体験レポートBy: 林田力
2009-01-26 20:26

『逢えてよかった』石原伸司著

夜回り組長にココロを預けた少女たちのホンネ

逢えてよかった 夜回り組長にココロを預けた少女たちのホンネ(産経新聞出版)

 本書は少年少女の更生に尽力する著者の活動記録である。著者は暴力団組長であったが、引退後に作家となった。現在は作家として活動しながら、渋谷センター街などの繁華街を夜回りし、一人でも多くの少年少女を悪の道から救おうとしている。いつしか著者は「夜回り組長」と呼ばれるようになった。

 本書の特色は著者が非行に走る少年少女たちと正面からぶつかっていることである。きれい事や理屈ではなく、体当たりでぶつかっている。それ故に少年少女から真実を引き出せている。実際、本書ではリストカットを繰り返す両親や、娘に売春を要求する親など、非行に走った少年少女たちの、衝撃的な家庭環境が明かされている。

 これらは当人にとってはなかなか他人に話せない内容である。それを聞き出せただけでも、著者が少年少女から信頼されていることがわかる。

 そして著者の優れている点は現代の少年少女が置かれている厳しい社会環境を問題として認識していることである。現代の少年少女は、過去の世代と比べると物質的には豊かであり、はるかに恵まれている。そのため、現代の少年少女の非行を物質的豊かさ故の精神的病理と分析する向きもある。

 しかし、この種の分析には落とし穴がある。非行に走る少年少女は甘やかされて育った現代っ子特有のぜいたく病と突き放すことになりかねないためである。それは少年少女の苦しみから目を背け、「最近の若い者は……」的な無意味な批判に陥ってしまう。そして徴兵制などで性根をたたき直せばよいという類の間違った解決策が登場してくる。

 これに対し、著者は現代っ子が昔以上に大変な状況にあることを認識している。「最近の若い者は……」と無意味に偉ぶることはしない。これが著者の夜回りの大きな成功要因となっている。これは非常に大変なことである。著者自身は敗戦後の焼け野原の中を浮浪して過ごしている。食べることや寝る場所を探すことに苦労する少年時代を送っている。生物的な意味で生きることの大変さは現代っ子の比ではない。

 著者は「悪の道を歩いてきた自分だから、非行少年少女を受け止められる」と言うが、それほど簡単ではない。むしろ凡人ならば「俺の方が苦労している。それに比べて最近の若者は……」となってしまうのではないか。その意味で少年少女の苦しみを受け止められる著者の共感力には非常に優れたものがある。

 その著者が本書で少年少女が荒れる原因を端的に説明している。それは以下の文章である。

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