“時間帯進化”はどうすればいいのだろう?」
何度もアルがページを捲ってみると時間帯進化に関することが書かれているページが見つかった。
早速それを見てみることにした。
――時間帯進化について――
“時間帯進化”に当てはまるポケモンは数少ないです。
大きくは朝、昼、夜に進化する種類に分けられます。
朝、昼に進化するのは、イーブイ、スボミー、ピンプク、リオル。
夜に進化するのはイーブイ、リーシャン、ニューラ、グライガーが当てはまります。
アル「…オレは…朝にしか進化できないのか。とりあえずこれは簡単な進化方法だな…」
…これを見る限りではカリオ先生もおそらく“なつき進化”の条件を達成していたということだろう…。
ギルガさんから聞いた話では先生とフェルナさんは確か恋人関係にあったはず…。“なつき進化”の所に書いてあったがトゲピーのトゲチックへの進化条件も“なつき進化”だった。
二人ともお互いを好き、好かれあってどちらも進化した…。そう考えればアルにとって頷け納得できる話であった。
アル「なつき進化…か。くっ、どうしてリオルはこんな進化方法なんだ…」
別に面倒臭いという気は無い…。しかし、この進化方法は好きになれなかった。
人と接することはそれほど好きではない…。レンやリーナ、ギルガさん達と一緒にいるところを見るとそんな風には思えないかもしれないが…。
オレは他人と必要以上に仲良くなったりするのは好まなかった。そんな関係になってしまったら……。
しかし、進化するためにはこれは避けて通れない道だ…。少し葛藤したが、アルはそう思い“なつき進化”の条件をこなすことにした。
さて…本を見る限りでは身の周りの人に当てはまる人は二人以上では効果が薄れる…と書いてあった。
と、いうことは誰か一人に絞る必要がある…。とりあえず“なつき進化”の条件を早く満たすためには、一番なつき進化に近い存在を選んだ方がいい。
マダムに対人関係を占ってもらうとしよう…。そう考え、アルは本を棚にしまい、究極の図書館を出てマダムのいる占い部屋へと向かった……。
★To be continued★
■作者から■
久しぶりに主人公主観をやりました。
今回のこれ以外の方法を書く方法が思いつきませんでした。ですので、やむをえず主人公主観を交えたのです。
セリフはやたらと長くするようなものではないですし、こういうモノローグ調にしなければ難しかったのです。
こんな未熟な文しか書けないですが、どうかご勘弁ください…。おそらくこれから主人公主観が増えると思います。
さて…話は変わりますが、僕は最近流行のものは小説にどんどん取り入れていくので…きっとどこかで見たことあるような…とかこれは○○のパロディだ。
みたいな風に見えるのが出てくるかもしれませんが、そこはご愛嬌ということで大きな目で見てください((
第5話 〜絆深き者 それは誰?〜
占い部屋へと一人やってきたアル。
どこかミステリアスな雰囲気が漂う。
ここでは黒いヴェールを被ったルージュラのマダムが占いを行ってくれる。
よく当ると評判であり、当らない確立は0.00000000000000000000000001……くらいらしい。
占い部屋に入ってきたアルにマダムが話しかける。
マダム「あ〜ら、アル君!久しぶりねぇ、君がここに来るなんて珍しい!明日は雨が降るわね」
雨が降るのは大袈裟すぎだ…。心の中でアルが呟いた。
アル「お久しぶりですマダム、今日は少し友人関係を占って欲しくてここへ来た。今、オレの身の回りの人の中でオレを最も信頼している奴を教えてくれ」
マダム「と、いうことは…恋愛運で占うというわけね…どこかに気になる子でもいるのかしら?遠回しな言い方をしてその子との関係を調べるとか企んでません?…ウフフ…」
人を可愛いとか、初々しいとか意外とか…そんな目で見るマダム。
アルは異性には別に興味がそれほどあるわけではなかった。
そんな風に言われ呆れ顔で彼は言葉を返した。
アル「変な誤解はしないでくれ…。そんなことはいいから早く占ってくれ」
マダム「んもうっ!つまんないですわね…。では、始めますわよ。…レダ・ハノイイ・ンバチイ・イアンレ…当るも八卦、当らぬも八卦と言うけれど
ヨイナラウ・ルタア・イタッゼ!レアカリヒ・ニタナア……カ――――ッ!!」
彼女の前に置かれた水晶玉が眩しく光り輝く。
マダム「…出ましたわ…。アル君を最も信頼している人…それは二人いる。レン君とリーナさんですわ…」
アル「やはりそうか……」
心の中で少し予想はしていたアルの中の占いの結果は的中した。
マダムにお礼を言い、アルは占い部屋を出た。
とりあえずアルはレンかリーナ…どちらか一人を選ぶ必要がある…二人以上だとなつき度の上がり具合が良くないと本に書いてあったからだ。
彼の中ではどちらでもいい…そう思ったが彼としては男との方がやりやすかった。
そう思ったアルはレンをなつき進化のパートナーをレンに選んだ。
早速、二年目になってもらった連絡用媒体アクセサリーで彼がレンに連絡をしてみる。
キーン…キーン…。
アクセサリーが水晶が光るような心地よい音を放つ。暫くしてレンがアルの連絡に出た。
レン「もしもし…レン・ソンゴですが?」
アル「アルクロードだ…。レン、今暇か?暇ならオレに少し付き合って欲しいのだが……」
アルがそう訊いてみた。ポケモン同士の付き合いでもすれば信頼度や好感度も上がるだろうと考えたからだ。
レン「あっ、わりぃ!今、オレちょっと後輩の女の子とデートしてんだ…。すまねぇな…」
詫びる彼の声が聞こえた後、アクセサリーから『どぉしたんですかぁ?レン先パ〜イ』と女っぽい声が聞こえてきた。
その後に『ああ、ちょっと同じチームの奴から!』と応対しているレンの声が聞こえた。
アル「そっちはそっちで忙しいらしいな…。分かった…ならいい。それではな…」
ヒュン!…と音を立てて連絡が切断された。
レンが暇ではないとは…。女好きがこんな所で邪魔なものになるとはアルは夢にも思わなかった。
アル「レンが駄目となると…パートナーは片方のリーナか……」
一度選んでしまうともうパートナーは選びなおせない…。しかし…早く進化はしたい…。
小さな葛藤をしたがアルは結局リーナにすることにした。
暇があるかは分からなかったが、アルはリーナに連絡をしてみた。
再び良い音をアクセサリーが放ち、彼女との連絡が繋がる。
リーナ「もしもし…えっと…リーナ・サーレイです……」
アル「アルクロードだ…。リーナ、今用事とか入っていないか?入っていないのならオレに少し付き合って欲しいのだが…」
リーナ「う〜ん、今は特に暇だったし…良いよ。どこかへ行ったりするの?」
アル「(しまった…。自分で付き合ってくれと頼んだのに…その後の事を考えてはいなかった…)」
今更断るのも何なのでアルはリーナにどうしたいか訊いてみた。
リーナ「う〜ん、そうだね…。クレヘヴン公園に行きたいな。今、ちょうど春だし桜の木が咲いてて綺麗だから見たいの…。いいかな?」
アル「ああ、構わない。それじゃあこの後、本部玄関前で待ち合わせだ。いいか?」
そう訊くと嬉しそうに『いいよ』というリーナの声がアクセサリーから聞こえてきた。
よっぽど桜の木が見れることが嬉しいらしい…。『分かった』返事を返しアルはアクセサリーの連絡を切断し本部玄関前へと急いだ。
――本部玄関前――
リーナとの連絡を終えてから、アルはすぐにここへとやって来た。
自分から頼んだのに遅れるのは申し訳ないと思ったからだ。
だが、あまり少し早く着過ぎたのか…リーナはまだ来てはいなかった。
暇だったのでふとアルは自分の服装を見てみた。
黒のチョッキ、青のスカーフ、波動増強リストバンド&アンクレット(実際は波導だったが)…。
任務の時と変わらない格好だ。せっかく遊びに行くのだから…こんな格好ではなくもう少し着飾った格好をすればよかったか…。アルは思った。
暫くしてリーナはやってきた。
彼女がやってきたのはアルが来てから十分経った時刻だった。
リーナ「ゴメン……ちょっといろいろ準備してたら…遅くなっちゃって……」
アル「いや…いいんだ。オレが少し早く来過ぎただけだからな……。それじゃあ…行こうか」
『うん♪』とリーナが少し弾んだ返事をした。
二人はクレヘヴン公園へと足を進めた。
★To be continued★
第6話 〜季節は春 桜咲く〜
二人はクレヘヴン公園へとやってきた。
ここは子供が遊びに来るようなただの公園。
ジャングルジムや砂場や滑り台など沢山の遊具があり、公園の中心にはラブカスのオブジェの噴水がある。
春には桜が満開に咲き、多くの花見客で賑わう。
沢山の桜の木があるが、その中には一際大きい桜がある。
それはまるで全ての桜のリーダーかのようで、幹も太く枝も長く沢山の花を咲かせるのだ。
リーナ「うわぁ〜、アハハ!とても綺麗〜」
桜の木を見てリーナがはしゃぎまわる。
アル「落ち着いてくれ……リーナ…」
リーナ「あっ…ゴメン、つい嬉しくて」
はしゃぐのをやめてリーナが謝る。
彼女がはしゃぐのも無理はない。
桜は本当に綺麗に咲いていて、あたり一面に桜吹雪が舞い桃色の風景だ。
公園の桜の木の下には多くの花見客が集まっており、一つ特別大きい桜にはかなりの客が集まっていた。
他の桜にも数人の客が集まっている。
アル「…で、お前は桜を見たいといったが、どこで見るんだ?」
リーナ「そうだね…う〜ん……じゃあ、あの桜の下で見よう」
一つの桜を指差すリーナ。
見たところあまり客はいない、少し寂しげな感じだった。
二人はその桜の木へと歩いた。
リーナ「うわぁ…やっぱり遠くと近くで見るのじゃ全然違うね」
桜の下へと来た二人。
この桜は少し盛り上がった土地に咲いているため、ここに座れば高い位置から多くの桜が見られる。
また土手のようになっているので座りやすく綺麗な芝生となっているため座り心地は抜群、寝転がるのにも最適だ。
アルとリーナは桜の下で二人腰掛けた。
リーナ「それにしても、本当に綺麗な桜だね」
桜を見ながらリーナが言う。
アル「そうだな…。クレヘヴン公園か…懐かしいな。よく遊んだ…」
リーナ「?…アルはここへ何度も来たことあるの?」
彼の言葉に気になったリーナが訊いてみた。
アル「ああ、子供の頃はよくここに遊びに来ていた。あそこに砂場が見えるだろう?あそこでよく友達のビッパとピカチュウで砂山を作って遊んでたりしたんだ」
リーナ「そうなんだ……フフフ」
口に手を当てて笑うリーナ。
アル「どうした?何か可笑しかったか?」
リーナ「いや、いつも冷たそうに振るまってるアルでも、小さい頃はそういう可愛い所もあったんだなぁ…って」
アル「確かに…今はだいぶ冷めたな。自分でも分かる。昔は無鉄砲で腕白だった…。今こんな性格になったのは、カリオ先生が死んでしまってからだな…。先生の死がショックで…あまり誰とも話さなくなって…そこからだな…」
リーナ「あっ…ゴメン…。辛い過去を思い出させちゃって……」
アル「別にいいさ。さ、こんな話はやめて花見を十分に楽しもう」
それから結構な時間が過ぎた。
時刻は3時くらい…小腹でも空いてくるような時間だ。
最初は沢山いた花見客も少しずつ減ってきて公園にいるのは、アル達も含め少しの花見客と遊具で遊ぶ子供たちとその親くらいである。
少し暇になってきたのかアルは大きな欠伸をする。
アル「…ふぅ…そろそろ腹が減ってくる時間だな…何か食べたくなるな…」
リーナ「あっ、それなら良い物があるよ」
と、リーナは鞄からプラスチックの容器を取り出した。
リーナ「本部から出てくる前にガルーラおばさんに作ってもらったんだ。どうぞ」
容器がパカッと開き、美味しそうな三色団子が姿を現す。全部で三つある。
アル「美味そうだな…それじゃあいっ…」
団子に手をかけようとした時、アルの手が止まった。
アル「(ここで…団子を全てリーナにあげれば…信頼度や好感度が上がるかもしれない…。そうなれば“なつき進化”に一歩近づく…)」
その考えが頭に浮かびアルはリーナに言った。
アル「あっ…すまない。オレは甘いもの苦手だから…団子はいらない。リーナが全部食べていい」
リーナ「そうなの…。ごめんね………私知らなくて…」
悲しそうな表情を浮かべてリーナが俯く。
アル「いや…オレが甘いものが嫌いなのがいけないんだ。だからリーナ、そんなに暗くならなくていいから、団子食べて…元気出せよ」
容器の中の団子を一つ取り出しアルがリーナに差し出す。
リーナ「え……あ……う、うん……ありがと……」
ほんのり頬を赤く染めてリーナは団子を受け取った。
そして一番上の紅色の団子を一つパクリと食べた。
リーナ「美味しい、さすがガルーラおばさんが作ったお団子だね」
彼女の言葉を聞いてアルは少し団子が食べたくなってきた。
甘いものが苦手と言ってもそれは嘘。実際には腹を空かせているのだから。
空腹で腹が鳴り腹を押さえるアル。その音を聞き取ったリーナがアルに言った。
リーナ「あっ、ゴメン、私だけ一人で食べて…。ちょっと待ってて…!」
団子を食べるのをやめ、リーナは目を閉じた。
リーナ「木の実…木の実……あった!はぁっ!」
リーナが叫ぶといきなりアルの前に大量のオレンの実がドサドサと落ちてきた。
あまりにいきなりだったのでアルは後ろへとひっくり返ってしまった。
アル「こ、これは…?」
リーナ「私の力で近くにある木の実を見つけてテレポートで持ってきたの。
お腹空いてるんだよね?これ……食べて」
沢山あるオレンの実を一つ手に取りリーナがアルに差し出す。
起き上がってアルはそれを受け取る。
アル「…あぁ…ありがとう…」
お礼を言うとリーナは『フフッ』と笑みを浮かべて笑い、また団子を手に取り食べ始めた。
美味しそうに団子を食べる彼女の姿に、アルは少し見とれていた…。
アル「(…リーナ……優しい子だ…)」
無意識のうちにアルはそんな風に思うのだった。
はっと我に返り彼は彼女に差し出されたオレンの実を齧った。
その一つ食べ終えて…また一つ手に取り齧った。
そしてまた一つ…また一つと…。
★To be continued★
第7話 〜美味しいお菓子 チョコレート〜
クレヘヴン公園での話を終えて、アルとリーナの二人は本部玄関前へと戻ってきた。
時刻は夕方ほど…ヤミカラスが鳴いて帰る時間だ。
リーナ「今日は…楽しかったよ、ありがとう」
アル「オレの方こそ楽しかった。こんなに楽しかった日は久しぶりだ」
リーナ「また…今度どこかへ誘ってね。私、アルと一緒にいるととても楽しいよ…って、あれ?私、何言ってるんだろう…?」
自分のした発言に赤面して慌てるリーナ。
リーナ「え…え…えっと…その…え…あ…あっと…じゃ、じゃあまた明日会おうね。うん…バイバイ」
そう言ってリーナは急いで本部の中へと入って去っていった。
アルもゆっくりと本部の中へと入っていった。
――ポケモン食堂――
本部に入ってアルはポケモン食堂へとやってきていた。
まだ夕方のためかほとんど誰もいない。
アルはそんな食堂で少し早い夕食を取ることにした。
アル「ガルーラおばさん、オレンカレー、バンジサラダをください」
ガルーラ「おや?アル君、今日は一人かい?珍しいね。じゃあ、今作るよ!ホアチャチャチャ!!」
毎度の如くガルーラは手を素早く動かして料理を作った。
数秒で料理は完成しお盆に乗せガルーラはアルに手渡した。
ガルーラ「はい、お待ち!オレンカレーとバンジサラダね!モリモリ食べて大きくなってね!君はまだ小さいんだから!ハッハッハ!」
アル「ハハハ……ありがとうございます」
気にしているところ突かれ、アルは苦笑いしながらお盆を受け取りテーブルに着いた。
アル「……オレンカレー…か。沢山食えば…背は高くなるだろうか…」
そう言ってパクリと一口オレンカレーを食べた。口の中に辛味といろいろな味が混ざり合う。
カレーを食べながらアルは少し考え事をしていた。
アル「(あの時…オレはどうしてリーナを見ていたんだ…?)」
いくら考えても答えは出てこない。
いきなりリーナの優しさに触れて何か錯覚を起こしたのか。
それとも彼女の笑顔に惹かれたのだろうか。
いくつか答えは出てきたがそれが本当の答えかは自分では分からなかった。
アル「(それに…リーナが別れ際にいったあの言葉…。あんな風に言われたのは…初めてだ…。
あいつからあんな言葉が出たということは…オレへの信頼度は…高まっているということなのだろうか…)」
養成学校時代、彼は冷たく振舞っていたため友人と呼べるような存在はおらず、そんな風に言ってくれる者は彼の周りにはいなかった。
だから、アルは彼女に『一緒にいると楽しい』と言われ、感情を面には出さないが内心とても嬉しかったのだ。
進化に近づいたという実感を味わったからではなく、純粋に嬉しいという気持ち。そんな気持ちをアルは抱いた。
それからアルはオレンカレーを完食し、バンジサラダも完食し非常にバランスの取れた夕食を食べ終えた。
立ち上がりお盆をカウンターへと返却しにいくアル。
アル「ごちそうさまでした。美味かったです」
ガルーラ「は〜い、ありがとね〜。あたしの料理美味しいって言ってくれて嬉しいよ」
笑顔でアルが差し出したお盆を受け取るガルーラ。
ふと、思い出したようにガルーラが訊く。
ガルーラ「そういやアル君、何かさっきまで考え事しながら食べてたような気がしてたけど…何か悩み事でもあんのかい?
あるならあたしが相談になるけど…」
アル「いえ、大丈夫です。心配してくださってありがとうございます」
ガルーラ「う〜ん、そうかい。なら、いいんだがね。まあ考え事、悩み事、元気が無い時とかはこれ食べて元気だしな」
そう言ってガルーラはカウンターの陰でガサゴソやり、何かを取り出した。
アル「…何ですか?それは」
ガルーラが取り出したものは何か銀紙が包装されたものだった。
包装からはみ出ている銀紙は何やら四角い区切りが何個もある。
ガルーラ「これはチョコレートっていってね、オッカの実から作るお菓子なんだ。
甘くてとっても美味しいし、イライラしてる時とか食べると心が落ち着くよ。今日の食後のデザートにでもしてちょうだい。はい」
片方の手でアルの手首を握り自分の前まで持ってきて、もう片方の手でガルーラはアルの掌にチョコレートを乗せた。
アル「あ、ありがとうございます。それじゃあ、おばさん。また明日」
軽くお辞儀をしてアルはポケモン食堂を後にした。
それからポケモンの湯へと行きその後、寮の自分の部屋へと戻ってきた。
時刻はもう夜…。窓からは綺麗な月と星が見える。
自分の部屋のベッドの上でアルは仰向けになって寝転がっていた。
アル「…今日は…たった一日だったのに…たくさんのことがあった。
後輩を施設案内したり、リーナと花見をしたり…ガルーラおばさんからはチョコレートを貰った…。そうだ、チョコレート…」
思い出しアルはポケットにしまっておいたチョコレートを取り出した。
『一口食べてみるか…』と思い、銀紙を剥がすアル。中から茶色い物体が姿を現す。
アル「これが…チョコレート…」
一口齧る。パキッ!と言い音がし、口の中に甘くて少し苦い味が広がる。
口の中のチョコレートは少しずつ溶けていき、最後にはなくなった。
アル「美味しい…。世の中に…こんな美味しい物があったんだな…。良い物をもらったな」
そう言うとアルは銀紙でチョコレートを包みポケットにしまった。
部屋の明かりを消しアルは深い眠りに就いた…。
★To be continued★
第8話 〜自分が生まれし所 故郷〜
新しい朝がやってきた。
眩しい朝日が窓から差し込んでくる。
外でムックルやポッポが鳴いている。
アル「…くはぁ…あぁ……朝か…」
欠伸しながら起き上がるアル。眠そうに目を擦る。
ベッドから飛び出しアルは、顔を洗い、歯をみがいて部屋を出てポケモン食堂へと朝食を摂りにいった。
――ポケモン食堂――
美味しそうな匂いが漂うポケモン食堂。
アルはガルーラに注文をした。
アル「おばさん、バタートーストセット、しあわせタマゴオムレツ、サラダ…その三つをください」
ガルーラ「あいよ!今日も頑張りな!!ホアチャチャチャチャ!!」
あっという間に完成し、料理をお盆に乗せてガルーラはアルに手渡した。
ガルーラ「はい!出来たよ!ついでにモーモーミルクも追加しといたよ!君くらいの歳は今一番からだが成長するときなんだから、牛乳飲んで背を伸ばしな!ハッハッハ!!」
アル「は…はぁ…。あっ、そうだおばさん。チョコレート…無くなったらまた取りに来てもいいですか?」
ガルーラ「いいよ!全部あたしが作っちまうんだから!」
アル「ありがとうございます。では…」
お盆を受け取りアルは近くのテーブルに着いた。
バターの塗られたパンを一口食べる。香ばしい香りと風味が良い。
アル「やはりおばさんが作る朝飯は最高だ」
そんな風に呟きながらアルが朝食を食べていると、途中でレン、リーナがやってきた。
二人とも一度カウンターで注文をした後、数秒で作られた料理を持ってアルが座っているテーブルに着いた。
レン「よぉ、おはようアル!」
リーナ「おはようアル。フフフ」
アル「ああ、おはよう二人とも」
三人とも朝の挨拶を交わす。
朝食を食べながらの会話が始まる。
レン「なぁなぁ、気になってたんだけどよ。二人の生まれた所ってどんなところだ?リーナは知ってるけどあんな風景しか見られなかったから、昔はどんな感じだったのか教えてくれよ」
アル「オレはクレセント城下町に住んでいた。良い町並みで大きな時計台がシンボルだったな。今でもオレの家は残ってるはずだ」
リーナ「私が生まれたのは二人も知ってるサーラルドだよ。私みたいなラルトス系統のポケモンがいっぱい住んでた。緑と水が豊かでね、とても綺麗な所だったよ。今じゃ見る影もないけどね…」
レン「そっか〜、二人とも良い所で生まれたな〜。オレなんか田舎臭いとこで生まれたぜ」
アル「レンの生まれた所はどこだ?お前の住んでたところとか、オレ達はあまり知らないが……」
レン「ん?オレが生まれたのはな……」
キーン…キーン…。
アルの持っている連絡用媒体アクセサリーが音を立てた。
アル「何だ…?もしもしアルクロードです……」
ラグナ「総長ラグナだ。レン、リーナを含めたお前たちに任務を言い渡す。総長室まで来てくれ!すぐにだ!」
アル「…分かりました。すぐ行きます」
そう言ってアルは連絡を切断した。
リーナ「何だったの?」
アル「任務が入ったらしい。よく分からないがすぐに来て欲しいらしい。さっさと朝食を食べて行こう」
三人は会話を中断し朝食を食べることに集中し、五分をしないうちに完食した。
お盆をカウンターへと返し、三人は急いで総長室へと向かった。
――総長室――
アル「総長、任務を受けに来ました」
ラグナ「よく来てくれた。今回の任務……お前達には一週間、異国シナングにあるセイントガーディアンズ・ユナリッジ支部に移ってもらう」
レン「な、なんだって!シナングだって!?」
大声をあげてレンが大袈裟に驚く。
リーナ「び、びっくりしたよ…。レンは異国シナングを知ってるの?」
レン「知ってるも何もそこはオレの故郷さ」
ラグナ「うむ、ユナリッジ支部があるのは彼の故郷だ。今、ユナリッジ支部は10人の光の守護者が任務で一週間いなくなり、かなりの人手不足らしいのだ。
そこで彼等が帰ってくるまでお前達にはユナリッジ支部に滞在して欲しいのだ。この任務、引き受けてくれるか?」
アル「オレは構わないですよ。支部があるのはだいぶ前から聞いていたし、そこがどんなところかも気になっていたところでしたから」
リーナ「私もいいです。レンの故郷がどんなところが見てみたいですから」
二人は賛成のようだが、レン一人は乗り気じゃないように表情を歪ませていた。
アル「…?…どうしたレン?」
レン「オレは…行きたくねぇよ……だって…シナングに戻ってもし…」
ラグナ「もし親に見つかったら酷く怒られ…家に連れ戻されるから…か?」
彼の言うことを既に知っていたかのようにラグナが言った。
レン「総長?何でそれを…」
ラグナ「だいぶ前に本部に『レンはいますか?』とお前の親から連絡が来たことがあってな…。お前が親に『セイントガーディアンズになってくる』とだけ言って家を飛び出したと聞いている。
それでお前は連れ戻されないため、親に自分の居場所が分からないよう偽名まで使っていたらしいな…。レン・ソンゴ…いや、レン・ソンウォン」
自分の本名を言われドキッとするレン。少し項垂れた様子でラグナに言葉を返した。
レン「……バレてましたか…。でも…それなら何で総長はオレを親に引き渡そうとしなかったんですか?」
ラグナ「…お前の両親はお前が出てった事に対しては怒っていないようだ。私はただ『息子をよろしくお願いします』とだけ言われた。良い親をもったな…レン」
レン「親父とお袋…そこまでオレの事考えてくれてたんだな…。何か総長の話聞いたら行きたくなってきたっス……」
そう言うとレンはそのまま話し続けた。
レン「実はオレ…本当はもう親父とお袋に謝って、アルとリーナの二人を連れてシナングに行こうかな……なんて思ってたんです。妹もいるし、寂しがっているだろうから……。
けど、中々決心がつかなくて…。だけど、総長の話で決心はつきました。オレも……行きます!行かせてください!」
ラグナ「うむ、よく言ってくれた。では三人共、一週間気をつけて行ってきてくれ!」
アル・レン・リーナ「はい、総長!」
三人は揃って大きな返事をし、総長室を去っていった。
★To be continued★
第9話 〜異国シナング ユナリッジ支部〜
ユナリッジ地方は緑が多く、全地方の中で最も自然豊かな地方と言われている。
しかし…異国に近づくにつれそんな人々の言葉も覆されそうな雰囲気だ。
シナングへの道中はどこもかしこも木や草花が生い茂っていたが、次第にそれも少なくなり人工的なものが多くなってきた。
そんな道をアル達は歩いていく。シナングへの道のりはかなり長く朝、本部を出たのにもう日は空高くまで昇っていた。
アル「ふぅ……まだか…。遠いな…シナングへは…」
あまりの道のりの長さにアルが本音をこぼす。
レン「まぁな…オレもクレヘヴンまで来たときは思ったぜ……。うぅむ…我ながら遠くまで来たもんだな」
リーナ「…はぁ…はぁ…ねぇ二人とも…。ちょっとこの辺で休まない?私、疲れちゃった……足が痛いよ……」
辛そうな顔をしながらリーナが二人に訴えかける。息も荒く歩いているのがやっとといった感じだ。
アル「……そうだな。リーナが休むのは構わないが…レンはどうだ?」
レン「オレも一度休んだ方がいいと思うぜ。まだここから10kmくらいはあるからな……リーナ、休んでいいぜ」
リーナ「…うん……ありがとう二人とも……」
三人は一度道から外れて小さな木陰で休むことにした。
近くには小川が流れており、さらさらと心地よい音がする。
アル「ほら、水を汲んできた。喉が渇いてるなら飲めばいい」
近くで汲んできた水の入った水筒をリーナに渡す。水は透き通っていてとても綺麗だ。
リーナ「…あ…うん……」
渡された水を飲むリーナ。よほど喉が渇いていたのか、水はあっという間に無くなってしまった。
リーナ「…とても美味しかったよ。……ありがとう」
レン「お〜い!オレは木の実を採ってきたぜ!腹いっぱいにして元気出せよ」
腕いっぱいに木の実を抱えてレンがやってきた。甘いモモンの実、水分の多いイアの実、雷の力で元気が出るソクノの実。
どれもやわらかい木の実ばかり。リーナの口に合わせてレンは考えて持ってきたようだ。
リーナ「レンもありがとう、ありがたくちょうだいするね」
モモンの実を一つ手に取って食べるリーナ。モモンの実を食べ終えるとまた次の木の実を手にし食べはじめた。
とりあえず必要なものを持ってきて暇になったアルとレンの二人は話を始めた。
アル「レン、お前の故郷のシナングという所は、どんなどころなんだ?朝の続きだ、教えてくれないか?」
レン「ああ。シナングは『シーナ』と『ソルング』っていう二つの地域に分かれていて、オレの家があるのはシーナの方だ。
そこは緑の多いユナリッジとは思えないほど人工的なものが多くて緑が少ないな。なんつーか都会って感じだぜ。まっ、オレのある家はそこからちょっと外れた森ん中だけど…。支部はシーナの町の中心にあるぜ」
リーナ「ねぇ…気になってたんだけど、何でレンは本部に来たの?近くにユナリッジ支部があるからそこへ行けばよかったのに……」
イアの実を食べながらリーナが訊く。
レン「ああ…まぁ、親にすぐに連れ戻されないように……っていう理由なんだけど、本当の理由は支部より本部に所属してたほうが女の子にモテるかなぁ……なんて思ってな!ハハハハハ!!」
彼の答えにアルとリーナの二人は呆れていた。
一人だけ笑っているのはレンただ一人。
レン「お…おい!二人とも何ちょっと静かになってんだよ!男なんだからモテたいのは当たり前だろ!!」
アル「(……やはりレンは女好きだ……)」
リーナ「(レンって本当に女の子が好きなんだね…。何かレンって軽いなぁ……)」
そんな会話をしているうちにリーナはまた歩ける元気を取り戻し、再び三人はシナングへの道を歩いた。
休憩してからもう二時間半は過ぎようとしていた。
日は少し傾き始め、今は3時程だろう。
三人はかなり遠くまで歩いてきた。木々は少なくなりレンの言っていた通りかなり人工的なものが多くなってきた。
遠くの方に何やら賑やかな町並みが見える。しかし、そんな町もない小さな村のような所も見える。そしてその間にあるのはかなり巨大な建物。
レン「おっ!見えてきたぜ!あの町がシナング・シーナの町、すっげぇ所だろう?で、町の中心にあるでっかい建物がユナリッジ支部だ」
アル「すごいな…。一番賑わっていると言われるクレヘヴンにも負けないほどだな、シナングは……」
リーナ「うん、本当に凄いな。レンはこんなすごい所に住んでいたんだね」
レン「さっ、あと少しだ。急ごうぜ!」
三人は本部に向かって歩き出した。
それから20分ほど歩き、漸くユナリッジ支部へと辿りついた。
レン「さっ、ついたぜ!ここがユナリッジ支部だ!」
支部はかなり巨大な建物だった。
縦横にもかなり広さがあり威圧感を感じるのは機械でできた巨大な門。
いや、門だけでない。建物全体が機械仕掛けのようだ。まさに近未来的。
アル「大きい…。下手すれば本部よりすごいところかもしれない…」
リーナ「じゃあ……行こう」
三人が門の前に立った。その時だ!
ビー!ビー!ビー!
アヤシイモノハッケン!アヤシイモノハッケン!
いきなり危険を知らせるようなブザー音と喋る電子音が門から聞こえてきた。
レン「な、何だ!?」
レンが驚いていると門の中からポリゴンZが飛び出してきた。
ポリゴンZ「おい!お前達は何者なんだい?まさか…ダークバーサーカー残党じゃあ…ないよねぇ…?」
アル「ち、違う!オレ達はユナリッジ支部からの依頼で本部からやってきたセイントガーディアンズだ」
ポリゴンZ「はっ?あんた達みたいな子供が?アーッハッハ!……そんな話信じられるわけないでしょう?証拠はないわけ?」
リーナ「…多分、ここの偉い人が知ってると思うんですけど……」
ポリゴンZ「……ふ〜ん、じゃあもし嘘だったらあんた達の命貰うね」
そういうとポリゴンZの腕と尾が槍状の物に変化し三人の左胸を突きつけた。
彼だか彼女だか分からないがポリゴンZは、かったるそうに何者かと連絡をとりはじめた。
ポリゴンZ「…あっ、支部長?アタシだけどさ、何かリオルとモウカザルとキルリアの子供がセイントガーディンズって名乗ってんだけど……うんうん……分かった」
支部長と思われる人物と連絡を取り終えたポリゴンZは腕と尾を元に戻し殺気が消えた。
ポリゴンZ「あんた達、本当にセイントガーディアンズみたいだねぇ。良いよ、行きな。奥で支部長が待ってるよ」
そう言うと彼女(?)は門の中に入っていった。すると、巨大で重たそうな門はギギギィィと大きな音を立てて開いた。
レン「何か変な誤解されてたみたいだけど…良いみたいだ。中に入ろうぜ」
門をくぐり三人は支部内へと入っていった……。
外観は機械的だったが中は以外と普通のようで、本部とそんなに変わらない。ただ石で作られた壁や床が多いように思えた。
しかし、少しひんやりとしていで涼しげだ。そんなにポケモンもあまりいない。
アル「奥で支部長が待ってる…といわれたが、どこに支部長はいるんだ…?」
支部長室の場所が分からず三人が戸惑っていると、急に床に矢印が浮かび上がった。
矢印の指し示す方向には更に矢印、更に矢印と矢印が続いている。
リーナ「もしかしてこの矢印の方向に沿って行け…ってことなのかな?」
レン「考えてても仕方ないぜ、とりあえず行って見よう」
三人は矢印の指し示す道順に歩いていった。何度も矢印を見ながら辿りついた先は一つの扉。
その扉の前に立つと急に扉に光の線が走り電子音を立てて開き、三人は扉の奥へと入った。
*「やぁ、君達。よく来てくれた」
扉に入った先にいたバクフーンがアル達に話しかける。
アル「……もしかして貴方が支部長ですか?」
バクフーン「そうだ。初めましてクレヘヴン・セイントガーディアンズ本部の光の守護者たち。僕はここユナリッジ支部の支部長、イェン・ファーと言う。宜しく頼む」
イェンと名乗ったバクフーンは軽く頭を下げて挨拶をした。
アル「アルクロード・ヴァンセンスという者です。アルと呼ばれているのでそう呼んでください。宜しくお願いします」
レン「オレはレン・ソンゴ……じゃなくて、レン・ソンウォンと言います。宜しくです」
リーナ「私はリーナ・サーレイです…。えっと……宜しくお願いします」
三人も挨拶を返した。
これから一週間、彼等のここでの生活が始まる…。
★To be continued★
第10話 〜レンの家 家族〜
ユナリッジ支部長イェンが話を始める。
イェン「ふぅ…。遠いところまでよく来てくれたね。さっきはサンが失礼した」
アル「サン…ってさっきのポリゴンZですか?」
イェン「そう。プログラムネーム、サン・スー。この支部の防衛システムだ。この支部はここ一つだけで大きなネットワークができていて、彼女をはじめたくさんのポリゴン達がここを管理している。
さっき君達を案内した矢印も、ポリゴン達が支部のシステムを操作して出したものだ」
レン「へぇ…すっげぇな〜」
周りを見渡すレン。
本当になんの変哲もなさそうな床や石壁…。中にはネットワークが出来上がっているとは誰も思わないだろう。
暫くレンが床を見つめてると床に光線が走った。おそらくポリゴンが何かのシステムが操作しその命令が光となって走ったのだろう。
イェン「さて、本題に入ろうか。君たちに来てもらったのは他でもない。現在このユナリッジ支部は深刻な人手不足を抱えている。
この状態でもし何者かに襲撃を受けたら大惨事となる。そのため少しでも戦える者を増やそう、任務を請け負える人数を増やそうと君達を養成した」
リーナ「ユナリッジって、そんなにセイントガーディアンズが少ないのですか?」
イェン「ああ。一週間任務でいない10人、僕も含めても13人しかいない。他はここの食堂などに勤めている者やポリゴン達だけ…。あくまでポリゴンはシステムを管理するだけの存在。サンを除いて戦闘ができない者たちがほとんどだ」
アル「となると…今いるのは…三人。そのうち二人がイェンさんとサンだとすると……あと一人は誰なんですか?」
イェン「それについては明日話そう。今日は少し時間がないからな…。明日から君達には頑張ってもらう。頼むぞアル、レン、リーナ」
『はい!』と三人は返事を返した。
その返事の後、リーナは思い出したように訊いた。
リーナ「えっと…じゃあ、イェンさん。私達が今日寝る部屋を教えてください」
そうレンが訊くとイェンは少し申し訳なさそうな顔をして答えた。
イェン「すまない…。ユナリッジ支部はここに所属する人数分しか部屋を用意していないんだ…。今いない者の部屋を使うわけにもいかないからな…。部屋を作るにも最低でも一週間はかかるから……悪いが今日はどこで野宿…」
レン「ああ!それなら大丈夫っすよ!」
彼の言葉を遮るようにレンが言った。
レン「実はオレ、ここシナングの出身ですから家がすぐ近くにあるんです。オレ達はそこで寝泊りして出勤しますから安心してください!」
イェン「なら心配ないな。では三人とも…また明日」
彼の言葉を最後にアル達はユナリッジ支部を出た。
三人はユナリッジの門の前にいた。
ポリゴンZ……サンに襲われたあの門の前だ。
レン「さてと…んじゃオレの家に行くか!着いて来い二人とも!」
歩き出す三人。
ユナリッジ支部は大きすぎるため多少離れても小さく見えたりすることはなかった。
レンの家に向かう中、一つ気になったアルがレンに訊いた。
アル「…レン…お前はまだ親に勝手に家出たことを謝っていないんだろう?そんな状態でお前とオレ達は受け入れてもらえるのだろうか?」
そう言われるとレンは歩いていた足をピタリと止めた。
彼の体からは大量の汗が流れている。
リーナ「……どうしたのレン?」
レン「ワリィ……そこまで考えてなかった……」
アル「何だと…!」
レン「…………まあ…きっと何とかなるだろう!行こうぜハッハッハ!」
笑い飛ばすレンだったがアルとリーナは少し不安な表情が浮かんでいた…。
レン「……あったぞ!ここがオレの家だ!!」
支部から歩いて五分。
小さな民家が一つポツリと立っていた。ここがレンの家。
二階建てでどこにでもあるような普通の家だ。
リーナ「…ここがレンの家なんだ。…それでで、大丈夫なの本当に?」
レン「大丈夫大丈夫!んじゃ、いくぜ!ただい…」
*「バカモノ――――――――――!!」
レンが家の玄関の扉を開けた瞬間、家の中からものすごい大きな怒号が聞こえてきた。
“ハイパーボイス”のようなその声にレンの体は大きく吹き飛ばされその先にあった木におもいきり叩きつけられた。
声の主が家から出てくる。その正体は大きく筋肉質な茶色のローブを羽織ったゴウカザルだった。普通のゴウカザルは1.2mだが、このゴウカザルは2mほどもある。
ゴウカザル「全く!何年家を留守にしていたと思っているんだ!このバカ息子が!!」
レン「い…いってぇ…。わりぃ…親父…。反省してるよ……」
遠くからレンがよろめきながら歩いてきて、ゴウカザルに謝る。
彼の前にやってきた後、レンが二人に言う。
レン「紹介するぜ…。これがオレの親父……ロン・ソンウォン…だ…」
アル「この人が……。あっ…オレはアルクロードといいます…。以後、宜しくお願いします…」
リーナ「わ、私は…リーナっていいます。レンのチームメイトです…」
ゴウカザル「…私がレンの父、ロンというものだ。息子がいつも世話になっているようだな…ありがとう。さっきは見苦しいところを見せてしまったな。すまない…」
頭を下げて少し鼻息荒くロンが言う。
レン「お、おい!親父、そんな頭下げなくてもい…」
ロン「お前は少し黙ってろ!!」
“マッハパンチ”で彼がレンを吹っ飛ばす。さっきより威力が凄いのか吹き飛ばされた先にあった木にレンがぶつかると、その木はミシミシと音を立てて倒れた。
ロン「…また見苦しいところを見せてしまった。重ねて詫びよう」
アル「…い、いや…そんな…」
リーナ「そんな気にしてないですから……はい…」
ロン「…ありがとう。さぁ…中に入りなさい。そのために来たのだろう。レン…許してやろう。お前も中に入れ、母さんとリンが心配して待ってるぞ」
そう言ってロンは二人の肩を押して家の中へと入れた。
吹き飛ばされたレンも後から走ってきて、家の中へと入り入り口の扉をバタンと閉めた。
ロン「母さん、レンが帰ったぞ。しかも進化してな!」
*「本当!?今、行くわ!」
その声が聞こえて数秒後、奥から紺色のローブを羽織った一匹のキュウコンが出てきた。
そのキュウコンはレンの姿を見るや否やいきなり抱きしめた。
キュウコン「レン……よく帰ってきたわね…。母さん、すごく心配してたんだから……」
レン「うっ……苦しいぜ…お袋……。しかも、チームメイトの前だぞ…恥ずかしいだろ…オレ、もうガキじゃねぇんだから…」
キュウコン「あらっ、ごめんなさい!」
そう言ってキュウコンはレンから離れた。
息を荒くしながら彼がアルとリーナに言う。
レン「…えっと…これがオレのお袋…。ラン・ソンウォンだ。どうだ?これでも結構歳いってんのに二十代みたいにピチピチで可愛い母さんだろ?」
キュウコン「こらっ!余計なこと言わなくていいの!あっ、すみませんね。私がレンの母親のランと申します。息子がお世話になってます。これからもレンと仲良くしてやってくださいね」
アル「……あ……はい…オレはアルクロード…レンのチームメイトです。宜しく…お願いします」
リーナ「えっと…私はリーナと言います。同じくレンのチームメイトです、よろしくお願いします」
ラン「こちらこそ。フフッ、可愛い子達を連れて来たわねレン」
*「ん?なになにお母さん?」
家の二階から紺色のローブを羽織った小さなロコンが降りてきた。
ラン「リン!レンが帰ってきましたよ!進化してね」
ロコン「本当!あっ、じゃあこのモウカザルがお兄ちゃん!うわぁ〜!お帰りなさいお兄ちゃん〜!」
リンと呼ばれたロコンはレンの姿を見て彼に抱きついた。
衝撃で後ろへ倒れそうになったがレンは何とか体勢を整えアル達二人に言った。
レン「…ハハッ、久しぶりだなリン!大きくなったなぁ〜!…おっと、紹介が遅れた。こいつはオレの一つ下の妹のリン・ソンウォンだ。可愛いだろ〜?」
ロコン「初めまして、兄がお世話になってます。私はリンって言います。よろしくお願いします」
リンがレンから離れて二人に向かってお辞儀をする。
アル達二人もお辞儀を返して彼女に挨拶をした。
ラン「……でもレン、どうして急に戻ってきたの?戻ってくるなら連絡の一つくらいくれればよかったのに…」
レン「ああ〜…実はな…ゴニョゴニョ……」
ランに耳打ちをして理由を説明するレン。
理由を理解したようにランはうんうんと相槌を打ち『分かったわ』と返事を返した後、アルとリーナに向かって言った。
ラン「レンからワケは聞きました。いつまでもこの家に居て結構ですよ。貴方もいいですね?」
ロン「ああ。ここで追い返すのも申し訳ない。大したことはしてやれんし汚いところだが勘弁してくれ」
アル「大丈夫です。一週間泊めてもらえる…それだけで十分です」
リーナ「そうです。贅沢なんていいません。ありがとうございます」
ラン「じゃあ、夕飯にしましょう。皆食卓に着いて。今日は炒飯ですよ」
彼女の呼びかけで皆、食卓に着いた。
美味しそうな炒飯が卓上に並ぶ。
全員『いただきます』と合掌した後、パクパクと夕飯を食べた。
楽しい夕飯の後、アルとリーナは近くの銭湯で汗を流し、またレンの家へと戻ってきた。
レン「さってと、んじゃあもう寝るか!アルはオレの部屋、リーナはリンの部屋で寝てくれ。狭いかもしんないけど勘弁な」
リーナ「分かったよ。リンちゃん、宜しくね」
リン「はい、リーナさん」
一足先に女性二人は部屋に行った。
レン「うっし、じゃあオレ達も寝るか!着いて来いアル」
アル「あ…ああ」
レンの後を着いていくと、彼の部屋に着いた。
長年使われていなかったのにも関わらず、結構片付いていて綺麗な部屋だ。
母親のランが彼がいつ帰ってきても良い様に掃除をしていたのか、それともレンがいつも片付けていたのか。
謎は深まるばかりだ。
アル「意外と片付いているな、お前の部屋は」
レン「おいおい、オレが怠け者だと勘違いしてないか?ま、確かに“なまける”覚えるけどよ。オレはこれでも綺麗好きなんだぜ?さっ、無駄話は終わりにして早く寝ようぜ!オレ、敷布団で寝るからお前ベッド使えよ」
そう言ってレンは押入れから敷布団を引っ張り出す。押入れも綺麗に整頓されているらしく、開けてもドバーッと中身が雪崩落ちてくることは無かった。
アル「いいのか?オレなんかが使って…」
レン「いいっていいって、気にすんな。いくらチームメイトっつってもここに一歩入ったらお前は客人みたいなもんだからな。最高に持成してやんないとな、へへっ」
アル「そうか…すまないな。でも……ありがとうな」
少し悪い感じをしながらもアルはベッドの上で横になり布団を被った。
レン「じゃあ、電気消すぞ。明日がんばろうなアル」
アル「ああ……おやすみレン」
上から垂れ下がっている紐を引っ張りレンは部屋の灯りを消した。
灯りを消しても賑やかなシナングの町のネオンの光が遠くで輝き、それが窓から見えてほんのり明るかった。
二人は寝息を立てて深い眠りに就いた……。
★To be continued★
■作者から■
作中に表現がありませんでしたが、レンの母親キュウコンのラン、妹のロコンのリンは後足で立っている状態です。
様は二足歩行をする人間と同じ形をしています、ということです。
どうでもいいですがレンの家族の名前にはツッコミどころが満載です(
第11話 〜精霊 笑顔浮かべし龍〜
朝がやってきた。
ここはレンの家、セイントガーディアンズ寮ではない。
朝の日差しを浴びてアルが目を覚ました。敷布団で寝ていたレンも目を覚ます。
レン「くっ…はぁ…。おはようさん…アル」
アル「…ああ…おはよう……レン」
大きく欠伸をするレンと目を擦るアル。
二人ともまだ眠そうだ。
無理も無い、昨日クレヘヴンからシナングという約20km以上ある道のりを歩いてきたのだから。
疲れが完全に取れていないだろう。
レン「さってと…。んあ?…ああ…じゃあ…朝飯食おうぜ…。お袋の料理はガルーラおばさん並にうまいぞぉ……」
ゆっくりと布団から抜け出しレンは扉を開けて部屋を出て、食堂に行った。
少し遅れてアルも部屋を抜けて食堂へと向かった。
ラン「あら、レン、アルクロード君。おはよう」
エプロン姿のランがキッチンで朝食を作りながら笑顔で挨拶をする。
アル「おはようございます、おばさん」
レン「おっ、いい匂いがすんなぁ。こりゃご飯と味噌汁だなぁ」
二人が食卓に着くと二階からリーナとリンが降りてきた。
リン「お母さん、おはよう。あっ、お兄様とアルクロードさんもおはようございます」
リーナ「おばさん、おはようございます。アルとレンもおはよう」
ラン「おはようリン、リーナさん。さて…そろそろあの人も起きてくるころですね」
噂をすれば陰…という奴か、ランがそんな風に言っているとレンの父、ロンが隣の部屋から起きてきた。
ロン「おはよう母さん、リン、レン。それからアルクロード君とリーナさんだったかな、おはよう」
起きてきたロンに食卓にいる者全員が挨拶をした。
家にいるもの全てが食堂にやってきたところで、ランが食卓に朝食を並べる。
茶碗に盛られた白い米、お椀に装われた味噌汁。クレヘヴンの朝食とはかなり違う。
使う食器も箸という木で作られた棒二本で食べ物を掴み取って食べるようだ。
レンから『シナングではこうやって飯を食べるんだ』と教えられアルとリーナは箸を使って朝食を食べた。
最初はうまく使うことができなかったが、次第に慣れていき食べ終わる頃には完全に使いこなし、朝食を完食した。
アル「美味しかったです。ありがとうございました」
ラン「美味しいなんて言ってくれて嬉しいわ。さぁ、そろそろ支部にいったほうがいいんじゃないかしら?」
レン「そうだな、行くか!アル、リーナ!」
リーナ「うん。では、私達は行きます。また戻ってきますので、よろしくお願いします」
レンの家族達と一度別れ、三人はユナリッジ支部に向かった。
数分あるいて支部に着いた。
昨日のようにサンと呼ばれるポリゴンZが飛び出してくることもなく、アル達は普通に門を通ることができた。、
支部内に入り支部長室へと来た三人。
そこには支部長イェン、リーナそっくりの格好をしたキルリアとフライゴンがいた。
アル「おはようございますイェンさん。…えっと、そこにいるキルリアとフライゴンは…?」
イェン「おはよう三人とも。あっ、このキルリアは……」
キルリア「あたし?あたしはサンだよ!」
いきなりキルリアの姿はポリゴンZへと変わった。昨日アル達を襲った門番のサンだ。
レン「すげぇ…でも、何でキルリアに?ポリゴンはメタモンみたいに“へんしん”は覚えないような…」
サン「昨日あんた達を見たとき密かに特性“ダウンロード”で情報を採取しておいたのさ。あたしは一度ダウンロードした者の姿、強さと同じになれるんだ。今キルリアになっていたのはこの支部長さんにたの……」
イェン「わーっ!わーっ!わーっ!」
彼女の言葉を掻き消すようにイェンが大声をあげた。
彼の体からは大量の汗が流れ出ている。
リーナ「ど、どうしたんですか?」
イェン「こ、細かいことはいいじゃないか!アッハッハッハ!!さっ、そんなことより今日はこのフライゴン君を紹介しよう。ファオロン」
部屋にいたフライゴンは頷きアル達の前に立った。横でイェンがフライゴンの紹介をする。
イェン「このフライゴンはユナリッジ支部のセイントガーディアンズの一人、ファオロンというんだ。仲良くしてやってくれ」
フライゴン「ハハハ〜、君達か〜支部長が要請した子達っていうのは〜。僕の名前はファオロン・チャンというんだ〜、よろしくね〜」
ニコニコ顔を浮かべて彼が挨拶をする。
彼は部屋で最初見たときから目が笑っていた。今でも目が笑っている。
アル「オレはアルクロード・ヴァンセンスと言う。宜しく」
レン「レン・ソンウォンってんだ。宜しく頼むぜ!」
リーナ「わ、私はリーナ・サーレイって言うの。…えっと…宜しく……」
ファオロン「ヴァンセンス君にソンウォン君にサーレイちゃんだね。もう覚えたよ、フフッ」
イェン「もう仲良くなったという感じだな。ファオロンのほのぼのとした性格のお陰だな。さて、今日の任務を言い渡そう」
自己紹介ムードが一変し全員がイェンの方を向く。
イェン「今日はシーナの町をパトロールしてほしい。最近町で見慣れないポケモンを見たと町人から連絡があってな。
怪しいと思った者を見かけたら連絡してくれ。12時になったら一度支部に戻って報告をし休憩をとったら夕方までパトロールをしてくれ。サンはいつものように門番を頼む」
アル「イェンさん…。何か…その怪しいポケモンに関して情報か何かないのですか?」
イェン「……見た者もはっきりと姿を見たとはいってなかったが、分かったことは長身で男性だったらしい。
そこから考えると見かけだけでオスメスの区別がはっきりするポケモンということだ。以上を踏まえてパトロールをしてくれ。それと…シーナの町は複雑だからクレヘヴンから来た君達には地図をあげよう」
イェンは机の引き出しから地図を三つ取り出しアル、レン、リーナに渡した。
イェン「僕からは以上だ。では、行って来てくれ」
アル・レン・リーナ・ファオロン「はい!」
大きな返事をして四人は支部を出た。
アル「ひとまず怪しい者らしきポケモンを見つけるには別れて行動したほうが良い。ここからは別行動だ」
ファオロン「うん、ヴァン君の意見は僕も賛成だね〜」
アル「ヴァ…ヴァンってオレの事か?ファオロン」
フォオロン「そっ!僕は人を名字で呼ぶ癖があるからね〜。スーもそうじゃなかったかな?でも、君は長いからヴァンなんだよ」
アル「は、はぁ……」
汗を垂らし少し納得したようなしてないような顔をするアルだった。
アル「と、とりあえず四人で別れてシーナの町を廻ろう。レンとリーナもいいな?」
レン「いいぜ!オレも少しそう思ってたしな」
リーナ「私もいい考えだと思うよ。それでいこう!」
アル「……分かった、それで行こう。12時になったら一度支部の支部長室に集合だ。では…別れ!!」
彼の言葉で一斉に四人が別れた。
アルはシーナの町にいた。
たくさんのポケモンが行きかい賑やかな町だ。
市場や屋台などもあり、買い物客も多い。
他には光のあまり当らなさそうな狭い路地みたいなところがあったりなど、クレヘヴンではこんな光景は見られなかった。
アル「さて…パトロールか…。と、いってもこんなに沢山の人の中から怪しい者を探せとは……困難を極めるな…」
適当に彼は周りを見ながら街中を歩いていた。
いろんなポケモンがいるが、怪しそうな者は見られない。
アル「……しかし…こんなにポケモンがいる町は初めて見た…。疲れるな…ポケモンに酔ってしまいそうだ……」
そんな風にアルが言葉を漏らしていると一匹のポケモンが話しかけてきた。
*「ごめん、キミキミ!」
アル「君って…オレの事ですか?」
*「そっ!き〜み!あのさ〜、オレ喫茶店行きたいんだけど、どこにあんのか教えてくんないかな?オレ、ここ来たばっかでさ」
アル「喫茶店ですか…?少々お待ちください」
イェンから渡された地図を広げるアル。
それを見ながら喫茶店の位置を聞いてきたポケモンにどこにあるかを説明する。
*「……そっか〜。でも…オレ物覚え悪いから分かんないな〜。君、オレを喫茶店まで案内してくんないかな?」
アル「…別に構いませんが…」
*「本当か?ありがとうな。あっ、オレはハッサムのブライル。それじゃ頼むわ」
★To be continued★
第12話 〜喫茶 グラティチュード〜
ブライルと名乗るハッサムを連れ、喫茶店へと案内するアル。
喫茶店は意外と近くにあり、来るのにはそれほど時間はかからなかった。
壁から垂れ下がる看板には英語でグラティチュードと書かれていた。それが店の名前らしい。
アル「ここですね。喫茶店グラティチュード」
ブライル「おっ!こんな近くにあったのか〜、気付かなかったな。ありがとな、せっかくだから一緒に楽しもうじゃないか」
アル「……すみません、気持ちはありがたいのですが、オレは今仕事があって…。それに金も持ってないですし…」
ブライル「いいさいいさ。それくらいオレが奢ってやるから。お返しがしたいんだよ、だから…なっ?」
何だか彼からは意地でもこの喫茶店で一緒に楽しみたいという感情が伝わってきた。
OKしてくれるまでずっと頼み込むぞ、そう言わんばかりの顔をしていた。
アル「……分かりました。少しだけですよ」
ブライル「よしっ、んじゃあ入るぜ」
アルの背中を押しながらブライルが喫茶店の扉をガチャリと開ける。同時にカランカランとベルの音も鳴る。
中は良い雰囲気を出している。いくつかのカップやティーパックが棚に並べられ、ケーキがショーケース内に入れられている。
客は少なく寂しげではあるが、まさに喫茶店という感じだ。
*「いらっしゃいませ。何名さまでございますか?」
少し厳つい顔をしたケンタロスが低い声で二人に挨拶をする。ここのマスターのようだ。
彼の放つ少し恐ろしげなオーラにアルは驚く。
ブライル「二名だ。空いてる席に案内してくれ」
マスター「畏まりました。どうぞこちらへ…」
彼の案内でアルとブライルの二人は一つのテーブルに着いた。
マスター「…ご注文は?」
ブライル「あぁ…じゃあ、パワフルハーブティーとチョコレートケーキを一つずつ」
アル「…オレは…メンタルハーブティーを…」
マスター「ご注文を承りました。少々お待ちください」
カウンターに戻りマスターはポットに入れてあったハーブティーをカップに注ぎ、ショーケースからチョコレートケーキを取り出し綺麗な皿に乗せた。
二つのカップとケーキを手に、マスターは二人のテーブルに近づき、静かにカップとケーキを置いた。
マスター「どうぞごゆっくり……」
マスターはカウンターへと戻り、食器の拭き始めた。
置かれたパワフルハーブティーをゆっくりと口に運ぶブライル。
ブライル「……うん、良い香りだ。そして美味い…。そうだ、まだお前に名前を訊いていなかったな。お前何ていうんだ?」
アル「…オレですか?…オレはアルクロード・ヴァンセンスといいます」
名乗った後、アルは静かにメンタルハーブティーを口に運ぶ。
ブライル「アルクロード………………うわーっ!!」
いきなりブライルが叫ぶ。あまりにいきなりだったのでアルは口に含んでいたハーブティーを吹いてしまった。
アル「な…なんですか?いきなり…」
ブライル「…お前、もしかして一年前に闇の王を倒したって言われている三人の中の一人、リオルのアルクロードか?」
アル「……そうですが…それが何か?」
ブライル「いやぁ…こんなとこで有名人に会ってしまうなんて…すごい偶然だな…と思ってさ」
再びブライルがハーブティーを口に運ぶ。
アル「…そうですか。そういえばブライルさん、貴方は最近ここに来たばっかと言っていましたが、どうしてここに?」
それを訊くと彼の表情は少し険しくなったように見えた。
ブライル「オレがここに来た理由か?オレはあるポケモンを探しているんだ。
ちょっとしたところで手に入れた情報で、そいつがここシーナに来てるって聞いてここにやってきたんだ」
アル「そうですか…。その貴方が探しているポケモンって…どんなポケモンなんですか?」
一度ハーブティーを一口飲んだ後、アルが訊く。
ブライル「フフッ、君に良く似たリオルだよ」
そう言って彼はチョコレートケーキをフォークで一口サイズに切って食べた。
それから二人は会話を楽しみつつ、ティータイムも楽しんだ。
かなり長い時間話をしていた所為か、時刻はもう12時を回っており、店の中にいた客もアルとブライルだけとなっていた。
アル「ふぅ…。もうこんな時間か…。少しと言っていたのに結構楽しんでしまったな…それじゃあオレ、もう行かなればならないのでこの辺で失礼します」
ブライル「そうか…。楽しかったぜ、金はオレがちゃんと払っとくよ。じゃあな、少年アルクロード。またどこで会えるといいな」
アル「ありがとうございました。では、さようなら」
ブライルに小さくお辞儀をしてアルは喫茶店を出た。
喫茶店内はブライルとマスターだけ。アルと別れ一人になったブライルにマスターが近づきテーブルに着く。
マスター「…どうだった?あのリオルは…?」
ブライル「オレの思ったとおりだ。あいつは一年前に闇の王にとどめを指したリオルだったよ。こんなに早く見つかるとはな…」
マスター「……なぜ殺さなかった?奴は闇の王にとっての危険因子だ。客がいない今は絶交のチャンスだったはずだ」
ブライル「ハハハッ、ダメだぜタウロス…。命令だったはずだ。何気なく彼に近づき、奴の事をよく知り情報を手に入れろと…。
それに例えここで殺さなくてもいつでも殺せるさ。あの方の強い念視能力を使って奴の居場所さえ突き止めればな……」
タウロス…それがマスターの名前のようだ。
その名で彼が呼ぶとタウロスは少し表情を険しくした。
タウロス「無闇に私の名前を口にするな。私達は光の世界では偽名を使って正体を隠しているのだぞ。誰かに盗み聞きされていたらどうするつもりだ?」
ブライル「ワリィワリィ…!つい口が滑っちまったよ。んじゃ、そろそろ帰って報告するとしようぜ。オレは…疲れたよっ…」
タウロス「あぁ…そうだな。帰ろう……“暗黒宮殿パンデモニウム”に!!」
席を立ちブライルは先に喫茶店を出て、タウロスは扉に掛けられたプレートをCLOSEと書かれた方を面にし喫茶店を出ていった。
喫茶店の入り口の扉に鍵をかけて、二人は人ごみに紛れてどこかへと消えていった……。
★To be contiued★
第13話 〜闇に潜む者達 復活を待つ〜
ここは闇の世界…。
暗黒宮殿パンデモニウム…ここは闇の戦闘集団ダークバーサーカーの本拠地だった場所。
そして…闇の王が住まう城であった。今では廃れてしまい、かつての面影はどこにもない。
しかし、この城の奥では、人知れず何人かのポケモンが集まっていた。
タウロス「今…戻った。会ってきた…闇の王にとどめをさしたというリオルに…」
*「そうですか…。よくやってくれましたわタウロス」
ブライル「おいおい…オレも褒めてくださいっすよ〜。あいつに一番近づいて様々な情報を手に入れたのはオレなんですから…」
後ろからブライルが不機嫌そうに言う。
*「あらっ…ごめんなさいね。で、どうだったのですか?」
ブライル「…波導君…正直強いようには見えなかったっすね。いくら闇の王にとどめをさしたからといって、彼だけを危険視するのは間違いだと思いますよ。闇の王が倒された時はこの念視写真に写ってる猿君と可愛い子ちゃんがいたらしいですし…」
煙草を取り出して吸うブライル。口に煙草を咥えながら片手にリオルとモウカザルとキルリアがそれぞれ写った写真三枚を持っていた。
*「そうですか…。ですが……聞きましたわ…。このリオルにはあの“狂戦士の血”が流れていると……」
ブライル「マジっすか!…侮れん奴だねぇ波導君。……そういえばアリエスとジェミニは?」
*「今、このモウカザルとキルリアを探させてますわ。そろそろ戻ってくる頃……。ほら、噂をすれば……」
タウロスとブライル…そして謎の女が会話をしていると、部屋の入り口からモココとマタドガスが入ってきた。
モココ「あっ!タウロっちとブラっちが戻ってきてる〜」
タウロス「…アリエス…その呼び方やめろ。恥ずかしい……」
モココ「何で〜?かっわいいじゃん!」
頬を膨らませてアリエスと呼ばれたモココが怒ったように言う。
マタドガス(大)「…あ〜、かったりぃよ〜。マジかったりぃ〜…」
ブライル「…あ〜あ…帰ってきちまったよ。オレお前等苦手だ…ジェミニ」
マタドガス(小)「ゲヘレレレ!お前冷たい!冷たい!!」
だるそうにしている大きいドガースと、可笑しな言葉を喋る小さいドガース…彼等がジェミニと呼ばれる者のようだ。
*「で、どうでしたか二人…いや三人とも。何か彼等に関する情報は分かりましたか?」
アリエス「はいは〜い!…モウカザルの男の子見てきたよ〜。彼、女好きみたいだね。あたしを見てすっごい幸せそうな顔してたよ。何か可愛かったねぇ、ウフフ!」
ジェミニ「つ〜ぎ、オレたっちで〜す!不細工キルリア?あの子、オレ達が近づいたら逃げたし!まっ、それだけで恐がりな性格って分かったよ。ありゃ、仲間がいねぇと何にもできねぇな!ゲヘレレレ!」
*「…は…はぁ…。まぁ…私達にとって脅威になることはなさそうですわね……」
あまりにも役に立たなさそうな情報を持ってきた二人…いや三人を見て女は呆れていた。
ブライル「そうだ…今、どういう状態なんだ。水溶液に入ったポケモン達は?」
話題を変えるブライル。
*「…彼等ですか?もうそろそろ一斉に動き出しますよ、大量に…」
タウロス「じゃあ、そいつらを引き連れてあのシナングの町を破壊しよう。私は破壊が好きだ…私にあの町を壊させてくれ…」
*「…いいですわ。時は満ちました…。再び我等“ダークバーサーカー”が世界を震撼させるのです。ですが、行くのはタウロス…貴方ではありません」
タウロス「どうしてだ…?私では力不足か?」
*「いいえ、貴方はよく頭に血が上って目的を見失う癖があります。ですから…彼に行かせます。この子のお仲間さんの一人を……いいですわね?貴方」
部屋の隅にいる黒いローブを羽織ったポケモンに対して女が言った。
+「……構わない……。オレから奴に今までの話を話しておく…。貴方は安心するがいい…。それと…オレは暫くの間はここには来ない…。暫くオレは本来の職に戻る…その間、オレの集団はオレと自分達の意思で行動する…。ではな…」
そう言うと黒ローブのポケモンは黒い炎となって消えた。
*「……あの子もだいぶ大きくなりましたわね。……あぁ…襲撃によってまた沢山の命が失われるのですね。あくまで私達は三人組の抹殺を命じられたと言うのに……何かを殺すという衝動とそれで得られる快楽は抑えられない…。これが闇に生きる者の性なのでしょうか…?殺すと言うのは…悲しき行為です」
ブライル「…ハハッ…そうかもしれませんね。オレだって殺すの…あんまり好きじゃないっすから」
女は涙を流した…。その涙は闇の者とは思えない綺麗なものだった。
そんな彼女を見ながらブライルはプハーッと口から煙草の煙を吐いた……。
光の世界、異国シナング。そこにあるセイントガーディアンズ・ユナリッジ支部。
そこの支部長室にアル、レン、リーナ、ファオロンが集まり、イェンに報告をしていた。
アル「オレ達は、四人それぞれに別れて見廻りをしていました。怪しいと思う者は見ませんでしたが、強いて言えばここに来たばかりというハッサムに会いました。ハッサムは腹の大きさでオスメスの区別がつくので…あまりそう思いたくは無いですが彼は少し怪しいですね」
レン「報告します!怪しい奴はいませんでしたが、アルみたいにオレもオレより一つか二つくらい下のモココの女の子に会いました。彼女もここに来たばっかだったらしいすね…。最近ここに来たばかりということだから…あまり見ていない人も多いだろうから…。連絡くれた人は…彼女の事をいったんじゃないですかね?まぁ認めたくねぇけど…彼女可愛かったし…」
リーナ「私は……少し怖いマタドガスに会いました。だけど、あまりにも怖かったので逃げてしまいました…。見かけで決めつけるのはよくないですけど…彼が怪しいと思うのです」
ファオロン「次は僕ですね。僕は特に怪しい人には会いませんでしたよ〜」
イェン「……分かった、報告ご苦労。あれからまた新しい情報が入ったので伝えよう。その見慣れないポケモンの件についてだが…」
イェンの表情が少し険しくなる。
イェン「そのポケモンは……町を出て行く時、急に消えたらしいんだ。しかも闇に溶けるようにして…」
アル「急に消えた…。闇に溶けるよう……それではまるで…ダークバーサーカーのようじゃ…」
イェン「そうだ…。おそらく…残党か何かがここに光の住人のフリをして入ってきた可能性がある。もしかしたら君達三人が言ったポケモンの中にいるかもしれない。とりあえず無事でよかった…午後からは十分に気を張って行動してくれ」
『はい!』と四人が返事をする。
しかし、あまり元気がないように見えた。イェンの話のせいからだろう。
平和な世の中となった光の世界にダークバーサーカーらしきポケモンがいるかもしれないという不安が彼等の心を震えさせる。
アルは自分を含めた四人が元気がないことを感づいていたのか、『とりあえず昼食をとろう』と言ってその場の雰囲気を和ませた。
全員賛成し四人はユナリッジ支部のポケモン食堂へと食事をとりに行った……。
★To be continued★
■作者から■
謎の女の一人称は『私』ですが読みは『わたくし』ですのでご注意ください。
第14話 〜不思議なお菓子 フォーチュンクッキー〜
支部にもポケモン食堂はある。
しかしここに所属するセイントガーディアンズが少ないためか、テーブルの数が少なく誰もいない。
本部より少し寂しげだ。
アル「すみません、ラーメンを一つ」
レン「オレにはとりあえず…シーナ飯を」
リーナ「私には…えっと……フカマルスープをください」
ファオロン「僕は…そうだねぇ。じゃあ、炒飯をください」
ガルーラ「あいよ!」
本部と同じくガルーラが素早い動きで料理を作る。
数秒のうちに料理は完成し、お盆に乗せられてアルに渡された。
ガルーラ「冷めないうちに食べな!」
アル「…ん?貴方はもしかして…本部のガルーラさんとは…違う?」
ガルーラ「そうだよ!あたしは四つ子ガルーラ姉妹の一人。本部のガルーラはあたしの姉だよ。よろしくね!さっ、早く飯を食べな!」
『はい』と返事をしてお盆をもってアル達は近くのテーブルに着いた。
手を合わせて『いただきます』といった後、四人は昼食をとった。
アル「ここの料理も美味しいな。やはりガルーラさんが作っているだけある」
レン「だな!めちゃくちゃうまいぜ!」
楽しく昼飯を食べる四人。
10分ほどで全員料理を食べ終わり、皿や器に盛られていた料理は全て綺麗に平らげられていた。
水でも飲みながらアルが一服していると、お盆の上に一つ変わった形をしたお菓子が入ってるのが目に入った。
アル「……なんだ?このブーメランのような形をしたものは…」
ファオロン「ああ、それはフォーチュンクッキーだよ〜。シーナではご飯の後によく出されるんだ〜」
レン「そうそう、食べると中に御神籤みたいな紙が入ってて占いしてくれんだよ。マダムの占いほどじゃないけどバカにならないぜ」
リーナ「へぇ、そうなんだ!ちょっと食べてみよう!」
一番最初にリーナがクッキーを手に少し齧る。
半分に割った落花生のようになったクッキーの中には一枚の紙が入っていた。
それを取り出しリーナは紙に書かれている文を読んでみた。
リーナ「えっと…『夜 貴方に幸せが訪れる けれど貴方はその幸せに気付かない』…だって。幸せってなんだろう?」
彼女の後に食べた三人もそれぞれ紙に書かれていた文を口に出して言った。
アル「オレは…『心の中で小さい何かが生まれる それに貴方は疑問を持つ』…か。心の中に生まれるもの……気持ちとか感情か?」
レン「なになに…『貴方が気付いていない自分に秘められた何か それの手がかりとなるワンピースが見つかる』…わ、ワンピースって女の子とかが着る服とスカートが一緒になったような奴か?」
ファオロン「フンフフーン♪…『笑顔は周りを幸せにする 男なら爽やかに 女なら可愛らしく』…。う〜ん、いつもクッキーに書かれている意味はよく分かんないね」
レン「まっ、占いなんてこんなもんだけどさ!あっ…ちょっとオレ、トイレいってくるわ!」
リーナ「あっ、私も…。ちょっと待ってて!」
二人は席を立ってトイレに行ってしまった。
とりあえず二人は戻ってきたとき、すぐに昼からの任務に出発できるようアルとファオロンはテーブルのお盆を片付けた。
カウンターにいるガルーラにお盆を渡し、再び彼等はテーブルに着いた。
ファオロン「フゥ……はははっ、こうやってヴァン君と二人きりか〜。何か話そっか?」
アル「…あ…ああ。……そういえば今朝、支部長室にいったらサンがキルリアに変身してたが……あれはなんのためだ?同じ部屋にいたファオロンなら知っているだろう?」
ファオロン「ああ、あれ?僕が来たときはもうスーはキルリアになってたよ。でもどうせ支部長のことだから、女の子を見たかったからじゃないかな?実はさ〜、支部長って結構女の子好きなんだよ。特にサーレイちゃんみたいな格好してて頭から何かが垂れている娘がね〜。だからスーにサーレイちゃんの姿をさせてたんじゃないかな〜?ミミロップとかユキメノコとかぁ…。そういう種族見たらもう鼻血出しすぎて死んぢゃうかもね〜アハハ〜」
眉毛を垂れさせてファオロンが笑う。
アル「…は…はぁ…。(何だ…シーナにはレンみたいに女好きが沢山いるというのか……)」
呆れ顔でアルが小さく溜め息をついた。
そんな話をしているとトイレからレンとリーナが戻ってきた。
レン「スッキリしたぜ〜!」
リーナ「二人とも待させちゃってゴメンね。じゃあ、そろそろ任務に行こう」
二人が戻ってきたところで四人全員が揃い、再び彼等は四人にシーナの町のパトロールを始めた。
昼になると皆、家で休むのか、午前中よりは町を歩いているポケモンは少なかった。
おやつなどの休憩をとりながらアルは町を長い時間歩いていると日は沈み始め夕方となってきた。
夕日がシーナの町を照らしなんとも綺麗な風景を作り出す。
アル「クレヘヴンの町の夕日も……これくらい綺麗だったな。夕日を見るとカリオ先生と出会ったときを思い出す…」
彼がカリオを出会ったのは11年前のクレヘヴン城下町…夕刻の時だった。
両親を失い、家の側で一人寂しく泣いていた彼に食べ物を差し出し、助けたのがカリオだった。
アル「…カリオ先生…。また会えたらいいのに…。冥界洞…あそこへいけばもしかしたら…」
頭の中に一年前に読んだ神話が浮かび上がる。
一人の若者がヨノワールとヘルガーを退け、愛する妻を生き返らせるために冥界洞の先にある冥界のギラティナに会いにいったという話だ。
アル「…あの時はケルベロスを倒せていなかったから…そのヘルガーも倒せないと思っていたが…今はどうだろうか?
…いや…無理だな。ヨノワールに負けてしまうだろうな……くっ…」
ケルベロスを倒すほどの力を手に入れた…。ならばヘルガーは倒せる…そう思ったアルだったがヨノワールの存在に気がつき、すぐにその希望は消えた。
ヨノワールはゴーストタイプ…格闘タイプであるアルには不利である。アルもすぐそれに気付いて諦めたようだ。
一つ溜め息を着いた後、アルは少し見回り、再び支部の支部長室に帰ってきた。
既にレン、リーナ、そしてファオロンが集まっていた。最後にアルがやってきたようだ。
イェン「これで全員揃ったな。三人からの報告は聞いた。特に発見はなかったようだ。アルクロード、君はどうだ?」
アル「オレの方もさっぱりです。その怪しいポケモンはもうこの町にはいないのではないでしょうか?」
イェン「……そうかもしれないな。…今日はご苦労さん、また明日がんばってくれ。それでは解散!」
イェンの解散の一言でアル達は支部長室を出た。
ファオロンは寮に部屋があるようなので、彼とはここで別れ残った三人は昨日と同じくレンの家に向かった。
レンの家に着くと既に彼の母親、キュウコンのランが食事を用意して待っててくれていた。
食卓には既にレンの父親ロン、妹リンが着いて待っていた。慌てて三人も食卓に着く。
ラン「フフフ、全員揃ったようですね。では、手を合わせて」
全員が合掌する。
ラン「いただきます」
ラン以外「いただきます」
皆きちんと『いただきます』を言い、楽しい夕食の時間が始まった……。
★To be continued★
第15話 〜夜 幸せ 気持ち 疑問 ワンピース 笑顔どこへ〜
楽しき夕食の時間。
豪快な勢いで音を立てて食べるレン、ロン。
落ち着いて静かに食べるアル、リーナ、リン、ラン。
この雰囲気からレンとロンは親子、リンとランも親子…そんな風に見えてくる。
勢いよく飯を食べている所為か、レンとロンの皿に盛られた料理は早く片付いた。
ロン「うまかったな。母さんの飯をいつ食べても最高だ」
爪楊枝でロンが歯の間に挟まった食べ物のカスを取り除きながら言った。
ラン「やだ!貴方ったら……レンのチームメイトさんがいる前ですよ」
そんなのお構いなしにロンは爪楊枝を動かす。
アル「…いや、そんなに気を使わなくてもいいですよ……」
リーナ「大丈夫です…お構いなく……」
ラン「そう?ごめんなさいね…こんな人で……」
申し訳無さそうにランが二人に謝る。
ロン「……そうだ、レン」
爪楊枝をゴミ箱に捨てながらロンが言った。
レン「何だ?親父」
ロン「お前は…セイントガーディアンズになって魔法が使えるようになったらしいな」
レン「そうだけど…それがどうかしたのか?」
コクリと頷いた後、ロンは近くにあった棚から桐の箱を取り出し、机の上に置いた。
そしてその箱を開け、中から一枚の紙切れを取り出し、レンに渡した。
紙の色は茶色がかっており、だいぶ古いもののようだ。書かれている文字も少し掠れており、しかも雑に破られたような部分がある。
レン「なんだ?この変な紙切れは?」
ロン「……それは…我がソンウォン家に代々伝わる古文書だ。魔法の事が書かれているのだが…魔法の使えない父さんにはよく分からなくてな。
お前なら何か分かるかと思ってな…。どうだ?何か分かるか?」
レン「あぁ?ちょっと待ってくれよ……」
――ソンウォン家の魔法の血脈――
私の名は………・ソンウォン……
後世の我が……のため……を記し………す
ソンウォン家は…法に優れた血…である
しか……修行…積まね……その血から魔…の力を引き出すことは……きぬ
………ン……法は銀……魔法……れる銀河……した魔法なり
…魔法は……球…炎魔法は火…水魔法は水…木魔法は木…雷魔法は……氷魔法は土…天魔法は……魔法は…王…。
それぞれ惑……力を宿した魔法であり…その属性は全8種とされている…
しかし……にも…大なために………された……を除いた数…
その……は………。
レン「…う〜ん…所々文字が掠れて読めねぇな…。途中からも敗れているし…完全には意味が分からん。でも、分かったことは一つ。ソンウォン家は魔法に優れた血筋…それからオレがまだ知らない木魔法と天魔法の存在だ。……でも、何で親父が魔法使えないんだよ!親父だってソンウォンの血を引いてるから魔法が使えてもおかしくねぇはずだぜ?」
ロン「……父さんが掠れた所を予測して何とか読めた部分では、魔法は修行を積まねば魔法の血筋の力を引き出せないらしい…。父さんは…魔法なんて生活に必要ないと思っていたからな…」
レン「ったく…。困った親父だぜ……。まっ、これ何かの役に立つかもしれねぇから、貰っとくけどよ」
自分の父親にレンが呆れていると、丁度アル達が夕食を食べ終えたようだ。
ランの『手を合わせて』という号令の後、全員が手を合わせ『ごちそうさまでした』と挨拶をした。
全員が食器を片付けに行く。無造作に置かれた食器…それをランが洗い始めた。
レン「…………あ―――――っ!!」
突然レンが大声をあげた。家中の全員が彼に注目する。
アル「…何だレン…いきなり大声をあげて…」
レン「今、分かったんだよ!フォーチュンクッキーの占いの意味が!オレが気付いていないもの…それは自分自身に眠るこの魔法の血筋の事だ!それで、その手がかりとなるワンピースというのはこの古文書の事!ワンピースは服のことじゃなくて一つのジグソーピース的な意味だったんだ!すっげ〜!生まれて初めてフォーチュンクッキーの意味が分かったぜ〜!うわあっりゃりゃっほう!!」
意味不明な叫び声をあげてレンが家中を走り回る。
ラン「……意味がよく分かりませんけど、とりあえず落ち着きなさいレン!」
リン「そうだよお兄ちゃん…。そんな大きな声出したら近所迷惑です…」
レン「あっ、そうだな!わりぃわりぃ!」
頭をかきながらレンが走り回るのをやめた。
レン「…ん〜と、あっ!アルとリーナはそろそろ銭湯に行く時間じゃないか?」
アル「……本当だ。もうそんな時間か…じゃあ、行こうかリーナ」
リーナ「うん……じゃあ、レン、ロンさん、ランさん、リンちゃん、また来ますので、一度失礼します」
レンの家族に小さくお辞儀をして、二人は一度近くの銭湯に行った。
ここで支部のポケモンの湯を使えば良いではないか…と思った者もいるかもしれないが、現在支部のポケモンの湯は湯沸かし器が故障中のため使用不可能。
支部は水は湧いてるものの地熱がないので湯沸し器がなければ無理なのだ。
…そんな解説をしている間に、二人は銭湯についた。
銭湯の値段は本当に銭湯かと思うほど良心的で五日間利用していても金欠になることはない。
ゆっくりと二人は温かい湯に浸かり、今日の疲れを十分に癒した。
暫くして二人は銭湯から出た。アルの青い体毛やリーナの緑の髪の毛はまだ少し濡れていた。
外は春の夜、少し涼しげだった。空には沢山の星が瞬き月も綺麗に光っていて寂しげな夜を照らしていた。
シーナのネオンは今日はなぜだかそれほど眩くない。そのお陰でこれだけ夜空が綺麗なのだ。
二人はシーナの町の中でも少し木の多めな所にあるレンの家に戻ろうと歩いていた。
リーナ「フフフ…さっぱりしたね」
家に向かう道の中、リーナが笑いながら言う。
アル「…ああ…そうだな」
リーナ「やっぱりレンの家のお風呂を借りるわけにはいかないからね。ちょっと出費は痛いけど、こういうのも悪くないよね」
アル「ああ…そうだな」
さっきと同じ返事を無気力そうにアルがする。
リーナ「……何か元気ないね…どうかしたの?」
アル「…いや、どうもしない。別に元気が無いわけでもないし、寧ろ風呂入って心身ともに元気だよ」
リーナ「そう?なら、良いんだけど……。何か…つまらなさそうだったから…」
アル「そんな風に見えたか?」
リーナ「うん…少しね」
さっきまで『さっぱりしたね』と言っていた時は少し元気がありげだったが、いつのまにかリーナの表情はほんのり沈んでいた。
アル「そういうリーナはどうなんだ?お前こそ何だか少しつまらなさそうだが…」
リーナ「そんなことないよ。私は今とても…何ていうかな…うまく言えないけど……楽しいよ」
アル「普通にレンの家に帰る今がか?」
リーナ「うん、どうしてかな……?」
悩むリーナを見ているとアルは彼女のある言葉を思い出し、アルはリーナに言ってみた。
アル「…そういえばお前は…一昨日かな?花見の帰り際にいってたじゃないか。オレといると楽しいって…その気持ちと今の気持ち一緒じゃないか?」
リーナ「…!!…」
一瞬でリーナの顔が赤く染まる。
リーナ「…忘れてなかったんだね…。今、思い出すとすごく恥ずかしい…。何気なく…言った言葉なのに…」
アル「でも、その言葉…オレは嬉しかったぞ…お前の言葉。オレは…今までそんなふうに言われたことなかったから…。お前が何気なく言ったその言葉が本当に嬉しかった。…ありがとう」
リーナ「…本当?…そんな風に言われると…私も嬉しい。…自分の言った言葉でこんなに誰かに感謝されることなんて…人生に一度あるかないかだと思うもの。…私からもお礼を言う…ありがとうアル…」
少し沈みかけていたリーナの顔が笑顔になっていた。
いつのまにかさっきまで普通そうな感じだったアルも楽しげな表情に変わっていた。
アル「……ああ。じゃあ、少し急いで帰ろう。あまり遅いとレンやロンさん達も心配するだろうしな」
リーナ「うん」
二人は家への足を少し速めて歩いた。
そのためか家から銭湯へ行ったときの時間よりも少し早く着いた。
リーナ「早く戻ってこれたね。じゃ、私はリンちゃんの時間に合わせて早く寝なきゃいけないから…。また明日ね」
アル「あっ…ちょっと待った!」
家の入り口の扉のドアノブにリーナが手をかけようとした瞬間アルが止めた。
『何?』とリーナが振り向く。
アル「…リーナ…。オレも…お前と一緒にいると楽しいぞ。…それが言いたかった…悪かったな、止めたりしてしまって」
リーナ「ううん、良いよ。そんなふうに言ってくれて私も嬉しいな…フフフ。じゃあ、また明日ね」
そう言ってリーナはレンの家の中へと入っていった。
近くの岩に少し座って趣味の天体観察をした後、アルも遅れてレンの家の中に入っていった。
それからアルはレンの部屋に行き、彼と一緒に寝た。
部屋の明かりは消えレンはグースカと寝ていたがアルはベッドの上で天井を見ながら考え事をしていた。
アル「(……自分でも言ったが…リーナといるのは…楽しかったな。いつからだろう…そんな風に思い始めたのは…。戦争中にも二度ほどこんな時があったが…あんな気持ちにはならなかった)」
寝返りをうちアルは再び考え始める。
アル「(しかも…何だろうか……何か分からないが…今まで感じたことのない何かが心の中に生まれている…。体にもなぜか妙な寒気が走り鳥肌が立つ…。何だこれは…。まさかフォーチュンクッキーに書かれていた事が今、まさにこの状況なのか…?)」
何度考えても彼の中に何の答えも出なかった。
そうしているうちに眠気が襲ってきて、アルは目を閉じて深い眠りについた。
★To be continued★
■作者から■
自分は…どうしてこのテーマの小説を書き始めたのか疑問に思うときがあります。
戦いなんてダークなイメージのテーマ。正直自分は黒い物語は好きません。嫌いと言うわけではないのですがね…。
主人公系キャラが悪っぽかったり黒っぽい奴がですね。でも、どうしてかこのような物語を書いている。
最近そういうファンタジー物語が増えてきたからでしょうか?きっとそれに感化されたのでしょう。
元々日本人というのは他人に感化とか影響されやすい性格のようですから……。
第16話 〜黒き海 狂いし戦士たち〜
朝がやってきた…。
ムックルやポッポが囀(さえず)る。
アルとレンは目を覚まし、食卓へと朝食をとりにいった。
今朝はリーナの方が早く食卓に着いており、ロンも着いていてランも二人が起きてくるのを待っていたようだ。
慌てて二人は食卓に着いて朝食をとった。
数分で朝食は片付けられアル、レン、リーナの三人は準備をした後、『いってきます』といって家を出て支部へと向かった。
ユナリッジ支部に来て三日目。そろそろ三人もここの環境に慣れてきたようだ。
門を潜り抜けて三人は任務をもらいに支部長室に行った。
支部長室では既にイェン、サン、ファオロンが待っていた。
イェン「おはよう三人とも。では、三人揃ったところで任務を言い渡そ……」
ビービービー!!
キケン!キケン!シナングニ大勢ノダークバーサーカーの集団ガ接近中!
セイントガーディアンズハタダチニ出動セヨ!
イェン「何っ…!ダークバーサーカーだと!!」
レン「嘘だろっ!あいつらは一年前に滅んだはずだぞ!!」
部屋の皆が驚く中、部屋の壁から一体のポリゴンが飛び出してきた。
ポリゴン「大変です支部長…。今のアナウンスは紛れも無き真実です。
ダークバーサーカーが押し寄せてきています。しかも、半端ではない数です。それはもう…一年で集められないほどの人数です…」
イェン「……こんな時に…!予定変更だ!サンは戦えそうなポリゴン達を引き連れて一つの軍を作れ!他四人は何とか応戦をしてくれ!
僕は…戦いの準備をする!とにかく今は急いでくれ!!」
アル・レン・リーナ・ファロン「はい!」
サンは壁に入り込んでいき、他四人は支部から外へと出た。
アル「…な、何だこれは…」
リーナ「嘘…何なのこの大人数…」
彼等が見た光景…それは遠くからやってくる黒く蠢く海のようなダークバーサーカーの集団だ。
ポリゴンの言っていた通り、半端な数ではない。世界大戦の時に呼び出された数よりも遥かに多かった。
レン「奴等……ここを潰す気だ!絶対にシーナの町を守ってやる!行くぞ!!」
四人はダークバーサーカー達を止めるべく彼等の所へと飛び込んでいった。
彼等の数はもう目を覆いたくなるほど…。まるで蟻の大群のようだ。
遠くからでもその凄さは伝わったのに、近くからは猛烈なプレッシャーを感じる。
レン「おい!ダークバーサーカー!!ここからは先は絶対に行かせないぜ!闇の世界に帰りやがれ!!」
レンの大声で全員が動きを止める。
*「…子供か…。お前達の相手をしている暇などこっちには無いぜ…。邪魔だ…そこをどけ」
軍勢の中の一人のローブを羽織ったダークバーサーカーが言う。
ファオロン「い〜や、どかないよ〜。君達が来ると正直こちらは迷惑なんだ〜。本気で帰ってくれないかな〜?」
こんな状況でもファオロンの目は笑っていた。だが、少し眉間に皺がより怒っているように見えた。
*「…たった四人で…偉そうな口をきくもんだな。おい!ソルジャー共、前進だ!こいつらを蹴散らせ!!」
ソルジャー「ウオォォォォォォォ!!」
もの凄い咆哮が集団から上がる。彼等が前進を始めると、号令をかけたダークバーサーカーは黒い翼を広げて空を飛び、シーナの中心へと飛んでいった。
レン「あっ!くそっ!待ちやがれ!!」
レンが一人、飛んでいったダークバーサーカーを追いかけていった。
アルが彼を呼び止めようとしたが、彼はもう遠くのほうにいってしまっていた。
アル「くっ…どうする。この大人数をオレ達三人で相手をするのか…?」
リーナ「…こんなのきりが無さそうだよ…。でも…やるしかないよね…」
ファオロン「ここは三つに分かれよう…。同じところで止めるより、広い範囲で止めた方が良い!広がって!!」
フォオロンの言葉でアルとリーナはそれぞれ軍勢の左端と右端へと散っていった。ファオロンはそのまま真ん中だ。
こうしている間にも軍勢は大きな足音を立ててずんずんと踏みよってきていた……。
軍勢の左端ではアルが彼等を止めようと戦っていた。
アル「絶対に止めてみせる!潜在秘術・波導流星群!!」
空中に飛び上がり波導を纏った分身を幾つも作り出し上からアルは軍勢の中へと飛び込んでいった。
激しい衝撃で何人ものダークバーサーカーが消し飛ぶ。
アル「これで…広範囲に及んで彼等を倒せる…!行くぞ…波導流星群連発だ!!」
軍勢の右端…。ここではリーナが戦っていた。
リーナ「…潜在秘術・守護神の盾!!」
巨大な盾がリーナの前に召喚されダークバーサーカーの進撃を防ぐ。
盾が壁となり彼等の足を止めたのだ。
リーナ「そこへ…“マジカルリーフ”!!」
七色の光に包まれた葉っぱが幾つも現れ軍勢を切り刻む。
盾に行く手を阻まれていたダークバーサーカー達は闇となって消えていき、同時に守護神の盾も力を失って消えた。
リーナ「これを繰り替えせば…何とか…いけるはず!!がんばらなくちゃ!!」
軍勢の真ん中…。ファオロンはただ何もせず笑みを浮かべていた。
なぜかダークバーサーカー達は彼の前で足を止めていた。
ファオロン「やあ、ダークバーサーカー君達〜。僕は平和主義だからね、戦うのは嫌いなんだ。できればこのまま帰ってもらいたいんだけどね〜」
*「あ?何だこいつは!ニコニコ笑いやがって調子乗ってやがる!野郎共…このバカフライゴンをやっちまおうぜ!」
ソルジャー「おお―――!!」
一斉に彼等の右手が上がる。
ファオロン「…ふぅ…分かったよ。かかってくるなら…僕もやられるわけにはいかないからね〜、行かせてもらうよ〜」
依然として笑ったままだが、彼の雰囲気が少し変わった。
ファオロン「…平和を歌うよ。潜在秘術・平和の歌」
ファオロンが歌う。全ての者の心を奪うような清らかな声で…。
彼に襲い掛かろうとしたダークバーサーカーの攻撃の手が一瞬で止まった。
*「どういうことだ?…なぜか体が言うことをきかない…」
ファオロン「平和の歌は心に語りかけて心の中の戦意奪うんだよ。無益な戦いは好まないんだ…どう?帰ってくれる気になったかな?」
*「…がっ!く…そっ!……あぁ…何かどうでもよくなってきたなぁ……うっ…」
彼の歌を聴いた何人かのダークバーサーカーは、その場に倒れこんでしまった。
ファオロン「フンフフ〜ン♪…この歌を聴いたら一度眠るんだ。きっと起きる頃には戦いがどれだけつまらないものか分かるはずさ。さっ、君たちも来るかい?」
*「舐めやがって…。起きている奴はオレに続け続け!」
ソルジャー「ウオオォォォォ!!」
沢山のソルジャー級達が突撃してくる。
しかしファオロンは攻撃をせずに、ただ彼等の攻撃に耐えていた。
何度も攻撃を受けながらも、決して攻撃はしなかった。
暫くしてダークバーサーカーの攻撃の手が止む。
ファオロンの体は傷だらけだ。
*「…はぁはぁ…バカじゃねぇかお前!なんで反撃してこねぇんだ!!」
ファオロン「だって、僕は暴力とか戦いとか…そういうの嫌いだからね〜」
にっこりと笑いながらファオロンが言う。
*「はっ?戦うのが嫌いでこいつセイントガーディアンズなんかやってんのかよ!笑っちまうぜ!野郎共、こいつを殺っちまうぜ!」
一人の号令で大勢のダークバーサーカーがファオロンに襲い掛かる。
その時だった!
ドゴッ!バゴッ!ドンッ!ズガッ!!
*「…なっ…てめぇ…今、暴力が嫌いとかいったじゃねぇか…。何、普通に攻撃してきてんだ……がはっ!」
襲い掛かってきたダークバーサーカー全員がバタリと音を立てて倒れた。
この一瞬…ファオロンが彼等に一撃を加えたのだ。
ファオロン「…確かに暴力は嫌いといったよ…。けどね、僕だって攻撃を喰らって我慢していられるわけないじゃないか…。あっ…大丈夫だよ、“みねうち”だから死なないよ…フフフ…」
いつものニコニコ顔で恐ろしげにファオロンが言う。
顔は笑っているのに怒っている…彼はそんな感じだった。
ファオロン「さあ、どこからでもかかっておいでよ」
*「ちっ!舐めんなぁ!!行くぜ!!」
ダークバーサーカーがファオロンに襲い掛かろうとするが彼は軽い身のこなしでふっと攻撃を避け一撃を加えて敵を吹き飛ばした。
次々と彼に敵が襲い掛かるが全ての攻撃を軽々と避け、腕、足、尻尾で華麗に攻撃を決めている。
*「げはぁっ…!何だこいつ…半端じゃなく強ぇ……」
ファオロン「はははっ、僕は常に光の世界を守るために鍛えてるからね。こういうカンフーのような身のこなしはお手の物だよ〜」
*「…ダメ…だ…やべぇ…これじゃあ…負けちまうぜ……」
ジジー…バチッ…
ツーツー…
何やら無線のノイズらしき音が聞こえる。
ソルジャーたちの耳につけられた機械の音のようだ。
*「…あ?何だ……。オレだ…ソルジャー…」
手を耳に当てソルジャーが何者かと連絡を取る。
*「…うんうん……分かった。…大丈夫だ…オレ達は光の世界を潰すためな命を失うのも本望だ。進んで命を捧げよう……」
そう言ってソルジャーは耳につけられた機械を外した。
ガシャンと音を立てて機械が地面に落ちる。
ファオロン「…何だ…」
*「フハハハハ……我がソルジャー級の命…巨兵変身の代償としてナイトに捧げん!ウオオォォォッ!!」
一人のソルジャーが唸り声をあげると、たちまち他のソルジャーも大きく唸り声をあげた。
唸り声をあげる者たちから白い気のようなものが発せられ、それらが何人かのポケモンに吸い込まれていく。
すると、白い気を吸い込んだダークバーサーカー達は、大きな雄叫びをあげて巨大な体へと変化を遂げた。
ダークバーサーカーから放たれていた白い気。それが途切れたと思うとそのポケモン達は体をバタリと倒して闇に溶けて消えていった……。
グオオォォォォォォォォォ!!!
様々な場所で巨大化したナイト級ダークバーサーカーの咆哮が轟く。
ダークバーサーカー全体の数は減ったもののそれでも巨大化した彼等は莫大な数だ。
それだけの数が叫びをあげたため大地は大きく揺れた。
ナイト「……クッハッハッハッハッハ…。いいぞ…我がナイト級のためによく犠牲となってくれたソルジャー達。
まあいい…所詮作られた命だ…。寿命は短かったはずだ…ならば、闇の世界のためとなって死ぬのが本望だろう……」
ファオロン「何だ…これ…流石の僕も笑えないよ」
アル「ファオロ――ン!!」
西側で戦っていたアルがやってきた。
後から東側で戦っていたリーナも走ってやってきた。
ファオロン「ヴァン君、サーレイちゃん…」
アル「何なんだこいつらは……。急に巨大化した…」
リーナ「巨大な兵隊……大きくてまるで一年前に戦った神のよう……」
巨大化したダークバーサーカー達は、体長八メートル程。
彼等は耳に手を当て通信機で連絡をとりはじめた。
ナイト「……はい…はい……分かりました。巨兵状態の我等の力は貴方をも巻き込みかねません。上空へとお逃げください……」
通信機の通信を切断しナイト達が一斉に技を繰り出す態勢に入る。
アル「……何だ…奴らが口や目にエネルギーを溜め始めている…」
リーナ「…そんな…こんな巨大なのがワザなんか放ったら……」
ナイト達に溜まり始めたエネルギー。それがついに最大まで溜まった。
そのエネルギーの凄さに、地面が揺れ転がっている石ころが浮き始める…。
ナイト「…ワザの準備を完了した…。全てを破壊する…我がダークバーサーカーの真の恐ろしさ……見るが良い!!」
彼等が大きく口と目を開く。
ファオロン「これは……いけない!皆伏せて!!!」
―――――“はかい……こうせん”!!
★To be continued★
第17話 〜黒き龍 燃え盛る炎〜
レン「くそっ!待ちやがれ!!」
レンは一人、空を飛んだダークバーサーカーを追っていた。
全速力で走りやっと追いついていけるそのポケモンをしつこく追いかけると、空を飛んでいた者はゆっくりとシーナの町の中で着陸した。
ここはシーナの中心部、大きな公園のような広場だ。
ここにいた町人達はダークバーサーカーの姿を見るやいなや、悲鳴をあげて逃げていった。
*「ふっ…愚民どもが…。その悲鳴は耳障りなんだよ…“かえんほうしゃ”……」
ローブで隠れた頭部から火炎放射が放たれた。
迫る炎に町人達が更に悲鳴をあげる。
レン「させるかぁっ!上級水魔法・瀑布大流撃!!」
町人を守るかのようにレンが炎の前に飛び出し、水魔法を使った。
大きな水の塊が火炎放射と激突し相殺されて消えた。
レンが炎を消している間に町人達はどこかへと逃げ去っていた。
*「ちっ…子供が邪魔しやがって…。そこのモウカザル、魔法を使うとは…やるな」
レン「闇の狂戦士(ダークバーサーカー)!いきなり襲ってきやがって!!」
*「おいモウカザル、邪魔をするな。そしてここから消え去れ。今なら見逃してやる」
レン「んなわけにいくもんか!ここはオレの大好きな町だ!てめぇらなんかにやらせるかよ!!」
*「ハハハハっ!威勢がいいモウカザルだ…。このオレに向かってきやがるとは…。オレの邪魔をする奴には…死んでもらうぜ」
そう言うとローブを羽織ったダークバーサーカーは頭のローブをとった。
彼の姿は漆黒の体を持った色違いのリザードンだった。
リザードン「オレの名はヒュドラ・エキドナ…。異名はHELL・黒蛇。
あとオレは闇の狂戦士(ダークバーサーカー)じゃあない。ただ単にあのソルジャーやナイトを引き連れてきただけだ。ただ、そのついでにこの町は破壊させてもらうぜ」
レン「(エキドナ…?どこかで聞いた様な…まあいいや)てめぇだけはここで止めてやるぜ!喰らえっ!“マッハパンチ”!!」
一瞬でヒュドラに接近しレンがパンチを繰り出す。
が、ヒュドラに片手で受け止められてしまった。
レン「なっ!くっ……」
ヒュドラ「遅いぜ?“かえんほうしゃ”を喰らっときな」
ゴオオオォォォォッ!!
レン「ぐわああぁっ!!んだ、こりゃ…ただの“かえんほうしゃ”なのに…威力がとんでもねぇ……」
相手ポケモンと同タイプのワザで攻撃しても普通は大した効果は期待できない。
しかし炎タイプであるレンが炎タイプのワザ、火炎放射を喰らい大きな火傷を負っている。
ヒュドラ「ハハハ、モウカザル。お前がオレのようなリザードンに向かってくるなんて身の程知らずにも程があるぜ。いいか?お前は一回進化した奴だがオレは二回進化している。そんなオレとじゃ実力に差が有りすぎるってもんだぜ、ハハハハ」
レン「う…五月蝿ぇよ…。オレにはレンっつう名前があんだ…覚えとけよ…。水魔法・瀑布大流撃!!」
巨大な水の塊がヒュドラの頭上に出現し、それが勢いよく彼に叩きつけられた。
その衝撃で水が迸り周りは水浸しとなった。
レン「へっ!見たかオレの実力!舐めてると痛い目みんぜ!」
ヒュドラ「……ちょうどいい、昨日は風呂に入っていなかったんだ。体を洗い流せたぜ」
レン「…!?」
余裕の表情でヒュドラは濡れた体についている水滴を手で掃い、火炎放射で体を乾かした。
彼の体から大量の水が蒸発していく。
レン「バ、バカな!上級魔法だぞ!ましてや奴の苦手タイプの攻撃!何でお前はそんなに平然としてられる!!」
ヒュドラ「強い者なら苦手タイプでも受け止めて耐えるもんだ。だがオレはそれが顕著となっている、水タイプの攻撃は全く効かんぜ」
レン「そんなのありかよ……。だけど…これならどうだ!?上級氷魔法・凍てつく冷気!!」
途轍もなく寒い風がヒュドラを襲う。
風と冷気で彼の尾の炎が消えかかりそうになり、また翼にも霜が降っている。
ヒュドラ「くっ……このままじゃ凍え死んじまいそうだ。空へと逃げる!」
翼の霜を振り払いヒュドラが羽ばたこうとしたが、彼の足は地面から離れなかった。
何と彼の足には水魔法で水浸しとなった地面が氷魔法により凍った所為で足が地面とくっついてしまったのだ。
ヒュドラ「…くっ……まさかこれを狙って…」
レン「そう、魔法はな…他の属性と様々なコンボができる。魔法を舐めんな!」
ヒュドラ「ふっ…だがな、オレの力ならこんなもの一瞬にして焼け野原にしてやる!“ねっぷう”!!」
ヒュドラの体から炎の風が広範囲に放たれ、凍りついた地面を溶かした。
溶けた氷は雪解け水のようになり、そしてそれが水蒸気となって蒸発した。
水蒸気でまわりは霧がかかったように白くなり何も見えない。
レン「…どこだ…どこへ消えやがった!」
ヒュドラ「ここだ…!」
いきなりレンの背後からヒュドラが現れ彼の首を片手で掴み吊り上げた。
苦しそうにレンがヒュドラの手を引き離そうと手で押さえる。
レン「…か…はあっ…うごぉぇっ…あ…え……はな……せ…」
ヒュドラ「苦しいだろう?どんな奴でも呼吸ができなければ死ぬ。まあ、オレの力ならお前の首を握りつぶすことなど容易いが、苦しみぬかせて殺すのがオレのやり方だからな、ククク」
レン「……(言葉が出ない……魔法も詠唱できない……)」
必死にもがくがヒュドラの手は離れない。
強く握り締められている。
レン「……げ……あ…やめ…て……く……れ……」
苦しみからかレンの目元で涙が滲む。
ヒュドラ「……そうか…そんな言葉も出るほど苦しいか。じゃあ、少しこの手を緩ませてやる」
レン「ぷはぁっ……はぁ…はぁ…ぅはぁ…」
息荒くレンが呼吸をする。
ヒュドラ「……フフフ、レンとかいったな、お前。そしてお前はこの町が大好きとも言ったな?」
レン「…ぐ…はぁ……あ…あぁ…。いったぜ…ここはオレの故郷…ここで育ったからな……オレにとって大切な町…。だ、だから、壊させるわけにはいかねぇ……」
ヒュドラ「…お前はどうやら本当にこの町を愛してるみてぇだな。…ククク……おい、ソルジャー……」
角に取り付けられた機械でヒュドラが連絡を取る。
レン「(……無線?……)」
ヒュドラ「ソルジャー……巨兵変身の代償となれ。ナイトにその命の力を与えろ」
レン「(巨兵変身…?まさか…一年前あのマニューラ達が…巨大化したあの暗黒秘術とかいうやつか…!)…おい!てめぇ…何する気だ!!」
レンの言葉を聞いてヒュドラが横目で彼をギロリと睨む。
その目の鋭さにレンは少しびくついてしまった。
ヒュドラ「…これから分かるぜ。この大地の先に見える風景を見てみろ……」
首を捕まれながらレンが歯を食いしばって遠くを見る。
そこには何人もの黒き巨人が立っていた。巨人の数は300人ほど、その体で黒い壁ができているように見える。
レン「何だよ…あれ…」
ヒュドラ「…巨兵化した…ダークバーサーカー達だ。……ナイト達…町に向かって“はかいこうせん”を放て……」
レン「…!…何だと……おい!やめろ!!やめろおぉぉぉ!!」
手でレンがヒュドラのローブを掴んで振りながら訴えかける。
ヒュドラ「…クハハハ…もうオレから彼等への命令は下った。そして今、奴等は攻撃の態勢に入った!」
レンが振り向いて巨兵がいるほうを見ると、彼等は四つんばいになってエネルギーを溜めている。
もう直にでも破壊光線は発射されそうだ。
レン「やめろ…!やめろよ!やめろっつってんだろぉぉぉっ!!」
ヒュドラ「五月蝿ぇ!!」
ローブを掴むレンを掴みヒュドラは地面に強く投げつけた。
レン「…ぐっ…ああ……」
ヒュドラ「ハハハハハ!自分の好きな町が破壊される瞬間、しかと目に焼き付けるがいいぜ!フハハハハハ!!」
そう言うとヒュドラは翼を羽ばたかせ、空へと逃げていった。
そして空で一言発した。
―――――“はかいこうせん”発射!!
★To be continued★
第18話 〜発狂〜
巨兵化した闇の狂戦士たちの“はかいこうせん”がシーナの町に放たれた。
300人、300の光線が一直線に飛び建物を貫き、凄まじい爆発を起こした。
バゴオオォォォォォォォォォォォン!!
レン「うわああぁぁぁぁぁっ!!!」
街中にいたレンが爆風で吹き飛ばされる………。
大きな爆発。
シーナの町から爆発の衝撃波と爆熱風が広がり遠くにいるアル、リーナ、ファオロンのところまで届いた。
その凄まじい衝撃波と熱風を喰らい彼等も大きく吹き飛ばされる。
アル「くっ……!うわっ……く……皆…大丈夫か!?」
リーナ「……私は……大丈夫だよ。けど……ファオロンの様子がおかしいの…」
ファオロン「シーナの町が………ダークバーサーカー!!つまらん破壊事ばかり起こしやがって!!糞野朗どもがぁ!!」
今まで笑っていたファオロンの面影は何処にもなく、鋭い目つき、怒りの顔に変わっていた。
笑っていると目は細くなって見えるが、今では完全に開いている。
アル「どうしたファオロン!」
リーナ「落ち着いて!」
ファオロン「これが落ち着いていられるか!見てみろ、シーナの町を!!」
二人はシーナの町の方を見た。
今まで賑やかだったシーナの姿はそこにはなくたくさんの建造物は全て廃墟と化し、荒廃した土地に変わっていた。
建物の残骸、燃え盛る大地…シーナに立っているのはただ一つ…それはユナリッジ支部だけだった。
アル「…何だこの惨状………」
リーナ「やり過ぎだよ…。どうして…彼らはこんなことを酷いことを……酷すぎる……」
シーナの光景を見たリーナはその場で泣き崩れてしまった。
ファオロン「戦いは…嫌いだ。こんな破壊しか生まない。戦う者は皆クズどもばかりだ。戦う者は全て殺すだけだ……ククク…」
そう言うとファオロンは巨兵ナイト達の群へと飛び込んでいった。
ナイト「ハーハッハッハ!!全部消し飛んだ!我々の力を見たか、光の世界の者ども!!ハッハッハ!!」
ファオロン「おい…クソ野朗…一回黙っとけよ!戦うことしかできない低脳な奴等が!!」
翼で羽ばたきファオロンが一人のナイトの頭に乗り言う。
ナイト「…お前…セイントガーディアンズか…。そんな小さい体でオレ達を罵倒するか!愚か者が消え去れ!“ギガインパクト”!!」
ファオロン「消えるのは貴様等だ、クソ共!」
ファオロンが叫ぶと地面のあらゆる場所から砂が噴き出し始めた。
その砂は空中で集まって一つの砂の塊を何個も作り出した。
しかも、その大きさは直径五m。もしそれが一気に地面に広がったら一帯が砂漠化してしまうほどの量だ。
ナイト「…何だこの砂の塊は…!」
ファオロン「戦いを起こす者どもめ……僕が神に変わって貴様等に天誅を下す!!潜在秘術・大砂爆弾!!全弾発射ッ!!!」
ナイトの頭からファオロンが飛び上がると砂の塊が一斉にナイト達に向けられて発射された。
それらはナイトに直撃したかと思うと大爆発を起こし100人ほどのナイトを巻き込んだ。
ナイト「ぐわああぁぁぁっ!!」
大きなダメージを喰らいナイト達が倒れこんだ。
その衝撃で大きな地響きが起こる。
倒れた彼らの体の上にファオロンが降り立つ。
ナイト「ひ…ひいっ!お、オレ達が悪かった!!もう襲わない…だから、やめろ!」
ファオロン「強大な力を手に入れて気だけ大きくなったクズが!貴様等に存在価値など無い…消えとけ。潜在秘術・臓喰砂蟲(ぞうくいすなむし)」
ナイト達の体の上で砂が出現し、そこから黒い蛆虫のような小さな虫達が巣から出てきた蟻のようにうじゃうじゃと出現した。
ナイト「う、うわあぁぁぁ!何だこの虫達は!!」
ファオロン「そいつらは臓喰虫(ぞうくいむし)。生き物の体を喰い破って体内に入り込み中の臓器を喰い荒らす蟲だ。そして空っぽになった体を最終的にはその亡骸まで食す。町を破壊した罰だ、苦しみぬいて死ね!!喰い荒らせ、蟲達!!」
おぞましい声をあげて蟲達がナイトの体を食い破る。
ナイト「ぎやああぁぁぁ!うっがぁ…ぐわあぁぁぁあ!!」
ファオロン「ハハハハ……クソ共…!苦しめ…そして死ね!!クハハハハ!!」
激しい痛みでナイト達は悶え苦しむ。耳を塞ぎたくなるような悲鳴をあげて。
ナイト「……うああぁっ!ぐっ…うわあぁぁぁぁぁ!!ヒュドラ様あぁぁぁぁ!!」
大きな断末魔をあげて100人のナイト達の体は闇に溶けて消えていった。
消えた彼等の体からは目を覆いたくなるほどの数の蟲達が出てきてファオロンのところに集まってきた。
ファオロン「……ハハハ…戦った者の報いだ…」
一人ファオロンが呟くと、遠くからアルとリーナが走ってきた。
アル「ファオロン…!…お前が…あのナイト達をやったのか!?」
ファオロン「…ああ…。だけど、まだ残っている。奴等もあの世へ送ってやらなければ……」
アル「ならば…オレも一緒に戦おう!行くぞ!波導け……」
ドガッ!!
アル「なっ!ファオロン!!」
何とファオロンはアルは波導剣を発動するやいきなり彼を殴ったのだ。
リーナ「何をするの!?」
ファオロン「戦いをするものは……僕が全て消し去る。お前も戦うのならお前から葬ってやる」
蟲達がアルに襲い掛かる。
波導剣で追い払うも蟲はしつこく彼に迫ってくる。
アル「くっ…やめろファオロン!…落ち着け!!」
リーナ「そうだよ!どうしたっていうの!?いつものファオロンに戻ってよ!」
ファオロン「……ダメだ!戦う者は全て皆殺しだ…!戦う者達は皆、不幸をこの世にばら撒いた!僕の家族は皆戦いに巻き込まれて死んだ!!戦いが起これば誰かが死ぬ!そんなもの起こしてたまるか!!」
アル「戦う者は……そんなに悪い奴等じゃない!!」
ファオロンに向かってアルが怒鳴る。
アル「…戦う者は確かに不幸をばら撒いているかもしれない。闇の狂戦士みたいな奴等もいる…。けれど、戦う者がいなかったら強き者から弱き者を守る者がいなくなるじゃないか!!」
ファオロン「!!」
アル「オレ達セイントガーディアンズは戦うことで守る…そういうものだ。戦うことができなければ何も守ることはできない。確かに戦いは他の何の罪も無いものを巻き込むことだってある…。それは…戦う者たちが未熟だったせいだ。だからこそ、そんなことが二度と起こらないよう、オレ達が戦ってそういう人たちを守らなければならないんじゃないのか!?そうだろう!?」
ファロオン「…………はっ!」
ふっと我に返ったようにファオロンが目を開く。
ファオロン「…うん…そうだね。ごめん…僕は誰かの死を恐れて戦いというものにこのうえない嫌悪感を感じ、憎んでいた…。その憎しみが僕の心の中で別人格を生み出してしまったようなんだ。今みたいに時々こういう症状が僕には起こってしまう。それは憎しみの人格に自分を支配されてしまうから……。
今みたいにヴァン君が助けてくれなかったら僕は君を殺していたかもしれない。ありがとう…ヴァン君」
アル「…いや…元に戻ってくれればいいんだ」
リーナ「そうだよ…。すごく怖かったよ…ファオロン……」
ファオロン「…もう大丈夫だよ。いつかこの別人格…味方を傷つけないように操れるようにしたいよ。この人格でなければ使えない技も結構あるからね。そうすれば…きっとダークバーサーカーにも屈しない力で戦える。
僕はもう戦う者全てを憎まない。戦う者全ては悪い奴ではない…。きっとこの人格にも分かってもらえるようにしてみせる…」
胸に手を当ててファオロンが言った。
ファオロン「…さあ!まだ巨人ナイトは残っている、一緒に倒そう!ヴァン君、サーレイちゃん!!」
アル「ああ、やろう!」
リーナ「私も微力だけど…がんばるよ!」
★To be continued★
■作者から■
僕はまだまだ未熟者です。
ただ他のものに縋ることしかできないのですから。
話を短く纏めれませんから……。
第19話 〜荒廃した異国 レンの怒り〜
……吹き飛ばされた先でレンは気を失っていた。
ファオロンが巨兵ナイト達を倒した頃と同じ時間に彼は目を覚ました。
レン「…うっ……いつつ……」
頭をおさえるレン。
ふと周りを見てみると信じられないような景色が広がっていた。
辺り一体は完全に荒廃し焼け野原、木々は木の葉が散って枯れ木となり、建物は瓦礫となり辛うじて建っているものも鉄骨がむき出しになっていた。
レン「おいっ…嘘…だろ…。夢じゃないのかこれは!」
頬を抓ってみるが痛い。周りの景色は変わらない。
広がる風景は紛れも無い現実だ。
レン「……くそっ……夢じゃねぇ……。おい、待てよ…。親父とお袋!…リンはどうなった!!」
即座に立ち上がりレンは自分の家があった所を探した。
そこはすぐ近くにあった。
彼の家は完全に崩れ、廃屋(はいおく)のようになっていた。
レン「親父――!お袋――!リ――ン!!」
必死でレンが家の瓦礫をどかす。
そうしていくと、瓦礫の下敷きになっているロン、ラン、リンの姿があった。
彼等の上に圧し掛かる瓦礫を急いでレンが片付けた。
瓦礫の重みから解放され三人はゴホッと咳ををする。
レン「親父!お袋!リン!大丈夫か!!」
ロン「…レン…か…。ははっ…ざまあないな…。この私がこんな瓦礫一つで身動きが取れなくなってしまうとは…年をとったものだ…」
ラン「………ありがとう…レン…けど…私達は…もうダメかもしれない……」
リン「……お兄…ちゃん…助けてくれたんですね。…だけど…私は……もう動けない……です」
レン「おいっ!三人とも何情けないこといってんだよ!!生きようぜ!なっ!?」
彼以外の三人は本当に弱っていた。
かなり長い間閉じ込められていたから無理もない。
本当に死にかけといった状態だ。
レン「頑張れ!もう少ししたらきっとリーナが来てくれる……あいつは癒しの力が使える!そしたら親父たちも大丈夫だって!!」
ロン「……そうか…ならばもう少しがんば……!……レンあぶない!!」
レン「…え?」
ズドドドドドドドッ!!
沢山の岩がレン達の頭上から落ちてきた。
その衝撃で砂埃が立ち、周りの様子は分からない。
レン「くっ………オレは……」
いつのまにかレンはさっきいた場所よりも離れた場所にいた。
遠くの方では砂埃が立ち込めている。
レン「……アレは…まさか…!いや…そんなバカな!!」
急いで立ち上がりその場所へと走るレン。
彼がそこへ着く頃には、もう砂埃は消え完全に視界は晴れていた。
そこには岩に埋もれた彼の家族の姿があった…。
レン「……嘘だ……信じられるかこんなもん…次こそ絶対夢だ!いつのまにか遠い場所にいた……きっとそこから夢を見て……」
ヒュドラ「……それが…夢じゃないんだぜ〜」
声がしたかと思うと上からヒュドラがレンの前に降り立った。
レン「……まさか…お前がやったのか?」
ヒュドラ「そうだ、オレがお前等の真上で“いわくだき”をして、砕かれた岩の破片をお前等に落としたんだよ。今頃こいつらは死んでんじゃないか?ハハハハ」
レン「くっ!んなことまだわかんねぇ!」
ヒュドラの横を駆け抜けてレンが岩をどかす。
中から傷だらけとなったロン、ラン、リンが姿を現した。
レン「親父!お袋!リン!!」
ロン「…レン…よかった。お前を“マッハパンチ”で吹っ飛ばしたお陰で……お前は死なずに済んだ…」
レン「じゃあ…オレを助けるために親父達は……。くっ……なんてバカな事したんだよ!!」
ラン「……貴方には生きて欲しいから…。私達はもう死んでしまいそう…。ならば、まだ生きる力のある貴方を救いたくて……」
リン「…ごめんなさい……。また会えたのに…お別れなんて………」
レン「おいっ!何もう死ぬみたいなこと言ってんだよ!!」
彼の目に涙が浮かぶ。
ロン「……ぐふ……。レン……生きろ……。ふっ…しばらく見ないうちに大きくなって…。お前の姿が最後に見れてよかった……」
ラン「……私達の子として生まれてきてくれて…ありがとうレン……」
リン「……お兄ちゃん……大好きだよ……。死んじゃっても…私…ずっとお兄ちゃんの事が…大好きだから…」
それぞれ言葉を残した後、三人は目を閉じて動かなくなってしまった。
レン「……!……親父――――!!お袋――――!!リ――――ン!!」
ヒュドラ「死んだか……ハハハハ!!」
レン「……くっ………うわあぁぁぁぁぁぁ!!!」
手で頭を抱えてレンがその場に倒れこむ。
レン「……親父……お袋……リン…。死んじゃ…嫌だ……オレは……オレは…どうすればいいんだ…」
彼の目から涙が止め処なく溢れ出る。
ヒュドラ「男が泣いてやがる……情けねぇなぁモウカザル。フハハハ!アーハッハッハ!!」
レン「……ち……き……てめぇぇぇぇぇぇ!!」
いきなり起き上がってレンがヒュドラに殴りかかる。
しかし、その拳は簡単に片手で受け止められてしまった。
レン「…てめぇら……なんてことしやがるんだあぁぁぁぁっ!!町も………大好きな家族も……皆全部ぶっ壊しやがってえぇぇ!!」
ヒュドラ「何だ?怒ってんのか?一年前まで光の世界じゃこんなこと日常茶飯事だったじゃねぇか。そんなことで何怒ってやがる」
レン「うるせえぇぇッ!!……これが……これがてめぇらのやり方なのか!!自分達の命も力のために犠牲にして……沢山の命を奪うのか!!」
ヒュドラ「……巨兵変身の事か?…あいつらソルジャーの命なんざいくらでも作り直せる。闇の狂戦士(ダークバーサーカー)は命を無限に作り出す術を手に入れたらしくてな…あいつらの命は全てポケモンの手によって生み出されたもんだ。だから死んだって構わねぇし…代わりは作ろうと思えば幾らでも作れるんだよ。オレは…闇の狂戦士じゃねぇから詳しく知らないがな」
レン「んなこと訊いてねぇ!!てめぇらは……命を何だと思ってやがんだよ!!平気で命を奪って…平気で命を弄びやがって…!!てめぇらは最悪な奴等だ!!」
ヒュドラ「…プッ……ハッハッハッハ!!」
周りに響きそうな声でヒュドラが高笑いする。
ヒュドラ「何熱くなってんだお前?家族が死んだ…町が消えた…命が消えた…たったそれだけのことじゃないか…」
レン「ふざんけんなぁっ!!……てめぇだけは………絶対に許さねぇっ!!」
ヒュドラ「……分かった分かった。だが…怒りだけじゃオレは殺れないぜ?」
レン「……五月蝿い……オレの……オレの怒りを…思い知れぇぇぇっ!!」
レンの体が眩しく光だし彼の周りで木の葉と光が渦巻く。
ヒュドラ「な…何だ!?」
レン「覚悟しろおっ!!うおおおぉぉっ!!」
レンの体が大きく変化してゆく…。
彼の体は白と茶色の体毛、長い尾、頭で燃え盛る炎。
その姿はゴウカザルへと進化していた。
その体は普通より大きい1.6m程へと成長していた。
ヒュドラ「進化!?しかもオレの体長より少し小さいくらい…。バカな!普通のゴウカザルはもっと小さいはずだ!」
レン「親父の遺伝子さ!親父は更に40センチでかかったがな!オレも少しはその遺伝子を引きついだのさ!!」
ヒュドラ「…ふっ…だがな…!進化したからっていい気になんな!“かえんほうしゃ”!!」
レン「……オレの新しい力を見ろ!!初級天魔法・光球!!」
パシュウウッ!!
お互いの技がぶつかり合い相殺された。
ヒュドラ「…何っ!進化して力が上がっている…!しかも天魔法だと!?何だそれは!!」
レン「…わかんねぇ…さっきまで使えなかったのに…いつのまにか使えるようになってた。だが…きっとてめぇを倒すという気持ちで…オレの中の魔法の血が力を貸したんだ!!」
ヒュドラ「……そうか…。だがな…それだけでオレに勝てると思うな!」
レン「……五月蝿い…。てめぇはここで倒す!!町と家族を奪ったてめぇだけは絶対に許さねぇ!!初級木魔法・森羅万象!!」
魔法を詠唱するとヒュドラの足元から太い木の根が生えてきて、彼の体を後から生えてきた木に縛り付けた。
レン「どうだ!ここから…上級雷魔法・疾風迅雷!!」
目にもとまらない閃光が森羅万象によって誕生した木に走った。
その閃光はヒュドラの体を貫き、粒子となって消えた。
ヒュドラ「ぐっ……なるほどな…木を避雷針にしたというわけか…」
レン「ひこうタイプを合わせ持つお前には、こうかばつぐんだな!さあ、これでお終いだ!氷魔法・凍てつく冷気!!」
冷たい冷気が放たれヒュドラと木が凍結していく。
彼の姿は完全に氷の彫刻のようになってしまっていた。
レン「……終わった……」
そう思ってレンが一息ついた時だった――
ヒュドラ「……オレを……舐めるなっ!!」
彼の言葉とともに氷はパキパキッと音を立てて砕け散った。
凍結していたヒュドラは氷から抜け出すと自らの炎で体を温め始めた。
ヒュドラ「…オレがな…進化されたぐらいでやられるような軟な野朗だと思うな?ああん?」
レン「うっ……」
鋭い目つきでヒュドラがレンに睨む。
あまりの鋭さにレンは思わず怯んでしまった。
ヒュドラ「…オレはHELL……冥界の使者の一人…ヒュドラ・エキドナ…。お前みたいなそこらへんのポケモンに負けるわけ無いんだよ…。あぁ…これで終わりだよ…冥界奥義・黒炎地獄」
いきなりヒュドラの体が黒い炎の包まれた。
黒い炎は燃え盛り次第にその勢いを膨らませた。
ヒュドラの姿はまるで炎に包まれた黒き星のように、大きく…そして周りを包み込んでいた。
レン「……う…ああ…あ…」
ヒュドラ「弱者が……怨むなら自分の弱さを憾め。燃やし尽くせ…黒き炎!!」
黒く激しい熱風と黒の波動がヒュドラから放たれた。
それは周りにあるもの全てに火をつけて灰に…燃えずに灰にならないものは全て熱により溶かしてしまった。
シーナの町全域の土地は黒い炎が燃え盛り足の踏み場もない…まさかに火炎地獄と化していた。
レン「ぐあああぁぁぁぁっ!!熱いっ…熱いッ…ぐぎゃああぁぁぁ…!…」
あまりの炎の熱さにレンはその場に倒れこんでしまった。
その光景をいつまにか空へと飛んでいたヒュドラが眺めていた。
ヒュドラ「……手加減はしてやったよ…。ケルベロスの兄貴のように…百分の一って奴でな…。フハハハハ……」
そう呟き黒きリザードン…ヒュドラは巨兵達の集まる場所へと飛んでいった…。
★To be continued★
第20話 〜巨兵殲滅 支部の者達の実力〜
巨兵ナイト……アル達の応戦によってその数は少しずつ減りつつあった。
最初いた巨兵ナイトは300人、そのうち100人は暴走したファオロンにより撃破。
そこから約10人を三人の力で倒すことに成功した。
しかし…200人という数を十減らした程度では焼け石に水…彼等の勢いは全く衰えてなかった。
ナイト「グウオオオォォォッッ!!」
巨兵になってから数十分、彼等はいつのまにか我を忘れたようにただ破壊を繰り返していた。
強力な暗黒秘術『暗黒波動砲』、強力な打撃技、特殊技を連発し周りの土地を抉ったり技によるエネルギーの爆発で全てを破壊していった。
アル「……ちっ…ダメだ…。こいつら…強すぎる……」
リーナ「私の力じゃ…歯がたたない……」
ファオロン「いつのまにか僕の『歌』も効かなくなってしまったよぉ。どうすれば……」
ナイト「グモオオォォォォ!!暗黒秘術・妖光降雨!!」
巨兵ナイト達全員が身の毛もよだつような雄叫びを上げると、大地から怪しげな色をした一筋の光線が空へと飛んだ。
その光線は空の遥か彼方へと消えたかと思うと、数を増やし、雨のように降り注いだ。
シュパアアァァァァッ!!
ズドドドドドドドドドドッ!!
光線は激しい音を立てて大地にあるもの全てを破壊する。
もう壊れるものがないほどに、巨兵ナイト達の周りには何も無くなっていた。
それでも彼等は破壊を続ける…。身体や精神がそうさせているのではなく、衝動が彼等を動かしているように…。
アル「くっ……ぐああっ……。さっきよりも攻撃の激しさが増している……」
リーナ「きゃああっ!……うっ…こんなのに…勝てる術なんてあるの……」
ファオロン「うわっ…ああっ…。ダメだよぉ……こいつらは…今までの闇の狂戦士(ダークバーサーカー)とは違うよ…。強すぎる……」
三人に諦めの表情が浮かぶ…。
その時だった…。シーナの町の方から一匹のリザードンが飛んできた。ヒュドラだ。
ヒュドラはナイトの猛攻で傷を負った三人の前に降り立った。
ヒュドラ「よくやったぞナイト達……」
後ろにいる巨兵ナイトのほうを向いてヒュドラが言う。
アル「……くっ…お前は…?」
ヒュドラ「オレはローブを羽織ってた奴だよ。名前はヒュドラ…こいつらに破壊命令を出したのはオレだ。それから…モウカザルはオレが片付けといたぜ…」
リーナ「…れ…レン…!…まさか…貴方レンを……」
ヒュドラ「ああ…殺ってきた、町に黒い炎を放って諸共焼き払ってやったぜ!ハッハッハッハ!!」
ファオロン「…ウォン君が……負けた…」
衝撃的なその報告を聞いた途端、リーナとファオロンはへたりと地に手をついてしまった。
しかし、アルだけは違っていた。拳を強く握りしめ鋭い目でヒュドラを睨みつけた。
アル「貴様……よくもレンを……!許さん!!」
アルの身体が身体半分が灰褐色に変色し始め黒い皮膚に紅い筋が入ろうとしていた。
ヒュドラ「ほう…お前が兄貴から聞いていた狂戦士の血を宿すリオルか…。だがな…そんなんでオレを倒せると思うなよ?」
アル「兄貴…だと?……まさかお前…ケルベロスの…」
ヒュドラ「そう…オレはお前の察しの通り、ケルベロスの兄貴の弟、ヒュドラ・エキドナだ!!」
アル「あいつに…兄弟がいたのか…!…くっ…お前も奴と関係があるなら…尚更お前を許すわけにはいかない!!うおおぉぉっ!!」
ガシッ!!
アル「くっ…受け止められた…!!」
ヒュドラ「狂戦士の血解放した程度じゃ…オレは殺れないぜ?後、それを使いすぎるのはやめたほうがいいぜ?いつか、自我が破壊するぜ」
アル「…くっ……」
アルの身体の色は元に戻っていき、紅い筋は引いていった。
ヒュドラ「…全く…情けねぇなぁ…光の守護者(セイントガーディアンズ)…。お前等はこんなに弱いとは思わなかったぜ…」
アル「く…そっ……」
諦めてアルが波導剣を霧散してヒュドラから離れる。
そうした時だった。全てが破壊されたシーナの町の中で唯一原型を留めて建っている一つの建物。
光の守護者(セイントガーディアンズ)・ユナリッジ支部、そこから眩い光が放たれた。
あまりのその眩しさにヒュドラは思わず腕を目に当てる。
イェン「よくも好き勝手暴れてくれたな!闇の狂戦士(ダークバーサーカー)!!もうお前達の好きにはさせない!ここで葬ってくれる!!」
遠くのほうから大きなイェンの声が聞こえたと思うと、支部から体長8m程の人のような形をした機械が現れた。
ヒュドラ「何だぁ!?あのデカツブは!?」
アル「イェンさんの声……あそこにイェンさんが……」
巨大な人の形をした機械はゆっくりと立ち上がり周りを見渡す。
その機械の視界に巨兵ナイトが入ると、機械は一言発した。
『標的確認・ロックオン…名称・闇の狂戦士(ダークバーサーカー)・ナイトクラス。状態:巨兵。人数190。攻撃力666、守備力444』
リーナ「何なの?あの機械は…」
ファオロン「あれは…支部長の切り札と呼ばれている…闇ノ分解者(ダーク・メルト)…。実物は初めてみたよ…」
闇ノ分解者(ダーク・メルト)と呼ばれた機械の頭部には、それを操縦するイェンの姿があった。
イェン「……これを動かすのは久しぶりだね。行くぞ…メルト…」
メルト『ハイ、イェン・ファー殿……』
綺麗な女性の声でメルトが返事をした。
彼女(?)の言葉の後、操縦席にあるマイクを使い、イェンが話した。
イェン「聞こえるか!?アルクロード、リーナ、ファオロン!君達の姿は闇ノ分解者で確認した。今すぐそこを離れろ!!闇の狂戦士たちに大きなのをぶち込む!!急げ!!」
遠くにいるアル達にイェンの言葉は連絡用媒体アクセサリーを通して伝えられた。
アル「……聞いたな?二人とも…」
リーナ「…うん、きっとあの機械が……」
ファオロン「急ぐよ〜、アレの攻撃に巻き込まれたらきっと一溜まりも無い、二人とも僕に捕まって!!」
急いで二人がファオロンの身体にしがみ付く。
ファオロンは腕でがっしりと二人を抱えた後、羽を羽ばたかせシーナの町の方へと飛んだ。
彼等が飛んでいったのを見ると、ヒュドラも彼らの後に空高く飛び上がった。
メルトの装置でアル達が場を離れたのを確認すると…イェンは操縦席にあるボタンでコマンドを打ち始めた。
イェン「………これで準備は完了だ。メルト…そっちは大丈夫か?」
メルト『出力最大…。エネルギー充填完了…。命中率100%…。コチラモ準備OKデス…』
イェン「……よしっ……。行くぞ!…兵器・苦痛症候群(シンドローム)!!」
闇ノ分解者(ダーク・メルト)の口が大きく開き、そこから大きな網のような飛ばされ、それは巨兵ナイト達の頭上でドーム状に広がり、彼等を100人ほど閉じ込めた。
閉じ込められた彼等は急に唸り声を上げて苦しみ始めた。
イェン「苦痛症候群(シンドローム)は闇が嫌う粒子を目に見えない網に包んで放つ…。シーナを破壊した罰は受けてもらうぞ」
ナイト「…ギュオォォ…グオォォォォッ!!」
ドーム上の網の中で巨兵達が悶え苦しむ。
苦しむ彼等を解放しようと網に捕らえられていないナイト達が暗黒波動砲を放つ。
激しき暗黒の力が闇ノ分解者に直撃するが、そのボディには傷一つついてはいなかった。
イェン「……舐めてもらっては困るぞ!……メルト…そろそろ決めよう」
メルト『了解…。攻撃準備……完了。攻撃ニ問題、支障無シ…。イツデモ行ケマス…』
イェン「……よしっ!…闇の狂戦士たち!シーナの科学力を見ろ!!主砲・炉心溶融(メルトダウン)!発射!!」
その言葉と共に闇ノ分解者(ダーク・メルト)の胸が大きな音を立てて開き、そこから巨大な大砲が姿を現した。
巨砲の砲口に強大なエネルギーが集まっていき、そこから目を覆いたくなるほど眩しい光を放つ塊が発射された。
塊は巨兵ナイトを閉じ込めた網を貫通し、その中で一度静止した。貫通した網が再び再生されてゆく。
暫くの静寂の後……
光の塊は激しい閃光を放ち、網の中で轟音と共に凄まじい爆発を起こした。
中の巨兵ナイト達の身体は一瞬にして蒸発していき、跡形もなく消え去った。
イェン「……これでほとんどの巨兵達は殲滅した。浄化・清浄処理(クリーナー)」
メルト『了解…。苦痛症候群(シンドローム)ト排原子ノ処理ヲ行イマス』
巨兵ナイトを閉じ込めていた網が光に包まれて消えてゆく。
イェン「…これでこの土地が汚染されることはない…。残りのナイトは頼んだよ…サン」
サン「あたしにまかせな!」
ユナリッジ支部から大量のポリゴンを引き連れてサンが現れた。
ポリゴンの数は支部のどこにこれだけいたんだ、と訊きたくなるほど。
サン「さあ!ポリゴン達!あたしたちの戦術でいくよ!“こうそくいどう”!!」
場にいるポリゴン達が一斉に“こうそくいどう”を行い、その数だけ彼等の素早さが上がった。
全員が一気に巨兵ナイト達の所まで向かう。その速さはテッカニンも目を丸くするほどの速さで、何と数百メートル先にいるナイト達の下まで僅か一秒で辿りついてしまった。
サン「…行くよ皆!全員“ほうでん”一斉発射!!!」
ビリリリッ!!
バチチッ!…バチッ!!
沢山の量の電気が放出され、ナイト達のいる周りを走った。
その量は半端ではなく雷の滝ができていた。
“ほうでん”を喰らった巨兵ナイト達の姿は電気により黒焦げになり身体に静電気が走り麻痺していた。
サン「さあっ!ポリゴン達…こいつらをデータ化して支部の電脳世界に転送するよ!!潜在秘術・転送(ダウンロード)!」
90人いた巨兵ナイト達はいきなり光の粒となってユナリッジ支部のほうへと飛んでいった。
その後を追うように一斉にポリゴン達が高速移動して支部まで移動し、そこの壁の中をすり抜けて入っていった。
彼等が入ったのは電脳世界…。ここにデータ化された巨兵ナイト達が薄っぺらい板状のようなものになって浮いていた。
暫くしてサンが電脳世界へと入ってきた。
サン「よしっ!後はここでこいつらを片付けてお終いさ!消去(デリート)!!」
場にいるポリゴン全員から“でんじほう”が放たれ、データ化したナイト達を一斉に破壊した。
破壊された彼等はただのデータの残骸となり、数秒の内に消えていった。
サン「ふぅ…!全部消去(デリート)完了!こっちもOKだよ、イェン支部長!」
支部の電脳世界から、闇ノ分解者(ダーク・メルト)の電脳世界へ移動してサンが伝えた。
イェン「ご苦労だった……。これで全員の闇の狂戦士の撃退が完了した…。後は戦ってくれた全員を集めて…お礼を言わないとな……」
闇ノ分解者から抜け出し、イェンは支部長室へと向かっていった。
彼が降りたと同時に闇ノ分解者は支部に吸い込まれるようにしてその姿を消した。
その光景を一人のポケモンが空高くから見つめていた。
ヒュドラ「ひゅうっ…!…とんでもない奴だな…あのデカツブは…。とりあえず今回の結果を司令官様に報告しに帰るか……」
羽ばたいて方向転換し、ヒュドラは闇の世界へと消えていった……。
★To be continued★