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林田力「2ちゃんねる訴訟控訴審第1回口頭弁論」JANJAN 2008年5月23日

 「切込隊長」こと山本一郎氏が、ネット掲示板「2ちゃんねる」(2ch)管理人「ひろゆき」こと西村博之氏を訴えている事件の控訴審(平成20年ネ第1556号事件)第1回口頭弁論が5月22日、東京高裁511号法廷で開かれた。

 この訴訟は2ch上の書き込みが山本氏の名誉を棄損・侮辱しているとして、200万円の損害賠償と書き込みの削除、「山本一郎」や「切込隊長」などの言葉を含むスレッドの差し止めを求めた。山本氏は西村氏と親交があり、一緒にネットラジオやイベントに出演する仲だった。2ch関係者同士の裁判として話題になった事件だ。

 2月18日に言い渡された1審の東京地裁判決は山本氏の一部勝訴で、西村氏に80万円の損害賠償と書き込みの一部削除を命じた。一方、スレッド差し止めは、表現行為に対する規制としては過度なものとして退けられた。西村氏は控訴した。

 口頭弁論は両当事者とも代理人が1名出廷したのみで、本人は出廷しなかった。第1回口頭弁論といえば控訴理由書や答弁書を陳述することになるが、本件では、それだけではなかった。

 まず山本氏側は付帯控訴及び訴えの変更を行った。付帯控訴は削除すべき書き込み項目の追加である。訴えの変更は請求の減縮である。損害賠償額を200万円から110万円に減額した。1審判決で認容された額よりは高いが、元々の請求額よりは少ないため、請求額を減らしたこととなる。

 一方、西村氏は山本氏を名誉棄損で訴える反訴を行った。山本氏側の代理人は反訴状を確認したのがこの日のため反訴への同意・不同意は留保した。山本氏本人と相談の上、文書で回答すると表明した。

 大谷禎男裁判長は弁論準備に付すとし、吉村真幸裁判官を担当裁判官とした。そして、「こちらの裁判官も専門なので、ご期待に添えるかと思います」という意味深長な発言で弁論を締めた。

 裁判長の最後の発言は2つの意味に解釈され得る。

 第1に、十分な審理を望む当事者の期待に添えるという意味である。控訴は1審判決の精査を求めて行われるが、第1回口頭弁論が開かれただけですぐ結審し、控訴棄却となってしまうことも多い。再度のチャンスを求めて控訴した人にとって、肩透かしになるようなこともある。本件では付帯控訴や反訴が出てきており、論議が出尽くしたとは言い難い。裁判官による審理を尽くすことの決意表明とも取れる。

 第2に、先例になるような画期的な判断に踏み込む意欲があることを示したものとも受け取れる。担当裁判官となった吉村裁判官は横浜地裁時代にNTTドコモがスパム業者に広告メール発信の差し止めを求めた仮処分事件を担当した(横浜地決平成13年10月29日、「判例時報」1765号18ページ)。専門という説明は言葉だけのものではない。審理の行方が注目される。

サービスとしてのソフトウェアSaaSの将来像

Directions 2008 Tokyo開催

 5月22日、渋谷でDirections 2008 Tokyoが開催された。Directionsは毎年開催され、多くのIT業界のプロフェッショナルが参加するイベントである。専門のアナリストによる業界動向や市場予測を聞くことができる。主催のIDC JapanはIT業界の市場調査およびコンサルティングを専門とする企業である。

 今年のDirectionsでは市場動向を反映して、NGN(Next Generation Network、IP技術を利用した次世代通信技術)、SaaS、仮想化、コンプライアンスが主要テーマとなった。

 本記事ではSaaSをテーマとした赤城知子・IDC Japanソフトウェアグループマネージャーの「予想を超える大きな波、SaaSの潮流と普及のシナリオ」を紹介したい。SaaS(Software as a Service)は「サービスとしてのソフトウェア」と訳される。

 ユーザーが必要とするものだけをサービスとしてネットワーク経由で利用できるようにしたソフトウェアの配布形態を指す。ソフトウェアのビジネスモデルを変革し得るものとして注目されている。

 赤城氏はセッションでSaaSの認知度、利用形態、市場予測について分析した。まず認知度である。赤城氏は現状分析としてSaaSの国内での認知度は低いとする。驚くことに国内企業でSaaSを「知らない」と答えた比率が6割という。IT業界内で騒がれているにとどまり、社会に浸透しているとは言い難い。市場拡大のためには認知度を上げる必要があると提言する。

 現状の利用形態としては、財務・人事、販売・生産管理、SFA(Sales Force Automation、営業支援システム)、コンタクトセンターなどが多いとする。幅広い分野で既に利用されているということである。

 SaaSは大企業ほど導入が早いという。SaaS自体が浸透しているとは言い難い状況では大企業から導入されるのは当然の帰結である。業種別で見ると金融業がトップという。最も保守的な体質に感じられる金融業がトップというのは純粋に驚きである。

 この点は赤木氏の次の説明を聞けば納得できる。すなわち、金融業のユーザーはマルチテナントよりもシングルテナントを好むという。シングルテナントはユーザーごとにサーバやデータベースを個別に用意する形態である。

 一方、マルチテナントとはサーバやデータベースを複数のユーザーで共有する形態である。単純化すればシングルテナントはシステムの一社貸し切りである。

 SaaSに対しては情報漏えいなどのセキュリティ面の懸念があるが、シングルテナントで貸し切り状態にすればセキュリティを堅牢(けんろう)にしやすい。SaaSとはいうものの、アウトソーシングに近い形態である。以前より金融業界ではシステムのアウトソースが盛んであり、その意味では抵抗が少ないのも理解できる。

 企業がSaaSを導入する動機としては、費用の安さや導入のたやすさという投資効果の面からの理由が中心である。中小企業の初期導入費用は500万以下、月額50万以下が大半という。

 市場予測について、赤城氏は国内SaaS市場が2007年から2012年まで年平均18.2%で成長すると分析した。期待できる需要として既存システムとの連携を挙げる。成長のピークは2013〜2014年ごろで、それ以降は一般的なテクノロジーとして定着するという。

 赤木氏の分析はSaaS市場を占う上で興味深い。導入の動機(費用の低額さ、導入のたやすさ)やシングルテナントを好む傾向などはアウトソーシングやASPに近い。ASP(Application Service Provider)はアプリケーションをネットワーク経由で提供するサービスで、インターネットビジネスの黎明(れいめい)期に流行し、廃れていったものである。

 一方で今後の需要として既存システムとの連携を挙げた点からは、ASPとは異なるSaaSの将来像が浮かび上がる。ASPがアプリケーションを丸ごと提供する傾向があったのに対し、SaaSはソフトウェアの必要な部分をサービスとして提供し、社内システムやほかのSaaSと組み合わせて利用するような形態を想定できる。

 ユーザーの業務の一部を丸抱えするのではなく、必要な機能のみを提供する形である。ソフトウェア機能の部品化という点で企業システム構築におけるSOA(Service Oriented Architecture、サービス指向アーキテクチャ)とも相通じるものがある。

 今年のDirectionsは副題を「Tech X.0時代の新たなビジネス機会を探る」とする。TechはTechnology(技術)である。X.0はバージョン番号である。Web2.0のような使われ方をする。革新的な技術が完成系として登場して社会を変えるのではなく、社会との相互作用の中で2.0、3.0、4.0…… と進化し続けるとの意味が込められていると感じられた。SaaSも、まだまだ発展途上である。これからSaaSがいかなる発展をするか、注目していきたい。

■関連リンク
Directions 2008 Tokyo公式サイト

加護亜依にモーニング娘。の原点を見た

女優としての活躍を応援したい

 オーマイニュース(OMN)が独占配信する元モーニング娘。(モー娘。)の加護亜依について考察したい。
 モー娘。時代の加護は「あいぼん」のニックネームのとおり、可愛いらしい顔と声、愛らしいルックス、面白く明るい誰からも好かれる性格が印象的であった。一方で当意即妙な受け答えや幅白いモノマネのレパートリーなど芸達者な面も持ち合わせていた。
 その点を踏まえれば、再出発にあたって女優を目指すことは、ごく自然な結論に感じられる。お子様キャラの「あいぼん」も良かったが、現在の落ち着いた清楚な雰囲気も魅力的である。是非とも女優として大成して欲しい。
 加護の復帰については、OMNの果たす役割にも注目したい。OMNでは芸能界復帰に先駆け収録したインタビューを放送しただけでなく、復帰作となる香港映画「スーパーシェフ(仮題、原題:功夫厨神)」の撮影現場の映像も継続的に配信している。一過性で終わらせない取り組みを評価したい。
 加護の復帰後の活動にはモー娘。の成長と重なる部分がある。モー娘。はテレビ東京系列のバラエティ番組『ASAYAN』で開催された「シャ乱Q女性ロックヴォーカリストオーディション」の最終選考で落選した安倍なつみ・中澤裕子・飯田圭織・福田明日香・石黒彩の5人により結成されたユニットである。CD手売り5万枚という厳しい条件を乗り越えてのデビューであったが、デビュー後も事務所や番組に翻弄され続けた。
 好意的とはいえない環境の中でもモー娘。は国民的アイドルグループと呼ばれるまでに成長した。そこには加護ら4期メンバーに負うところが大きい。音楽面では3期メンバーの後藤真希加入後に発表された「LOVEマシーン」が一つの頂点となった。
 これによってモー娘。が一躍全国区になったとはいえ、その後に4期メンバーとして、いきなり4人も新加入させることは大きな賭けだった筈である。知らない顔が4人も入れば誰が誰だか分からない状態になってしまう。折角、安倍なつみと後藤真希のツートップという核ができたモー娘。の人気を下げかねない危険があった。しかし、加護、石川梨華、吉澤ひとみ、辻希美の4期メンバーは個性と才能を発揮し、モー娘。を社会現象にまで押し上げていった。
 厳しい環境の中で成長していったモー娘。の軌跡は、所属事務所の解雇後の芸能界に復帰した加護の今後ともオーバーラップする。そしてモー娘。に『ASAYAN』があったように、加護もOMNという新時代のメディアが映像を配信する。実に不思議な符合である。ある意味、加護亜依には今のモー娘。以上にモー娘。らしさがあるとも言える。
 私は、たまたま『ASAYAN』で「シャ乱Qオーディション」を観ており、モー娘。が好きになった。ブラウン管の向こう側の存在に惹かれたのはモー娘。が初めてであった。
 一方、私がOMNの市民記者になった動機は、最初の掲載記事にあるとおり、東急不動産(販売代理:東急リバブル)とのマンション紛争を明らかにすることにあったが、そのOMNで独占配信をしているのも不思議な縁である。たとえ了見の狭い世間が加護を受け入れなかったとしても、私は応援していきたい。

林田力「プロフェッショナルとは何か、転職フェアで考えた」オーマイニュース2008年6月4日

アドバイスや市場価値診断テストも受けられる

 株式会社キャリアデザインセンターが主催する「第47回エンジニアtype適職フェア」が5月31日、東京ドームシティ・プリズムホールにて開催された。キャリアデザインセンターは転職に関する各種サービスを展開する企業である。エンジニアtype適職フェアは転職希望のエンジニアを対象としたイベントで、年間複数回開催される。

 当日は雨天にもかかわらず、開場時間11時の10分前には既に入り口に長蛇の列ができていた。年度末が過ぎて仕事が一段落し、6月まで在籍すればボーナスが出るという時期であるため、転職希望者が多いのではないかと推測する。

 適職フェアでは求人企業の人事対象者から直接話を聞くことができる。求人企業としてトヨタ自動車、日立製作所、日本アイ・ビー・エムをはじめとする多数の有名企業が出展している。また、会場では転職アドバイスや市場価値診断テストも受けられる上、企業担当者によるセミナーも開催された。

プロフェッショナルの姿勢を考えた

 その中でマイクロソフト株式会社・福山耕介氏による「スキルアップできる環境で日本一のエンジニアを目指す!」を紹介したい。

 福山氏はマイクロソフトのミッションを「世界中のすべての人々とビジネスの持つ可能性を、最大限に引き出すための支援をすること」と説明する。単に製品を売ってもうけて終わりとは考えていないということである。福山氏自身、このミッションを気に入っていると語る。

 その上でエンジニアに求めるものとして、圧倒的な技術力、お客さまに対する責任感、卓越したコミュニケーション能力、ロジカルな思考力の4点を挙げた。

 福山氏のプレゼンテーション内容はマイクロソフトのエンジニアに限らず、すべての職種のプロフェッショナルに必要なものと考える。

 私は東急不動産から購入したマンションについて、引き渡し後に東急不動産の不利益事実(隣地建て替えによる日照・眺望阻害・騒音発生)不告知が判明したため、消費者契約法に基づき売買契約を取り消した(記事「東急不動産の遅過ぎたお詫び」参照)。

 私が東急不動産の物件には住んではいられないと考え、契約取り消しにこだわった背景には、東急不動産とその販売代理の東急リバブルの従業員の体質が、プロフェッショナルの内容とは正反対であったという面がある。福山氏のプレゼンテーションを聞いて、改めてそう感じた。

 まず、売ったら売りっぱなしの姿勢。そして専門知識の欠如を恥じることなく「分かりません」で回答を済ませてヨシとするメンタリティ。問い合わせを放置する無責任な態度。コミュニケーションをとろうとせず一方的な理解を求めるだけの姿勢。「建て替えにより新しい建物になった方がきれいになって喜ぶ人もいる」という非論理的な言い訳……。

 これらのすべてが、驚くほどプレゼンテーション内容の真逆になっている。

 プロフェッショナルはどうあるべきか、という深い問題を考えさせられるセミナーであった。

■関連リンク
エンジニアtype適職フェア

林田力「伊達鶏を丸ごと味わった!」オーマイニュース2008年6月5日

日本橋「鶏料理てん」で

 2008年5月15日、市民記者の御堂岡啓昭さんと「鶏料理てん」で伊達(だて)鶏の手羽焼きを味わった。「てん」は伊達鶏を使った料理と福島・伊達地方の惣菜(そうざい)を味わえる専門店である。東京メトロ日本橋駅と直結するCOREDO日本橋(東京都中央区)の4階にある。

 伊達鶏はフランス原産の赤鶏で、飼料に抗生物質を使用しないなど、独特の条件で育てた銘柄鶏である。店の入り口にはテイクアウト用の鶏の丸焼きがおいしそうに置かれてあり、それに惹(ひ)かれて入る客も多いと思われる。

 店の造りは小洒落ており、落ち着いた雰囲気を醸し出している。「てん」は和食に分類されるが、純和風とは言えない不思議な空間でもある。福島の郷土料理屋の趣がある一方、伊達鶏はフランスから導入されただけあって、洋風のスタイリッシュな感覚もする。

 飲み物も地酒や焼酎に加え、ワインやカクテルもある。2人が座ったカウンター席では、鶏を丸焼きしている状態を生で見ることができた。店が自慢する「手羽の一本焼き」は皿から溢れるほど大きいもので、手づかみで食べることを推奨される。素材のうまみを、そのまま味わえた。注文してから焼き始めるため、料理が来るまで多少時間がかかり、コースの品数も多いとは言えないが、最後には満腹になってしまうから不思議である。

 御堂岡さんと私の関係は、取材者と取材対象のそれである。私が経験した東急不動産(販売代理:東急リバブル)との裁判闘争について、御堂岡さんが興味を抱き、取材を希望したことが発端だ。企業のクレーム対応顧問もしているという御堂岡さんは、東急リバブル・東急不動産の対応の悪さに強い関心を抱いた。

 「てん」の入る COREDO日本橋には白木屋という老舗呉服店があったが、東急グループに買収された。しかし、後継の東急百貨店日本橋店は売り上げ不振で1999年に閉店。三井不動産を中心とした再開発により、COREDO日本橋として再生した。このような場所で東急不動産との裁判について取材を受けるのも不思議な因縁である。

 店内の居心地の良さもあり、取材とはいうものの、堅苦しいものではなく、お互いのことをざっくばらんに語り合った。雰囲気の良い店でおいしい料理を食べながら市民記者同士で語り合うのは良いものである。すてきな店と、楽しい機会を提供してくれた御堂岡氏の両者に感謝したい。

■関連リンク
「鶏料理 てん」公式ホームページ

「金色のガッシュ!!」雷句誠が小学館を提訴

提訴の背景にある憤りと法的主張のバランスが重要

 人気漫画「金色(こんじき)のガッシュ!!」の作者、雷句(らいく)誠氏は2008年6月6日、原画を紛失されたとして、小学館に330万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。公開された雷句氏側の主張・立証内容には裁判を進める上で有益な点が見られる。

 「金色のガッシュ!!」は小学館発行の漫画雑誌「週刊少年サンデー」に連載された漫画である。連載終了後に雷句氏が原画の返却を求めたところ、カラー原稿5点の紛失が判明した。紛失原画に対する賠償金額の交渉が折り合わず、提訴に至った。雷句氏は提訴日に自己のブログ「雷句誠の今日このごろ。」において訴状と陳述書(甲第13号証)を公表した。

 訴状では原画紛失に対する損害の賠償を裁判の争点として明確化した。一方で雷句氏自らが執筆した陳述書には提訴に至るまでの理由がまとめられている。この中には原画紛失とは直接結びつかない出来事も書かれている。訴状では法的主張に絞り、陳述書では紛争の背景を広範に説明する2本立ての構えである。

 記者は購入したマンションの売買契約を取り消し、売買代金返還を求めて東急不動産を提訴し、東京地裁で勝訴判決を得た(参照「東急不動産の遅過ぎたお詫び」)。

 この裁判で記者が採った戦術も2本立ての構えであった。すなわち、訴状や準備書面では法的主張(消費者契約法第4条第2項に基づき売買契約が有効に取り消されたこと)に特化し、陳述書では東急不動産や販売代理の東急リバブルの不誠実さをアピールした。くしくも雷句氏と類似したことになるが、この方法は裁判において有益であると考える。

提訴の動機は尊厳の回復

 雷句氏自らが執筆した陳述書は提訴に踏み切るまでの理由をつづったものである。編集部員の非協力的でけんか腰の態度や社会人としてのマナーのなさに始まり、さまざまな出来事が述べられている。一貫しているのは「小学館と、その編集者が漫画家を見下している」という雷句氏の憤りである。これが提訴の根本的な動機であることが理解できる。

 裁判の一義的な目的は法的紛争の解決である。しかし、一般に人は権利侵害があったというだけで訴えを起こそうとはしない。記者が東急不動産を提訴した動機も、一生に一度あるかないかの大きな買い物で、売ったら売りっぱなしで客を客とも思わない態度を取る東急不動産および販売代理の東急リバブルへの怒りが大きな割合を占めていた。だから雷句氏の憤りは痛いほど理解できる。
 記者の裁判は問題物件を売り逃げした東急リバブル・東急不動産に対する消費者としての尊厳を回復するためのものであった。同様に雷句氏の訴訟も漫画家としての尊厳を回復するためのものと言える。これは記者の推測になるが、一般の人が裁判を起こす場合はむしろ、このような背景がある場合の方が多いように感じられる。

 提訴に至った憤りについて陳述書という形にすることは非常に重要である。前述の通り、裁判の一義的な目的は法的紛争の解決である。従って裁判による解決は権利義務の明確化という形にしかならない。このため、憤りを抱く当事者にとって容認し難いことであり、支持するつもりは毛頭ないが、裁判が権利義務の交渉・取引の場になってしまう場合があることは否めない。

 もし法的紛争の解決という直接的な課題にしか目を向けず、提訴の原点にある憤りを忘れてしまったならば、裁判は裁判官と原告・被告の代理人弁護士による談合の場に堕す危険がある。このような解決では裁判手続きから疎外された当事者には不満が残る。従って、たとえ「争点と直接関係ない出来事をいくら並べても、有利にならない」と言われたとしても、陳述書を証拠として提出することは意義がある。

 記者も裁判では陳述書において「不誠実な対応を繰り返す東急不動産の物件には住んでいられない」と強く主張した。それがあったからこそ、控訴審・東京高裁における和解協議の場では売買契約の白紙撤回、裁判官の言葉では「返品」が前提となった。それ以外の解決策は検討すらされなかった。

 また、東京高裁における訴訟上の和解で成立した和解条項には、和解調書の非公開義務や批判の禁止など原告(記者)の請求と無関係な内容が入る余地がなかった。これも感情的な問題が未解決であることを裁判官が認めた上で、訴訟上の和解の目的を純粋な法的紛争の解決のみに絞ったからである。

法的論拠の重要性

 これまでは提訴の背景となった思いを明らかにすることの重要性を述べた。以下では法的論拠の重要性を述べたい。繰り返しになるが、裁判の一義的な目的は法的紛争の解決である。

 いくら不誠実な対応を重ねられたとしても、それが具体的な権利侵害に結びつかなければ勝訴は困難なのが現状である。このこと自体が良いか悪いかという議論は別として、裁判の現実として押さえておく必要がある。不公正な扱いを受け、人間としての尊厳を回復するために提訴する人は多いが、棄却や却下(門前払い)に終わる例が少なくないのも、このためである。

 「これだけひどい扱いを受けたのだから裁判官も同情してくれるよ」という類の甘い期待は危険である。裁判という形式で解決を求める以上、法的主張は法的主張として、しっかり行う必要がある。

 雷句氏の裁判では、この点についても考えられている。恐らく雷句氏にとって「小学館は漫画家を尊重せよ」「小学館は反省せよ」というのが一番の要求になると思われる。しかし、それでは裁判上の請求にならない。

 訴状では原画紛失に対する損害の賠償と争点を明確化している。記者の裁判においても東急リバブル・東急不動産の不誠実な対応は原告陳述書においてさまざまな観点から糾弾したが、原告の請求としては消費者契約法第4条第2項の不利益事実不告知に基づく、契約取り消しの結果としてのマンション売買代金の返還請求一本に絞った。

 特に雷句氏の訴状で注目すべき点は原画の価額算定は前例がないため、わざわざ類似のカラー原稿をネットオークションに出品して落札価格を調べた点である。雷句氏側が裁判官を納得させるためのロジック提示の努力を怠っていないことを意味する。
記者も東急不動産と裁判をする前に、仲介業者に物件の売却価格の査定を依頼した。隣地が建て替えられ、日照・眺望が妨げられたことによる資産価値の減少額を把握するためである。この種の活動も勝訴には必要である。

 裁判においては提訴の背景になった憤りを明らかにすること、法的請求の根拠を示すことは車の両輪であり、いずれも大切なものである。前者を明らかにしなければ提訴の原点を無視した結末になってしまう危険がある。一方、後者がなければ勝訴は難しい。

 この意味で、陳述書では紛争の背景を明らかにし、訴状では法的争点を明確化する二本立ての構えは非常にバランスが取れたものである。記者にとって東急不動産との裁判は、問題物件のだまし売りで人生を狂わせる消費者が出ないことを願ってのものでもあった。同様に雷句氏も後進の漫画家の立場を向上させることを使命と陳述書で明らかにしている。裁判にかける雷句氏の、強い熱意が感じられる。

メガたまご、期間限定で復活

マック「メガシリーズ」の豊かな味わい

 ファーストフードチェーン大手のマクドナルドで「メガたまご」が期間限定メニューとして再登場した。もともと、メガマック、メガてりやきに続く、メガシリーズ第3弾として2007年12月14日から2008年1月10日までの期間限定メニューとして初登場したものである。今回、6月6日からの期間限定メニューとして復活した。
 「メガたまご」はビーフパティ3枚とたまごに加え、ベーコン2枚、レタス、チェダーチーズもゴマ付きのビッグマックバンズでサンドした。「メガたまご」といってもたまごが巨大だったり、何枚も存在したりするわけではない。

 メガマックのビーフパティ4枚に比べると、1枚減らされており、肉好きには不満かもしれない。しかしメガマックの754キロカロリーに対し、「メガたまご」は846キロカロリーとカロリーは高い。

 単にメガマックのパティ1枚がたまごに変わっただけと侮ってはならない。メガマックはビッグマックの味付けである。これに対し、「メガたまご」はベーコンが追加されている上、ホットからしソースで味付けされ、ベーコンレタスバーガーの味わいが楽しめる。

 メガマックがひたすらビーフのボリューム感を追求するのに対し、「メガたまご」は豊かな味わいを楽しめる。肉ばかりのメガマックには食傷気味だが、それでもボリューム感のあるメガシリーズを食べたいという方にはお勧めである。

 メガシリーズは口よりも大きいため、きれいに食べることは難しい。食べている途中にハンバーガーが崩れてしまうことが多々ある。この点、「メガたまご」はメガマック以上である。記者がマクドナルド東陽町店で食べた時は、ソースで手がベタベタになってしまった。食べる前に写真を撮影しておいたことはわれながら賢明な判断であった。

弁護士への委任状のずさん

相続人でない者が相続問題を委任?

 弁護士に交付する委任状が、実にずさんな形で作成されているかを示す例があるので紹介する。問題は私の母が関係する相続紛争である。私の祖母が2007年に亡くなり、祖父は既に他界しているため、祖母の財産は三人の子どもが相続することになった。長男・長女(母)・二女である。

 ところが、祖母の死後に長男夫婦が発見したと主張する遺言書では、主要な財産が長男とその配偶者に生前贈与・遺贈されていた。遺言書記載通りになると、母の遺留分さえ侵害される結果になるため、母は2008年2月、長男および配偶者の両者に民法1031条に基づき、遺留分減殺請求を内容証明郵便にて行った。

 これに対し、3月13日付の内容証明郵便で東京弁護士会所属の4弁護士が、長男の代理人として委任を受けたことを母に通知した。母は長男の委任状の写しを送付することを要求した上で、長男の配偶者に対しても遺留分減殺請求を行っている点をファクスにて指摘すると、3月19日に配偶者とも委任契約を締結したとの返信がなされた。ところが、あわせて送付された委任状の写しが問題であった。

 3月18日付の委任状には委任の内容として「被相続人○○にかかる相続における交渉の一切」と書かれていた。これは先に送付された3月5日付の長男の委任状と同内容である。しかし長男の配偶者の委任内容としては不適切である。

 長男の配偶者は相続人の配偶者に過ぎず、相続人ではない。長男の配偶者にとって祖母は被相続人ではないし、祖母の財産を相続することはない。従って長男の配偶者が祖母の相続について交渉権限を弁護士に委任すること自体があり得ない。

 すぐに母は上記問題を弁護士に指摘した。配偶者本人あても含む複数回の催促を経て、半月後の4月7日に法律事務所から委任内容を「○○にかかる遺贈における交渉の一切」と修正された委任状の写しが送付された。

 本件で驚かされるのは基本的な事実関係すら把握することなく、弁護士が委任状を受け取っていることである。委任状は依頼者が作成して弁護士に交付するものだが、法律事務所で原型を用意し、依頼者は必要な個所を埋めて捺印(なついん)するだけという形になるのが一般である。書く内容も弁護士側が指導する場合が多く、間違えが生じないようにしている。それにもかかわらず、相続人でもない人間に対し、相続に関する交渉権限を委任させるのが信じ難い。

 しかも修正前と修正後の委任状では依頼人の印鑑が全く別物になっている。修正前の委任状では印影の字体が印相体で、高級な印鑑を使用したものと推測される。一方、修正後の委任状では印影が三文判にあるような普通の字体になっている。

 委任状は代理権を授与するものである。代理人の法律行為は本人に帰属する。たとえ本人が承知していなくても、代理権を委任した者の行為ならば本人が責任を負わなければならない。それだけ委任状の作成は慎重にしなければならないものである。

 ところが本件では慎重さがみられない。依頼者は弁護士任せで、法律事務所側も定型的な処理として委任状を受け取るだけである。委任状の内容が適切であるか熟慮したとは思えない。

 長男夫婦が委任した弁護士法人のウェブサイトによると、市民に身近な法律事務所を目指しているようである。普通の人にとって弁護士への相談は敷居が高いと指摘されており、結構なことであると考える。しかし敷居の低い法律事務所にした結果、本件のようなずさんな委任状が作成されるならば依頼人が損害を被る危険もある。弁護士のやることに間違えはないと思わない方が賢明である。

買い手が注意しなければならない不動産市場の欠陥

「バーリントンハウス馬事公苑」で施工不整合

 老人ホーム「バーリントンハウス馬事公苑」(東京都世田谷区)の施工不整合は、耐震強度偽装事件や欠陥マンション問題で繰り返されてきた問題と構図が重なる。

 それは買い手が注意しなければならないという不動産市場の絶望的な状況である。

 当該施設はグッドウィル・グループが2006年に開設した老人ホームで、構造計画研究所が構造設計を担当し、東急建設が施工した。柱の鉄筋本数が少ないなど、約800カ所で建築確認を受けた設計図面と異なる施工があることが2008年5月30日に判明した。耐震強度不足の可能性もあり、東京都が調査に着手した。大手メディアが報じた。

 興味深いのは問題の発覚過程である。上記施設を2007年12月に購入する予定だった不動産コンサルティング会社「ゼクス」(東証1部上場)が建築関係書類をチェックしていて発覚した。

 本来ならば手抜き施工に対しては、何重ものチェック機能が働く。

 第1に監理である。工事では監理者というポストを設置し、設計書通りに施工されているか確認する。監理は設計書を熟知している設計者が行うのが通常である。

 第2に確認検査機関の検査である(中間検査、完了検査)。建築確認の内容通りに建築されたことを確認する。

 第3に建築主の検収である。建築主は発注者として、建築請負契約の通りに施工されているか確認する。

 本件では、これらのチェックは全て機能しなかった。本件だけではない。耐震強度偽装事件でも、居住してから欠陥が判明する欠陥マンションでも、チェック機能は働かなかった。その一方で、本件では買い手の調査で明らかになった。

 買い手の調査で判明する程度の内容ならば、上記の3段階のチェックで見極めることは、能力的に不可能とは考えられない。

 買い手と上記の確認者との相違は能力面ではなく、真剣さにある。

 物件の買い手は不良物件をつかまされたくないため、問題がないか真剣に調査する。一方、監理や確認検査機関にとっては「所詮、他人事」という面があるのではないか。

 料金分以上のチェックはやらないという意識が働いている可能性がある。建築主は自分の建物になるのだから、本来、真剣に調査すべきである。しかし自分が住む建物でもない限り、専らの関心は建築費用を低く抑えることになりがちである。施工を厳しくチェックするよりも、安い費用で施工する業者を歓迎してしまう。

 これも耐震強度偽装事件や欠陥マンションと同じ構図である。

 建築する側も、検査する側も、真剣にチェックするインセンティブが働かないならば、物件の買い手が注意するしかないことになってしまう。紛争予防策として買い手に注意喚起することは有意義である。

 とはいえ契約前に全てをチェックすることは困難である。本件でもゼクスの調査には限界があったことが伺われる。譲渡は延期したものの、施設の運営はゼクスが継承している。仮に契約前に問題の全容を把握していれば、そもそも契約を避けることが合理的な行動である。だからこそ、東京都に相談し、本件が報道されるに至ったものと推測される。

 買い手の調査が望ましいとしても、調査能力の限られている一般消費者の場合、注意を要求するだけでは酷である。しかも問題物件を購入してしまった買い主の自己責任を強調することで、建築主として行うべき確認を怠った(または悪意ある)売り主側を利する結果になり、正義・公平に反する。

 ゼクスにとって妥当な解決策は契約解除と思われる。記者も東急不動産から購入したマンションについて引渡し後に不利益事実(=隣地建て替え)不告知が判明したため、消費者契約法に基づき売買契約を取り消した(記事「東急不動産の遅過ぎたお詫び」参照)。

 「バーリントンハウス馬事公苑」の件は、不動産購入における買い手の調査の重要性を再認識させた。一方、調査能力のある不動産業者でも問題物件を購入してしまう可能性があることも明らかになった。

 売り手は十分な調査をせず、反対に買い手が調査しなければならないのが不動産市場の現実である。

 買い手には十分な調査が望まれる一方、今後は物件に問題が発覚した場合、速やかに契約を白紙に戻す形での契約実務や裁判例が蓄積されていくことを期待したい。

〈京都〉関東で食べる関西の味(番外編)

とろけるチャーシューがうまい豚骨ラーメン

 地域情報充実企画「関西あっちゃこっちゃ見・聞・食」に便乗して、関東で食べられる関西の味を紹介したい。紹介するのは「よってこや日吉店」(横浜・港北区)である。「よってこや」は京都の屋台の味をコンセプトとしたラーメンのチェーン店である。島原千本という京都出身の頑固職人が屋台で始めた京風ラーメンという設定だ。

 この店は、東急東横線日吉駅西口を出て普通部通りを進んだ先にある。店舗は黒を背景色とした看板が人目を引く。看板には白字の大きな手書き風の文字で「門外不出の屋台の味」と書かれている。

 単なるチェーン店ではなく、こだわりのラーメン屋であることを強く自己主張している。日吉にはラーメン屋が多い。慶應義塾大学があるため、学生も多く、ラーメン屋にとって激戦区とも言える。その中でも「よってこや日吉店」はひときわ目立つ店構えである。

 店内は2階まであり、1階はカウンター席、2階はテーブル席である。記者が6月10日の12時過ぎに入店した際は1階席がほとんど埋まっており、2階に案内された。2階の方がゆったりしている感じで、かえって良かった。屋台から出発した店をコンセプトにしているが、季節限定メニューもあり、メニューは豊富である。記者は豚骨ラーメンとご飯のセットを注文した。

 こってりしたスープは豚骨が効いていて美味であった。脂身がのって柔らかいチャーシューもスープとマッチし、口の中でとろける。めんは細く、量も少なめであるが、濃厚なスープを飲み干せば満腹になる。それでいて胃もたれするような濃さはなく、いわば上品なこってり感である。スッキリとさえ言える後味で、ご飯もおいしく食べられた。

 関西風の味を考えるならば、互いに矛盾する印象が出てくる。一方では「こってり」である。他方では関東濃味に対して関西薄味と言われている。「よってこや」のラーメンには両者が止揚された味わいが感じられた。


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よってこや

技術者の発表でホンダイズムを実感

「2008 JCF」に行ってきました

 「2008 JCF」が2008年6月9日、10日の2日間、東京プリンスホテル(東京都港区)にて開催された。JCFは日本アイ・ビー・エム株式会社とダッソー・システムズ株式会社が主催する、PLMソリューションの最新情報や先進事例を紹介するフォーラムである。

 PLMはProduct Lifecycle Managementの略で、“製品ライフサイクル管理”と訳される。工業製品の企画・開発から、設計・製造・生産・出荷後のメンテナンス、販売停止まで製品の全過程を一貫して包括的に管理する手法である。各部門が製品の情報を共有することで、ニーズに即した機動的な製品開発や効率的な生産を図る。

 「2008 JCF」では、『New Ways with 3D:Next Digital Monozukuri──3Dで拓くものづくり新時代』がテーマとなっている。PLM自体は幅広い内容を含むが、各企業の展示ブースではテーマに沿って、製品データを3次元のデジタルデータとして共有するソリューションが中心となる傾向が感じられた。

 セッションではさまざまな企業が自社のPLM適用事例を紹介した。中でも自動車メーカーのホンダは株式会社本田技術研究所が1つ、ホンダエンジニアリング株式会社が2つと合計3セッションを提供するほどの力の入れようであった。本田技術研究所は本田技研工業株式会社の研究開発部門、ホンダエンジニアリングは生産技術部門を分社化した子会社である。以下、ホンダのセッションを2つ紹介したい。

「設計者自らがCAEを用いてみて」

 本田技術研究所四輪開発センターの大薗耕平・主任研究員のセッション「設計者自らがCAEを用いてみて」では設計者自身によるCAE (Computer Aided Engineering)の取り組みを発表した。

 CAEは設計・開発工程を支援するコンピューターシステムで、強度や耐性の計算などを行う。計算結果の解析を解析専門家に依存するのではなく、設計者自身で取り組む点がポイントである。

 難易度の高い設計対象を徹底的にCAEツールで可視化していると説明した。一方、新規にCAEツールを導入する場合、最初は設計者にとっては大きな負担増になる。その点についてマネジメントが考慮する必要があると力説した。

「設計者・技術者が喜ぶデジタル手法とは」

 ホンダエンジニアリング車体設備生産部の松田英次、竹内康一の両氏によるセッション「設計者・技術者が喜ぶデジタル手法とは」ではCAD(Computer Aided Design)製品CATIA使用事例と効果が紹介された。

 設計段階での3Dモデルの完成度が低いと、後工程でさまざまな問題が噴出する傾向にあると説明する。完成度の差は属人的なスキルや設計要件の確立の度合いで左右されるため、徹底した標準化を実施しているとする。一方で標準化の弊害として、革新的な技術進化が生まれにくくなるとの懸念が生じている。

 技術者のプレゼンテーションと言えば専門用語の羅列で難解なものになりがちだが、ホンダの発表はメッセージ性が非常に明確であった。課題と解決策、それによって生じるさらなる課題を明快に説明する。専門知識を有していなくても、何が問題であり、どのように解決するのかを理解できる。ホンダの企業風土を特色づける言葉としてホンダイズムがある。まさにホンダイズムが今も脈々と息づいていることを感じさせるセッションであった。

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「2008 JCF」

感情は変えられないが、思考や行動は変えられる

日経転職応援フォーラムに参加した

 日本経済新聞社および日経HRが主催する日経転職応援フォーラムが2008年6月21日、東京ドームシティ・プリズムホールにて開催された。オーマイニュースの画面上部のバナー広告でも紹介されたイベントだ。記者は別企業が主催する「第47回エンジニアtype適職フェア」にも参加したので、両者を比較しながら紹介したい(参照「プロフェッショナルとは何か、転職フェアで考えた」)。

 両者とも同じ会場で開催され、求人企業のブースが並び、転職相談コーナーがあり、セミナーが開催された点は共通する。typeが製造(ものづくり)系エンジニアとIT系エンジニア限定であったのに対し、日経は「総合」「ITエンジニア」「金融」「女性」の4コーナーを設け、多くの職種を対象としていた。また、女性向け求人があるため、女性参加者が多かった。

 typeはエンジニア対象のためか、カジュアルな参加者も多かったが、日経はスーツが大半であった。会場にドリンクコーナーがあり、飲料を配布している点は同じ。参加者にQUOカードがプレゼントされる点も同じだが、typeが携帯電話のメールアドレスによる事前登録者対象であるのに対し、日経ではアンケート回答者に渡された。

 typeでは最初に自分の職歴や希望条件をまとめた企業訪問カードを書かなければならない。これは日経も同じだが、事前登録者は事前登録時の情報を印字した企業訪問カードを渡される。会場で書くのは時間がかかる上、立ったまま急いで書くため、字も汚くなる。この点で日経のサービスは優れている。

 セミナーからは小笹芳央(おざさ・よしひさ)氏の「自立的なキャリアデザインに向けて〜アイカンパニーの設立とキャリアの因子分解〜」を紹介したい。

 小笹氏は企業変革コンサルティング会社である株式会社リンクアンドモチベーションの代表取締役である。セミナー開催の20分前には座席は大半が埋まり、立ち見が出るほどの盛況であった。

 セミナーでは自分自身を株式会社(アイカンパニー)と位置付け、アイカンパニーを成長させるヒントを提言した。一方的に説明するのではなく、聴衆に隣の人とジャンケンをさせるなど奇抜な手法を使って聴衆を惹き付けており、プレゼンの仕方としても勉強になった。

 小笹氏の主張の1つは「変えられるものにエネルギーを集中する」である。感情や生理反応は変えられないが、思考や行動は変えられる。腹の立つことがあれば怒りの感情が生じるのは避けられない。だから腹の立つことに直面しても、「ちょうど良かった。これで○○できる」と考えるようにする。マイナス感情に引きずられるのではなく、主体的に意識して思考や行動を決めようと提言していた。

 これは記者にも思い当たることがある。記者は東急不動産(販売代理:東急リバブル)からマンションを購入したが、引き渡し後に不利益な事実(隣地建て替えなど)を隠して騙し売りされた真相を知った。その後、東急リバブル・東急不動産の対応は「売ったら売りっぱなし」という不誠実極まりないものであった。当然、記者は烈火のごとく腹を立てた。

 しかし、一生に一度あるかないかの大きな買い物で問題物件をつかまされて鬱屈としたわけではなかった。

 「東急リバブル・東急不動産の企業体質を知ることができて、ちょうど良かった。東急不動産とは縁を切ろう」と決意し、消費者契約法に基づき、売買契約を取り消した(参照「東急不動産の遅過ぎたお詫び」)。それによって今の記者がある。

 仕事面だけでなく、人生を豊かにするためのヒントが満載のセミナーであった。

■関連リンク
日経転職応援フォーラム/日経の転職サイト 日経キャリアNET

相続紛争で、何でもありの弁護士交渉

弁護士のレベルってこんなもの?

 他界した祖母の相続紛争に登場した弁護士の、驚くべき主張を紹介する。法律を曲げて都合のいい主張をしたり、確認しようのない故人の感情を持ち出し、法的根拠も論理性も存在しない主張をしてきたのだ。

 相続人は長男、長女(母)、二女の3人だが、長男夫婦が祖母の死後に発見したと主張する遺言書では、主要な財産が長男とその配偶者に生前贈与・遺贈されていた。

 相続財産の大部分を占有する長男夫婦が協力しないため、正確な相続財産の目録も評価もできていないが、遺言書通りとなると母の相続分は遺留分の3分の1弱となる。そこで母は遺留分減殺を請求した。遺言書そのものの真贋(しんがん)も問題であるが、遺留分減殺請求には消滅時効があるためである。

 これに対し、長男夫婦は同一の弁護士法人に所属する4人の弁護士を代理人として委任した。弁護士は当初、会って話をすることを提案したが、母が都合の良い日時・場所を返信すると、弁護士から当面はスケジュールが埋まっているため、書面のやり取りをしたいとの回答が2008年3月19日になされた。

 その後、現在に至るまで一度も面談交渉はなされていない。母が別記事で書いた委任状の問題などを粘り強く指摘したために、簡単に丸め込める相手でないと感じて慎重になっているのではないかと推測する(記事「弁護士への委任状のずさん」を参照)。

 弁護士は4月11日付ファクスにおいて、長男夫婦に100パーセントの寄与分があることを主張し、遺留分減殺請求には理由がないと主張した。「遺留分算定の際の相続財産は、被相続人の財産形成に寄与のあった相続人の寄与分を控除したものであるところ、Y1氏(長男)の寄与分を控除すればA氏(祖母)の相続財産は存在しない」と。

 これに対し、母は以下のように反論した。

 第1に長男夫婦は祖母と同居していただけで、寄与の事実はない。寄与によって財産が増大したとの具体的説明もなされていない。

 第2に寄与分は相続人が対象であり、長男の嫁は対象外である。

 第3に遺留分額の算定に、寄与分の有無が影響を及ぼすことはない。寄与分があるから遺留分がないとの論理は成り立たない。

 第4に寄与分は相続開始時の財産から遺贈を控除した額を超えることができない(民法第904条の2第3項)。遺言書が有効とすると財産の大半が遺贈されており、母の遺留分を否定するだけの寄与分が成立することはない。

簡単な説明のために法律の意味を曲げていいのか?

 これに対する5月2日付の再反論が粗末であった。第3の遺留分算定に寄与分は影響しないという点について、「簡明な説明のために厳密な表現を用いなかった」と釈明する。寄与分が認められるならば、寄与分に対しては遺留分減殺請求できないと主張したいようである。しかし、これでは先の主張(遺留分は相続財産から寄与分を控除して算定する)とは全く別の意味になる。

 そもそも寄与分という法律上の言葉を使う以上、正しい意味で使用すべきである。分かりやすく説明したのではなく、法律を曲げて都合のいい主張をしたとしか思えない。もし母が「弁護士の主張することだから」と真に受けてしまったならば大損害を被るところである。

故人の感情を勝手に決め付ける主張

 さらに驚くべきは弁護士による以下の文言である。

 「貴殿がY1氏やY2氏(長男の嫁)の寄与を無視した主張や要求をされることは、遺言に込められたA氏の思いを踏みにじるものであり、A氏は悲しまれます」

 相続人が法律上保障された権利(遺留分減殺請求権)を行使することで、祖母が悲しむと決め付ける。ここには法的根拠も論理性も存在しない。いったい、弁護士は生前に会ったこともない故人の感情を、どのような方法で確認したのか。

 弁護士が所属する弁護士法人のウェブサイトでは、公正中立な立場ではなく、クライアントの利益を守るのが弁護士の責務という理念を掲げている。しかし顧客の利益を守ることは、すべての職業に求められる当然の責務である。弁護士がほかの職業以上に世の尊敬に値する職業であるのは、顧客の利益を守る以上の要素があるためである。基本的人権を擁護し、社会正義を実現することが弁護士の使命である(弁護士法第1条)。

 法律を無視し、相手方の権利を踏みにじり、ひたすら依頼人の利益を追求することが弁護士の責務とは到底思えない。実の親の感情を勝手に決め付けて攻撃する弁護士のやり方に、母は非常に腹を立てており、懲戒請求も視野に入れていると語る。

携帯電話で図書館資料を検索・予約

東京・江東区、ユビキタス化が進展

 東京都江東区の区立図書館では2008年6月下旬、携帯電話から図書館資料を24時間検索・予約できるサービスを開始した。

 区内11の図書館は、各図書館の蔵書状況を共通のOPAC(Online Public Access Catalog)システムで管理している。このOPACシステムは数年前からPC用にサービス提供されていたが、今回、それが携帯電話からも可能になった。この結果、いつでも、どこからでも、読みたい本をどこの図書館が所蔵しているのか、今、貸し出し可能なのかどうかが、分かるようになった。

 OPACシステムは数年前からPCのウェブで公開中で、自宅からインターネットに接続して所蔵状況を確認できるほか、貸し出し予約サービスも行っている。

 携帯用のOPACでは、タイトル、著者名、ISBNのいずれかで検索できる。全文一致ではなく、部分一致でもヒットする。「ハリーポッター」でも「ハリー・ポッター」でも、きちんとヒットしてくれるのはうれしい。

 一方、検索結果が100件以上の場合は「最大表示件数100件を越えました。条件を追加して検索し直して下さい」と表示され、絞り込みが必要になる。そのため、著者の名字のみというような検索は厳しいと思われる(この点、PC用のWeb版ならば100件という制限はない)。

 検索結果詳細には書誌情報と所蔵情報が表示される。PC版では「内容紹介」のリンクも表示され、クリックすると簡単な内容説明文が表示される。これは携帯版にはない。

 PC版も、携帯版も、検索結果詳細のNDC分類欄はリンクがされている。NDCは日本十進分類法Nippon Decimal Classificationを指し、社団法人日本図書館協会が作成する図書館資料の分類法である。江東区立図書館もほかの多くの図書館と同様、資料の配架は基本的にNDCに従っている。

 NDC分類欄はリンクがあるため、リンクをクリックすることで同じNDC番号の資料を表示させることが可能である。ただし、同じNDC番号の資料はたくさんありすぎて、一覧表示できない場合が多い。

 江東区には江東、深川、東陽、豊洲、東雲(しののめ)、古石場、城東、亀戸、砂町、東大島、白河の11の区立図書館がある。

 図書館資料を、いつでも、どこからでも探し予約できるようになり、図書館のユビキタス化の進展を実感した。

■関連リンク
携帯電話から図書館資料の予約ができます(江東区)
携帯WebOPAC(江東区)

ヤフー株主の関心は、株価とGoogleの脅威

株主総会出席記

 ポータルサイトYahoo! JAPANを運営するヤフー株式会社の第13回定時株主総会が2008年6月24日午前10時から約2時間、東京国際フォーラムで開催された。

 今回は通常の事業報告や役員の選任に加え、定款の変更も議決された。定款の変更内容は吸収合併したアルプス社の事業であった、地図製作や測量などを事業目的に追加することなどである。

 井上雅博社長はヤフーの成長戦略のひとつとしてソーシャルメディア化を挙げる。Web 2.0に対応し、個人が発信する情報を取り込んでいく。その例としてYahoo!ニュースを取り上げた。ここでは各種メディアの記事を配信しており、オーマイニュースの記事もパブリックニュースとして掲載されている。

 もともとは記事を一方的に掲載するだけのWeb 1.0的なコーナーであったが、今ではソーシャルブックマークやブログへのリンク、「みんなの感想」(評価アンケート)やコメント欄を設けた。

 このような付加価値を付けることで、よりサイトを活用できるようにしているとする。

 また、井上雅博社長は米国Yahoo!とGoogleの提携について、日本と米国の状況の相違を力説した。米国では検索エンジンのシェアの過半数を Googleが占めているが、日本では逆にYahoo! が過半数である。Yahoo! JAPANとしてはGoogleのシステムを利用するメリットはないと断言した。

 株主からの質疑応答では株価の低迷とGoogleの脅威に関心が集中した。ヤフーの株価は2008年4月に年初来高値の5万5400円を記録した後、現在は4万1000円台に低迷している。

 増収増益にもかかわらず株価に反映されていない点、株主数が前事業年度末と比べて5万6221名も減少している点などが追及された。これに対し、井上氏は残念な状況としつつ、株価上昇の基本は業績であり、加えてヤフーにはまだまだ成長の可能性があることを積極的に説明していきたいとした。

 Googleの脅威についても株主から厳しい意見が出された。現在のシェアはYahoo!が上でも、Googleは検索結果の正確性への評価が高く、やがて抜かれるのでないか。また、Googleには先進的なサービスを積極的に公開するイメージがあるが、Yahoo!は後から似たようなサービスを提供している印象がある、などである。

 これに対し、井上社長は確かに欧米ではGoogleへの評価が高いが、アジアの国々では異なると説明した。欧米の評価が日本にも当てはまるものではないとする。

 また、ヤフーは新規サービスに積極的に取り組んでいると反論した。Googleはもともとサービスが少ないため、新規サービスの開始自体が大きなニュースになりがちである。一方、ヤフーは多数の既存サービスがあり、新たなサービスが開始されても目立たないとする。

 株主からの要望に応じて、孫正義会長もあいさつした。孫会長は「米国のYahoo!が検索ではGoogleに抜かれ、オークションではeBayに敗れて撤退する中でも、Yahoo! JAPANは国内No.1のポータルサイトとして成長を続けた」と振り返った。

 経営陣が自らの成長戦略に自信を持っていること、決して現状のシェアに甘んじているわけではなく、さらなる成長を目指していることが伝わった株主総会であった。ぜひとも株価上昇を望む個人株主の期待に応えてもらいたいと考える。

東京・水道橋の由来を示す石碑

神田上水懸樋(掛樋、かけひ)跡

 東京にある水道橋の由来を示す石碑を見つけたので紹介したい。水道橋は神田川に架かる、実在する橋の名前である。文京区と千代田区と結ぶ橋である。白山通りの一部となっており、道路部分と橋の部分の差がほとんどないため、橋として意識されることはあまりない。むしろ、橋の近くにある鉄道の駅名に使われていることで知られている。東京ドームの最寄り駅として認識されている方も多いのではないか。

 本来、水道橋とは水を通すための橋を意味する普通名詞である。それがなぜ、固有名詞に転化したのか、考えれば不思議である。水道橋から外堀通りを東(御茶ノ水・秋葉原方面)へ進んだ神田川沿いにある石碑が、その疑問に答えてくれる。
 その石碑は「神田上水懸樋(掛樋)跡」である。懸樋(掛樋)は「かけひ」と読む。石碑は上段に文京区長・遠藤正則の書で「神田上水懸樋(掛樋)跡」と書かれている。下段には金属プレートで絵と説明文がある。説明文の内容は以下の通りである。

 江戸時代、神田川に木製の樋(とい)を架け、神田上水の水を通し、神田、日本橋方面に給水していました。

 明治三十四年(一九〇一)まで、江戸・東京市民に飲み水を供給し続け、日本最古の都市水道として、大きな役割を果たしました。

 この樋は、懸樋(架樋)と呼ばれ、この辺りに架けられていました。

 この絵は、江戸時に描かれたもので、この辺りののどかな風情が感じられます。

 平成八年三月 東京都 文京区

 水道橋の名前は江戸時代に神田上水の懸樋(水路橋)があったことに由来するのである。
 「水道の水で産湯を使った」ことが江戸っ子の自慢である。江戸は八百八町と称され、人口が100万人を突破し、世界一の大都市であった。その江戸のライフラインとなったのが水道である。

 今回、記者は東京ドームシティに自転車で出掛けた途上で、この石碑を発見した。電車では駅から駅まで運ばれるため、その途中を見ることができない。特に地下鉄では車窓から景色を眺めることもできない。この点、自転車では思わぬ土地の歴史を発見できて面白い。

リアリズム写真集団による写真展、開催中!

いつか来た道への不安を表現

 日本リアリズム写真集団(JRP)江東支部・第13回写真展「だぼはぜ」が2008年6月24日から30日まで江東区文化センター(東京都江東区東陽)にて開催される。会員が過去1年間に撮影した代表的な作品を展示する。

 JRPは1963年に結成された団体で、写真の創造活動を通じて表現の自由を守り、日本の平和と民主主義に寄与することを目指す。アマチュア、プロ、初心者、ベテランの区別なく、写真を学び、撮り、発表する活動を展開している。

 団体の性格にふさわしく、展示された写真も社会性の強いものが多かった。例えば「メタボな幸せ」と題された写真では肥満体であるが、健康的で幸せそうな生活を送っている人々を写している。

 印象に残ったものは渡邊渡氏の「にっぽん『防衛?』今昔」と題された一連の写真だった。品川台場跡の写真から始まり、日中戦争の兵士の写真、横須賀基地に停泊する米海軍の軍艦の写真などが並んでいた。

 幕末の台場は列強の軍艦から江戸を守るために築かれたものであったが、明治以後は反対に日本がアジアを侵略した。

 敗戦後、平和憲法によって戦争放棄を誓ったはずだが、防衛費支出の面では日本は世界有数の軍事大国となり、日米同盟は緊密さを増している。そのような状況に対する不安が撮影の動機と展示説明に書かれている。

 また、江東区文化センターでは6月24日から29日まで第16回江東区美術協会展も開催されている。ここでは日本画や洋画、切り絵などさまざまな美術作品が展示されている。

■関連リンク
JRP江東支部・第13回写真展「だぼはぜ」

エイブル、景品表示法違反で排除命令

東急リバブルにも指摘されていた虚偽広告

 賃貸仲介不動産大手の株式会社エイブル(平田竜史社長)は2008年6月18日、景品表示法の規定に違反しているとして、公正取引委員会から排除命令を受けた。

 自社ウェブサイトや賃貸住宅情報誌、ウェブサイト「CHINTAI NET」上の賃貸物件広告が景品表示法に違反すること(おとり広告、優良誤認)を理由とする。9店舗で18件もの違反が見つかっている。

 具体的な違反内容は以下の4点だ。

 第1に最寄り駅までの距離を実際は徒歩26分であるにもかかわらず、徒歩16分の地点に所在するかのように表示した。

 第2に建物の建築年月日を実際よりも新しい日にちで表示した。1979年2月築を1996年5月、1990年10月築を1997年8月に表示した。

 第3に存在しない物件を賃借できるかのように表示した(おとり物件)。

 第4に賃借中の物件を賃借できるかのように表示した(おとり物件)。

 記者自身、不利益事実不告知で売買契約を取り消した東急不動産(販売代理:東急リバブル)の分譲マンションを購入する前はエイブルの仲介で門前仲町の賃貸マンションに居住していた経験がある。

 部屋を探す際にウェブで条件に適合した物件を見つけ、エイブルに問い合わせたが、先に契約が決まってしまったということで上記マンションを紹介された経緯がある。最初の物件は「おとり物件」だったのではないかという疑念がよぎる。

 この種の問題は1社だけの問題ではなく、業界的な体質であることも少なくない。耐震強度偽装事件や古紙偽装問題、食品偽装事件なども思い出される。

 実際、東急リバブル株式会社の不動産売買の仲介広告でも虚偽表示が繰り返されていた。東急リバブルの場合、同じマンションの媒介で虚偽広告が繰り返された点が悪質である。

 第1に2005年の錦糸町営業所の媒介広告で、間取り、用途地域、駐車場料金に虚偽があった(参照「不動産広告にだまされないように」)。


 第2に2007年12月末から翌年2月にかけての東陽町営業所の媒介広告で、駐車場料金、間取り図、管理会社名、近隣のスーパーマーケット名に虚偽があった(参照「東急リバブル、虚偽広告でお詫び」)。駐車場料金の虚偽は前回と同じである。

 東急リバブルの虚偽広告に対しては、2件とも公正取引委員会に情報提供した。公取委はともに東急リバブルが加盟する社団法人首都圏不動産公正取引協議会において改善措置を講じさせた。

 2008年5月8日付のオーマイニュース週間市民記者賞の講評では「自分の身近な体験が、マスメディア報道をきっかけに、後から注目を集める(ニュースになる)」記事が評価された。

 手前味噌になるが、東急リバブルの虚偽広告を報じた拙記事も時代に先んじた問題意識によるものと自負している。

 まだまだ不動産業界は健全な消費者感覚とは乖離している。今後も消費者の立場から不動産業界の問題に注目していきたい。

参考
公正取引委員会「株式会社エイブルに対する排除命令について」
株式会社エイブル「公正取引委員会からの排除命令について」

下町描く風景漫画家、緻密な背景にユーモラスな人物

東京・江東区で沖山潤氏の漫画展

 沖山潤氏の風景漫画展「深川ぐるり漫画散歩」が2008年6月22日から6月30日まで古石場文化センター(東京都江東区)にて開催されている。沖山潤氏は江東区在住の風景漫画家で、下町の情景を中心に風景漫画を描いている。もともとは漫画雑誌に連載していたが、暴力シーンやエロシーンばかり求められる状況に悩み、風景漫画に転じたそうだ。

 展示された風景画は下町情緒の色濃い風景である。永代橋のように地元民には馴染みの場所もある。風景画のほかに「二八そば」など落語を題材とした絵もある。

 沖山潤氏の漫画では背景が実に緻密に描かれている。それでいて登場する人物はユーモラスで、文字通り漫画的。このアンバランスさが絶妙だ。深川不動堂(お不動さん)の絵では、境内の香炉から有難く煙を頂く参詣者の後ろに喫煙者がいて、その煙も参詣者にかかっている。

 ポスターに使われた風景画は八幡橋(江東区富岡)を描いたものである。八幡橋は国産初の鉄橋で国指定重要文化財にもなっている。この絵には松尾芭蕉を髣髴とさせる人物が登場する。

 八幡橋の隣の富岡八幡宮では境内の末社・花本社が、深川に芭蕉庵を構えた松尾芭蕉を祀っている。八幡橋自体は芭蕉よりも後の時代に架けられたが、芭蕉にゆかりの地と言ってよい。

 面白いのは頭陀袋(ずたぶくろ)に描かれたマークが江東区のシンボルマークになっていることである。過去と現在が同居する江東区の不思議な空間を表しているように感じられた。

IT基盤とデータセンターの最新動向

ITインフラ&データセンターサミットに行ってきた

 調査会社ガートナージャパン株式会社が主催する「ITインフラストラクチャ&データセンターサミット2008」が6月17日と18日の2日間、大手町サンケイプラザで開催された。

 ITインフラとデータセンターの最新動向を紹介するイベントである。仮想化やグリーンITなど興味深いテーマのセッションがめじろ押しであった。本記事では2日目の主要講演を紹介する。

 ガートナー基調講演「インフラストラクチャとオペレーションのリーダー:主要課題への対処法」では、ガートナーリサーチ・バイスプレジデントのジェイ・パルツ氏がシステム基盤運用管理は自動化が進むと予想した。同氏は2015年ごろには運用管理者はビジネス志向に進化すると主張する。顧客のニーズの変化に応じてサービスを修正することが重要になるとする。

クラウド・コンピューティング

 ジェネラル・セッション「クラウド・コンピューティングのリアリティとデータセンターへのインパクト」はガートナーリサーチ・バイスプレジデントのフィリップ・ドーソン氏による講演である。

 クラウド・コンピューティングのクラウドcloudは雲を指し、サービスを提供するサーバーがネットワークの雲に隠れている状態の比喩である。サービス利用者はサービスがどのように実行されたかを気にかけずにサービスを利用する。ユーザーにとって重要なのは結果であり、方法には関心がない。資産を持ちたくない、必要な時に必要なだけ購入して利用する方式を望む企業に適したスタイルとする。

 上記の説明からはSaaS(サービスとしてのソフトウェア)と類似するように思える。しかし、氏はSaaSを単体ではパッケージ・ソフトウェアの代替デリバリ・モデルとし、クラウドとは異なると位置付ける。そしてクラウド・コンピューティングのプロバイダーはSaaSを含む総合的なサービスからハードウェア(ストレージなど)まで動的に提供することを目指すとした。

地底データセンター

 ゲスト基調講演「地底プロジェクトがもたらすインパクトを探る」は地底データセンターがテーマである。オープンスタンダードコンソーシアム代表幹事の中村彰二朗氏がスピーカーで、ガートナーリサーチ・バイスプレジデントの亦賀忠明氏が聞き手となった。
 「地底空間トラステッド・エコ・データセンター・プロジェクト」は日本国内の地底100メートルにデータセンターを設置するプロジェクトである。2007年11月に構想を発表し、現在着工フェーズに入っているという。

 地底にデータセンターを構築することで省電力とセキュリティの向上を実現する。大量のサーバーが24時間365日稼働するデータセンターでは、マシンの熱を冷やさなければならず、電力消費量は膨大になる。これに対し、地底データセンターは地下水を使用した水冷方式を採用し、消費電力50パーセント削減を目指すという。また、地底に構築することで人工衛星から発見されにくく、侵入や破壊も困難になる。

 今回のイベントが対象としたITインフラは最もシステム利用者から遠い存在である。しかし、多くのセッションにおいて利用者側に目を向ける必要が唱(とな)えられたことは興味深い。地底データセンターでさえ社会一般から隠す意味もあって地底に構築するのだが、一方で鉱山掘削跡地の再活用による地域活性化も目指している。技術が技術として完結するのではなく、利用シーンや利用者のメリットを踏まえる必要があることをあらためて実感した。

■関連リンク
ガートナー ITインフラストラクチャ&データセンター サミット 2008

大学が企業・住民との出会いの場を企画

芝浦工業大学「大学開放DAY!」開催

 芝浦工業大学は2008年6月28日、東京・豊洲キャンパスにおいて「第3回大学開放DAY!」を開催した。キャンパスを近隣住民に開放し、大学を身近に感じてもらうためのイベントである。

 「大学開放DAY!」は豊洲にキャンパスを移転した2006年以来、毎年開催されており、今年は大学と協力団体・近隣企業、近隣住民の出会いを演出する場にしたいとの願いを込め、テーマを「MEETS!」とした。
 大学や学生によるもののみならず、学外の団体・企業によるさまざまなイベントも開催される。米村でんじろうプロデュースサイエンスショーや「聞かせ屋。けいたろう」による絵本読み聞かせ、Doスポーツによる「メタボリックチェック」などが行われた。

 学生のものとしては、学生サークル「ロボット遊交部からくり」によるロボット工作教室や鉄道研究会による鉄道模型の展示・運転「模型でGO!」などがある。ロボット工作教室ではタミヤ工作キットを使って学生が考案したロボットを作ってもらい、そのロボットを使用してゲームをする。

 全体として小さな子ども向きのイベントが多く、模擬店も出店しており、家族連れでにぎわっていた。このようなイベントによって科学への関心が高まるならば、子どもの理科離れへの対策にもつながると考える。

■関連リンク
第3回大学開放DAY!(芝浦工業大学)

「花より男子」コラボ企画、「だんごナポリタン」を食べた

ファミリーマート、映画公開記念商品を発売

 コンビニエンスストアのファミリーマートは2008年6月24日から7月21日までの期間限定で、映画「花より男子ファイナル」公開を記念したコラボ商品を発売した。

 記者は6月26日にファミリーマート越中島店でコラボ商品「だんごナポリタン」を購入した。単なるタイアップ商品にとどまらない意味深さが感じられたので紹介する。

 「花より男子」(はなよりだんご)は神尾葉子の人気少女漫画が原作である。裕福な家庭で育った生徒が多く通う英徳学園に入学した貧乏少女の牧野つくし(井上真央)を主人公としたドラマである。

 牧野と、道明寺司(松本潤)・花沢類(小栗旬)・西門総二郎(松田翔)・美作あきら(阿部力)のイケメン4人組F4(花の人組、Flower four)の友情や恋を描く。6月28日に公開される映画「花より男子ファイナル」はテレビドラマ「花より男子2(リターンズ)」最終回のプロポーズから 4年後という設定になっている。

 ファミリーマートが発売したコラボ商品は「だんごナポリタン」のほかに「だんごパフェ」「花よりだんごロール」「花よりビターチョコレート」など8種類である。花やだんご、F4にちなんだ商品になっている。

 ファミリーマートでは過去にも映画とのコラボ商品を発売している。6月10日には「ザ・マジックアワー」(三谷幸喜監督)公開記念として「港のギャングムース」「天塩商会公認 揚げぱん」などを発売した。

 「だんごナポリタン」は作中に登場する赤札にちなみ、赤をイメージしたナポリタン・スパゲティである。パッケージの色も赤である。中央に乗っている4個の肉団子はF4を表す。スクランブルエッグやチーズがナポリタンとマッチして美味である。肉団子が4つもあることもあり、税込み価格340円というリーズナブルな価格にしては十分なボリューム感がある。

 タイアップ商品なので、作品の要素にちなんだ商品になるのは当然だが、「だんごナポリタン」の場合、それが赤札というのが興味深い。

 赤札はF4のイジメ対象のロッカーに張られるものである。物語の初期に友達をかばって道明寺に盾突いた牧野が張られ、全校生徒から執拗(しつよう)なイジメを受けた。しかし、牧野は泣き寝入りするのではなく、とことんイジメと戦った。

 記者(=林田)は東急不動産(販売代理:東急リバブル)から不利益事実(隣地建て替えなど)を説明されずにマンションをだまし売りされ、裁判で徹底的に争った経験がある(参照「東急不動産の遅過ぎたお詫び」)。故に不正義に対する一本気な怒りは大いに共感できる。

 「花より男子」は女性のあこがれるセレブとの恋愛を描いたことが人気の理由と説明されることが多い。が、陰湿なイジメなどの、重たい話題も登場する。その象徴の一つが赤札である。そのような意味合いを持つ赤札から、あえてタイアップ商品を作成したファミリーマートのチャレンジ精神に敬意を表したい。

■関連リンク
6月28日公開「花より男子ファイナル」とタイアップオリジナル商品発売!

寅さんもやってきた? 森下朝顔市開催

夏の下町の風物詩

 第17回森下朝顔市が2008年7月6日、深川神明宮(江東区森下)をメイン会場として開催された。晴天に恵まれ、大勢の人でにぎわった。

 朝顔市は森下商店街振興組合の主催するイベントである。森下商店街は清澄通り(二ツ目通り)と新大橋通りを結ぶ森下交差点を中心とする商店街である。

 下町情緒を残したいと考えた商店街が1991年に朝顔市を初めて開催し、今年で17回目になる。深川新名物として定着し、すっかり夏の下町の風物詩になった。

 朝顔市では午前8時半から朝顔を販売する。境内には行灯(あんどん)造りの朝顔の鉢が所狭しと、置かれていた。朝顔の購入者は空くじなしの抽選ができる。産地直送の新鮮野菜の無料配布も実施した。ヨーヨー釣りなどの露店や屋台も並び、お祭り気分を醸し出している。

 会場には映画「男はつらいよ」のフーテンの寅さんに扮(ふん)した人も登場した。「四谷赤坂麹町チャラチャラ流れる御茶ノ水」と映画でおなじみの口上を披露し、喝采(かっさい)を浴びていた。

眺望阻害マンション裁判の明暗

ローレルコート難波事件とアルス東陽町事件を比較して

 超高層マンション「ローレルコート難波」(大阪市浪速区)購入者が分譲主を訴えた裁判の判決が2008年6月25日、大阪地方裁判所にて言い渡された。近鉄不動産はローレルコート難波の分譲後、当該物件の近接地に高層マンション「ローレルタワー難波」を建設した。これによりローレルコート難波からの眺望が損なわれたとして、ローレルコート難波購入者が慰謝料などを請求した訴訟である。判決は原告の請求を棄却した。

 本件は道義的には近鉄不動産が非難されるべきことは明白である。近鉄不動産は生駒山を間近に望む眺望をローレルコート難波のセールスポイントとしていた。ところが分譲から数年後、近接地に高層マンションを建設し、自らセールスポイントとした眺望を破壊する。一生に一度あるかないかの高い買い物をした購入者が怒るのは当然である。しかし、原告敗訴というマンション購入者には厳しい判決になった。

 本件と類似の訴訟ではマンション購入者が勝訴した事案がある。東急不動産(販売代理:東急リバブル)が東京都江東区で分譲したマンション「アルス東陽町」では、隣接地の建築計画を説明せずに販売し、日照や眺望が損なわれたために訴訟になった。この裁判において東京地裁は、東急不動産に売買代金の全額返還を命じる判決を出し、購入者の全面勝利となった(参照「東急不動産の遅過ぎたお詫び」)。

 2つの事件を比較することで、不動産取引における消費者保護の特徴が見えてくる。本記事では2点ほど指摘する。以下では説明のためにローレルコート難波の事件を近鉄事件、アルス東陽町の事件を東急事件と略称する。

 第1に不動産会社の悪意である。東急事件では、東急不動産はアルス東陽町の販売前の段階で隣地所有者から、隣地建物がアルス東陽町竣工(しゅんこう)後に建て替えられることを聞いていた。つまり分譲時に隣地の建て替え予定を知っていた。にもかかわらず購入者に説明せずに販売した。故に消費者契約法の不利益事実告知に該当する。

 これに対し、近鉄事件において近鉄不動産が近接地を購入したのは、原告がローレルコート難波を購入した後である。そのため、ローレルコート難波販売時に近鉄不動産が近接地に高層マンションを建設する計画を有していたとは断言できない。この点を立証しない限り、だまして契約したとの結論にはならない。つまり東急不動産の方が悪意の度合いが高いことになる。

 第2に重要事項説明に対する対応である。両事件共に重要事項説明で、周辺環境に変化が生じうることを指摘している。東急事件では重要事項説明の場で、購入者(=林田)が「重要事項説明の周辺環境の記述は隣地建物を念頭に置いているのか」と質問した経緯がある。

 この質問に対し、東急リバブルの宅建主任者は「特に隣地建物を指しているのではない。一般的な記述です」と回答した。隣地建て替えを知っていた東急側が、重要事項説明の環境変化を「一般的な記述」と説明したことは虚偽の説明をしたことになる。これは裁判において有力な攻撃材料となった。

 一方、近鉄事件では購入者は「近鉄不動産は重要事項説明を形式的に読み上げただけで、購入者は内容を理解していない」と主張した。しかし判決は、購入者が重要事項説明について質問せず、異議をとなえなかったと認定して、重要事項説明を了解の上、売買契約を締結したと認定した。

 確かに重要事項説明は形がい化しており、悪質な不動産業者による責任逃れの口実として悪用されがちな実態は存在する。その意味で近鉄事件の購入者の主張は正当である。しかし、裁判では外形を重んじる傾向があり、「説明されたが、理解していなかった」という主張は通りにくい。この点において、近鉄事件判決は消費者保護の限界を示している。

 両事件の判決が明暗を分けた理由をまとめるならば不動産会社の悪質性にある。近鉄事件ではマンション購入者側が控訴しており、控訴審においてあらためて争われることになる。不動産会社の悪質性を、より強くアピールすることが控訴審における購入者側の、ひとつの課題となるだろう。

眺望阻害マンション裁判の倒錯

不動産会社の悪質さと狡猾さ

 記者は「眺望阻害マンション裁判の明暗」という記事で、2つの裁判を比較した。分譲後に隣接地にできた建築物によって眺望を阻害されたマンション購入者が売主(=不動産会社)を訴えた2つの裁判である。

 一方は、ローレルコート難波購入者が近鉄不動産に対し損害賠償を請求した裁判(大阪地裁)で、購入者が敗訴した(近鉄事件)。

 他方は、アルス東陽町301号室購入者(=記者)が東急不動産に対し売買代金の返還を請求した裁判(東京地裁)で、購入者が勝訴した(東急事件)。

 上記記事では、類似ケースながら勝訴と敗訴に分かれた理由について、東急の悪質性にあると分析した。

 これに対し、行雲記者から、近鉄の方が悪質という見方も成り立つのではないかとのコメントがなされた。行雲氏の論理は以下の通りである。

 東急事件では隣接地の建て替え主体は東急とは別の第三者である。一方、近鉄事件では同じ近鉄不動産が近接地に高層マンションを建設した。眺望を「売り」にしておきながら、自ら眺望を阻害した近鉄は、より悪質ではないか、と。

 記者も、誰が眺望阻害という損害をもたらしたかという観点に立つならば、行雲氏の見方に同意する。

 この場合、問題が生じる。価値判断では、東急よりも近鉄の方が悪質であるにもかかわらず、裁判では、東急が負け、近鉄は勝ったからだ。救済の必要性の度合いが高いローレルコート難波購入者が救済されないという倒錯した結果になる。

 これは真剣に検討すべき問題である。

 先ず法的観点からは売買契約締結時の事情が問題になる。

 マンションをめぐる購入者とデベロッパーの関係は売買契約で規定される。購入者とデベロッパーの法的紛争では1次的には売買契約が問題になる。

 この点で契約締結時に不利益事実を知っていた東急不動産(販売代理:東急リバブル)と、近接地の建設計画を有していたとは認定されていない近鉄不動産を比べるならば、東急が悪質という結論は動かない。

 それでは契約締結後に自らセールスポイントとした眺望を破壊するような背信的な行動を取ることは許されるのか、という問題が生じる。

 これについては、じつは先例がある。

 分譲マンション「大通シティハウス」の購入者が、同じ売主による別マンション建設によって眺望が阻害されたとして、住友不動産と住友不動産販売に計約2000万円の損害賠償を求めた例である。

 札幌地裁平成12年(2000年)3月31日判決は、住友不動産に対し、「眺望を阻害しないように配慮する義務があった」として計 225万円の賠償を命じた。

 この先例に従うならば、近鉄事件でも幾らかの損害賠償が認められて良さそうなものである。にもかかわらず、それが否定された背景には、近鉄の狡猾さがある。ここで問題になるのは、重要事項説明の表現方法である。

 近鉄事件も東急事件も、重要事項説明で、周辺環境に変化が生じうることを指摘している。この点は同じだったが、ただし、表現が異なる。

 近鉄事件では「この環境について売主および関係者に対し何ら異議を申し立てないこと」という文言が付されている。これは近々、周辺に建設予定があるのではないかと警戒を抱かせる文言である。

 この文言があるにもかかわらず、購入者が重要事項説明に同意した、という点が一因となって、裁判所は購入者敗訴の結論を導いている。

 一方、重要事項説明における「周辺環境に変化が生じうる」との記述は、ほとんどの物件で書かれる一般的なものである。一般的な記述で購入者を安心させ、だましたところに東急の悪質さがある。

 とはいえ、これも見方を変えれば逆の価値判断を下すことができる。

 形骸化した重要事項説明のプロセス上で、予め異議を封じさせてしまう近鉄こそ消費者の不注意に乗じた悪質な手法と位置づけることもできる。近鉄の用意周到さこそが、予め隣接地の建設計画を有していたことを推認させるのではないかとの疑いも生じる。

 不利益事実不告知という消費者契約法の明文に違反した東急リバブル・東急不動産にはコンプライアンス上明らかに問題がある。しかし、近鉄の狡猾さが支持できるわけではない。

 今回の裁判では勝訴したとしても、このような裁判を起こされること自体が長期的には会社のイメージを低下させ、勝訴で得られるものよりも大きなものを失うことになるはずである。

イトーヨーカドーの商売上手

ポイントサービスで、してやられた

 イトーヨーカドーで買い物をして、ポイントサービスの巧妙さに感心した。イトーヨーカドーではアイワイカードというポイントサービスを実施している。

 イトーヨーカドーおよびエスパの全店で、買い物時にアイワイカードを提示すると、100円に付き1ポイントのポイントがたまる。加えてクレジット機能付きの場合、クレジット払いとすると、200円に付き、1ポイントがたまる。合計すれば1.5%の還元率である。

 たまったポイントは1ポイント=1円に換算してイトーヨーカドーなどでの買い物で使用できる。ポイントは1ポイントから使用できるため、買い物を繰り返してポイントをためていく必要はない。また、ポイントには有効期限があるが、普段の買い物で使用できるため、面倒な交換手続きを必要とするほかのポイントサービスと比較すると、失効させてしまう危険は少ない。無駄のない便利なポイントサービスであり、記者(=林田)は愛用している。

 イトーヨーカドーのポイント比率は上述の通りであるが、特定の商品について5ポイント付されるセールが時々行われる。記者がよく利用するイトーヨーカドー木場店では最近、アイスクリームが対象製品となった。それにつられて記者はアイスモナカを1個購入したが、ポイント獲得の観点からは失敗であった。

 ポイントサービスは5ポイント対象商品と1ポイント対象商品で別々に計算される。アイスモナカは税込み85円(本体81円)である。これ1つでは100円に満たないため、5ポイント対象商品でありながら、1ポイントも付されない。もしアイスが通常通り、1ポイント対象商品であるとしたら、ほかの購入商品と合算されて100円を超えれば1ポイントになる。

 これは記者にとっては悔しい結果であった。ポイントを享受するためには複数個を購入する必要があった。消費者が多く購入することは、イトーヨーカドーの望むところである。イトーヨーカドーの商売の巧みさが感じられた。

 イトーヨーカドー木場店は、「深川・木場」を特集したテレビ東京系列の番組「出没!アド街ック天国」(2008年6月7日放送)において、全国176店舗のイトーヨーカドーの中でトップクラスの売り上げを誇ると紹介されたほどの有力店である。店員に活気があって、快く買い物ができる店である。スーパーマーケットの売り上げは単純に立地や売り場面積だけで決まるわけではないと実感できる。

 記者には東急不動産(販売代理:東急リバブル)から不利益事実(隣地建て替えなど)を説明されずにマンションをだまし売りされた経験がある。消費者をないがしろにした東急リバブル・東急不動産の不誠実な態度には激しい憤りを抱いている(参照「東急不動産の遅過ぎたお詫び」)。

 その反対に消費者と正面から向かい合うことができる業者には好感を持てる。

 イトーヨーカドーは農業に参入したり、ガソリン割引券をプレゼントしたりと興味深い施策を次々と展開している。アイスモナカでは、してやられたが、今後も注目していきたい。

たねプロ

たねプロ再投稿が再び「たね」になった理由

考察を深める具体的ファクトのパワー

 「たねを育てようプロジェクト」第6回に参加した感想を述べたい。

 きっかけは高橋篤哉記者から、「これまで自薦者がいないので、是非参加協力を」と薦められたことである。従って厳密な意味での自薦ではない。そのため、自薦とはいうものの、自薦を決心してから自薦対象の記事を決めた。「たねプロ」の本来の想定とは、順序が反対となったかもしれない。

 当時の私の「たね記事」は2本あった。ひとつは「コードギアスR2第5話衝撃の結末」で、アニメ作品の感想記事である。

 もうひとつは「ひろゆき vs. 切込隊長 隠れた争点」で、裁判中の「ひろゆき」こと西村博之氏と「切込隊長」こと山本一郎氏の対立の遠因を論じた記事である。

 前者は放送から1カ月経過後にブラッシュアップしても時機を失する上に、既に別記事において自分なりの「たね」理由を推測していた(参照:アニメ記事から考える「本掲載」と「たね」の境界)。

 一方、後者はインターネット上では名前の通った人物を扱っており、話題性はあると考えた。そのため、後者を自薦したが、むしろ前者を読みたかったという声が存在したことは特記する。

 編集部から開示された「たね」理由は、一言でまとめるならば、論拠が甘いということであった。個々の記述について丁寧な指摘を受けており、それらを修正し、「ひろゆき vs. 切込隊長 対立の深層」として再投稿した。

 西脇靖紘編集委員からは「あいまいだった情報の所在などが明らかに分かるようになって、とても読みやすい文章になっている」と評価されたものの、再び「たね送り」となった。編集部が「たね」とした理由は、やはりまとめるならば論拠が甘いという点に尽きる。

 私がオーマイニュースの市民記者登録をした動機は、自身が経験した東急リバブル・東急不動産によるマンション騙し売りについての記事を書きたかったからである。記念すべき最初の記事は2007年4月に掲載された「東急不動産の実質敗訴で和解」である。

 その後も東急とのトラブルにまつわる記事を書き続け、幸いにして多くの記事が本掲載されている。東急とのトラブルは、まさに具体的なファクトである。多くの記事が本掲載された背景には、誰もが経験するものではない、この生のファクトの重みがあると考えている。

 私にとって東急不動産の裁判闘争は大きなウェイトを占める出来事であった。今でも「消費者に不誠実な企業は存続すべきではない」という問題意識を持ち続けている。そのため、東急とは関係ない世の中の出来事、たとえば不祥事における企業対応などについて、東急不動産の問題と比較して考察するようなことをすることがある。

 社会の出来事を自分の問題に引き寄せることで、世の中の論調とは異なる、独自の考察が可能になる。私の記事には、そのような考察に負っているものも少なくない。

 一方、今回自薦した記事は、東急の問題とは無関係な内容であり、問題意識も重なるものではなかった。編集部の「たね」理由のなかには、初歩的なミスや、表現の稚拙さについての指摘も含まれていたが、根本的には、自身の問題意識に引き寄せて考えるだけの力がなかったことが問題である。そのために表面的で論拠の弱い記事になってしまった面は否めない。

 一方、プロジェクト自体は西脇編集委員が「たねプロを重ねる毎に、たね記事の性格が特徴付けられてきている気がします」と総括した。編集委員が選択した「たね」記事以外の自薦記事でも「たね」理由が共通の要素として確認されたことはプロジェクトとしての収穫と言える。

 末筆ながら第6回「たねプロ」に関係された編集部、編集委員、市民記者の方々には厚くお礼申し上げたい。

 これまで私は自分の書きたいことを書くだけで、オーマイニュースからは恩恵しか受けていなかったが、今後はオーマイニュースの企画などにも積極的に参加して、微力ながらも貢献していきたいと考える。

たねプロ再投稿が再び「たね」になった理由(2)

一人たねプロと比較して、さらに考察を深めた

 私は「たねを育てようプロジェクト」第6回に自らの「たね」記事を自薦したが、再投稿した記事が再び「たね送り」となってしまった。そして記事「たねプロ再投稿が再び「たね」になった理由」では、具体的なファクトの重要性について触れた。また、再投稿記事に対しては修正前と変わっていないとの厳しい意見も受けた。

 そこで、敗因を考察することで今後の記事作成に生かしたい。実は私の記事中には「たね」記事から本掲載になったものが2本ある。これを、たねプロとの対比から一人たねプロと呼ぶ。一人たねプロと比較することで、今回の敗因を浮き彫りにできると考える。

 最初の一人たねプロ記事は「不動産広告にだまされないように」である。2007年4月に投稿して「たね」記事になり、2008年3月日本掲載された。東急リバブルが媒介するマンション広告の内容に虚偽があることを報じたものである。この記事が「たね」とされた理由はニュースバリューが弱いためと推測している。そもそも「ニュースのたね」は「今後大ニュースとして芽吹いてほしいという意味をこめて」と説明されており、「たね」自体を現時点ではニュース価値の低い記事のコーナーと受け止めていた。

 その後、2008年3月に東急リバブルが媒介する、同じマンションの、別の住戸の広告で、以前と同じ虚偽内容の広告が出された。これを記事にすることで、「たね」記事も本掲載された。一度だけならば単なるミスと言い逃れできるかもしれない。しかし重ねての虚偽広告となると明らかに企業体質の問題となってくる。文字通り、たねがニュースとして芽吹いた。

 次の一人たねプロ記事は「伊達鶏を丸ごと味わった!」である。元記事は市民記者から東急不動産とのマンション紛争の件で取材を受けたことを説明した「東急不動産の裁判事件で市民記者から取材」である。私としては市民記者の取材の仕方を書くだけでも意義があると考えたが、ニュース性がないと判断されて「たね送り」なったと推測する。そこで記事の主題を取材時に一緒に行った料理屋に変更して再投稿した。

 一人たねプロの成功要因をまとめるならば、事態の変化と主題の変更となる。前者の事態の変化は他力本願的に聞こえるかもしれない。しかし事態が変化すれば自動的に本掲載になるわけではない。問題意識を持ち続け、アンテナを張り続ける記者の積極的な努力が必要である。

 結局のところ、しかるべき理由から「たね」記事となった場合、環境変化によりニュース性を高めるか、抜本的に主題を変えてニュース性を満たすものにするか、いずれかがなければ本掲載は難しいのではないか。そもそも小手先の修正で対応できるならば編集の力で本掲載させているとも考えられる。

 しかし、第6回たねプロ再投稿では上記のいずれの要因もなかった。本来ならば新しいファクトを見つけるなり、主題を大胆に見直すなりすべきであった。編集部から細かい修正理由が開示されたため、それに対応することで満足してしまった。表面的な修正をするだけで、「たね」理由の根本的な背景まで考察しなかった。自らの非才を嘆くのみである。

 第6回たねプロは、たねプロにとって記事自薦が初めてならば、「たね送り」になることも初めてである。たねプロの歴史にユニークな痕跡を残すものとなった。失敗は成功の母である。「たね送り」は決して恥ずかしいことではない。第6回たねプロがオーマイニュースおよび市民記者諸賢にとって貴重なナレッジとなるならば私の喜びとするところである。

「悪徳商法?マニアックス」訴訟

「悪徳商法?マニアックス」管理人が「はてな」を提訴

嫌がらせの具体的な内容が問題

 ウェブサイト「悪徳商法?マニアックス」(悪マニ)の管理人である吉本敏洋氏が2008年6月10日、「株式会社はてな」(近藤淳也社長)を提訴した。請求内容は嫌がらせを放置したことによる100万円の損害賠償と、嫌がらせ実行者の発信者情報の開示である。

 「はてな」はソーシャルブックマーク(はてなブックマーク、はてブ)などのネットサービスを提供する企業である。「悪マニ」のサイトによれば、吉本氏は「はてな」のサービス上で度重なる嫌がらせを受けていたという。しかし善処を求めても「はてな」は有効な対策を実施せずに放置したと主張する。

 吉本氏の提訴以前から「はてな」は個人への誹謗(ひぼう)中傷に対して甘いと指摘されていた。特に「はてブ」を利用して、ブログ作者が嫌がるようなコメント付きでブックマークする嫌がらせを深刻に受け止めるブロガーは少なくない。自分のブログが荒らされた場合、コメント欄を閉じ、トラックバックを受け付けないという手段を採ることができるが、ブックマークされることは拒否できないためである。

 吉本氏の運営する「悪マニ」は悪徳商法の告発サイトである。インターネット普及期の1997年から開設されており、告発サイトの草分け的な存在である。「悪マニに助けられた」「悪マニを読んだからだまされずに済んだ」という人も少なくない。

 記者にとっても悪徳商法の告発サイトは非常に関心がある。記者自身、東急不動産(販売代理:東急リバブル)から不利益事実(隣地建て替えによる日照・眺望阻害、騒音)を説明されずにマンションをだまし売りされた被害に遭っているためである(記事「東急不動産の遅過ぎたお詫び」参照)。

 悪徳商法の被害者の1人として、悪徳商法の告発サイトには強いシンパシーを抱いている。しかし、今回の提訴が告発サイトの発展につながるか、という点では疑問がある。

 なぜならば、吉本氏が勝訴すればインターネット上の言論活動を委縮させる方向に働く危険があるためである。吉本氏は「悪マニ」上で「度重なる嫌がらせ」と「住所・氏名の掲載といった明らかなプライバシー侵害」を被害として挙げている。プライバシー侵害は事実ならば権利侵害となりうるが、ネガティブな書き込みを続けることによる嫌がらせを権利侵害として強制的に排除することは言論の自由を損なう危険がある。

 吉本氏の請求が正当化できるとすれば、排除する対象が違法な書き込みである場合においてである。しかし、何をもって違法とするかはひとつの判断である。告発サイトは誰かにとって都合の悪い内容を含む。告発サイトの存在自体が嫌がらせとして映るものである。それを容易に排除できるならば、告発サイトをつぶす論理として乱用されかねない。

 事実、吉本氏から嫌がらせの実行者と名指しされた人物は、自らのブログでの反論で吉本氏を言論の封殺者と批判する。その論理を「表現の自由を守ると主張しながらも自身への批判は一切許さない詭弁(きべん)」と切り捨てる。そして吉本氏と「はてな」の訴訟に独立当事者参加(民事訴訟法第47条)の意向を表明した。

 告発サイトの管理人が自己に都合の悪い書き込みの責任を追及することは、ある意味、喜劇的な自己否定になりかねない。吉本氏の主張する嫌がらせの具体的内容が問題になる。インターネット上での言論活動を委縮させる方向に進まないことを期待する。

「悪徳商法?マニアックス」管理人の提訴に違和感

訴訟は契約とは異なる

 悪徳商法を告発するウェブサイト「悪徳商法?マニアックス」(悪マニ)の管理人・吉本敏洋氏による「株式会社はてな」(近藤淳也社長)の提訴(6月10日)には、強い違和感を覚える。

 これは、「はてな」が嫌がらせ書き込みを放置しているとして、100万円の損害賠償と発信者情報の開示を、吉本氏がはてなに対して求めた訴訟である。

 告発サイトの管理人が、自分たちに対する嫌がらせの書き込みの責任を追及する訴訟を起こす構図自体に矛盾を感じるが、特に違和感を覚えたのは吉本氏の訴訟観である。

 吉本氏は提訴理由を説明した「悪マニ」上で独特の訴訟観を披露した。

 『訴訟というのは、契約時に名前を書類に書くような単なる「手続き」であり、発生した損害については、きちんと賠償してくれれば良いだけのことです』

 日本では裁判を意味もなく忌避する人が多い。裁判をするくらいならば泣き寝入りを選択する消費者が少なくないのが残念な現実である。実際に裁判まで行う消費者が少ないことを見越して、悪徳業者は違法行為も平然と正当化する。

 記者は東急不動産(販売代理:東急リバブル)から購入したマンションでトラブル経験がある。最終的に裁判になったが、提訴前の協議の場で東急不動産の課長から「不満があるならば裁判でも行政でも好きなところに行って下さい」とたんかを切られた。裁判では負けると分かっていても「どうせ裁判をしないだろう」とたかをくくって、強気な態度を押し通したのである。

 この意味で訴訟を単なる手続きと割り切る吉本氏の主張は新鮮である。しかし、契約と訴訟を同一視することには非常に大きな問題がある。

 なぜなら、契約は自由意思に基づくものだが、訴訟は相手の意思に反して行わせる強制力がある。この点において契約と訴訟は決定的に異なる。

 しかも、この相違は悪徳商法の告発者にとって大きな意味を持つ。

 悪徳商法が悪徳であるのは、消費者の自由意思に反して締結されるもの故である。押し売りや脅迫まがいのセールスが自由意思に反することは言うまでもない。詐欺も物理的な圧力はかけられていないとしても、真相を知っていたならば契約締結をしなかったはずであり、その意味で自由意思を損なうものである。

 吉本氏の訴訟観は自由意思を無視する点で、悪徳商法を糾弾する立場にとって、非常に危険である。「良心的な商売も悪徳商法も単なる手続きであり、消費者は商品に対して代金を払ってくれれば良いのです」という類の悪徳商法を正当化する論理に結びつきかねない。

 原告側にとっては訴えたいから訴えるのであり、その意味で自由意思に基づくもので、契約締結と変わらないと反論されるかもしれない。しかし、そのような発想は被告となる相手を無視している。自分の利益の追求のみで、相手の立場を考えない点で、むしろ悪徳業者の発想と親和性を持つ。

 契約締結は、契約しない自由がある。これに対して被告とされたならば好むと好まざるとにかかわらず、裁判手続きに巻き込まれる。裁判を起こすということは、相手の自由意思を侵害するものである。相手の自由意思を侵害してでも、要求すべき内容があるから訴えるのであるが、最低限、相手の意に反することをしていることに対する自覚を持つべきである。

 いわば相手に殴りかかるのだから、自分が殴られる覚悟もしなければならない。「殴られろ」と主張するつもりはない。殴られたならば倍にして殴り返すくらいの意気で臨めばよい。主張したいことは自分が戦う以上、相手も戦いを挑んでくることを忘れてはならないということである。

 「裁判に訴えることこそが、はてなのためになる」という吉本氏の主張は、あまりに都合がよく自己中心的に思える。実際、吉本氏が嫌がらせの実行者として名指しで挙げた人物は、自分のブログで、吉本氏こそが嫌がらせを繰り返していると全面的に反論している。

 吉本氏は「はてなには、裁判を通じて「心」を取り戻して欲しいと考えております」と主張する。一方で、心を見られるのは「はてな」だけではない。吉本氏も悪徳商法を糾弾する心に邪心はないか、評価される立場にある。

「悪徳商法?マニアックス」訴訟と告発者攻撃

真の敵を見失うな

 企業告発サイト「悪徳商法?マニアックス」(悪マニ)管理人・吉本敏洋氏が2008年6月10日、損害賠償および発信者情報の開示を求めて「株式会社はてな」(近藤淳也社長)を提訴した。

 この問題について本記事では、「告発者への攻撃」という観点から考察したい。

  ◇

 吉本氏は提訴理由を説明したウェブサイト上で、「はてな」のサービスで度重なる嫌がらせを受けていると主張した。吉本氏が嫌がらせ実行者として実名を挙げた人物と吉本氏が対立していることは、双方のブログの過去記事から確認できる。

 しかし、それは見解の相違による議論のようにも見受けられる。感情的な応酬がなされているものの、それは吉本氏も行っていることである。吉本氏が一方的に嫌がらせを受けているとは評価しがたい。記者は別記事「「悪徳商法?マニアックス」管理人が「はてな」を提訴」で、本訴訟について「嫌がらせの具体的な内容が問題」と評したのは、このような背景がある。

 一方、吉本氏は「企業や宗教団体などの不祥事を暴こうとすると、サイト管理人の個人情報がばら撒かれたり無関係な親族への嫌がらせ行為が行われるのであれば、誰しも告発に躊躇するでしょう」とも主張する。

 ここには、悪徳企業にとって都合の悪い告発を潰すために攻撃されたという吉本氏の問題意識がうかがえる。

 記者は購入したマンションに不利益事実不告知があったために、売主の東急不動産(販売代理:東急リバブル)と裁判になった。その際、問題のマンション建設時に東急不動産の近隣対策をしたブローカーから当時の勤務先に圧力をかけられた経験がある(参照記事「東急不動産の遅過ぎたお詫び」)。

 故に吉本氏の怒りには大いに共感する。吉本氏が嫌がらせの実行者として名指しした人物の1人は御堂岡啓昭氏である。記者は御堂岡氏と面識がある。御堂岡氏とは上述の東急不動産との裁判について取材を受けた関係である。

 御堂岡氏はインターネットプランナーで、企業のネットクレーム対応をしていると自身について公表している。ここからは御堂岡氏が告発対象の企業に依頼されて、「悪マニ」を潰すために攻撃したのではないか、との憶測も可能性の1つとしては成り立つ。根拠のない憶測に過ぎないが、これが裏付けられるならば吉本氏の問題意識は重大性を持つ。

 この点について御堂岡氏にメールで質問したところ、

 「あくまで個人的なケンカの延長。誤解を招く表現が多過ぎる。彼とは知らない仲でもないので、早く頭を冷やして欲しい」と否定した。その上で「まずはこちらの返信先も明記した配達証明郵便を出すつもりだ」と泥仕合化を避けるために話し合いの門戸を開くことを表明した。

 悪徳企業の告発者が攻撃された場合、泣き寝入りではなく、反撃することを記者(林田)は支持する。ただし、告発者の矛先を嫌がらせの攻撃者に向けることで、本来の告発が疎(おろそ)かになってしまう危険がある。それは悪徳企業にとっても歓迎すべき事態となる。

 また、記者の件ではブローカーが東急不動産の近隣対策をしていたために分かりやすかったが、攻撃を受けたというのも主観である。告発企業とは無関係である可能性もある。その場合、攻撃者と思っている人物に矛先を向けるならば、本来の告発とは的外れなエネルギーの浪費になる。

 真の敵を見失ってはならない。記者自身、ブローカーの嫌がらせに対し、東急不動産に内容証明郵便を送付し、ブローカーの活動の停止を要求した。ブローカーに抗議することは問題を拡散させ、敵の思うツボになるためである。東急不動産はブローカーとの関係を否定したが、それ以降、嫌がらせは行われていない。

 今回の訴訟では告発者への攻撃に対する怒りは伝わってくるが、真の敵が存在するのかは不明である。本訴訟は真の敵に反撃するための一環であるのか、怒りの矛先を分散させるための戦略に乗ぜられたものなのか、それとも真の敵とは無関係な的外れのものなのか。それによって本訴訟の重みも大きく変わってくるだろう。

ネット選挙運動

「ネット選挙運動」シンポに参加して(上)

日本は民主主義、法治国家、資本主義経済か?──木村剛氏が警鐘

 シンポジウム「インターネット選挙運動の現状と問題点を探る」が2008年7月20日、東京八重洲ホールで開催された。オーマイニュースが後援するイベントである。記者はオーマイニュースの参加者募集に応募した。

 シンポでは最初に竹内謙・日本インターネット新聞株式会社代表取締役が開会挨拶を行った。竹内氏は何十年も前から問題提起され、ようやく世論に押されてサミットでも重い腰を上げるようになった地球温暖化問題を枕として、ネット選挙運動についても世論を喚起していきたいと訴えた。

 続いて木村剛・株式会社フィナンシャル代表取締役による基調講演「ネット選挙運動解禁と自由のゆくえ」である。ここではネット選挙運動の解禁問題そのものよりも、その前提となる自由な民主主義社会の基礎が日本には欠けているのではないか、と警鐘を鳴らした。

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 木村氏は、日本から今、自由がどんどん奪われようとしている、と主張した。

 木村氏によると、日本では官僚による統制が行われ、近代国家の体をなしていない、法律が統治の手段として使われ、市民を守るために使われていないという。法治国家と言えないことの実例として、裁判における長銀とホリエモンの扱いの違いを挙げた。

 日本長期信用銀行の粉飾決算事件で、最高裁は経営陣を無罪とした。明確なルールは存在し、それには違反しているが、新旧のルール移行期であり、新ルールが徹底されていない時期であった、だから無罪であると。しかし、これが無罪ならば、明確なルールが存在しなかった点をついたホリエモンを有罪とするのは、明らかにダブルスタンダードであり、法治国家とはいえない、と木村氏はいう。

 国民の意識が、自分たちの手で自由な社会を作るのではなく、お上に作ってもらうことを期待する点にも問題がある、と木村氏は指摘した。水戸黄門による懲悪を期待するように、お上に期待していることから、「水戸黄門シンドローム」と木村氏は呼んだ。

 日本の「有識者」と呼ばれる職業についても、木村氏は強烈に批判した。自らリングにはあがらず、リングサイドで能書きを垂れるだけの識者・評論家・コメンテーターが多すぎるという。戦えば批判対象も必死に反撃し、血は流れる。ゆえに賢しい識者は、当たり障りのない批判をするだけで、自ら取り組もうとしない。

 民主主義、主権在民ではなく、官主国家であるがゆでに、今や霞ヶ関が“成長産業”になっていると木村氏はいう。規制強化で、「官」が日々、肥大化しているからだ。

 たとえば、年金問題では宙に浮いた年金記録が未解明のままだが、本来ならば未解明であることを前提とした上で、対策を検討すべき時期である。にもかかわらず、社会保険庁は照合を継続し、「分からない」ことを、バイトを雇い、おカネを浪費し、日々確認するだけで進展がない。しかも、それに対して本気で怒り、立ち上がる国民がいない。ここまでされて、なお、お上に任せよう、お上に期待している「水戸黄門シンドローム」は深刻、と木村氏は指摘した。

 最後に木村氏は、ネット選挙は当然に認められるべきと主張した。言論の自由の手段の問題であり、規制されている現状がおかしいとする。

 参加者との質疑応答では、ネット選挙運動が違法と解釈されている現状での個人レベルの活動の限界が指摘された。それに対し、木村氏は変革のためには犠牲者が必要と答えた。

 犠牲を伴わないで現状を変えることはできない。自分は安全な地域にいて、改善を期待することは無理である。守旧派からすれば、彼らの既得権を破壊しかねないネット選挙運動解禁は悪であり、死に物狂いで抵抗する。その認識を持つべきである。1人1人の戦いがなければ動かない。

 ネット選挙運動を進める一つの方法として候補者本人とは無関係に、勝手連で勝手にネットにアップロードする方法が考えられると木村氏は指摘した。

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 木村氏の主張は非常にシビアである。本来、正しいことをしている人が、それゆえに不利益を被ることは不合理である。しかし、正しいことが権力を有する誰かにとって不都合な内容ならば、正しいことを主張する人が攻撃されてしまう。このシビアな現実を直視しなければ変革はあり得ないとする。

 記者は不利益事実(隣地建て替えなど)を説明されずに購入したマンションの売買代金を裁判によって全額返還させた経験がある(参照:東急不動産の遅過ぎたお詫び)。

 消費者契約法の要件(不利益事実不告知)に該当する場合に、売買契約を取り消し、売買代金返還を請求することは正当な権利の行使である。正当な権利を行使したがゆえに不利益を被らなければならないいわれはない。

 しかし、現実に売買代金返還を勝ち取るには裁判を経なければならず、裁判中も公開法廷での原告本人尋問で東急不動産の代理人弁護士が記者の年収を暴露するなど、有形無形の攻撃を受け続けた。

 それゆえに木村氏のシビアな主張には同意できる。

 正義を追求する側が苦しまなければならない状態は決して肯定しないが、戦いに臨む場合の覚悟は必要である。木村氏の講演にはネット選挙運動に限らず、不合理な日本社会に生きる上で重要な内容が含まれていると感じられた。

「ネット選挙運動」シンポに参加して(中)

マニフェストとネット選挙運動

 前記事『「ネット選挙運動」シンポに参加して(上)』に引き続き、シンポジウム内容を紹介する。次は福田紀彦・神奈川県議会議員による政治改革提案『マニフェストとネット選挙運動の良い関係』である。マニフェスト選挙を進めるためにネット選挙が有益であること、ネット選挙運動の問題点と解決策を提示した。

 福田氏はマニフェストの導入により、地方議会は変わったと明言する。マニフェストは何を、いつまでに、どのくらい、どのような方法で、ということ具体的に定義しなければならない。そして事後検証可能な内容である必要がある。マニフェストを導入することで政策論争が議会ではじまった。地方議会では国政と比較し、身近な問題を扱うため、マニフェストの内容も、より具体的になる。

 公職選挙法は規制だらけの「べからず集」である。政治家というと年がら年中、選挙活動をしているように思えるが、法律上で認められた選挙活動は県議の場合、わずか9日間である。現行の公選法の下では有権者に候補者の情報を十分に伝えることは不可能である。
 これに対し、過去の主張を保存できることがネットの利点である。マニフェスト選挙は政策本位になる。情報量が多い、検索・保存が可能というネットを利用することでマニフェスト選挙の理想に接近できる。

 一方でネット選挙運動の解禁には問題点もある。ウェブサイトは誰でも開設できるとはいえ、多数のアクセスを処理できる、可用性の高いサーバの設置など、結局のところ資金の豊富な候補者が有利になる可能性がある。また、サイバーテロや成りすましの危険がある。さらに候補者が都合の悪い公約をサーバ上から削除して、なかったことにしてしまうのではないかとの懸念もある。

 ネット選挙運動解禁の実現には上記の問題の解決策を提示する必要がある。その解決策として公設サーバを介した選挙活動解禁を提言する。

 マニフェスト選挙とネット選挙運動解禁は表裏一体の関係にある。情報量のない中で有権者に選択を求めることが非合理である。最後に福田氏は選挙が変われば政治が変わると力強く語った。

 福田氏の説明によって、有権者が候補者を選択するための十分な情報を得られないという現行制度の問題点が浮かび上がった。ネット選挙運動が禁止されている現状は、候補者にとってネットを利用できないという制約であるが、有権者にとっても情報へのアクセスが制約されることを意味する。

 その結果、極論すれば、イメージや知名度、書きやすい名前、知人の紹介などが候補者を決める基準となる。一方で、そのような有権者がいるからこそ、当選できる議員も存在する。ネット選挙運動を解禁することには政治を変えることにつながる。

パネルディスカッション

 後半はパネルディスカッションが行われた。パネラーは竹内氏、佐藤大吾・特定非営利活動法人ドットジェイピー理事長、徳力基彦・アジャイルメディア・ネットワーク株式会社取締役、山内和彦・前川崎市議会議員である。当初、政党系シンクタンクの方もパネラーに予定していたが、選挙に携わっている関係上、話せる内容に制約があるということで、一部のメンバーが変更された。

 モデレーターは平野日出木・オーマイニュース編集長である。最初に平野氏から認識の共有のために、スライドを使用してネット選挙運動を取り巻く状況について説明がなされた。

 パネルディスカッションでは多彩なバックグラウンドや問題意識を有する人物がパネラーとして集まっているため、さまざまな意見を聞くことができ、興味深い内容であった。一方で、議論が発散せずに有意義なディスカッションとなったことはモデレーターの技量によるものと思われる。

 ディスカッションが一段落したところで田嶋要・衆議院議員があいさつした。

 田嶋議員は民主党のインターネット選挙活動調査会事務局長で、インターネットによる選挙運動を解禁するための公職選挙法改正案の提出者である。

 「ネット選挙運動解禁は今の選挙で勝っている人から見れば、ろくでもない話である。情報を開示していけば政治はレベルアップする」

と語った。

「ネット選挙運動」シンポに参加して(下)

インターネットユーザーの選挙への関心を高めていく継続的な取り組みが有益

 前記事『「ネット選挙運動」シンポに参加して(中)』に引き続き、パネルディスカッションの内容を紹介する。

 竹内氏は主催企業の代表者であり、ネット選挙運動を解禁すべきという問題意識が最も鮮明であった。本来、政治活動は憲法上原則として自由であるべきだ。現行の公選法で選挙運動をこまごまと規制しているのは、金のかからない選挙にするためである。これはインターネット以前の技術状況を前提としている。インターネットにより安価に情報発信できる現在では大義名分が崩れており、憲法違反である。

 自民党の実態を踏まえるならば、ネット選挙運動解禁の結論が出るまでに、まだまだ時間がかかりそうである。自民党内にもネット解禁を支持する議員はいるが、総意となるには至っていない。従って、世論が強く後押ししなければならない。

 有権者が悪いという議論はとらない。現行の選挙制度では有権者に情報が届かないことが問題である。ネットが解禁されれば有権者は見に行く。そこから賢い有権者が育つ。昔ながらの選挙の秩序を壊されたら嫌がる守旧派が障害である。制度を変えなければ、同じような立場の人間だけが政治家になる閉鎖的な社会となってしまう。

 ネット解禁によって必ず選挙は変わる。公選法全体が規制だらけで、抜本改正が必要だが、それを行うならば時間がかかる。当座はネット解禁を目指す。

 佐藤氏はネット選挙の動向に詳しいため、説明役が多かったが、ネット選挙への熱い思いを語った。インターネットは小さな声をかき集めるのに適している。そこからリアルに飛び火する動きは実際に見られる。アメリカでは選挙の利用が進んでいるが、致命的な問題は起きていない。日米の差は規制の問題である。まずはチャレンジしてみる価値がある。

 徳力氏はネットマーケティングに携わる立場から発言した。ネットの書き込みはコミュニケーションである。ネットがコミュニケーションを変革することは間違いない。ネットの効果は中長期的に表れるもので、継続した活動が慣用である。

 日本の問題は公平性ばかりが強調され、公正が軽視される点にある。ネット解禁をすればネットを利用できない人にとって不公平かもしれない。しかし、現状は地盤・看板・カバンのない候補者にとって不公平である。誹謗(ひぼう)中傷をネット選挙運動禁止の理由とするのは言い訳としか感じられない。制度を変えるにはインセンティブがないと難しい。

 今の議論はWeb1.0的な、候補者からの一方向の情報提供ばかりという印象がある。有権者が主体的に参加するWeb2.0的なネット活用を考えるべきではないか。その意味でアメリカ大統領選挙の盛り上がりはうらやましい。

 山内氏は自民党公認でドブ板選挙を行った経験からの思いを語った。自民党はネット利用が出遅れている。ネット利用に消極的な理由として、炎上を恐れている。

 政策論議の土壌を育てていくのがネット選挙である。ネット解禁によって若い人、政党のしがらみのない人の政治参加が進むことを期待する。お金をかけなくて当選する人が増えれば、楽しくもないドブ板選挙をする人はいなくなるだろう。

 パネルディスカッションによって、ネット選挙解禁が日本の政治を向上させる効果があること、それ故にこそ根強い抵抗勢力が存在することが浮き彫りになった。

 竹内氏の説くようにネット選挙運動を望む世論を高めることが正攻法である。「ザ・選挙」や「みんなの政治」のような政治・選挙情報のポータルサイトの充実により、インターネットユーザーの選挙への関心を高めていく継続的な取り組みが有益である。

 現在、禁止されているのは候補者によるネットを使った選挙運動である。政治・選挙情報のポータルサイトから多くの有権者が候補者を判断するようになれば、逆に候補者本人だけがインターネットで情報発信できないのは不合理という声が出てくるのではないか。候補者にとっても第三者主導のサイトで判断されるよりは、自らがコントロールできる情報で判断されたいと考えるだろう。そのためにも「ザ・選挙」や「みんなの政治」の充実が期待される。

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