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二子玉川再開発の解決をめざす集会開催

 住民団体「にこたまの環境を守る会」は2009年2月28日に「二子玉川再開発の解決をめざす集会」を玉川区民会館(東京都世田谷区)にて開催した。集会では生存条件の破壊反対・公共性に反する事業への公金支出反対・国民主権のまちづくりの3点を骨子とするアピール文を採択した。

 「にこたまの環境を守る会」は「二子玉川東地区再開発事業を問う住民の会」など二子玉川東地区第1種市街地再開発事業を問題視する住民団体が結集した上位団体である。周辺住民らによる再開発事業の差し止めを求める民事訴訟や世田谷区に対して公金支出の差し止めを求めた住民訴訟の支援団体となっている。

 二子玉川東地区再開発事業は2007年に工事が開始され、高層マンション「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」などの建設や広告が進められている状態である。しかし、集会に参加した住民達は意気軒昂であった。これには大きく3点の要因がある。 第1に現実に工事が行われていることにより、被害が顕在化し、再開発事業に対する住民の怒りが共通認識として高まっていることがある。

 第2にサブプライム問題に端を発した世界同時不況の深刻化がある。100年に一度の不況下でタワーマンションを建設する再開発事業は明らかに時代錯誤的である。これは反対運動の正しさを再確認させる結果となった。集会では「東急グループの『事業遂行能力』の危うさ」という表現までされたほどである。

 第3に前々日の26日に鳩山邦夫総務相が東京中央郵便局の局舎取り壊しの見直しを表明したニュースがある。これも鳩山総務相が突然表明したわけではなく、ここに至るまでには局舎保存を求める人々の地道な活動があった。諦めてはいけないという重要性を再認識させた。

 集会では世話人の浜田博氏が司会を務めた。浜田氏は冒頭で集会を今後のとりくみの検討・行動提起の場と位置付けた。

 続いて同じく世話人の飯岡美和子氏より活動報告及び今後の予定が説明された。大きなものに再開発事業の差し止めを求める民事訴訟の控訴審の証人尋問がある。4月14日14時半から東京高等裁判所822法廷で住民側が申請した坂巻幸雄・証人が洪水や災害問題、公共性について陳述する予定である。坂巻氏は築地市場の豊洲移転の問題点を指摘した人物であり、証言内容が注目される。

 次に志村徹麿氏(世話人)が二子玉川再開発問題の解決を目指すアピール文について説明した。内容は大きく3点からなる。

 第1に生存条件の破壊を許さないことである。大気汚染や洪水を悪化させる再開発事業は生命と健康を危険に晒す複合被害であると被害の性質に踏み込んでいる。これは周辺住民の不利益は受忍限度に過ぎないとの再開発組合側の主張への反論になる。

 第2に公共性に反する事業への公金支出反対である。二子玉川東地区再開発は周辺住民の犠牲によって最大地権者である東急グループが利潤を追求する事業であり、700億円もの税金を投入することは許されないと主張する。ここにおいて再開発反対運動は周辺住民のみならず、全ての納税者が関心を持たなければならない問題となる。

 第3に国民主権のまちづくりである。人口減少・高齢化社会で持続可能な経済発展につながるように事業計画を住民参加で見直すべきと提言する。

 再開発の訴訟で住民側の代理人を務める淵脇みどり弁護士は「工事の着工を遅らせたことは粘り強い反対運動の成果」と強調した。今や鳩山総務相のような自民党の閣僚までが再開発の見直しを発現する時代である。この時代になるまで再開発事業を遅らせたことは大きな成果であり、価値観の変化を積極的に利用すべきと発言した。また、淵脇弁護士は自らが作詞作曲した歌「にこたまに愛を」を披露した。

 後半は住民の意見発表や活動報告にあてられた。深刻な工事被害、行政や議会への積極的な陳情活動など活発な発言がなされた。夜間の工事を工事現場に抗議しても、現場担当者は「東急電鉄の担当者がドンドンやれと言っている」として取り合わなかったという。また、議会への請願では自民党・公明党議員の消極的姿勢に失望したとの感想が述べられた。

 印象的な意見として東急電鉄の「新しい街づくり」のキャッチコピーへの批判があった。東急電鉄が「新しい街づくり」を宣伝する何十年も前から、住民は地域に愛着を持って住み続けている。東急電鉄は既存の住民を否定して新しい街づくりをしようとしているとしか思えないと批判した。

 集会には竹村津絵、山木きょう子の両世田谷区議会議員(共に生活者ネットワーク)も出席した。竹村議員は世田谷区の平成21年度予算について簡単に説明した。山木議員は「議会を変えるのは皆様であり、住民がまとまって運動すれば変えられる」とエールを送った。

 最後にアピール文を採択して集会は終了した(このアピール文には私も賛同した)。世の中は大きく変わりつつある。「国民主権のまちづくり」という積極的価値を打ち出した住民運動の新たな展開に期待したい。

マンションは本当に買い時か

不動産業者発表のアンケート調査で「マンションの買い時感が上昇」との結果が発表されたが、不動産不況の只中にいる肌感覚とは明らかに異なる。東証一部上場の日本綜合地所までも破綻する先の見えない不況下で「買い時」とはとても思えない。本当に今がマンションの買い時であるのか、批判的に検討したい。

アンケート結果の発表元は新築マンションのポータルサイト「メジャーセブン」である。メジャーセブンは住友不動産、大京、東急不動産、東京建物、藤和不動産、野村不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所の大手不動産会社8社が共同で運営している。開設当初の2000年4月時点の参加企業は東京建物以外の7社であったため、名前はメジャー7である。問題のアンケートは2009年2月12日に発表された「第10回新築分譲マンション購入に際しての意識調査」である。

「意識調査」では「現在マンション購入を検討している理由」を尋ねた質問で、「現在は金利が低く、買い時だと思うから」が前回調査(2008年2月発表)の17位から6位に急上昇した。また、「土地・住宅価格が安くなり、買い時だと思ったから」も前回29位から12位に上昇した。ここから「マンション購入検討者の間で“買い時感”が出てきている」と結論付ける。

しかし、ここから本当にマンションが買い時と判断することは危険である。大きく2点指摘する。

第1に新築マンションを販売するデベロッパーが運営し、新築マンションの販売情報を提供するためのウェブサイトで発表されたアンケートである点である。マンションを販売したい側の思いがある点は割り引いて考えるべきである。

僅か2年前の2007年前半にも不動産業者は「今がマンションの買い時」と消費者を煽っていた。その時は「数ヵ月後には地価が上がるから、今が買い時」と喧伝し、「売り渋り」なる言葉まで登場した。しかし、実際の地価は上がるどころか、サブプライム不況で下がる一方であり、消費者を煽って買わせるための文句でしかなかった。本気で売り渋った業者がいたならば現在は在庫を抱えて四苦八苦している筈である。

第2に調査対象がマンション購入意向者である点である。回答者は多かれ少なかれマンションを購入する意欲のある人である。「今は買い時ではないためにマンション購入を検討しない」と考えている人も含めた調査ではない。

マンション検討動機に「今が買い時だから」と回答した人が昨年よりも増えているならば、買い時と考える購入意向者が増加したと結論付けることは間違えではない。しかし、それはマンション購入意向者の中で「今が買い時」と考える人の割合が増えたことを意味するに過ぎない。消費者全体で見れば「買い時」と考えている消費者が増加している訳ではない。

実際に増えているのは「マンションの買い時ではない」と考えている消費者であると推測する。現在は長期不況のとば口に立ったばかりというのが健全な経済感覚のある消費者の実感であろう。一頃に比べて地価が下がったとしても、これからもっと下がるならば、決して今が買い時ではない。反対に今の地価で購入してしまったならば高値掴みになってしまう。賢い消費者となって、企業のイメージ操作に踊らされないようにしたい。

最後に公正のために記者のスタンスについて説明する。この調査の幹事会社の東急不動産は不利益事実(隣地建て替えなど)を説明せずに新築マンションを販売したため、記者は裁判によって売買代金を取り戻した。この経験があるため、記者は東急不動産に対してネガティブなイメージを有していることを付言する。

Googleストリートビュー規制論への懸念

大手ポータルサイトのグーグル(Google)のストリートビュー(Street View)についての議論には懸念すべき傾向がある。ストリートビューはインターネット上で街並みの写真を閲覧できるサービスで、日本では2008年8月5日に公開された。外出先の雰囲気を事前に下調べできるなど非常に便利なサービスである。地図上からマウス操作で当該地点の写真を表示でき、操作性も優れている。しかし、自宅が無断公開されることなどに対し、プライバシー侵害と批判されている。

グーグル日本法人の担当者は2009年2月3日、東京都の情報公開・個人情報保護審議会に出席して、「プライバシーについて詰めが甘かった」などと釈明し、今後は写真を公開する前に該当する自治体に知らせる方針を示した。ストリートビューを批判する立場にとっては、グーグル側がプライバシーの問題を認めた点で一歩前進に見えるが、解決の方向性が誤っている。

プライバシー侵害が問題であるならばプライバシーを侵害される個々人の了承を取らなければならない。自治体の了承は個々人に対するプライバシー侵害の正当化にならない。グーグル担当者によると、海外では写真公開前に官庁や自治体に説明していながら、日本では事前説明をしていなかったとのことだが、むしろ役所のお墨付きを得ればいいという発想は人権意識の低い極めて日本的な発想である。

建築紛争では隣地の建設によって日照や眺望などで甚大な被害が出る場合でも、マンション建設業者は「建築確認を取得しているから」と正当化することが多い。自治体への事前説明を解決策とすると、自治体への了承を得ているとグーグル側に正当化根拠を与えることになりかねない。

Googleストリートビューの評価できる点は無料で公開し、インターネット接続環境があるならば誰でも利用できることである。それ故に地上げ屋による土地漁りや泥棒の下見に使われるかもしれないという嫌悪感がある。しかし、調査するだけの時間と労力があればストリートビューによって分かる情報はストリートビューがなくても入手可能である。悪意がある連中に狙われたならば、ストリートビューで得られる程度の情報はすぐに入手されてしまう。むしろ彼らが入手しそうな情報をストリートビューから確認できることには大きな利点がある。

記者は購入したマンションに不利益事実不告知(隣地建て替えなど)があったため、売買代金返還を求めて売主の東急不動産を東京地裁に提訴した。裁判の係属時にはストリートビューは公開されていなかったが、Google Mapで上空からの衛星写真や航空写真を表示できた。その写真を証拠として裁判所に提出することで、隣地建て替えによって日照や眺望などが損なわれることを具体的に立証した。

この経験があるためにストリートビューも地上げ屋や泥棒の武器となる以上に弱者である個々人の武器となる面が大きいと考える。例えば防犯面での不安についてはストリートビューで自宅周辺の写真を確認することで、気付きにくかった問題を確認して事前に対策をとることができる。悪用する人ばかりにメリットがある訳ではない。

ストリートビューが公開された時、その便利さに驚嘆し、新しいサービスにワクワクした。これが廃止されるようなことがあったら大きな損失である。一方でストリートビューによって迷惑を被る人との調和も図らなければならないが、それが役所のお墨付きで実現できないことだけは確かである。

【テレビ評】「天地人」第6回、敵を斬らずに味方を斬る

戦国武将・直江兼続の生涯を描くNHK大河ドラマ「天地人」第6回「いざ、初陣」が2009年2月8日に放送された。今回の放送では上杉謙信(阿部寛)が織田信長(吉川晃司)を討つために越中に侵攻した。この戦いは兼続(妻夫木聡)の初陣でもあった。映画監督の三池崇史が上杉景虎(玉山鉄二)の家臣・刈安兵庫役で出演する点も注目される。

初陣に張り切る兼続であったが、命乞いをする若い兵士を斬れず、逃がしてしまう。その後も戦で活躍することはなかった。今回の放送ではスポットライトを多用した演劇風の演出も特徴である。これは人殺しに葛藤する兼続の心象風景をイメージしているようで興味深い。

人殺しを嫌がる主人公は、敵兵を殺すのが当然の戦国時代劇において異色である。直近の戦国大河ドラマ「風林火山」(2007年放送)では戦によって村が略奪され、山本勘助の妻・ミツが武田信虎に惨殺されるなど、戦国時代の不条理を直視していた。それに比べると今回の兼続は殺さなければ自分が殺されるという極限状況を無視している。戦国時代劇としてのリアリティに欠けると批判する向きもあるだろう。

しかし、兼続は決して単なる腰抜けではない。「あの者に母がいると思うと、斬れなかった」と敵兵を逃がしてしまう兼続であったが、上杉景勝(北村一輝)を侮辱した景虎の家臣には斬りかかる。人間には絶対に許せないものがある。それは天下国家というような抽象的なものに対してよりも、自分の身近な物事に対する方が多い。

決して私憤は公憤よりも低レベルであることを意味しない。むしろ往々にして私憤は公憤よりも大きな力を発揮する。暴虐な織田信長を討つという大義名分では人殺しをする気になれなくても、敬愛する主君が侮辱されれば友軍兵士だろうと容赦しない。

記者は東急不動産(販売代理:東急リバブル)から不利益事実(隣地建て替えなど)を説明されずに新築マンションを購入した。真相発覚後の東急リバブル及び東急不動産の対応は不誠実極まりないものであった。当然のことながら記者は激しく怒った。その怒りが売買代金返還請求の裁判を進める原動力となった。それ故に兼続の思いにも共感できる。敵兵は斬れなくても味方は斬れる兼続の行動にも納得できる。

「天地人」は戦国時代劇であるが、企画意図には「「利」を求める戦国時代において、「愛」を信じた兼続の生き様は、弱者を切り捨て、利益追求に邁進する現代人に鮮烈な印象を与えます」としており、現代社会への問いかけという側面が強い。日本では十五年戦争時に国家のために命を捨てることが当然視されたように、社会が困難に直面すると弱者の犠牲と忍耐によって克服しようとする傾向がある。派遣切りは、その典型である。私憤で味方に斬りかかるが、公憤で敵兵を斬ることができない兼続は、そのような日本社会の愚かしさを風刺しているようで意味深長である。現代人以上に現代人的な理性を有している兼続を応援していきたい。

『二階堂重人の初めての株デイトレード』二階堂重人著

初心者向けデイトレ指南書

 本書はデイトレード初心者に向けてデイトレードについて解説した書籍である。著者はデイトレードで生計を立てている人物で、株式投資の書籍を既に何冊も出している。

 本書の特徴としては2点挙げられる。第1にデイトレードに特化していることである。本書は「デイトレードと一般的な株式投資との違い」から出発している。デイトレードは「買った株をその日のうちに売る」トレードである。そのため、企業の業績や成長性などは判断要素にならない。つまり、一般的な株式投資とは別な視点で銘柄を選択する必要があり、そこを混同すると最初から失敗してしまう(12ページ)。

 この点において、本書のスタンスは同じ著者の『【最新版】サラリーマンが株で稼ぐ一番いい方法』(三笠書房、2007年)とは異なる。こちらは日中、会社勤めをしている従業員向けであるためにデイトレードは対象外で、数日のスパンで売買するスイングトレードを解説する。

 第2に初心者向けであることである。板(注文数が表示されるボード)やローソク足チャートを丁寧に説明するなど文字通り初心者に向けて執筆されている。さらにオンライン証券(松井証券とSBI証券)の操作手順まで掲載している。

 この点において同じ著者が同じ年に出版した『株デイトレード常勝のルール』(すばる舎、2008年)とは異なる。こちらは、ある程度の知識がある人向けにデイトレードのルールを数多く紹介している。

 著者の書籍は、タイトルや冒頭で当該書籍の趣旨や対象を明確に表現している。この点が株式投資という同じ分野で著者が類書を何冊も出版できる秘訣(ひけつ)である。一方で取引に対する基本原則は共通する。それは取引ルールを確立することや塩漬けではなくロスカット(損切り)を行うこと、損小利大(損失を小さく利益を大きく)を目指すことなどである。一貫した原則と状況に合わせた応用が著者の思想の根幹となっている。

 株で稼ぐとなると不労所得との印象を受けるが、本書で紹介されたデイトレードはなかなか大変である。日本の証券市場は9時に取引が開始されるが、遅くとも8時前には起きてNYダウなどの海外市場の結果を調査すべきという(116ページ)。

 取引中は板やチャート、ランキングなどさまざまなものを確認する。画面をいちいち切り替える手間を省くために、複数台のモニターを設置し、別々のモニターに表示させることを推奨するほどである(30ページ)。大引け後も損益の計算やトレードの振り返り、相場の流れの調査など行うべきことは多い(158ページ)。デイトレードは決して楽な作業ではなく、怠け者では無理である。初心者向けであるが、株式取引の奥深さがわかる1冊である。


『二階堂重人の初めての株デイトレード』
二階堂重人著
日本文芸社
2008年9月30日
1680円(税込み)
192ページ

「Yahoo! ニュース」がコメント機能を刷新

無責任な投稿の抑制とネットの利点のバランス

 「Yahoo! ニュース」が2009年2月5日にコメント機能をリニューアルした。「Yahoo! ニュース」は大手ポータルサイト「Yahoo! JAPAN」内のニュースを提供するページである。Oh!MyLifeの記事もパブリックニュースとして配信されている。

 リニューアルの特徴はコメント投稿者のYahoo! JAPAN IDの一部を表示させるようにしたことである。これまでのコメント欄では投稿者名は表示されなかった。自ら投稿者名を表示させることもできなかったため、匿名掲示板として有名な「2ちゃんねる」以上に匿名性を徹底していた。「2ちゃんねる」では匿名での書き込みが可能だが、固定ハンドル(略:コテハン)の書き込みも可能である。成りすましを防止する機能(トリップ)もある。

 今回のリニューアルでは投稿者のYahoo! JAPAN IDが一部表示されるようになった。IDの一部を伏せ字にして表示される。例えば「boycott」というIDで投稿した場合は「boy*****」という形で表示される。この点でIDが明確に表示される「Yahoo! 掲示板」とは異なる。ただし「Yahoo! 掲示板」ではIDのほかにニックネームで投稿でき、ニックネームは最大6つまで作成できる。

 今回のリニューアルによって、同一人物が連続投稿していた場合は、すぐに分かるようになった。しかも過去の投稿履歴も閲覧できるため、コメント投稿者の傾向を知ることもできる。例えばほかの記事でも悪口や揚げ足取りしかしていなければ、そのような相手と思えばよい。

 コメント欄には一方的に記事を配信するだけでなく、読み手もコメントを書くことでコンテンツを豊かにするというWeb 2.0的な意義がある。それが報道機関のサイトとは異なるポータルサイトならではの付加価値となる。運営会社・ヤフーの井上雅博社長は、株主総会において、そのように説明していた(参照「ヤフー株主の関心は、株価とGoogleの脅威」)。

 コメントを付加コンテンツととらえ、コメントを多く集めたいならば、コメント投稿を躊躇(ちゅうちょ)させるような制約をかけない方が望ましい。しかし、悪口ばかりでは逆にコンテンツとしてマイナスである。まじめなコメントを投稿しづらい雰囲気にもなる。

 リニューアル後はコメント欄上部に「こんにちは XXXXXXX さん」とログインしたID名が表示されるようになった。これも合わせて今回のリニューアルは、投稿者としての自覚を持たせ、無責任な投稿をけん制する効果を狙ったものとなっている。

 偶然にもリニューアルと前後して警視庁が芸能人のスマイリーキクチ氏のブログを事実無根の内容で集中攻撃した男女18人を立件すると報道された。この点では非常にタイミングのよいリニューアルとなった。

 ただし、この種の事件が起きるとネットの負の面をあおり立てる風潮が出てくるが、それに流されるだけでない点がヤフーの評価できるところである。今回のリニューアルではコメントに対する評価として賛成だけでなく、反対の意思表示も可能になった。賛成できるコメントには「私もそう思う」、同意できないコメントには「私はそう思わない」に投票できる。

 これは一見すると的外れなコメントへのけん制に思える。しかし、表示コメントの並べ替え機能では「そう思わない順」として、反対票が多いコメントから順に表示できる。多くの人に評価されるコメントだけでなく、反対者が多いコメントにも読むべき価値があるという発想である。少数意見が圧殺されがちな日本社会において注目すべき姿勢である。

 ブログ炎上の摘発報道では事実無根の内容に基づく攻撃であった以上に、ブログ炎上という態様に問題があるかのような報道が散見される。しかし、インターネットによってダイレクトな批判が可能になったことは、これまで発言の場がなかった個人にとって大きな進歩である。ネットがもたらす負の面を抑制しつつ、ネットの利点をつぶさないようにするという困難な課題にバランス感覚を失わないヤフーを積極的に評価したい。

映画「ポチの告白」が健闘

雑誌ぴあに記者のコメントも掲載

 警察犯罪のタブーに切り込んだ社会派映画「ポチの告白」(高橋玄監督)が健闘している。「ポチの告白」は菅田俊演じる真面目な警察官が警察組織の腐敗体質に染まり、自滅していく過程を描いた作品である。警察不祥事に取り組むジャーナリストの寺澤有氏が提供した実話に基づく衝撃的な内容になっている。

 「ポチの告白」は2009年1月24日にK’s cinema(ケイズシネマ、東京都新宿区)で公開され、記者は初回の上映を鑑賞した。ぴあ株式会社の「ぴあ満足度ランキング」では同日公開の映画の中で3位になった。これは映画鑑賞後の観客に「ぴあ」の調査員が映画館の前で実施するアンケートをまとめたものである。

 記者もアンケートに応じ、そのコメントが2009年2月5日発売の雑誌ぴあ2009年2月19日号に掲載された。掲載されたコメントは以下の通りである。「警察犯罪という問題の深さを知った。国民が誰もチェックできない仕組みは改善すべきではないのか。その他いろいろなテーマが盛り込まれていて、それらを上手くつなげる監督の力量に感服した」(37頁)。

 「ぴあ」の満足度調査では最初に映画の総合的な評価を100点満点中何点であるかを回答する。その上で感想を自由に述べる。次にストーリー、映像、演出、音楽、俳優の各項目を5段階で評価する。また、項目別の感想も自由に述べられる。このように満足度調査では、映画のCMでよく使われるワンフレーズの感想とは異なり、詳細な回答が求められる。回答内容をうまくまとめたコメントが雑誌に掲載される。

 「ぴあ」の調査で興味深い点は観客の年代である。男性の50代以上と30代が多く、40代と20代以下は少なくなっている。社会性の強い映画であるため、50代以上という年配の観客が多いことは理解できる。しかし、40代を飛ばして30代が多いことは一見すると不思議である。

 30代はロストジェネレーションと呼ばれ、新卒採用時は就職氷河期で、ワーキングプアやネットカフェ難民という格差社会の矛盾を押し付けられた損な世代である。この不合理はバブル入社世代である40代と比べると、一層顕著になる。個人差はあるものの、世代的に見るならば30代の方が40代よりも社会矛盾への問題意識が強くなるのも当然の成り行きである。それが「ポチの告白」の観客傾向に反映したと考える。

 「ポチの告白」は警察犯罪という重いテーマや上映時間の長さ(3時間15分)がネックとなり上映に苦労した作品で、ようやく単館上映にこぎつけたという経緯がある。高橋監督は初日の舞台挨拶で、「映画を観られた皆さんで広めていって欲しい」と話した。記者の「ぴあ」へのコメントが、その一助になれば喜びである。

お笑いタレント中傷とブログ炎上の相違

 お笑いタレント・スマイリーキクチ氏のブログを事実無根の内容で集中攻撃したとして、警視庁は2008年2月5日までに17歳から45歳までの男女18人を名誉棄損や脅迫の疑いで書類送検する方針を固めた。スマイリーキクチ氏が「足立区女子高生コンクリート詰め殺人事件に関わった」などといった虚偽内容の中傷が書き込まれたためである。

 身に覚えのない虚偽の内容によって、執拗に攻撃されるのであるから本人にとってはたまったものではない。
 私は購入したマンションに不利益事実不告知(隣地建て替えなど)があったために売買代金の返還を求めて売主の東急不動産を提訴した。それに対し、住宅ローンの返済に窮したために裁判しているなどと事実無根の風評をインターネットで書かれたことがあった。
 この体験があるために「私自身の生活・仕事に影響があるのみならず、家族や友人・知人にこれまで以上に不安な思いをさせてしまう」とのスマイリーキクチ氏の不安と怒りは大いに共感できる。

 但し、この事件を「ブログ炎上事件」とする報道が散見されることは非常に気になる。これは日本のマスメディアの、インターネットを理解せずに頭から否定したがる傾向を物語っている。
 確かに攻撃的なコメントが殺到する点が炎上の特色である。しかし、これまで「炎上」として認識されている事例には、先に炎上に至る原因が存在した。炎上のきっかけとなった代表的な問題発言には以下がある。

・歌手の倖田來未さん:「35歳以上になると羊水が腐ってくる」

・評論家の池内ひろ美さん:トヨタ自動車の期間工に対し、「彼らはトヨタと漢字で書けるのか?」

・花岡信昭・産経新聞元編集委員:アイドルグループ・モーニング娘。に対し、「歌は下手でダンスもまずくエンターテインメントの域には達していない」

・藪本雅子・元日本テレビアナウンサー:「男の子は、それはもう幼稚園の頃から、女の子のパンツが見たくて見たくてしょうがない生き物である」

これらに対し、スマイリーキクチさんの場合は炎上の原因になるような失言や問題行動をしていない。勝手な思い込みによって攻撃されただけである。今回の件を過去の炎上事件と同列に扱うならば、スマイリーキクチさんを貶めることになる。

 炎上は個人が情報の発信者となれるインターネット時代ならではの現象である。情報の受け手とされてきた個人が批判の声をあげるようになったことは大きな進歩である。
 実際、ビジネス誌の週刊ダイヤモンドは、過去には泣き寝入りしていた消費者がネット上で企業への不満を主張し、炎上させる状況を「お客が企業に対等にモノを言う時代」に突入したと位置付ける(※1)。この記事では炎上の事例として、前述の東急不動産との裁判を契機とした、東急不動産と販売代理の東急リバブルに対する批判の急増をあげている。

 また、子どものケータイやネットの利用を論じた書籍では、子どもが主利用者のWebサイトでは炎上が少ないとし、その理由を「炎上するほどにまで相手にぶつかっていくエネルギーがなくなっているせいではないか」と否定的に推測する(※2)。間違ったことや許せないことに対して個々人が批判の声をあげることは決して悪いことではない。

 表現の自由を重視する立場からは、今回の異例とも言える一斉摘発が表現活動の萎縮をもたらすのではないかとの懸念が出てくる。
 しかし、それ以上に今回の事件をブログ炎上と位置付けて、炎上という現象自体が悪いことであるかのように伝える報道姿勢の方が批判的言論を萎縮させかねない。事実無根の中傷や脅迫と、批判が殺到した結果としての炎上は全く異なるものである。

参考:
※1)「ウェブ炎上、<発言>する消費者の脅威−「モノ言う消費者」に怯える企業」週刊ダイヤモンド2007年11月17日号39頁
※2)加納寛子、加藤良平『ケータイ不安』日本放送出版協会、2008年、44頁

『デジタルネイティブ 次代を変える若者たちの肖像』の感想

 本書は2008年11月10日に放送されたNHKスペシャル「デジタルネイティブ〜次代を変える若者たち」の書籍版である。デジタルネイティブとは子どもの頃から、インターネットを水や空気のように使いこなしてきた世代を指す。本書は既存の常識や価値観に捉われない考え方や行動力によってデジタルネイティブが世界を一変させる可能性に注目する。

 デジタルネイティブの主な特徴としては以下の3点が挙げられる。
(1)リアルとネットを区別しない
(2)相手の年齢や所属肩書にこだわらない
(3)情報は無料と考える

 まず(1)は、物心がついた時からネットが存在するデジタルネイティブらしい特徴である。私は物心がついた後でネットが普及したデジタルイミグラント(デジタル移民)の世代に属する。私はネットを理解せずに悪玉視する保守的な世代的発想には嫌悪感を抱き、ネットの利点を積極的に評価するが、あくまでリアルとネットの区別を前提としていた。デジタルネイティブにとっては、そのような区別自体が意味をなさないことになる。

(2)については、SNSで築いた人脈を利用してグローバルに活動するデジタルネイティブ達の活躍が描かれる。彼らは年齢や所属・肩書だけでなく、国境や民族へのこだわりも低い。デジタルネイティブはコスモポリタンである。彼らが社会の主流になれば世界はもっと平和になるのではないかと心の底から感じられた。

(3)については、株式会社はてなの近藤淳也社長の思想を具体的に紹介する。1975年生まれの近藤社長は年代的にはデジタルネイティブではないが、デジタルネイティブらしい考え方の人物として取り上げている。近藤社長は「ネットの向こうの不特定多数を信じる」という信念を持ち、はてな社内では情報の私物化を禁止する(64ページ)。

 近藤社長をはじめとしたデジタルネイティブ的存在は物質的な欲が少なく、自分が好きな道を追及する傾向が強い。これは同じIT企業社長でも堀江貴文・元ライブドア社長に象徴されるヒルズ族とは対照的である。著者は日本社会の閉塞感をデジタルネイティブが打破することを期待している(72ページ)。

 マスメディアによるインターネット報道はネットのマイナス面を喧伝する傾向がある。最近では、お笑いタレント・スマイリーキクチさんへの中傷に対する一斉摘発が大きく報道されたが、虚偽内容に基づく名誉毀損や脅迫が罪状であるにもかかわらず、ブログ炎上自体が問題であるかのような報道が散見された。炎上そのものは発言の場がなかった個人が直接批判の声をあげられるようになったという積極的な意義がある(参照「『ケータイ不安』の感想」)。

 これに対して、本書は「デジタルネイティブが奏でる『希望の物語』の可能性を信じていたい」というスタンスでまとめられている(174ページ)。そのため、ネットを擁護することが多い私には気持ちよく読み進められるが、かえって現実の日本のネット社会との落差が浮き彫りにされていると感じた。

 本書のデジタルネイティブはコスモポリタン的である。本書で紹介するエイズ撲滅活動に取り組む大学院生は「日本という限定された空間でエイズに関する活動を行うことの限界を感じた」という(133ページ)。しかし、日本のネットでは他民族を貶めて自尊心を保つネット右翼が幅を利かせている。子ども達も部外者には分からないように作った学校裏サイトで情報交換するなど、身近な範囲にしか関心をもたない傾向がある。

 本書の事例では先進国・発展途上国を問わず、デジタルネイティブが手を取り合って活躍している。このままでは日本だけが世界から取り残されてしまうように感じられた。ネット利用を好意的に考察する本書だからこそ、ネット社会の理想像と日本の現実の落差が浮かび上がっている。デジタルネイティブによる変革への期待に彩られた本書のスタンスとは裏腹に、日本の現状に対する危機感を抱かせる1冊である。

コスモスイニシアに先行き懸念

 不動産デベロッパーのコスモスイニシア(JASDAQ上場)の先行きに懸念が生じた。コスモスイニシアの平成21年3月期第3四半期決算短信(平成21年2月9日付)に「継続企業の前提に関する重要な疑義」が注記されたためである。不動産業界は3月決算に向けて予断の許さない状況になっている。

 コスモスイニシア(旧リクルートコスモス)はリクルートグループの不動産会社として設立されたが、2005年にMBO(マネジメント・バイアウト)によりグループから独立、2006年9月1日には現社名に変更した。

 コスモスイニシアは第3四半期連結決算で純損失327億6400万円を計上し、通期でも大幅な損失が見込まれる。この結果、複数の金融機関と締結している借入契約の財務制限条項に抵触し、期限の利益喪失により請求を受ける可能性があるとする。金融機関から借入金の一括返済を求められたとしても契約上拒否できなくなり、その場合は企業の存続が危うくなる。

 企業は原則として将来的にも事業を続けることを前提とする。その前提があってこそ、投資家は安心して企業に投資できる。事業継続に重大な支障が生じることが予見される場合には継続企業の前提に疑義が生じているとして、経営者はその事実と今後の解消策を明記しなければならない。
 コスモスイニシアの決算短信でも、解消策として早期業績回復のための経営計画策定を挙げる。また、金融機関からは現状では期限の利益喪失の請求は行わない方針との連絡を受けたと説明する。

 継続企業の前提に疑義が生じたとの発表を受け、翌2月10日のコスモスイニシアの株価は年初来安値を更新した。前日終値は48円であったが、10日の始値は29円である。更新された年初来安値は24円で、年初来高値(2008年5月9日)の384円の6%程度にまで下がった。

 この日の出来高は1,737,000株で、9日の出来高148,000株と比べて急膨張している。これは売り急ぎの続出を意味するが、一方で取引は買い手が存在するから成立する。10日の取引では株価は下がる一方ではなく、終値は始値を上回る32円となった。ここには買い支えする投資家の存在を推測させる。

 株式は企業が倒産してしまえば紙切れになる。継続企業の前提に疑義が生じたというような重大な発表があればストップ安となったとしても不思議ではない。サブプライム不況の影響を最も受けているのは不動産業者であり、このタイミングで買いとする理由は見当たらない。にもかかわらず、株価が均衡を保っていることに、却って不気味さを感じる。

 東証一部上場のマンション分譲大手・日本綜合地所の破綻は記憶に新しい。不動産業者の破綻は物件引渡し予定の契約者やアフターサービスを受けるマンション住人にとっても無関心ではいられない。数日中に重要な発表がなされる可能性もあり、注視していきたい。

セブンプレミアムが日本経済新聞賞受賞

流通業大手の株式会社セブン&アイ・ホールディングスのプライベートブランド(PB)「セブンプレミアム」が「2008年 日経優秀製品・サービス賞 最優秀賞 日本経済新聞賞」を受賞した。セブンプレミアムは記者もよく購入しており、納得できる受賞である。

日経優秀製品・サービス賞は国内で販売されている優れた製品やサービスを表彰するもので、1982年から始まり、毎年1回行われている。2008年の同賞の表彰式は2009年2月5日に行われた。セブンプレミアムの他には花王の蒸気で目もとを温めるアイマスク「めぐりズム蒸気でホットアイマスク」やプラス ステーショナリーの個人情報保護スタンプ「ケシポン」など独創的な商品・サービスが入賞した。

セブン&アイは「セブンプレミアム」を原材料調達から商品開発、品質管理まで一貫した体制で、7つのこだわりを徹底追求した商品と位置付ける。7つのこだわりとは、(1)安全・安心、(2)おいしい、(3)地域の味、(4)最高の技術、(5)ユニバーサルデザイン、(6)健康応援、(7)リーズナブル・プライスである。

セブンプレミアムは傘下のイトーヨーカドーやヨークマートにおいて、2007年5月から飲料や菓子などの49品目で販売を開始した。その後、日用品など品目を拡大していった。記者がしばしば利用するイトーヨーカドー木場店でもセブンプレミアム商品の売り場は拡大している。

セブンプレミアムは食品、菓子、飲料、日用品など幅広い品目を持つが、白を背景色に多用した包装に、緑色の「7」のロゴを付す統一的なデザインになっている。人目を引くためにカラフルなデザインが多い一般商品の中で、シンプルなデザインは逆に注目されやすい。そのシンプルさには無印良品的な信頼感を与えている。

受賞理由として、製造元を明かさないPBがある中で、セブンプレミアムは製造元を明記し、安全・安心を重視する消費者の要望に応えたことを挙げる。例えばセブンプレミアムのポテトチップス「イーモんたべよ北海道ポテト コンソメ味」の製造元は山芳製菓である。山芳製菓は「わさビーフ」で有名な大手スナック菓子メーカーである。

大手メーカーも生産し、メーカーの顔が見えるPBということで、過去の「安かろう悪かろう」というPB失敗事例とは一線を画す。セブンプレミアムはアレルギー物質の表示を目立つ形で表示するなど、消費者に近い存在である流通業者としての長所を活かした商品作りをしている。今後も、こだわりを持ち続けた商品作りに期待したい。

「かっぱえびせん 黒煎り七味」は涼やかな辛さ【お菓子】

「かっぱえびせん味紀行 黒煎り七味」はカルビー(東京都北区)の大人向けシリーズ「日本味紀行」の第3弾である。2008年12月1日から地域別に順次発売された期間限定商品である。

「かっぱえびせん」は「やめられない、とまらない」のフレーズで有名な長寿スナック菓子である。味紀行は選りすぐりの御当地素材で味付けしたシリーズである。第1弾は青森産のにんにくを使用した「かっぱえびせん 塩にんにく」、第2弾は大分産の柚子を使用した「かっぱえびせん 柚子こしょう」であった。

「日本味紀行」は大人向けシリーズということで、パッケージのカラーも白を背景色としたシックなものになっている。エビの体色である赤のイメージが強い通常の「かっぱえびせん」とは大きく雰囲気が異なり、落ち着いた雰囲気を出している。スナックの形も、通常商品は婉曲した円柱であるが、「日本味紀行」は平べったい形のものがねじれている。通常版よりも固めの食感で、この点も大人向けと言える。

黒煎り七味は、和歌山県産の「ぶどう山椒」を使用する。「ぶどう山椒」は粒の大きさが大きく、香りも味も強いという特色があり、ぶどうの房のように実が付くことが命名の由来である。エビの産地としても有名な和歌山を産地として選択したことは「かっぱえびせん」に合っている。

「黒煎り七味」のパッケージは「日本味紀行」に共通する白を背景色としつつ、アクセントカラーとして「黒煎り七味」の名前にある黒をアクセントカラーにしたモノトーン調である。このため、従来の「日本味紀行」と比べてもシンプルで上品な印象を与える。

「七味を焙煎した深いコク」をキャッチコピーとする「黒煎り七味」の特徴は何と言ってもピリッとした山椒と唐辛子の辛さである。スナックにはところどころに黒い点が付けられており、見た目にも辛味を感じられる。宣伝文句では酒のツマミにいいというが、熱いお茶と一緒に食べるのもあっている。

辛いは辛いのだが、口の中が麻痺してしまうような辛さではなく、後に引きずらない。これは胡椒や塩だけで出す辛さとは次元が異なる。むしろ快感になる涼やかな辛さである。そのため、どんどん食べ続けられる。あっという間に一袋を食べてしまった。宣伝文句どおりに「やめられない、とまらない」菓子である。

Googleが急上昇ワードを追加

20分毎に更新、マスメディア化するインターネット

 大手ポータルサイトのグーグル(Google)は2009年2月5日にトップページをリニューアルした。リニューアルによってトップページの検索窓の下へ大きく2つの項目が追加された。

 「急上昇ワード」欄と各種サービス(GmailやYouTubeなど)へのリンクボタンである。注目すべきは急上昇ワードの追加で、ここにはマスメディアへの近接が感じられる。

 Googleはロゴと検索窓だけのシンプルなデザインで、検索に特化したポータルとしてスタートした。ポータルサイトとしては後発ながら、検索結果の網羅性・正確性が支持され、世界的にはトップの座を占めるに至った。検索に特化したサイトデザインは、優れた検索機能という自社のコアコンピタンスを最大限にアピールしている。

 グーグルの倉岡寛・プロダクトマネージャーは「このデザインを決めたのは創業者のサーゲイブリンで、彼はその理由を聞かれると、彼自身がHTMLが書けなかったから、ということと、当時ウェブマスターがいなかったと言っています」と謙遜する。

 しかし、シンプルなデザインにしたことには積極的な意義がある。インターネット勃興期にポータルを制したのはYahoo!であった。そのYahoo!も当時の競合であったLycosやInfoseekと比べてシンプルなデザインを特徴としていた。GoogleはYahoo!の成功法則を徹底している。

 その後、Googleは衛星写真や航空写真を取り入れたGoogle Mapなど検索エンジン以外のサービスでも注目を集めた。動画投稿サイトYouTubeを買収するなど多角化にも積極的である。各種のサービスへのリンクボタン追加はGoogleの総合ポータルサイト化を象徴する。

 一方で今回の追加によっても、様々なメニューが溢れてページがゴチャゴチャしてしまうという状態にはなっていない。他のポータルサイトと比べると依然としてシンプルである。サービスは増やすが、埋没させることはしない。尖がったサイトであり続けようとしている。

 リニューアルのもう一つの特徴は「急上昇ワード」の追加である。これは検索数が急上昇している検索キーワードを紹介する。Googleモバイルホームページ上のガジェットとしては2008年4月15日から提供されていたものである。2009年2月8日14時時点では「イタガキノブオ」「いしだ壱成」「骨肉腫」「日本歴史占い」「ミステリーショッパー」が急上昇ワードとなっている。

 検索エンジンは自分の知りたい情報に辿り付くための能動的なメディアである。これに対して急上昇ワードは最近話題になっているキーワードを教えてくれる。ネット以前のメディア(新聞やテレビ)は自分が調べたいことがあるためではなく、世の中の動きについていくために購読や視聴をする傾向があった。似たような受動的な側面が急上昇ワードにもある。インターネットも普及するにつれてマスメディア化する一面があるようで興味深い。

 この急上昇ワードは20分毎に更新されるためにリアルタイムな動きに連動する。検索数が急上昇している検索キーワードというファジーな指標になっていることも特色である。単純に検索語として使用された数のランキングとした場合、誰もが知っている言葉が上位を占めてしまう。それでは世の中の動きについての新たな発見にはなりにくい。

 20分という短いスパンで急上昇しているキーワードを抽出することによって、ソコソコ話題になっているものの初耳のキーワードとの思いもよらぬ出会いになる。

 一方で使用された検索キーワードの上位ランキングというような厳密な指標になっていないため、うがった見方をすればグーグルによるマッチポンプが可能になる。グーグルが流行らせたいと考えるキーワードを急上昇ワードに表示させることができてしまう。

 ポータルサイトでは検索結果に連動して広告を表示させる仕組みを導入しており、そのようなことを行う経済的な動機もある。何を伝えるかをコントロールできるという意味で、良くも悪くもグーグルはマスメディアに近付いていると言える。

住信SBIネット銀行、定期預金キャンペーン延長

新規預金集めにつながるか

 ネット専業銀行である住信SBIネット銀行は円定期預金特別金利キャンペーンを延長すると発表した。これはキャンペーン期間中に定期預金を行うと通常よりも高い金利となるキャンペーンである。

 預入期間1年の定期預金ならば0.9%(税引き後、年0.72%)、2年以上の定期預金は通常金利に一律年0.15%(税引き前)の金利を上乗せする。2年以降の定期預金で一番金利が高いものは預入期間5年で預入金額3000万円以上の0.635%である。これに0.15%を上乗せしても0.9%を上回らないため、基本的には預入期間1年で定期預金を組むことが得である。

 キャンペーン期間は2008年12月8日から2009年3月1日までとしていたが、今回の延長によって3月29日までになった。預入期間1年の定期預金へのキャンペーン金利適用には一人1000万円までという上限が存在したが、延長にあわせて撤廃した。

 キャンペーン金利の適用を受けるためには定期預金の申し込み画面で表示される「キャンペーン対象」欄で「通常」ではなく、「キャンペーン対象」にチェックを入れる必要がある。

 これまでの経験では住信SBIネット銀行はボーナス時(6月と12月)に定期預金の金利キャンペーンを実施している。今回のキャンペーンも12月から開始されている。ボーナス時期にキャンペーンを実施することは預金集めには合理的であるが、銀行としては毎年続けなければならなくなる状況になる。

 キャンペーン金利につられて1年もの定期預金を預けた場合、翌年の同じ時期に満期を迎える。記者の預金も1月に満期を迎えたものがあった。高金利が魅力で預け入れた以上、金利が下がるならば別の銀行に移し変えることになる。その結果、新規の定期預金獲得だけでなく、既存の預金流出を阻止するためにもキャンペーンを実施しなければならない。実際、記者は金利キャンペーンがあったために満期となった預金を改めて預入期間1年で定期預金とした。

 その点で、今回のキャンペーン延長は新規預金集めにつながる可能性がある。これには競合する他行の動向が関係する。新生銀行では「実りの特別円定期」1年ものでは年1.1%(税引き後、年0.88%)のキャンペーンが2月10日まで行われている。オリックス信託銀行でも2月10日以降は「eダイレクト預金」の金利を引き下げる。例えばスーパー定期300の300万円以上1000万円未満の預け入れは1年もので1.1%が0.9%に下がる。

 このため、新生銀行やオリックス信託銀行の預金者が別の金利の高い銀行に目を向ける可能性が生じる。他行の金利が下がる2月10日以降は住信SBIネット銀行のキャンペーン金利が競争力を有することになる。キャンペーン期間を延長することで、2月分及び3月分の給与の定期預金への預け入れを見込んだものと考えられる。

 銀行同士が他行の動向を踏まえ、切磋琢磨することを預金者にとって歓迎できることである。今後も預金者に有益な様々なキャンペーンの実施を期待する。

■関連レポート
毎月金利をくれる住信SBIネット銀

【書評】『直江兼続』軍記物風歴史小説

本書は戦国武将・直江兼続を描いた歴史小説である。『大軍師直江山城守』(叢文社、1986年)を再編集して文庫化した。

同じく兼続を主人公とした火坂雅志『天地人』(日本放送出版協会、2006年)が2009年のNHK大河ドラマの原作となったために改めて脚光を浴びている。PHP文庫では近衛龍春『前田慶次郎』や星亮一『上杉景勝』などとともに大河ドラマフェアの対象作品としたほどである。兼続を多面的に理解するために有益な一冊である。
本書は坂戸城主・長尾政景の溺死から始まる。この事件は上杉謙信が政景の遺児・景勝を養子にするきっかけとなった。これは兼続の運命にも大きく関係することになる。大河ドラマ初回放送も豊臣秀吉の謁見シーン後の実質的な物語の冒頭は政景の溺死事件である。本書も大河ドラマに影響を及ぼしているのではないかと思わせる一致である。

『天地人』に比べると本書は淡々と進行する。『天地人』では義に適っているかと葛藤する兼続の心理描写が詳細であった。また、初音やお涼といった架空人物との恋愛譚もある。これに対し、本書では謙信・兼続に限らず、他の戦国武将の動向にも頁を割いている。豊臣五奉行の一人・長束正家の伏見城攻めでの活躍など、歴史に埋もれた武将にもスポットライトをあてている。『天地人』が現代小説風であるならば、本書は軍記物風と言えるだろう。

兼続の名を歴史に残した関が原の合戦時の上杉家の思惑に対する解釈も両書では異なる。石田光成が挙兵すると、会津征伐に向かっていた徳川家康の軍勢は光成への反撃のために反転した。これに対し、兼続は追撃を進言したが、景勝は受け入れなかった。この景勝が拒否した理由が両書で異なる。
『天地人』での景勝の論理は、上杉家は家康に売られた喧嘩を買っただけとする。会津を攻める気のない家康を追撃して奥州を混乱に陥れることは義の精神に反するとした。これに対し、本書の景勝は領土の平面的な拡大を狙い、家康の追撃よりも最上攻めを望んだ。本書では義という精神性は後退するが、戦国武将らしいリアリズムがある。

反対に関が原の合戦後の徳川家への降伏に際しては、本書の方が浪花節的である。兼続は家康に「すべての罪はこの兼続にあり。日本一の弓取りの家康公とぜひ一戦交えたかった」と申し開きをした。景勝が家康追撃に反対したことをもって、景勝には責任がないと主張した。
これに対し、『天地人』での兼続は家康の重臣・本多正信に根回しするなど政治家的な腹黒さを発揮している。また、『天地人』では産業の振興など兼続の民政家としての手腕にも着目しているが、本書は上杉家への米沢30万石安堵で終わっているために触れられていない。人間としての兼続を全方位的に描いた『天地人』に対し、本書は武将としての清冽な側面を描いた作品である。

中村晃
『直江兼続 宿敵・家康も惚れた名軍師』
PHP文庫
1995年5月15日発行

ロックバンドCASCADEが再結成

ロックバンドのCASCADEが2009年2月14日に再結成を発表した。バンド復活ブームと言われているが、また一組加わったことになる。

CASCADEは1995年に音楽オーディション番組「えびす温泉」(テレビ朝日系列)で5週連続勝ち抜いたことをきっかけにメジャーデビューし、2002年8月に解散した。公式ウェブサイトでは復活の動機を「やり残したことがいっぱいある」とする。ちなみに2008年に再結成したユニットDo As Infinityの動機も「まだやり残したことがある」であった。

復活したCASCADEの参加メンバーはTAMA(ヴォーカル)、MASASHI(ギター)、HIROSHI(ドラム)の3人である。オリジナルメンバーのMAKKO(ベース)は不参加だが、その点については「何度も話し合った末のことだ。自分が歩む道を自分で決める権利は誰にでもある」と述べている。

復活後の活動として4月15日に新曲2曲を含む5曲入りのミニアルバムをリリースし、6月6日には恵比寿リキッドルームでライブ「えええぢゃないか」を行う予定である。

最近は男性がバレンタインデーにチョコレート(逆チョコ)を贈るようにもなっているが、バレンタインデーの復活発表はファンには最高のバレンタインプレゼントとなった。SNSサイト「ミクシィ」(mixi)では2月14日のキーワードランキングでは「CASCADE」が堂々の1位になるほどの盛り上がりを見せた。2位の一般的な行事「Valentine」を差し置いてバンド名が1位となった。

CASCADEは「えびす温泉」での登場時は前衛的なロックバンドとして、大きな衝撃を与えた。例えば曲「kill me stop」は「kill me stop」という歌詞が延々と繰り返されるだけである。実験的な曲をストックしているというだけでなく、そのような曲をオーディション番組で披露したという点が驚きである。

その時の衝撃と比べると、メジャーデビュー後は商業的に大成功を収めたというよりも一部から熱狂的に支持されるニッチなバンドとしての印象が強かった。CDセールスが全体的に低迷する現在においては、熱狂的なファンを持つニッチなバンドの方が強みを有する。その意味でCASCADEの復活は時宜を得ている。「何をやり残していたかはこれからの活動で示します」と語る彼らの今後に期待したい。

「リッチカット リッチコンソメ」ザクザクした食感【ポテトチップス】

「コイケヤ ポテトチップス リッチカット リッチコンソメ」は2008年12月22日から販売された湖池屋(東京都板橋区)のポテトチップス新商品。コンビニエンスストアでの限定販売である。

湖池屋は1967年に日本で初めてポテチの量産化に成功した老舗企業である。以来、「コイケヤ ポテトチップス」はロングセラー商品となっている。とはいえ湖池屋は伝統に安住して同じ製品を販売し続けるだけでなく、バリエーションを増やし続けている。その最新商品が「リッチカット リッチコンソメ」である。

「リッチカット リッチコンソメ」は「リッチカット」シリーズの一種である。「リッチカット」は2008年10月6日から発売された商品で、ギザギザの入った厚切りのポテチを特徴とする。当初は「うすしお味」「サワークリームオニオン」の2種類であった。

「リッチカット リッチコンソメ」とリッチが繰り返され、豪華さへの期待が高まる商品名になっている。湖池屋ではコンソメ味をリッチコンソメと呼んでおり、ギザギザの入っていない通常版にも「コイケヤ ポテトチップス リッチコンソメ」が存在する。
「リッチカット リッチコンソメ」のコピーは「チキンと野菜のうまみが詰まった、豊かでコクのある、リッチなコンソメ味に仕上げました」である。また、ギザギザの入ったポテチは肌触りと舌触りが快感である。通常のポテチよりもザクザクっとして噛み応えがある。

湖池屋の「リッチカット」シリーズに相当するカルビー(東京都北区)の商品は「ギザギザポテト」である。そのカルビーは2009年1月26日に「ギザギザポテト チキンコンソメ」を新発売した。ギザギザでコンソメという点で共通する。しかも、両商品ともコンソメの肉はチキンである。コンソメを作るための肉はチキンに限らないにもかかわらず、チキンになった点は興味深い。

「ギザギザポテト チキンコンソメ」と比べると、「リッチカット リッチコンソメ」はポテチの色も味付けも濃く感じられる。これはギザギザなしの通常ポテチにも共通する。即ち、「ギザギザポテト チキンコンソメ」よりも、「コイケヤ ポテトチップス リッチコンソメ」の方が濃厚な味である。
湖池屋のリッチコンソメは濃厚なコンソメが味わいの豊かさにつながっている。

『松屋』が味噌てりチキン定食新発売

株式会社松屋フーズが展開する牛めし・定食店「松屋」は2009年2月12日から期間限定の新メニュー「味噌てりチキン定食」を販売した。メインディッシュはチキンの照り焼きで、御飯と味噌汁、生野菜が付く。2月19日15時まではライスの大盛が無料である。キャッチコピーは「照り焼きのコク!味噌の風味!美味しさの二重奏!!」となっている。カロリーは820キロで、価格は580円である。

チキンは味噌漬けの胸肉を焼いたものである。味噌味が染み込んだ柔らかい皮付きチキンが、甘みのある照り焼きのタレとマッチしている。「美味しさの二重奏」というコピーは決して見掛け倒しではない。チキンは美味しいので、あっという間になくなってしまう。気をつけないと、チキンを食べ終わった後に、ご飯だけを食べることになってしまう。もっと量があってもいいと思わせるくらいに、美味しく食べられる鶏肉である。

松屋では1月15日にも新メニュー「シチューハンバーグ定食」を販売している。これは肉厚なハンバーグにビーフシチューというボリューム感がポイントであった。それを是とするならば、味噌てりチキン定食は物足りなく感じるかもしれない。コストパフォーマンスが評価されがちな牛丼系ファーストフードにおいて、味で勝負したメニューである(松屋では牛丼ではなく「牛めし」と呼ばれるが、普通名詞として牛丼を使用する)。

ファーストフードとしての松屋の特徴は食券制である。接客担当の店員が調理も行うため、貨幣に触れなくて良い食券制は合理的である。最初に券売機で食券を購入し、席に座る。店員が食券を取りに来る。しかし、往々にして店員が食券を取りに来るまでの時間がかかることが松屋の難点である。

松屋は、同じファーストフードでもマクドナルドに代表されるハンバーガー系と比べて店員の絶対数が少ない。店員は調理に加え、配膳や下げ膳もしなければならない。配膳や下げ膳が原則としてセルフサービスになっているハンバーガー系とは異なる。そのため、店員は忙しく、席に座った客に直ぐに対応してくれないことがある。

ハンバーガー店でも混雑していれば注文までに行列になる。しかし、行列というのは順番に処理されるものであり、時間が予測できるものであるため、許せるものである。ところが、松屋の場合は待っている客がいることを認識した上で後回しにされているのか、そもそも気付いていないのか分からないために、いつ受け付けてくれるのか不安になる。実際に記者は忘れられた経験がある。また、既に食券を渡したにもかかわらず、再度注文を尋ねられたこともある。

通常の料理店に比べれば平均的には早い対応であるとしても、対応の予測不可能さはファーストフードとしては大きなデメリットである。但し、これは店員の少なさが根本原因であり、それが低価格に反映しているならば、トレードオフとして了解できないものでもない。

「牛めし」「豚めし」と牛肉や豚肉をメインとする松屋にとって鶏肉メニューはチャレンジャブルである。松屋のシステムに理解ある常連客にとって新しい趣向は歓迎できる新メニューと考える。

【テレビ評】「天地人」第7回、「母の願い」、兼続の成長

戦国武将・直江兼続の生涯を描くNHK大河ドラマ「天地人」第7回「母の願い」が2009年2月15日に放送された。今回は上杉謙信(阿部寛)に蟄居を命じられた兼続(妻夫木聡)が内面を見つめ直し、母・お藤(田中美佐子)の死を契機として悟りの境地に至るまでの成長過程を大胆に描く。

「天地人」の魅力は役者が実力派ぞろいであることである。兼続は迷いや葛藤から晴れやかな決意への転換を表情で上手に表現する。大河ドラマ主演俳優としての実力を出している。お藤は子を思う親心を丁寧に表現し、涙を誘う。そして直江景綱(宍戸錠)は武士としての覚悟をベテランの迫力ある演技で示した。

今回も前回に引き続き二重写しとスポットライトという大河ドラマらしからぬ演出がなされた。前回の二重写しは忍び・初音(長澤まさみ)の登場シーンで使われた。初音は、ただでさえ漫画的な架空人物である。その登場シーンに二重写しという非現実的な演出がなされたために戦国時代劇としてのリアリティを重視する向きには不評であった。それに対し、今回は夢の中で兼続の不安を演出するために使われており、現実世界とは区別されるため、上手い使い方である。

スポットライトも母の霊と語る場面で使われたため、非現実性を出す演出として適している。但し、母の霊との会話の後で、お船(常盤貴子)が登場してもスポットライトの演出は続いた。ここは現実に引き戻されたという意味でスポットライトを止めて背景を映しても良かったのではないかと考える。一方で、お船は今後の兼続にとって母に代わる存在と位置付けるならば、スポットライトの演出のままで、お船を登場させる意味がある。

兼続の決意には惚れ惚れするが、お船の「そなたを婿にしていたのにのう」との告白は早過ぎる。これでは祝言をあげたばかりの夫・直江信綱(山下真司)の立場がない。お船に未だ初恋中の上杉景勝(北村一輝)の立場もない。折角、信綱と対面した景勝が複雑な表情を見せる面白いシーンを挿入しているのに、お船と兼続が結ばれることが見え見えのフラグを出してしまうのはもったいない。まだまだ恋の鞘当てで盛り上げて欲しい気持ちがある。

今回は兼続の成長過程を中心としたため、歴史的事件の説明は最小限にとどまった。主人公は上杉謙信でも上杉家でもなく、兼続であることを再確認させる放送であった。戦場での経験を重ねることで武将として成長するのではなく、蟄居を命じられて寺に篭ることで人間的な成長をするという発想は近代的で興味深い。

今回の内面的な成長によって、次回からは泣き虫・与六ではなく歴史的人物として知っている智将・兼続が登場しそうである。人間として大きくなった今後の兼続の活躍が楽しみである。

また、弟の与七(小泉孝太郎)も母の見舞いに遅れた兼続を責めるなど存在感を増した。理知的な兄と直情的な弟という組み合わせは1991年放送の大河ドラマ『太平記』の足利尊氏・直義兄弟を髣髴とさせる。協力し合いながらも最後には離反するという展開も類似する。兄弟の絆や愛憎についても注目していきたい。

春ポテトチップス「春しお」「わさびしょうゆ」

大手製菓メーカー・カルビーは「四季ポテト」の春の味として、「四季ポテト ふんわり春しお味」「四季ポテト わさびしょうゆ味」を2009年2月9日に期間限定で発売した。

四季ポテトは季節の情緒と味を前面に出した期間限定のポテトチップスのシリーズ商品である。パッケージも季節感溢れるデザインとなっており、四季の趣を味わえる。淡い色使いになっており、原色を多用する通常商品に見慣れた目には新鮮である。

カルビーのポテトチップスの袋にはジャガイモのキャラクターが描かれている。通常商品では「ポテト坊や」と呼ばれる楕円型のジャガイモで、これは「POTATO」と書かれたタスキをかけている。これに対して、四季ポテトでは「ポテ」という丸型のジャガイモのキャラクターになっている。
「ポテト坊や」よりも「ポテ」の方が子どもっぽい。ニュースリリースによると、四季ポテトは「季節に敏感で、いろいろな味を楽しみたい30〜40代の主婦」をターゲットとする。幼い「ポテ」の方が母性本能をくすぐり、主婦受けしやすいと思われる。

「ふんわり春しお味」は黄色を基調とし、菜の花を描いたパッケージである。コピーは「菜の花をブレンドした、ふんわりやさしいしお味」である。塩味の一種類というよりも「春しお」と表現するほかない独特の味付けになっている。強いて近いものをあげるならばフレンチドレッシング系となる。チップスは菜の花のように、ほんのりと黄色がかっており、興趣をそそる。

「わさびしょうゆ味」のパッケージは緑色を基調とし、わさびの白い花を描く。コピーは「ツンとくるわさびの風味にしょうゆの味わい」である。オリジナリティの高い「春しお」に比べ、わさび醤油は王道である。そこには予測できる美味しさがある。わさびが程よい刺激で、大人向けのポテトチップスに仕上がった。
2009年は全国各地で例年より早い2月13日に春一番が吹いた。まだまだ寒いが、ポテトチップスで一足先に春を楽しむことも風流である。

『株―デイトレード常勝のルール』二階堂重人著

豊富なノウハウで、専業トレーダーの成功をサポート

 本書はデイトレードのテクニックを向上させ、専業トレーダーとして成功するためのルール作りの手助けをする書籍である。

 本書が出版された2008年2月の後にリーマン・ショックが直撃し、証券市場は一層厳しい環境に置かれている。しかし、むしろ現在のような状況こそ本書で紹介されたデイトレードの意義がある。購入した株をその日のうちに売るデイトレードは株式保有リスクを回避できるためである(15ページ)。

 とりわけ日本市場はニューヨーク株式市場の下落と連動して翌朝の価格が下落する傾向が強い。米国以上に売られることさえある。その日のうちに利益または損失を確定するデイトレードならば翌朝下落してしまうのではないかという心配は無縁である。

 著者が強く主張していることはトレーディングのルールを確立すべきということである。気分ではなく、ルールにのっとって取引すべきと主張する。株式取引はもうかることもあれば損をすることもある。損失の発生は不可避である。

 だから重要なことは損失を小さくすることである。たった1回の損失でも、その損失が既存の利益を上回ってしまったならばトータルは赤字になってしまう。行き当たりばったりの取引では損失をズルズルと拡大させてしまう危険がある。故にルールを確立し、それに従って取引することが重要になる。

 本書では取引ルールにできるような売買のタイミングを数多く紹介する。見開き2ページの左側に説明文、右側にチャートなどの図解を配し、分かりやすく説明されている。ただし、紹介量が多いために1回通読した程度では消化不良になる。本書の趣旨は自分のルールを押し付けることではなく、各自に適したルールを確立させることである。すべてを理解しようとするのではなく、適したものを取捨選択することが本書の読み方として妥当である。

 本書で特に参考になったのは指値注文についての記述である。事前に下値を指値して買い注文をしておくことの当否を論じている(176ページ)。株式取引では指値注文を出しておけば、株価をチェックしていなくても指値で指定した価格になった時に自動的に約定してくれる。そのため、事前に株価がある程度まで下がり、後は反転上昇することを見越して、下値に指値注文を出しておくことは便利であり、無精な記者も多用している。

 しかし、それを本書は推奨できないとする。場合によっては下値を勢いよく割ってしまうためである。その場合、すぐにロスカットできなければ大きな損失になる。特にサブプライム問題に端を発し、リーマン・ショックが直撃した昨今の証券市場は乱高下が激しい。通常予想される値動きを大きく逸脱して下がってしまうことも多い。

 記者も下値と思って指値したものの、株価が指値を勢いよく割ってしまい、失敗したことは1度や2度ではない。そのため、本書の記述は勉強になった。この個所も含め、勝つことよりも大きく負けないように投資することがコンスタンスに利益を上げる秘訣(ひけつ)であると感じられた。

『株デイトレード常勝のルール』二階堂重人著
すばる舎
2008年2月29日発行
1575円(税込み)
192ページ

【こだわり】とろ〜りクリームonプリン

クリームとプリン、カラメルのハーモニー

 「とろ〜りクリームonプリン」はグリコ乳業のプリンである。グリコ乳業は大手製菓メーカー・江崎グリコのグループ企業である。コクのあるトロっとしたクリームを特色とする「とろ〜りクリーム」シリーズにはプリンのほかにカフェゼリーと杏仁(あんにん)豆腐がある。

 「とろ〜りクリームonプリン」はクリームとプリン、カラメルの3種類の味のハーモニーを楽しめる。サイズは80gの3個パックから210gのビッグサイズまで複数種類が販売されている。プリンにカラメルという組み合わせは、世の中のプリンに共通するが、そこにクリームが加わることでリッチな気分になれる。

 クリームとプリン、カラメルのすべてが濃厚である。特にプリンは卵感アップのうたい文句に違わず、粘性がある。あくまで「とろ〜りクリーム」が上に乗っかったプリンであって、とろけるプリンではない。濃厚でありながら、それでいて甘さは控えめなため、最後まで飽きずに食べられる。スッキリしていて男性にも受け入れられるプリンである。

 テレビ朝日系列で放送された伝説的な深夜番組『トゥナイト2』でリポーターとして活躍した安めぐみをCMキャラクターにしている点にも、成人男性をターゲットとしていることがうかがえる。

 カップ物のデザートの双璧(そうへき)をなすのがヨーグルトとプリンである。記者はスーパーなどでヨーグルトとプリンのどちらを買おうか迷うことも多い。記者にとってプリンとヨーグルトは代替となる選択肢なのだが、両者の位置付けの相違には戸惑っている。

 プリンが洋生菓子であるのに対し、ヨーグルトは乳製品である。乳製品というだけでヨーグルトはプリンに比べて健康に有益な食品というイメージを醸し出している。プリンは牛乳と卵から作るもので、卵も栄養価の高い食品であり、プリンも健康面をセールスポイントにしても良いのではないかと考えている。

 実際のところ、乳製品というだけで無条件に健康的という信仰があるように思われる。記者の世代では学校給食の飲み物は牛乳であり、たまにコーヒー牛乳であった。牛乳をはじめとする乳製品のパッケージには放牧されている乳牛が描かれることが多く、いかにも自然の中で作られたような印象を受ける。

 その幻想を打ち砕いたのは雪印集団食中毒事件であった。この事件では企業の隠ぺい体質が批判されたが、その後の相次ぐ企業不祥事の発覚によって雪印だけの問題でないことが分かった。記者も新築マンション購入トラブルでは、売り主の東急不動産と販売代理の東急リバブルの不誠実な対応に苦汁をなめさせられた(参照「東急不動産の遅過ぎたおわび」)。

 企業の隠ぺい体質とは別に雪印集団食中毒事件で衝撃であったことは、牧場で作られたというイメージのある乳製品が工場の中で工業製品のように生産されていたことである。雪印集団食中毒事件は工場が不衛生であるなどの問題が原因であったが、たとえ衛生的に生産されているとしても、工場生産の実態を垣間(かいま)見ることによって乳製品を自然の恵みというような過度の幻想を抱くことはなくなった。

 記者はヨーグルトもプリンも好きであるが、健康に良いという押し付けがましさのあるヨーグルトに比べると、プリンを応援したくなる。その中でも「とろ〜りクリームonプリン」は小腹が空いた時の腹の足しにもなる逸品である。

【アニメ】クレヨンしんちゃんの二面性

テレビアニメ「クレヨンしんちゃん」(テレビ朝日)は2009年2月20日に「師匠のさがし物だゾ」「ラップでお掃除だゾ」の2本を放送した。このうち、「ラップでお掃除だゾ」は「クレヨンしんちゃん」(略:クレしん)らしさを体現していた。

「クレしん」は5歳の幼稚園児、野原しんのすけの生活を描く作品で、子ども向けアニメと位置付けられている。しかし、臼井儀人の原作漫画は青年誌で連載されており、子どもを対象としたものではなかった。実際、「しんのすけ」は幼稚園児ながら大人の女性が大好きで、すぐに尻を露出する癖があるなど変態的なキャラクターである。そのため、日本PTA全国協議会の「子供に見せたくない番組」の上位常連になっている。一方で映画「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」が文化庁の「日本のメディア芸術100選」に入るなど相反する評価もある。

この「クレしん」の二面性を「ラップでお掃除だゾ」も有している。「ラップでお掃除だゾ」はトイレを汚した「しんのすけ」に母親「みさえ」がトイレ掃除をさせる話である。番組では最初から最後までトイレ掃除が話題で、便器が映し出されている。夕食時の放送に相応しいアニメとは言い難い。

一方で親が子どもにトイレ掃除をさせるという教育的な内容になっている。相手は生意気な「しんのすけ」である。一筋縄ではトイレ掃除をやってくれない。「みさえ」は「しんのすけ」を上手くおだてて掃除させようとする。「みさえ」と「しんのすけ」のノリノリの掛け合いが面白い。

自分の家事負担を減らすことを目的として子どもにトイレ掃除をさせるという発想では「みさえ」の言動は非合理である。「しんのすけ」に掃除をする気にさせるために労力を費やしており、「しんのすけ」が掃除をしている間もラップをしながら見守っている。少ない労力でトイレ掃除をしたいならば自分でした方が早く終わる。

演技をしてまで「しんのすけ」にトイレ掃除をさせる「みさえ」の情熱は母親として立派である。グータラ専業主婦というイメージの強い「みさえ」だが、子育てへの労力を惜しまない点で育児放棄(ネグレクト)する母親とは対極の位置にある。ノリの良いラップから家族の仲の良さが感じられ、幸せな気分になれる内容であった。

昔も今も空気が読めない(KY)二代目たち

 安倍晋三、福田康夫、麻生太郎と3代続けてKY(空気が読めない)な首相が登場した。KYであることは第一義的には個人の資質の問題であるが、立て続けにKYな首相が輩出されると、日本の指導者層の質の問題と思えてくる。

 このような問題意識を抱いていたところ、興味深い記事を発見した。それは今から20年以上前のビジネス誌の記事である。創刊40周年を迎える日経ビジネスは「日経ビジネスが描いた日本経済の40年」と題して過去の記事をWebサイトに掲載している。

 その1つとして「【時代のリーダー】五島昇・日商会頭」との見出しが付けられた記事が2月17日に公開された。これは五島昇・東急電鉄社長(当時)に注目した日経ビジネス(日経BP社)の記事である(「「ドンになり切れないプリンス」ケンカ嫌いがケンカの連続 財界世代交代劇の主役に」日経ビジネス1987年5月11日号)。

 五島昇は東急グループの創業者・五島慶太の長男である。記事では2代目社長の五島が日本商工会議所会頭(日商会頭)として財界のトラブルメーカーとなっている様子を伝えている。一言でまとめれば五島はKYである。本命視されている人物を押しのけて政府の審議会の会長職を引き受けようとし、財界主流に不評の他社会長を徹底的にかばうなど、安倍・福田・麻生の歴代首相に匹敵するKYぶりを発揮している。

 事前の根回しも事後の説明もせずに思いつきで進めるならば周囲が反感を抱くのは当然である。本人は「こっちは解説抜き。舌足らずなんだ。それで色々と誤解を生じてね」と言い訳するが、自らの説明不足を棚に上げて相手の誤解を責めることはKYと批判される人に共通する論理構造である。五島がKYと呼ばれなかったのは、当時はKYという言葉が存在しなかったからに過ぎない。

 記事は「企業経営や政治に新しい時代を切り開いたリーダー」を振り返るというスタンスで紹介されており、あからさまに五島を批判するものではない。むしろ五島を財界の世代交代の主役とする好意的な視点でまとめている。しかし、読む人が読めば五島の問題点が分かるように指摘されている。

 記事では東急グループ内の五島のワンマン体制を天皇制になぞらえている。しかも、五島には諌めてくれる側近もブレーンもいないという。お友達はいても諫言者はいない裸の王様という点で初代KY首相の安倍氏に対する批判に通じる。

 KY首相が3代も続けば政治家の質の低下を憂いたくなる。しかし、KYな2代目御曹司は昔も存在した。昔が今と異なる点はKYという言葉が存在しなったために、KYと批判されなかったことである。その意味ではKYという言葉がある現代の方が幸福である。KYな人間の存在を嘆くのではなく、KYな人間を批判することが現代に生きる我々の使命である。

『街金王 池袋アンダーグラウンドの「光」と「闇」』の感想

 本書は池袋でヤミ金を営む著者が自らの半生を振り返った自伝的作品である。本書の見所は大きく2点ある。

 第1に、著者の波乱の半生である。捨て子、素封家の養子、覚せい剤漬け不良中学生、少年院、ヤクザの鉄砲玉、オウム真理教担当のTVリポーター、ヤミ金業者と「事実は小説より奇なり」を地でいく人生である。その特異な人生経験から著者の独特の正義感と人生哲学が形成されていく。

 第2にヤミ金の実態である。ヤミ金は非合法なビジネスであり、建前は存在自体が許されないものである。しかし、それは社会にヤミ金が存在しないことを意味しない。ヤミ金とヤミ金を求める人間の実態を直視しただけでも本書の内容は貴重である。加えて著者のヤミ金としての仕事ぶりには独特な人生哲学が反映されており、金貸しのあり方について考えさせられる内容になっている。

 第1の見所について、著者はアンダーグラウンドで生きている存在と自認するが、著者なりの熱い正義感を有しており、筋を通す人物である。著者は16歳の時に恋人を強姦したヤクザをアイスピックでメッタ刺しにし、少年院送りになる。この相手のヤクザが嫌らしい人物であった。

 著者が少年院を出所する日に少年院の入口で十数人の男達を引き連れて待ち構えていたのである(125ページ)。お礼参りに来たものと誰もが思う展開であるが、ヤクザは「お互い昔のことは水に流そうや」と発言し、あろうことか「うちの若い衆にならないか」と勧誘してきたのである。

 このような人物は本当に腹立たしい存在である。自分のしたことは棚に挙げ、被害者感情を斟酌する意思も能力も欠けている。単に度量が広い自分を演出して自己満足と自己陶酔に浸りたいだけである。

 私はある不動産会社から不利益事実(隣地建て替えなど)を説明されずにマンションを購入したため、裁判で売買代金を取り戻した経験がある(参照「マンション販売トラブルで「お詫び」 東急リバブル・東急不動産」)。

 裁判後に売買代金の返還を受け、不動産会社にマンションを明け渡した際、不動産会社の課長(当時)は私に「迷惑をかけた」と詫びた上で、驚くべきことに「ご縁があれば(当社を)宜しく」と発言したのである。この発言を聞いて私は、本書の表現を借りるならば「いまだかつて感じたことのないほどの『怒り』に身を引き裂かれそうになった」(23ページ)。

 一般の消費者にとって不動産の購入は一生に一度あるかないかの経験である。一度失敗したからといって、簡単にやり直しができるものではない。散々苦しめられた業者から購入したいと考える筈がないが、それ以前に私が改めて物件を購入すると考えること自体が信じ難い。騙し売り被害者が新たに不動産を購入する気持ちになり、その能力があると考えたならば、あまりに被害者の痛みについて認識が足りない。

 著者もヤクザの勧誘は頭ごなしに拒否する。日本には加害者が態度を変えれば、被害者側も過去に拘泥しないことが期待(というよりも強制)される愚かしい傾向がある。これは日本人の民族的性向として娯楽小説で揶揄されるほどである。「日本人は加害者でありながら被害者に向かって「すんだことをいつまでもガタガタいうな」と言ってのけることができる民族なのだ」(田中芳樹『創竜伝4四兄弟脱出行』講談社、1994年、138ページ)。

 この日本人の醜い性質を本書のヤクザは見事に体現している。著者は「あなたがやったことについても、きちんとした言葉をいただきたい」とヤクザに迫る。これに対して、ヤクザは「俺がやったことをいまさらなんだっていうんだ?俺もお前のことは許す、だからお互いに水に流そうって話をしたばかりじゃないか」と無反省にも逆ギレする(133ページ)。しかし、著者は「俺の女が受けた傷は一生癒えることがない」と正論を譲らず、自己の主張を貫徹させた。日本社会の下らない「常識」に惑わされず、自己のケジメを貫く著者には清々しさを覚える。この一本筋の通った著者の正義感は、ヤミ金業者としても発揮され続けることになる。

 本書の第2の見所であるヤミ金の実態について、著者の根底には、人間は約束を守らなければならず、借りた金は返すべきという思想がある。ところが、債務者の中には返済に窮すると弁護士に委任し、「弁護士に任せてあるから」と言って連絡を絶つ者も少なくない。法律的には弁護士に委任した以上、弁護士を通すことが正しいとしても、人間的には恥ずかしくないのか、と著者は疑問を呈する(281ページ)。

 私は、違法な高利でも債務者が了承して借りたのだから返済することが道徳的義務という自己責任論的発想には与しない。高利貸しは金が必要という借り手の弱みに付け込むことによって成り立つ商売である。自由な意思決定が存在しないため、いわゆる自己責任論は当てはまらない。この点から一般論的なヤミ金の論理には、あまり同意できなかった。

 反対に具体的な批判はリアリティがあって共感できる内容が多かった。特に悪徳弁護士への糾弾は印象に残る。本書ではマスメディアで正義の味方面して債務者救済を叫んでいるA弁護士の悪徳ぶりを詳述する(275ページ)。A弁護士は着手金を払う金もない多重債務者に「ヤミ金から借りてでも用意しなさい」と言っているという。ヤミ金は違法金融業者なので返済する義務はないという理屈である。つまり、踏み倒すことを前提でヤミ金から金を借りさせている。

 元々、私は債務整理を専門とする弁護士には好印象を抱いていない。弁護士にとって金融業者に対する過払い請求は常勝が期待できる分野であり、他の事件と比べると楽な仕事である。それ故に多くの法律事務所が債務整理を手がけるようになったが、それが弁護士のレベルを落としているという社会的なデメリットもあるのではないかと考える。

 著者が「唾棄すべき存在」と扱き下ろすA弁護士は、それらの定型的な仕事しかできない債務整理専門弁護士とは異なり、隠された裏の顔があると告発する。A弁護士は過去に整理屋の真似事をし、広域暴力団にケツ持ちをさせていたという(277ページ)。私はかつての経験から債務整理を中心とする法律事務所に胡散臭さを感じたことがあるため、著者の怒りには共感できるし、金融業者は悪で債務整理に携わる弁護士が正義と単純化することには躊躇する。

 著者がA弁護士を激しく糾弾する背景にも、自己の商売を邪魔されたことへの腹いせ以上の義憤があることは理解できる。著者も自認するとおり、ヤミ金業者は「世間的には間違いなく“悪”の存在」である(334ページ)。多重債務が大きな社会問題となっている現在、ヤミ金側の論理を取り上げること自体が憚られる雰囲気になっている。しかし、ヤミ金が悪であるとしても、その主張を取り上げる価値がないことを意味しない。本書はマスメディアが垂れ流す価値判断では得られない貴重な視点を提供する一冊である。

【アニメ】ドラえもん、山おく村での団らんとドタバタ喜劇

テレビアニメ「ドラえもん」(テレビ朝日系列)は2009年2月20日に「山おく村の怪事件」を放送した。「ドラえもん」は通常1回の放送で2話放送される。しかし、今回はアニメ30周年を記念したスペシャル企画「あなたの心に残るおはなし大募集」の途中経過発表などが行われたため、放送されたストーリーは、この1話だけであった。1話しか放送しない分、クオリティの高い作品に仕上がっている。

近所で行われたビル建築工事の騒音と振動で、野比家の生活の平穏が妨げられたことが話の発端である。(隣地建て替えという不利益事実を説明されずに新築マンションを購入した記者にとって身につまされる話である。)

のび太とドラミはパパとママを静かな場所でゆっくりと休ませるために廃村「山おく村」に招待する。大自然の中でくつろぐ野比一家だが、実は遭難していた登山者・金原とニアミスしていた。救助を求める金原と、それに気付かない野比一家の対比が笑わせる。過疎化による廃村という社会問題を背景としながら、野比家の一家団らんに癒され、遭難者の無自覚な救助というドタバタ喜劇で笑える盛りだくさんな内容になっている。

てんとう虫コミックス『ドラえもん第7巻』(小学館、1975年)収録の同名作品が原作であるが、アニメではストーリーが一層練りこまれた。のび太とドラミは原作ではラーメンを食べられてしまったことを不審に思う以外に金原の存在に全く気付かない。これに対し、アニメでは、のび太やドラミと金原は文字通りニアミスする。

しかし、お互いに誤解から逃げ惑ってしまい、遭難者の救助にならない。ドラミが包丁を研ぐシーンを挿入するなど細かいところにも気を配り、怪奇事件として盛り上げた。原作では登場しなかったドラえもんも誤解の増幅に一役買っている。

原作でもアニメでも空腹な金原はインスタントラーメンを見つけて、麺だけでバリバリと食べてしまう。冷静に考えると、いくら空腹でも麺だけを食べられるものなのか疑問である。特に疲れている遭難者が麺をバリバリ食べることは現実的ではない。

しかし、原作では金原は極限状態ならば十分ありうると思わせるほどに美味しそうに食べていた。この非現実的な内容でも説得力を持たせる表現力は藤子・F・不二雄の画力のなせる技である。一方で、アニメではサラッとした描写に済ませたが、これも余計な突っ込みを生まないために穏当である。

優れた原作のリメイクに賛否両論が生じることは必然的であるが、「山おく村の怪事件」は原作の味を活かしたリメイクになっていて好感を持てる。

【アニメ】名探偵コナン、推理力で大人を誘導

 テレビアニメ「名探偵コナン」(日本テレビ)は2009年2月23日に第526話「真犯人からの届け物」を放送した。黒の組織によって体を小さくされた高校生探偵が江戸川コナンを名乗り、難事件を解決していく推理物である。

 青山剛昌の同名漫画が原作であるが、アニメでは「真実はいつも一つ」「見た目は子供、頭脳は大人」など作品世界にマッチした名文句を生み出し、作品そのものの人気を広げることに貢献している。

 今回は1話で完結する事件である。喫茶ポアロのウェイトレス・榎本梓がキーパーソンである。証券会社勤務の鳥平貴文が付近の自宅で殺害され、警察は梓の兄・杉人を容疑者と決め付けていた。しかし、コナンは真犯人を見破っていた。

 名探偵コナンが他の推理作品と大きく異なる点は主人公のコナンが名探偵と考えられていないことである。通常の推理作品では主人公は周囲から推理力を認められた人物であり、その言動は周囲の注目の対象である。ところが、コナンは一部の人達を除いて頭の回転の速い男の子という程度にしか思われていない。コナンとしても黒の組織に自分の存在を知られてはならないため、目立つことができないという事情がある。
 そのため、腕時計に仕込んだ麻酔銃と蝶ネクタイの変声機を使って毛利小五郎になりすまして、「眠りの小五郎」の推理ショーを行うことが定番である。しかし、小五郎を麻酔銃で眠らせるチャンスや余裕がない場合は、コナンが子どもの思いつき的な言動をして周囲の大人を誘導する。

 そのコナンによる誘導が今回の大きな見所である。例えばコナンは炭酸飲料を自分の服にかけるという体を張った行動で、遺留品の返り血が付着したワイシャツの不自然さを気付かせる。コナンが自分の推理を明確に説明するのではなく、仄めかしにとどめるのは、あくまでも子どもとして演じなければならないという設定のためである。
 この設定は「名探偵コナン」を推理物として優れたものにしている。推理物では真相が明らかになるのは最後でなければならない。だから「金田一少年の事件簿」のように最後の段階で「謎はすべて解けた」とするのも推理物の一つの構成である。

 一方で、優秀な探偵ならば、早い段階で事件の真相を把握していてもおかしくない。実際、「シャーロック・ホームズ」は、その要素が強い。ホームズは早い段階で真相を解明しているが、読者には真相が最後まで明かされない。これは物語がワトソンの視点で語られているためである。ワトソンが質問しても、ホームズは断片的にしかヒントを提供せず、はぐらかしてしまう。
 この点はコナンも似ている。子どもであるために、いち早く真相に気付いても、自分の推理を披露できない。そのため、周りの大人達を部分的に誘導することしかできない。これによって、視聴者も中々真相にたどり着けず、最後まで引っ張られることになる。子どもが探偵という設定は物語としての面白さだけでなく、推理物としても優れた枠組みになっている。

ステッカーでハッタリ防犯

手軽で安価にできるセキュリティ対策

 防犯対策には終わりがない。コストや不便さとのトレードオフになる。俳優のブラッド・ピットはヘルメットとサングラスで顔が隠れていたために自宅のセキュリティーシステムに阻まれて帰宅できなかったというニュースもあった。

  わが家ではいろいろな防犯対策をしているが、そのひとつに防犯ステッカーがある。安価で誰にでも可能な防犯対策として「防犯装置作動中」と書かれたステッカーを張ることである。家の扉をはじめ、防犯効果を高めたい場所や死角になる場所にステッカーを張り付ける。防犯機器と合わることで効果は倍増するが、実際に防犯装置を作動させているか否かは関係ない。ハッタリであるとしても、ステッカーを張るだけで侵入者に警戒心を与え、空き巣を遠ざける。

 ステッカー自体は100円程度で販売されているものである。オンラインショップでも販売されている。普通郵便ならば送料も大してかからないために、記者は楽天市場の貯まったポイントで購入した。手軽にできる防犯対策の第一歩である。

 なお、記者は東急不動産(販売代理:東急リバブル)から不利益事実(隣地建て替えなど)を説明されずに新築マンションを購入したため、消費者契約法に基づき売買契約を取り消し、裁判で売買代金を取り戻した(参照「東急不動産の遅過ぎたお詫び」)。

 記者は裁判中にマンション内の各住戸に怪文書をばらまかれるなど不審な事件に遭ったために防犯には人一倍気をつけている。

お守り代わりに警備会社のエコバック

環境保護と安全の一石二鳥

 わが家ではいろいろな防犯対策をしているが、そのひとつとして警備会社名の入ったエコバックを利用している。記者が利用しているエコバックは警備会社最大手のセコムのものである。

 黒のバックに白地でSECOMのロゴが大書きされ、「暮らしの中にエコとセコム。」とのコピーが書かれている。その上に四つ葉のクローバーが描かれている。このエコバックには、ただの袋ではなく、マジックテープでとめるところも付いている優れもので、そこには「セコムホームセキュリティ」の文字とURLが記載されている。

 記者が買い物でよく利用するイトーヨーカドー木場店はレジ袋削減施策として「エコライフしましょ。」と書かれたスタンプカードを発行している。手持ちの袋を用意した客にはアザラシが地球を抱えている図柄のスタンプを押してくれる。スタンプが20個貯まると100円引きになる。このため、記者はマイバック派である。

 記者は無駄に買いだめするよりも消費できる量しか買わない傾向があるため、頻繁に買い物をすることが多い。また、オーマイライフの原稿料が商品券であり、商品券を有効に使うために500円や1000円を少し越える程度の買い物をしている。必然的に買い物回数は多くなり、スタンプを20個ためることは、それほど気の遠い話ではない。

 マイバックで買い物をする記者であるが、昨今は引ったくりなど歩行者が犯罪に巻き込まれることも少なくない。この点、警備会社名が入ったエコバックを持っていれば、お守り代わりの効果が少しはあるかと考えている。環境保護にも貢献し、安全性も高まった気分になれるエコバックとして重宝している。

 記者は新築マンション購入トラブルで売主の東急不動産と裁判になったが(参照「東急不動産の遅過ぎたお詫び」)、訴訟中にマンションに怪文書をまかれるなど不審事件に遭った経験があり、防犯への関心が高い。

犬の鳴き声の防犯ブザー

Two Dogs Lemon Brewのお洒落なアイテム

 記者が利用している防犯グッズの一つとして、Two Dogsの防犯ブザーを紹介する。

 Two Dogsの防犯ブザーは黄色いプラスチック製のブザーで、レモンの形をしている。表面には上段にTWO DOGSと書かれ、中央には二匹のブルドッグが正面から描かれる。下段は両端にレモンの絵があり、その間にLEMON BREWと書かれている。

 実はTwo Dogsは酒のブランドで、Lemon Brewが酒の種類である。Two DogsはオーストラリアのDuncan MacGillivrayが作ったブランドで、Lemon Brewは彼が開発したレモン果実酒とでも呼ぶべき新種のアルコール飲料である。

 単にアルコールにレモン果汁やレモンフレーバーを添加した酒と異なり、レモン果汁そのものを発酵させた飲料である。日本では2006年にキリンビールがTwo DogsのブランドとLemon Brewの製法を取得して販売した。Two Dogsの防犯ブザーは酒のラベルに描かれている絵柄を使っており、防犯ブザーらしからぬデザインがお洒落である。

 この防犯ブザーは機能面も有効である。一回ブザーを押しただけで、「ワン、ワンワン、ワン、ワンワン」としばらく犬の吼え声を出してくれる。防犯ブザーを押さなければならない事態に遭遇した場合、ブザーを押し続ける余裕がない可能性が高い。一度押せば、しばらく吼え続けてくれる防犯ブザーは実用的である。

 記者は新築マンションの契約取消しを巡って売主の東急不動産と裁判トラブルになったが(参照「東急不動産の遅過ぎたお詫び」)、訴訟中にマンションに怪文書を撒かれるなど不審事件に遭った経験があり、防犯への関心が高い。

【テレビ評】「天地人」第8回、「謙信の遺言」義の気高さ

戦国武将・直江兼続の生涯を描くNHK大河ドラマ「天地人」第8回「謙信の遺言」が2009年2月22日に放送された。上杉謙信(阿部寛)の義の精神の気高さが感じられた回であった。

この回では大きな歴史的事件として上杉軍が柴田勝家(菅田俊)率いる織田軍を破った手取川の合戦がある。上杉謙信の晴れ舞台であるが、ドラマでは兼続(妻夫木聡)は蟄居中で、合戦の模様は事後的に初音(長澤まさみ)の口から説明された形になった。そのため、迫力のある合戦シーンを観られなかったという点は物足りない。兼続の乗馬シーンすら馬は映らず、音だけである。しかも弟の与七(小泉孝太郎)との二人乗りである。スタジオ内での撮影ばかりという巣ごもり時代劇は、ある意味、不況時代に相応しい。

しかし、「天地人」が低予算で制作されているとしても、質の低下を意味しない。アメリカの投資家・ウォーレン・バフェットは以下のように述べている。「面白いことに、優れた番組というのは、粗末な番組とさほど変わらない予算でできるんですよ」(ジャネット・ロウ著、平野誠一訳『新版バフェットの投資原則』ダイヤモンド社、2008年、65頁)。

制作側としては派手な合戦を撮るために金にあかせてセットやエキストラを用意することよりも、伝えたいメッセージがあるものと考える。それは人の熱い思いである。前年の大河ドラマ「篤姫」が時代劇という設定のホームドラマならば、「天地人」は熱い青春ドラマである。これまでのところ、「天地人」は視聴者の胸を熱くさせることに成功している。

謙信は天下を取るよりも大切なこととして、「利を得るより気高いものがあることを世に知らしめる」と語る。謙信の気高き精神は現代を生きる記者の胸にも強く響いた。

そして謙信は兼続に、兼続こそ自分の唯一の弟子であると告げる。史実は異なるかもしれないが、物語上は兼続が謙信の美学を自分のものとしていったと納得できる流れになっている。戦で人を斬れなかった軟弱者の兼続が、迷いながらも天下の不義を斬るような活躍を期待したい。

『だましの技術!』の感想

 本書は詐欺や悪徳商法の実態を暴き続けたルポライター・多田文明氏とプロのマジシャン・ゆうきとも氏が「だまし」をテーマに行った対談である。私は新築マンション購入でだまされた経験があるため、興味深く読み進めることができた(参照「マンション販売トラブルで「お詫び」 東急リバブル・東急不動産」)。

 本書の特色は対談の組み合わせの異色さにある。多田氏には「マジシャンのだましと悪徳商法のだましは、娯楽か詐欺かの違いこそあれ、人の感情を揺さぶり、意のままに操るという点において、全く同質なのだ」(まえがき)という問題意識がある。それを出発点に、客をだまして儲ける悪徳商法(負のだまし)の被害経験があるルポライターと客をだまして楽しませるマジシャン(正のだまし)が「だまし」という共通項から「だまし」の技術や、だまされる側の心理を明らかにする。

 悪徳商法の告発は「悪徳商法は許せない」という正義感があって可能になる。正義感に基づく悪徳業者への怒りは告発の原動力であり、不可欠な要素である。しかし、道徳性を前面に出しすぎると、悪徳業者の騙しの手口を冷静に分析する上では有害なことがある。
 実際、悪徳商法の責任を追及した裁判で被害者が敗訴してしまうことがある。法の不備や裁判官の保守性が原因であることが多いとしても、「悪質である、不当である」という価値判断が先走りし過ぎて法に則した形で違法性を主張立証できたのかという点を被害者としても総括する余地がある。

 本書では、だますことで客に喜ばれるマジシャンを対談相手とすることで、だましの手口やだまされる側の心理について善悪以前の問題として冷静に分析することに成功している。「だまし」という点で詐欺師と同列に扱われることはマジシャンにとって決して面白い話ではない。書籍『人はなぜ簡単に騙されるのか』の著者である、ゆうき氏だから引き受けられた対談である。

 一方で悪徳商法を告発する側にも本書の企画には問題がある。詐欺師の手口をマジシャンの技術と同列に扱うことは、詐欺師の評価を高めることになりかねず、悪徳商法の被害者にとっては感情的に受け入れがたいものがある。被害者としては「詐欺師=悪人」として詐欺師の全人格を否定しなければ気が済まないという面があることは事実である。それくらいの怒りがなければ悪徳商法に立ち向かい、被害を回復させることは難しいことも現実である。

 本書は内容的に手品に関心がある人よりも悪徳商法に問題意識を抱いている人をターゲットにしているが、憎むべき詐欺師をマジシャンに匹敵する技量の持ち主と持ち上げるならば、主要読者層から反発を受ける危険性がある。この点は身をもって悪徳商法を体験し、精力的に告発を続ける多田氏だから容認できるという面がある。

 単に面白おかしくマジックと詐欺のだましの技術を共通化した内容であったら、読後感は悪かったと思われる。その意味で本書はユニークなだけでなく、ルポライターとマジシャンの双方にとって、これまでの声望を損なうリスクもあった挑戦的な企画でもある。困難な企画を成功させた本書は、だましのメカニズムを知りたい人にとって参考になる1冊である。

塩分控えめなウインナー

日本ハムは2009年2月18日に「新鮮生活グリーンラベルあらびきウインナー」を発売した。豚肉のウインナー・ソーセージの新商品になる。「新鮮生活グリーンラベル」シリーズは塩分を控えめにした新ブランドである。

「新鮮生活グリーンラベルあらびきウインナー」は既存商品の「森の薫り あらびきウインナー」に比べて塩分を4割カットした。加えて緑茶成分を配合し、緑茶カテキンや緑茶の旨み成分である「テアニン」で旨みを引き出したという。「グリーンラベル」の名前のとおり、緑色のパッケージが目印である。

日本ハムでは既に健康志向の商品を打ち出している。2008年8月20日には「新鮮生活ZEROあらびきウインナー」を発売した。これは水あめ・砂糖などを使用しない「糖質0シリーズ」の一商品である。酒類・飲料業界での糖質や糖類をカットした商品にならったものである。こちらは青色のパッケージが目印である。
両者を食べ比べてみると、不思議と糖質をカットしたZEROの方が甘みを感じる。糖質はウインナー作りにおいて味のバランスや風味付け等に必要とされるが、ZEROは試作を繰り返して独自の製法により、糖質なしでも味わいを達成したものである。糖質をカットしたからといって甘みがないわけではなく、糖質0商品であっても甘みが出るように工夫されている。

それに比べると、グリーンラベルは甘みが感じられない。スイカに塩をかけるなど、甘さを引き立たせるために塩が使われることがある。ウインナーでも塩分が甘さを引き出していたと減塩商品によって実感できた。甘さがない分、グリーンラベルは肉の素材の味が強烈である。そのため、ウインナーそのものの味を楽しめる。また、ウインナーは食べ過ぎてしまうものだが、この商品は素材の味が強烈なために、すぐに満腹感を得られる。まさに健康志向の商品である。

ウインナーは、そのままでも食べられるために忙しい時に重宝するが、料理に使っても美味しい。美味しい食べ方として皮を傷つけずに、じっくりと火を通していく方法がある。うまく焼けると、固めの皮を噛むと火傷しそうなほどの肉汁がジュワッと口の中に広がる。シチューの肉や、たこ焼きのタコの代わりにウインナーを入れて食べるのも意外と合っている。塩気による味付けを抑制して素材の旨さを前面に出したグリーンラベルは料理の素材にも適している。

【アニメ】ヤッターマン、悪役の意外な副業

テレビアニメ「ヤッターマン」(日本テレビ)は2009年2月23日に第32話「実録!?ドロンボー密着24時だコロン!」を放送した。「ヤッターマン」は1970年代に放送された「タイムボカンシリーズ ヤッターマン」のリメイク作品である。正義の味方・ヤッターマンが泥棒のドロンボー一味と戦うヒーロー物である。

ヤッターマンの特徴は悪の組織に相当するドロンボー一味の資金集めにある。悪の組織はヒーローが倒すべき相手であるため、強大な勢力であると設定されることが多い。一方で悪の組織が強大であることを当然の前提として、どのようにして強大な勢力に成長したかについては描かれないことが多い。
これに対し、「ヤッターマン」ではドロンボー一味の資金源が悪徳商法であると明確に描かれている。これは悪の組織としてリアリティのある設定である。東急不動産(販売代理:東急リバブル)から不利益事実を説明されずに問題物件をだまし売りされた経験のある記者にとって、悪徳商法を行う人間が倒すべき悪の組織という設定は大いに共感できる。

ドロンボー一味は悪徳商法で荒稼ぎした資金を元手に巨大メカを開発するが、最後はヤッターマンのビックリドッキリメカに敗北し、「おしおきタイム」になる。この黄金パターンを飽きもせずに繰り返すことが「ヤッターマン」の魅力であった。
一方、リメイク版ではマンネリ打破の試みが散見される。今回の放送も新境地開拓の意気込みが強く感じられた内容であった。今回の話においてヤッターマンやドロンボー一味は『ヒーロー密着24時』の密着取材を受けることになる。プライベートまでも含めた密着取材とすることで、いつものヒーローや悪役とは異なる側面を垣間見せてくれた。

アイちゃんのかわいらしい部屋には和まされた。ガンちゃんとのツーショット写真を必死に見られまいとするアイちゃんもいじらしかった。また、ドロンボー一味のボヤッキーとトンズラーが一生懸命に副業している姿には感動的でさえある。副業の方が天職ではないかと感じてしまったほどである。
但し、芸能プロダクションのマネージャーとして売れない歌手の売込みをするトンズラーの副業は前時代的で現代の子どもには理解し難い。むしろ大人をターゲットとした内容である。このような要素を入れることで親子ともども楽しめる番組となっている。過去の設定を活かしつつ、新しい試みにも挑戦する新生「ヤッターマン」に今後も期待したい。

平等主義教育は画期的

人間らしく優しい社会への期待

 教育機関による平等主義教育は高く評価されるべき、画期的な施策である。先進的な小中学校では教育的な配慮から、差別にならないような工夫を試みている。例えば運動会の徒競走で順位を付けず、手をつなぎみんなでゴールする形にする。また、学級委員長を設けず、保健委員や美化委員といった横並びの役職にしている。この種の試みには、社会の側から根強いバッシングがなされているが、平等主義教育は不当に貶(おとし)められていると考える。

 平等主義教育擁護派としても、徒競走で1位になることや委員長になることが悪いことととらえているわけではない。1位になれなかった子どもや、委員長になれなかった子どもが傷つき、劣等感を持つことを避けるための施策である。学校が傷つく子どもたちの気持ちに配慮するようになっただけでも大きな前進である。

 記者の子ども時代は上記のような平等主義教育は存在しなかった。想像することさえできなかった。基本的に学校の教師になる人は学校教育において勉強や運動ができた人に属する。教職資格は大学卒業が前提であり、昔よりも大学進学率が向上しているとはいえ、できる側にいなければ教師になれない。そのような教師達が勉強や運動のできない子どもに配慮することなど記者の時代には考えられなかった。

 できない子どもへの配慮について教師が考えるようになったことは人間性の豊かな教師が増えたことを意味する。

 記者は東急不動産(販売代理:東急リバブル)から不利益事実を隠して新築マンションをだまし売りされた経験がある(参照「東急不動産の遅過ぎたお詫び」)。

 最終的に裁判によって売買代金を取り戻したが、一生に一度あるかないかの買い物で問題物件をだまし売りされた被害者としてのつらさ、悲しみ、絶望感は経験のない人には共有困難なものである。そのことを理解しているため、できない子どもが傷つかないようにするという問題意識を教師たちが抱いたこと自体に感銘を受ける。

 一方で平等主義教育への先進的な取り組みに対して学校外からの批判が強いことも理解できる。いつでも大人は「最近の若いものは……」と言いたがる。自分たちの子ども時代よりも現代の子どもたちが優しい扱いをされることは感覚的に許せない。

 平等主義教育のデメリットとしては、徒競走で1位になりうる子や学級委員になりうる子が能力を発揮する機会を奪われることが挙げられる。これは平等主義教育擁護派でも否定できない。しかし、平等主義教育の問題意識は1位になれなかった子どもや、委員長になれなかった子どもが傷つかないようにすることであった。能力のある子を伸ばすか、能力のない子を傷つけないかはトレードオフの関係である。

 平等主義教育の推進者は能力のない子への教育効果を価値判断として優先させている。平等主義教育を肯定するとしても、天才的な子どもが得意の分野で大人顔負けの成果を発揮することは否定しない。しかし、不得手な人も強制的に参加させられる義務教育の枠内で順序付けをすることは別問題である。

 焼け野原から経済大国にしてしまうような前ばかりを見て歩んできた日本社会において、能力のない子への教育的を優先させるという価値判断を教師たちが行ったことは非常に画期的である。このような教師たちが存在することは「人間を幸福にしない日本というシステム」とまで酷評された日本社会も、少しは人間らしく優しいものになると期待をもてる。

【こだわり】コイケヤ ポテトチップス コンソメ

フランス料理由来の豊かな味わい

 「コイケヤポテトチップス リッチコンソメ」は湖池屋(東京都板橋区)のコンソメ味のポテトチップスである。コンソメはポテトチップスにおいてメジャーな味付けの一つである。もともとのコンソメはフランス料理のスープである。肉や野菜を長時間煮込むことで、素材のうまみを最大限に引き出している。

 動物質と植物質が合わさった豊かな風味が魅力である。単なる塩味では物足りなくない人を中心に支持者が多い味付けである。

 実際、最大手のSNS「ミクシィ(mixi)」でポテトチップスのコミュニティを検索すると、最もメンバー数が多いのが「ポテトチップス断然コンソメ派!」(1959人)である(2009年2月11日確認)。2位の「ポテトチップス うすしお派」(1439人)に500人以上の差をつけている。これはコンソメ味への支持が多いことを示している。

 「リッチコンソメ」のコピーは「肉と香味野菜のおいしさがギュッとつまったコンソメ味です。コクのあるリッチな味わいのおいしさです」である。単なる「コンソメ」ではなく、「リッチコンソメ」とするところに豊かな味わいへの自信が見られる。パッケージの色も金色を基調としており、ほかの味付け以上に力の入れ具合が感じられる。

 競合のカルビー(東京都北区)ではコンソメ味を「コンソメパンチ」と称している。印象に残る商品名にするために、パッチが利いたコンソメとしたことが商品名の由来である。両者とも単なる「コンソメ」になっていない点が興味深い。それだけコンソメ味がポテチメーカーにとって重要な位置付けになっていることを示している。コンソメを制するものがポテチを制するのである。

 開封すると、コンソメの香りが広がっていく。製品パッケージに書かれた原材料名には「肉エキスパウダー(鶏、豚)」とあり、コンソメの肉には鶏と豚を使用している。同じリッチコンソメでもギザギザの入った厚切りシリーズ「リッチカット リッチコンソメ」がチキンを前面に出しているのとは微妙に異なる。

 リッチコンソメは肉のうまみに加え、野菜が圧縮されたうまみもある。カルビーのコンソメパンチに比べると、こちらの方が濃厚である。恐らくコイケヤだから味が「濃い」のだろう。お後がよろしいようで……。

【デザート】舌も心もうるおうピュレア

食品メーカーのフジッコは"うるおうデザート"『Pureaピュレア』シリーズを2009年3月1日に販売する。「うるおう杏仁豆腐」「うるおうマンゴープリン」「うるおうシトラスゼリー」「うるおうカシスゼリー」の4種類である。記者は杏仁豆腐とマンゴープリンを2月23日にイトーヨーカドー木場店でフライングゲットした。

ピュレアは、おいしく食べて、キレイになりたいという女性の声に応えるために開発されたカップデザートである。純粋を意味する「ピュア」と、希少を意味する「レア」の組み合わせが商品名の由来となっている。「食べてうるおう」「見てうるおう」「カラダうるおう」の3つを追求している。

先ず「見てうるおう」であるが、パッケージは杏仁豆腐が紅色、マンゴープリンが橙色と基調のカラーをもっている。色には光沢があり、ゴージャスな雰囲気である。「自分へのご褒美」に相応しい贅沢感を醸し出している。中身は杏仁豆腐が白一色、マンゴープリンが黄土色一色で見るからに濃厚そうなデザートである。

次に「食べてうるおう」であるが、見た目に違わず、濃厚な食感が楽しめる。この種のデザートは蓋の裏側に中身の一部がこびりついてしまうことが多いが、ピュレアにはあまり付いていなかった。それだけ凝縮しているからである。相対的には杏仁豆腐の方が緩くて柔らかく、まろやかである。これに対し、マンゴープリンはマンゴーそのものが凝固したかと感じさせるほど、マンゴーの味が強烈である。

最後の「カラダうるおう」であるが、美肌効果があるとして化粧品にも使用されるヒアルロン酸を配合する。ヒアルロン酸の経口摂取の効果については諸説ある。体内で分解されてしまうために全く意味がないとする見解もある。しかし、ピュレアには心理的には食べることで肌もうるおいそうなプルルンとした食感がある。美味しく食べた上に健康的な気持ちにもなれるデザートである。

オーソドックスなPBポテトチップス

セブンプレミアム「イーモんたべよ北海道ポテト」

「イーモんたべよ北海道ポテトコンソメ味」は株式会社セブン&アイ・ホールディングスのプライベートブランド(PB)「セブンプレミアム」のポテトチップスである。セブン&アイ・ホールディングスはイトーヨーカドーやヨークマートを傘下に持つ流通業の大手である。

セブン&アイはセブンプレミアムを原材料調達から商品開発、品質管理まで一貫した体制で、7つのこだわりを徹底追求した商品と位置付ける。

7つのこだわりとは、

(1)安全・安心
(2)おいしい
(3)地域の味
(4)最高の技術
(5)ユニバーサルデザイン
(6)健康応援
(7)リーズナブル・プライス

である。

セブンプレミアムは食品、菓子、飲料、日用品など幅広い品目を持つが、白を背景色に多用した包装に、緑色の「7」のロゴを付す統一的なデザインである。人目を引くためにカラフルなデザインが多い一般商品の中で、シンプルなデザインは逆に注目されやすい。そのシンプルさには無印良品的な信頼感が感じられる。

スナック菓子はセブンプレミアム商品が充実しており、記者が利用するイトーヨーカドー木場店ではセブンプレミアム商品を並べた棚が存在するほどである。「イーモんたべよ北海道ポテトコンソメ味」は、その一つである。

これは北海道産ポテトを100%使用し、チキンベースのコンソメで味付けした。原材料名の欄には馬鈴薯(北海道産)に続けて「遺伝子組み換えでない」と書かれている。セブンプレミアムの中で、100円で購入できる「100円シリーズ」の1商品でもあり、リーズナブルな価格も魅力的である。

本商品の実際の製造元は山芳製菓株式会社である。山芳製菓は大手スナック菓子メーカーである。「わさビーフ」「てりマヨビーフ」「味わいマヨポテト」などマニアックな味付けのポテトチップスを得意とするメーカーであるが、本商品はコンソメ味という極めてオーソドックスなポテトチップスである。食べた後の手のべた付きも相対的には少なく、味付けよりも芋そのもので勝負している商品である。

メーカーにとってプライベートブランドは自社ブランドで販売できず、流通業者の下請けに甘んじることになるために面白くない仕組みである。独特な商品で成功しているメーカーならば屈辱的と感じる向きさえあるだろう。故にマニアックな味付けを得意とする山芳製菓が、オーソドックスなポテトチップスをプライベートブランドで提供することには意外感がある。

一方でプライベートブランドは納入先が決まっているためにメーカーにとってはリスクが少ない。また、大手流通業者に採用されることで信用・評価が増すというメリットもある。得意ではないオーソドックスなポテトチップスについては、リスクの少ないプライベートブランドで実績を積み重ねるという山芳製菓の深謀遠慮が存在するかもしれない。メーカーとプライベートブランドの関係は考えてみると奥深いものがある。

『閉塞時代に挑む』の感想

 本書は新左翼活動家による社会主義の研究成果をまとめたものである。マルクス主義を批判的に再検討し、社会変革の指針を示している。

 歴史とは過去の積み重ねである。過去と連続している面がある一方で、断絶している面もある。どこに連続性と断絶を見出すかによって、人の認識は大きく変わりうる。本書は連続性と断絶について非常にユニークな視点を提供する。

 最初に連続性についてである。マルクス主義者は自らの社会主義を科学的社会主義とし、それ以前の社会主義思想を空想的社会主義と切り捨ててしまう傾向にある。これに対し、本書ではマルクスやエンゲルスのみを突出させるのではなく、それ以前の思想も丹念に拾って、歴史の流れを俯瞰する。

 この先人のロゴスに耳を傾けるという著者のスタンスは、生存権の研究で成功している。生存権はワイマール憲法を嚆矢とする現代的な権利と説明されることが一般的だが、本書は1793年のジャコバン憲法に生存権の源流を見出す。また、革命家バブーフが生存権を自然権と位置付けていたことを明らかにする。

 派遣切りによって派遣労働者が住む場所も失い路上生活を余儀なくされる現代日本において生存権の意義は非常に大きい。しかし、社会的要請に憲法学は十分に対応できていない。それは生存権を国家によって保障される社会権・後国家的権利として、表現の自由のような自由権・前国家的権利の一段下に位置付ける傾向があるためである。本書が明らかにした生存権の歴史性は、生存権を真の意味で有効な権利とするための理論的な下地となりうるものである。

 次に断絶についてである。唯物史観では人類の歴史を階級闘争の歴史と位置付ける。そして国家は支配階級が被支配階級を抑圧するための機関と考える(階級国家論)。この思想を信奉するならば資本主義社会における国家はブルジョアによる支配の道具であり、それを打倒することがプロレタリアの階級闘争になる。

 これに対し、本書ではブルジョア革命前後での政治的支配の差異に注目する。奴隷制社会や封建制社会では支配階級が政治面でも経済面でも階級支配を貫いていた。ところが、ブルジョア革命では革命を正当化する理論として民主主義や人権が主張された。

 この結果、資本主義社会は経済面では資本家の利潤追求(プロレタリアにとっては搾取であり、支配になる)が保障されるが、政治的にはプロレタリアも含めた全国民に政治参加の道を開く民主政に行き着く。つまり、ブルジョアは支配階級として固定されている訳ではなく、国家制度もブルジョアにのみ奉仕するものではない。この点において現代社会は階級国家ではない。著者が「則法革命」(法に則った社会変革)を目指すのは、この民主政の歴史的意義を踏まえたからである。

 格差が深刻化した現代日本においてマルクス主義が再評価されることは自然な流れであるが、その場合に暴力革命をどのように考えるかという問題がある。本書はブルジョア革命前後での支配体制の相違を見出すことで、民主主義の枠内で社会変革を進めることに積極的な意義を見出している。現代日本において社会主義を実践する上で理論的支柱となるだろう。

民主党・小沢代表会見と記者クラブ制度の弱体化

民主党の小沢一郎代表は2009年3月4日、公設第一秘書が政治規正法違反容疑で逮捕された問題について記者会見で違法性を全面的に否定した。小沢氏は「政治的、法律的にも不公正な検察権力の行使」と検察を非難し、大きな話題になっている。この会見は日本の報道の閉鎖性を象徴する記者クラブ制度の弱体化をも物語るものである。

それは記者会見においてフリージャーナリストの上杉隆氏が鋭い質問を浴びせ、それがマスメディアでも報道されたことに現れている。上杉氏の質問「政治団体の献金や金額をチェックする機能はあるのですか」が不意打ちであったためか、小沢氏が「チェックというのはどういう意味ですか」と聞き返す一幕もあった。マスメディアに混じってフリージャーナリストが質問していたことは興味深い。

小沢氏は新生党代表幹事の頃から、会見の記者クラブ以外のメディアへの開放を志向していた。最近でも政権構想の中で「記者クラブを廃止して、内外に開かれた姿にすべきだ」と主張している(「麻生捨て身の「給付金解散」シナリオ」文藝春秋2009年3月特別号)。民主党でも岡田克也幹事長(当時)が記者会見のオープン化を進めた。従って会見にフリージャーナリストが参加すること自体は既定路線に沿ったものである。

記者クラブは会員である報道機関にとっては独占体制、報道される側にとっては情報操作や癒着という既得権益のある制度である。それに風穴を開けようとする小沢氏や民主党の試みは勇気のあるものである。しかし、それ故に記者クラブという特権を維持したい大手メディアからは黙殺されがちで、民主党の試みが取り上げられることは少なかった。

ところが、今回の記者会見では上杉氏が「フリージャーナリストの上杉隆です」と名乗って質問し、そのやり取りがテレビのニュース番組などでも利用された。これは大手メディアも会見にフリージャーナリストが参加することへの拒絶反応が薄れていることを意味する。記者クラブ制度に風穴を開ける小沢氏や民主党の地道な取り組みが浸透しつつある証拠である。

「4年間で2100万円という大きな金額の背景を小沢事務所では調べないのか」と厳しく追及する上杉氏は小沢氏にとっては歓迎できない相手である。そのようなジャーナリストも会見に参加させる小沢氏の姿勢は評価する。今回の事件については色々と取り沙汰されているが、少なくとも小沢政権が成立したら記者クラブ制度の改革は期待できると感じられた。

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