『内部告発!社民党』松下信之著
読者レビュー◇リストラに動じない毅然とした姿勢
本書は社会民主党執行部から整理解雇された職員による解雇無効を求めた闘争記である。労働者の党を標榜(ひょうぼう)していた社民党(旧日本社会党)が労働者の首切りをしていたというショッキングな内容になっている。
本書はタイトルも著者のスタンスも社民党のあり方を問うものとなっているが、硬派な内容だけではない。本書には著者による映画の感想や戦国武将の人物評も収録されている。それらも自らの整理解雇に引き寄せて論評されて論評されているところが興味深い。記者(=林田)は東急不動産(販売代理:東急リバブル)から不利益事実を隠して新築マンションを購入したため、裁判で売買代金を取り戻した経験がある(参照「東急不動産の遅過ぎたお詫び」)。
個人が組織を相手に戦う場合、個人の尊厳をかけたものとなりがちである。そのため、直接関係しない映画を観ていても、どうしても自分の紛争に引き寄せて考えてしまう。記者自身が身をもって経験しているため、著者の思考経路も理解できる。
本書を仕事の観点から眺めると、社民党に関心のある人だけでなく、すべての労働者にとって関係する内容になっている。不況が深刻化する中で派遣切りの次は正社員の首切りが進むとの声がささやかれている中で、整理解雇と戦う著者の姿勢はリストラにおびえる労働者の参考に資するところ大である。
著者が最初に受けた整理解雇通知文書は党首ではなく、幹事長名義で書かれていた。これに対して、著者は雇用責任者の名前で書かれていない通知は無効と突っぱねた(9ページ)。
著者は党の財政難を理由として自主退職を強要されても、「私は財政難だとは思わない。財政難だという具体的な事例を見せてもらっていない」と反論する(12ページ)。社民党は旧社会党時代と比べて議員数が激減しており、財政難という説明は感覚的に納得してしまいがちである。しかし著者は、その種のフィーリングに惑わされず、あくまで具体的な資料による説明を要求する。「百年に一度の大不況」という言葉の前に労働条件悪化やむなしというあきらめムードが漂う労働界も著者の姿勢を見習うべきである。
しかも著者は退職を強要する幹事長に「第一義的責任は、経営側である党役員にある。まず役員が自らを処するのが筋である。役員は責任をとらないのか?」と逆に言い返している(13ページ)。
企業がリストラを進める場合、企業側からの一方的な解雇はハードルが高いため、企業はあの手この手で従業員に自主的に退職させようとする。残念ながら社蓄とまで揶揄(やゆ)される日本の従業員には著者のように毅然(きぜん)とした態度を示せる人は少ない。これは著者が社民党の理念である労働者の権利擁護という価値観を自らの血肉としていたからこそできたことである。
日本の左派運動家には自分の生活を犠牲にして運動に献身することを美徳とするマゾヒスティックな傾向が否めない。本人のマゾヒズムにとどまるならば他人が口を挟む必要はないが、他人にも強制する点が大きな問題である。
逆に自分たちは例外扱いで、他人にだけ強制する「他人に厳しく身内に甘い」輩(やから)も少なくない。本書が批判する、政党職員の労働者としての権利がないがしろにされている点は、その現れである。これでは左派と普通の市民の溝は深まるばかりである。著者のように理念を自らの生活において実践できる人物こそ本来は労働者のために活躍の場を与えられるべきであると感じた。
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『内部告発! 社民党―社会党的なものの再生を』松下信之著
ロゴス
1680円(税込)
2008年6月22日発行
206ページ











