警視庁が「振り込め詐欺」撲滅ビラ配布
犯人を一緒に捕まえましょう

手口が大きく報道されているにもかかわらず、被害がなかなか減少しない犯罪が振り込め詐欺である。引っ掛かりそうもないような単純な手口であるが、その時となると気が動転してだまされてしまうのだろう。この振り込め詐欺の被害防止施策の一環として警視庁深川警察署では振り込め詐欺に注意喚起するビラを管内の住戸に配布している。
このビラでは上段に
「振り込め詐欺犯人を一緒に捕まえましょう!」
と書かれている。これはなかなかインパクトのあるメッセージである。振り込め詐欺事件について知っているのに被害者になってしまうのは、自分には関係ないと思っているためである。
そのため、「振り込め詐欺に気をつけてください」というビラでは「どうせ自分には関係ないから」と考えて大して注意されずに終わってしまう可能性がある。
これに対して、このビラでは「犯人を一緒に捕まえましょう」と呼びかける形である。このビラによって、「もし自分に振り込め詐欺犯人から電話がかかってきたら、捕まえてやろう」と身構えてくれる人もいるかもしれない。この点で工夫された文言になっている。
一方、ビラには
『息子さん? から「携帯電話の番号が変わった」という電話があったら、すぐ110番してください』
とも書かれてあり、かなり強引である。番号が変わったことを伝えただけで100番されてしまったならば、親に気安く電話をかけることもできなくなる。もっとも、それくらい用心すべきということを主張したいのだろう。
ビラでは息子をかたる典型的なオレオレ詐欺を対象にしているが、近時の振り込め詐欺は劇団型とも名付けられるような手が込んだものになっている。元警視庁刑事の北芝健氏は以下のように説明する。
「一番知られているオレオレ詐欺とはターゲットとなる家に電話をかけその際、息子や夫、事故の相手、警察官、会社の上司などになりすまし、示談金の要求や弁済金を請求し、代わる代わる電話口に出て信用をさせ、現金を指定の預金口座などに振り込ませる詐欺」(『北芝健のニッポン防犯生活術』河出書房、2007年、70ページ)
このため、「息子からの電話を疑え」というだけでは巧妙化する振り込め詐欺の手口に対応できない。劇団型振り込め詐欺では警察官もかたられることがあるため、警察にとってもひとごとではない。警察官をかたった詐欺こそ、警察への信頼を悪用するものであるため、警察にとってもっとも許しがたい犯罪類型のはずである。
それ故に「相手が警察官を名乗っても無条件に信用しないでください」という類の警察官をかたる詐欺に注意喚起をする文言が有効である。しかし、たとえかたりであっても身内の否定につながりかねないため、警察にとっては書きたくないものかもしれない。警察の身内に甘い体質は相次ぐ警察不祥事で散々批判されている。
息子から「携帯電話の番号が変わった」との連絡があっただけで振り込め詐欺を疑うことを市民に求めるならば、警察にも世の中で起きている犯罪として注意喚起するだけでなく、自分たちもかたられているという当事者意識・危機意識を期待したい。











