体験レポートBy: 林田力
2009-03-12 10:51

『新版バフェットの投資原則』ジャネット・ロウ著

読者レビュー◇長期志向で高潔な投資家

 本書は著名な投資家であるウォーレン・バフェットの発言を集めたものである。バフェットは辛抱強く待つ長期投資によって世界有数の富豪になった人物である。「株式投資は永久保有を前提に考えたいと思います」とまで発言している(110ページ)。

 株で財を成した人物というと日本で資金を右から左に動かして利益を上げるというイメージがある。しかし、バフェットの成功要因は無名の段階で将来飛躍的に成長する企業を見いだし、株価が安いころに買った株式を保有し続けたことである。バフェットにとって株式投資は単なるマネーゲームではない。企業を所有し、企業の好業績によって利益を得ることである。この点でバフェットは古典的な資本主義の原則論に忠実(ちゅうじつ)である。

 資本主義の原則論に忠実であるために、経営者に対しても基本を求めている。「最高のCEOと言われる人たちは会社の経営が大好きで財界人円卓会議の会合に出たり、オーガスタ・ナショナルでゴルフをすることなど好まないものです」と述べている(106ページ)。

 この言葉から記者は東京急行電鉄の社長・会長を務めた五島昇を反面教師として想起した。五島昇は東急グループの創業者である五島慶太の長男で、1954年に東京急行電鉄社長に就任したが、社長就任後も1年のうち160日はゴルフ場通いであった。部下が禀議書に印をもらうためコースを走り回ることもあったという(「「ドンになり切れないプリンス」ケンカ嫌いがケンカの連続財界世代交代劇の主役に」日経ビジネス1987年5月11日号)。経営者は経営に専心すべきと投資家が主張するアメリカと、ゴルフ場通いにうつつを抜かす経営者が武勇伝的に語られる日本では落差が大きい。

 長期的な視点で投資するバフェットには自分(自社)だけがもうかればいいという発想はない。ソロモン・ブラザーズの暫定会長として、バフェットは以下の高潔な言葉を残している。

 「従業員の皆さんには、ルール以上に厳しい規律を自らに課すようにお願いしました。仕事に携わっている間は、自分が今やろうとしている行動が新聞記者の目に止まってもよいか、自分の妻や子供、友人が読む新聞の一面を飾っても恥ずかしくないか、よく考えて行動してほしいとお願いしたのです。たとえ法的には問題がなくとも、普通の市民の立場から見ておかしいと思われる行動は一切とらない。ソロモンは今後、そう考えて事業に取り組みたいと考えております」(152ページ)。

 記者は東急不動産(販売代理:東急リバブル)から不利益事実(隣地建て替え)を説明されずにマンションをだまし売りされた経験がある(参照「東急不動産の遅過ぎたお詫び」)。

 裁判で売買代金を取り戻すことになるが、記者を憤らせたものはバフェットとは正反対の東急不動産の体質であった。「隣地が建て替えられてきれいになった方が購入者には喜ばれる」など自分の家族や友人に対しては説明できないような主張を繰り返した。この経験があるために上記のバフェットの言葉は非常に感銘を受ける。売ったら売りっぱなしという短期的視野しかない分譲業者と、辛抱強く長期投資を行う投資家の、見識の差が現れている。

 有望な企業を見極めるバフェットの、優れた選択眼は人物に対しても発揮される。バフェットはアメリカ初の黒人大統領となったバラク・オバマを2003年の時点で「彼は、生きている間にアメリカの進路に重要な影響を及ぼす可能性があります」と評している(203ページ)。

 サブプライム問題以来、アメリカ型の金融資本主義を全否定する風潮が強いが、バフェットのような人物も存在するところにアメリカの奥深さが感じられる。アメリカは実に広大で多様である。まだまだ日本はアメリカから多くを学ばなければならないと実感した1冊である。

『新版バフェットの投資原則』
ジャネット・ロウ著、平野誠一訳
ダイヤモンド社
2008年8月21日発行
1680円(税込み)
328ページ

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