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東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った - 林田力/著
林田力『東急不動産だまし売り裁判』

林田力『東急不動産だまし売り裁判』

東急不動産(販売代理・東急リバブル)から不利益事実を隠して問題物件をだまし売りされた著者(=原告)が消費者契約法に基づき売買契約を取り消し、裁判(東急不動産消費者契約法違反訴訟、東京地裁平成18年8月30日判決、平成17年(ワ)3018号)で売買代金を取り戻した闘いの記録。

ロゴス社、2009年7月1日発行

東急リバブルの物件囲い込み疑惑

東急リバブルが物件の囲い込みをしている疑惑が報道された。不動産仲介各社による「物件の囲い込み」と呼ばれる不正行為の実態を調査したレポートが不動産業界の一部に出回っている。「調査対象である476件のうち、囲い込みとみられるものは50件あり、そのいずれもが三井不動産、住友不動産、東急不動産ホールディングス傘下の大手仲介3社だ」(「大手不動産が不正行為か 流出する“爆弾データ”の衝撃」ダイヤモンド・オンライン2015年4月13日)。

東急不動産ホールディングス傘下の仲介会社は東急リバブルになる。東急リバブルと同様に疑惑が指摘された三井不動産リアルティと住友不動産販売は記事中で疑惑を否定するが、東急リバブルの回答は記事には書かれていない。物件の囲い込みは宅地建物取引業法違反である。宅建業法違反で業務停止処分を受けた貧困ビジネスのグリーンウッド(吉野敏和)と同レベルということになる。

東急リバブルの物件囲い込み疑惑の背景には仲介手数料の両手取りという不動産業界の悪癖がある。不動産取引では売主と買主の間に仲介業者が入って取引を成立させる形態が普及している。売主や買主が独力で取引相手を探し出すことが困難な場合に、仲介業者の存在価値がある。仲介業者が物件の買い手または売り手を探し出してくれるためである。他にも仲介業者は契約条件の交渉や様々な手続きを行う。この報酬として売主・買主は不動産仲介会社に仲介手数料を支払う。

逆に言えば仲介業者にとっては仲介手数料が売り上げになる。従って仲介手数料ゼロ円を謳うグリーンウッド(吉野敏和)のようなゼロゼロ物件業者は仲介業者としてあり得ないことになる。それ故にゼロゼロ物件では違約金や退室立会費など別の名目で料金を請求される危険が存在する。

閑話休題。不動産仲介に話を戻すと、不動産の売主は仲介業者に売却を依頼し、買主は仲介業者に条件にあった物件探しを依頼する。両者の条件がマッチすれば取引が成立する。この場合、買主・売主は各々自分の仲介業者に仲介手数料を支払う。

売却を依頼された仲介業者が自社の広告等で買い手を探し出し、取引を成立させた場合、この仲介業者は売主・買主の双方から仲介手数料を受け取ることになる。1回の取引で2回分の手数料を得られることになり、仲介業者にとってオイシイ取引となる。これは両方の手で手数料を受け取ることから、両手取引(両手取り)と呼ばれる。

問題は両手取引しか考えない業者が存在することである。この種の仲介業者は売主から物件の売却を依頼されても、他社から引き合いには「売れた」と嘘をついてでも断り、自社に客が付くのを待つ。林田力も両手取引しか考えない不動産業者の被害を受けた経験がある。

林田力は2003年に東急不動産(販売代理:東急リバブル)から新築マンションを購入したが、隣地建て替えなどの不利益事実を隠していたことが購入後に判明したため、消費者契約法第4条第2項(不利益事実不告知)に基づき、売買契約を取り消した。

それまで住んでいたマンションの売買契約を取消したため(要するに返品することになったため)、新たな住居を探す必要が生じた。選択肢の一つとして中古不動産の購入を検討した。以下は、その際の経験をまとめたものである。

インターネットのポータルサイトから条件(立地、価格、面積、間取り、築年数等)にあった物件を探し出し、その物件情報をもって不動産業者(A社)に内覧の手配を依頼した。しかし、A社が物件の売主側の仲介業者(B社)に確認したところ、物件は既に成約済みと回答を受けた。

その物件広告は掲載されたばかりで、すぐに売れてしまったのが信じられなかった。当該物件は良さそうで簡単には諦めきれなかった。そこでダメモトで直接B社に電話で問い合わせた。驚いたことに売れておらず、案内も可能との回答であった。A社経由で問い合わせた場合とB社に直接問い合わせ場合の矛盾は不動産仲介の両手取りを考えると説明がつく。

即ち、A社経由の問い合わせの場合、A社が買主の仲介業者となり、成約してもB社が得られるのは売主からの仲介手数料のみである。一方、購入検討者が直接問い合わせした場合、成約すればB社は買主・売主双方から仲介手数料を受け取ることができる。両手取りを目的とする場合、他社から引き合いには「売れた」と嘘をついてでも断り、自社に客が付くのを待つことが合理的となる。

このような仲介業者の最大の被害者は、当該業者を信頼して売却を依頼した売主である。本来ならば他の業者が見込み客をつれてくるにもかかわらず、B社のところで止まってしまう。もっと高く購入してくれる買い手がいるかもしれないのに、B社が連れてきた買い手にしか売却できない。売主にとっては誰が連れてきた買い手でも、高く購入してくれればいい。この点で仲介業者と売主の利害は衝突する。仲介業者が自社の利益を優先させると、売主の信頼は裏切られてしまう。

第二の被害者は別の仲介業者経由で購入しようとした検討者である。林田力は直接B社に問い合わせたために真相が分かったが、そこまですることは少ない。買える筈の物件が買えないことになる。また、B社仲介でしか買えないということは、買い手にとって仲介業者を選択する自由が害されたことになる。

多くの仲介業者は仲介手数料を法定の上限「取引金額×3%+6万円」とするが、数少ないながら仲介手数料を上限から大幅に減額する不動産業者が現れている。インターネットで「仲介手数料半額」「仲介手数料無料」等で検索すると発見できる。A社もそのような業者の一つであった。業者を選ぶことで、仲介手数料の安く済ませようとした林田力の目論見は潰えてしまった。

但しB社のような「両手取り」を追求する業者は何が何でも自社が連れてきた客でまとめようとするため、買い手の要望も汲んでくれやすい面がある。仮に、他社が好条件を提示する買い手を連れてきても、売主には告げずに自社の買い手と取引をまとめることになる。この点を上手く利用できれば買い手にとって良い取引ができる可能性がある。この点でも最大の被害者は売主である。

最後に上記物件取引の顛末を報告する。条件が折り合い、申込みまではしたものの、測量したところ、公簿面積よりも一割程度狭いことが判明した。この点については契約条件変更で合意に至ったものの、更なる問題が生じた。売主の責任で正しい面積での地積更正登記を行うことになっていたが、なし崩し的にB社の説明が変わっていった。

境界立会いの関係で登記が引渡し後に遅れることになった。この結果、買主が名義上、地積更正登記を申請しなければならないと条件が変わってしまった。記者は登記申請人を誰とするかについては東急不動産とのトラブルで痛い目に遭っていたため(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社、2009年、94頁)、取引をキャンセルした。売買契約締結前なのでペナルティーはないが、引越先探しは振り出しに戻った。その後の当該物件は数ヶ月経過後も大幅に値引きされた売り広告がポータルサイトに掲載されていた(林田力「不動産仲介「両手取り」の悲劇」オーマイニュース2007年11月20日)。

もともと仲介業者は売り手または買い手のエージェントであり、両方の仲介業者となることには無理がある。両手取りの悪習は日本の不動産市場が国際的に透明度が低いと評価される一因になっている(本間純「【視点】JLLに聞く「日本の不動産市場の透明度が低いわけ」」日経不動産マーケット情報2012年10月11日)。

日本でも民主党が不動産仲介業者に対する両手取引の禁止を公約に掲げていた。民主党はキャッチフレーズ「コンクリートから人へ」に恥じず、不動産政策でも第45回衆議院議員選挙で画期的な公約を掲げていた。「民主党政策集INDEX2009」では「一つの業者が売り手と買い手の両方から手数料を取る両手取引を原則禁止とします」と記載する。これは不動産取引の健全化に有効であり、改めて公約として実現を目指すべきである。

変化を求める国民の期待を背景に歴史的な政権交代を果たした民主党政権であったが、普天間問題が象徴するように反故・放棄・放置・ウヤムヤにされた公約も少なくない。両手取引の禁止は国民的常識を反映したものである。民主党には初心に戻って公約の実現を期待する(林田力「不動産の両手取引禁止を改めて公約に(下)」PJニュース2010年6月14日)。


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