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林田力『東急不動産だまし売り裁判』新聞20092

 

IT. 1

Googleストリートビュー規制論への懸念... 1

お笑いタレント中傷とブログ炎上の相違... 2

Yahoo! ニュース」がコメント機能を刷新... 3

Googleが急上昇ワードを追加... 5

市民メディア... 6

記事と無関係なコメントが悪い理由... 6

市民メディアは左が定位置... 7

 

 

IT

 

Googleストリートビュー規制論への懸念

大手ポータルサイトのグーグル(Google)のストリートビュー(Street View)についての議論には懸念すべき傾向がある。ストリートビューはインターネット上で街並みの写真を閲覧できるサービスで、日本では200885日に公開された。外出先の雰囲気を事前に下調べできるなど非常に便利なサービスである。地図上からマウス操作で当該地点の写真を表示でき、操作性も優れている。しかし、自宅が無断公開されることなどに対し、プライバシー侵害と批判されている。

グーグル日本法人の担当者は200923日、東京都の情報公開・個人情報保護審議会に出席して、「プライバシーについて詰めが甘かった」などと釈明し、今後は写真を公開する前に該当する自治体に知らせる方針を示した。ストリートビューを批判する立場にとっては、グーグル側がプライバシーの問題を認めた点で一歩前進に見えるが、解決の方向性が誤っている。

プライバシー侵害が問題であるならばプライバシーを侵害される個々人の了承を取らなければならない。自治体の了承は個々人に対するプライバシー侵害の正当化にならない。グーグル担当者によると、海外では写真公開前に官庁や自治体に説明していながら、日本では事前説明をしていなかったとのことだが、むしろ役所のお墨付きを得ればいいという発想は人権意識の低い極めて日本的な発想である。

建築紛争では隣地の建設によって日照や眺望などで甚大な被害が出る場合でも、マンション建設業者は「建築確認を取得しているから」と正当化することが多い。自治体への事前説明を解決策とすると、自治体への了承を得ているとグーグル側に正当化根拠を与えることになりかねない。

Googleストリートビューの評価できる点は無料で公開し、インターネット接続環境があるならば誰でも利用できることである。それ故に地上げ屋による土地漁りや泥棒の下見に使われるかもしれないという嫌悪感がある。しかし、調査するだけの時間と労力があればストリートビューによって分かる情報はストリートビューがなくても入手可能である。悪意がある連中に狙われたならば、ストリートビューで得られる程度の情報はすぐに入手されてしまう。むしろ彼らが入手しそうな情報をストリートビューから確認できることには大きな利点がある。

記者は購入したマンションに不利益事実不告知(隣地建て替えなど)があったため、売買代金返還を求めて売主の東急不動産を東京地裁に提訴した。裁判の係属時にはストリートビューは公開されていなかったが、Google Mapで上空からの衛星写真や航空写真を表示できた。その写真を証拠として裁判所に提出することで、隣地建て替えによって日照や眺望などが損なわれることを具体的に立証した。

この経験があるためにストリートビューも地上げ屋や泥棒の武器となる以上に弱者である個々人の武器となる面が大きいと考える。例えば防犯面での不安についてはストリートビューで自宅周辺の写真を確認することで、気付きにくかった問題を確認して事前に対策をとることができる。悪用する人ばかりにメリットがある訳ではない。

ストリートビューが公開された時、その便利さに驚嘆し、新しいサービスにワクワクした。これが廃止されるようなことがあったら大きな損失である。一方でストリートビューによって迷惑を被る人との調和も図らなければならないが、それが役所のお墨付きで実現できないことだけは確かである。

 

お笑いタレント中傷とブログ炎上の相違

お笑いタレント・スマイリーキクチ氏のブログを事実無根の内容で集中攻撃したとして、警視庁は200825日までに17歳から45歳までの男女18人を名誉棄損や脅迫の疑いで書類送検する方針を固めた。スマイリーキクチ氏が「足立区女子高生コンクリート詰め殺人事件に関わった」などといった虚偽内容の中傷が書き込まれたためである。

身に覚えのない虚偽の内容によって、執拗に攻撃されるのであるから本人にとってはたまったものではない。私は購入したマンションに不利益事実不告知(隣地建て替えなど)があったために売買代金の返還を求めて売主の東急不動産を提訴した。それに対し、住宅ローンの返済に窮したために裁判しているなどと事実無根の風評をインターネットで書かれたことがあった。この体験があるために「私自身の生活・仕事に影響があるのみならず、家族や友人・知人にこれまで以上に不安な思いをさせてしまう」とのスマイリーキクチ氏の不安と怒りは大いに共感できる。

但し、この事件をブログ炎上事件とする報道が散見されることは非常に気になる。これは日本のマスメディアのインターネットを理解せずに頭から否定したがる傾向を物語っている。確かに攻撃的なコメントが殺到する点が炎上の特色である。しかし、これまで炎上として認識されている事例は先に炎上とされる原因が存在した。炎上のきっかけとなった代表的な問題発言には以下がある。

・歌手の倖田來未さん:「35歳以上になると羊水が腐ってくる」

・評論家の池内ひろ美さん:トヨタ自動車の期間工に対し、「彼らはトヨタと漢字で書けるのか?」

・花岡信昭・産経新聞元編集委員:アイドルグループ・モーニング娘。に対し、「歌は下手でダンスもまずくエンターテインメントの域には達していない」

・藪本雅子・元日本テレビアナウンサー:「男の子は、それはもう幼稚園の頃から、女の子のパンツが見たくて見たくてしょうがない生き物である」

これらに対し、スマイリーキクチさんの場合は炎上の原因になるような失言や問題行動をしていない。勝手な思い込みによって攻撃されただけである。今回の件を過去の炎上事件と同列に扱うならば、スマイリーキクチさんを貶めることになる。

炎上は個人が情報の発信者となれるインターネット時代ならではの現象である。情報の受け手とされてきた個人が批判の声をあげるようになったことは大きな進歩である。実際、ビジネス誌の週刊ダイヤモンドは、過去には泣き寝入りしていた消費者がネット上で企業への不満を主張し、炎上させる状況を「お客が企業に対等にモノを言う時代」に突入したと位置付ける(「ウェブ炎上、<発言>する消費者の脅威−「モノ言う消費者」に怯える企業」週刊ダイヤモンド20071117日号39頁)。この記事では炎上の事例として、前述の東急不動産との裁判を契機とした、東急不動産と販売代理の東急リバブルに対する批判の急増をあげている。

また、子どものケータイやネットの利用を論じた書籍では、子どもが主利用者のWebサイトでは炎上が少ないとし、その理由を「炎上するほどにまで相手にぶつかっていくエネルギーがなくなっているせいではないか」と否定的に推測する(加納寛子、加藤良平『ケータイ不安』日本放送出版協会、2008年、44頁)。間違ったことや許せないことに対して個々人が批判の声をあげることは決して悪いことではない。

表現の自由を重視する立場からは、今回の異例とも言える一斉摘発が表現活動の萎縮をもたらすのではないかとの懸念が出てくる。しかし、それ以上に今回の事件をブログ炎上と位置付けて、炎上という現象自体が悪いことであるかのように伝える報道姿勢の方が批判的言論を萎縮させかねない。事実無根の中傷や脅迫と、批判が殺到した結果としての炎上は全く異なるものである。

 

Yahoo! ニュース」がコメント機能を刷新

無責任な投稿の抑制とネットの利点のバランス

Yahoo! ニュース」が200925日にコメント機能をリニューアルした。「Yahoo! ニュース」は大手ポータルサイト「Yahoo! JAPAN」内のニュースを提供するページである。Oh! MyLifeの記事もパブリックニュースとして配信されている。

リニューアルの特徴はコメント投稿者のYahoo! JAPAN IDの一部を表示させるようにしたことである。これまでのコメント欄では投稿者名は表示されなかった。自ら投稿者名を表示させることもできなかったため、匿名掲示板として有名な「2ちゃんねる」以上に匿名性を徹底していた。「2ちゃんねる」では匿名での書き込みが可能だが、固定ハンドル(略:コテハン)の書き込みも可能である。成りすましを防止する機能(トリップ)もある。

今回のリニューアルでは投稿者のYahoo! JAPAN IDが一部表示されるようになった。IDの一部を伏せ字にして表示される。例えば「boycott」というIDで投稿した場合は「boy*****」という形で表示される。この点でIDが明確に表示される「Yahoo! 掲示板」とは異なる。但し「Yahoo! 掲示板」ではIDの他にニックネームで投稿でき、ニックネームは最大6つまで作成できる。

今回のリニューアルによって、同一人物が連続投稿していた場合は、すぐに分かるようになった。しかも過去の投稿履歴も閲覧できるため、コメント投稿者の傾向を知ることもできる。例えば他の記事でも悪口や揚げ足取りしかしていなければ、そのような相手と思えばよい。

コメント欄には一方的に記事を配信するだけでなく、読み手もコメントを書くことでコンテンツを豊かにするというWeb 2.0的な意義がある。それが報道機関のサイトとは異なるポータルサイトならではの付加価値となる。運営会社・ヤフーの井上雅博社長は、株主総会において、そのように説明していた(参照「ヤフー株主の関心は、株価とGoogleの脅威」)。

http://news.ohmynews.co.jp/news/20080624/26698

コメントを付加コンテンツと捉え、コメントを多く集めたいならば、コメント投稿を躊躇させるような制約をかけない方が望ましい。しかし、悪口ばかりでは逆にコンテンツとしてマイナスである。真面目なコメントを投稿し辛い雰囲気にもなる。

リニューアル後はコメント欄上部に「こんにちは XXXXXXX さん」とログインしたID名が表示されるようになった。これも合わせて今回のリニューアルは、投稿者としての自覚を持たせ、無責任な投稿を牽制する効果を狙ったものとなっている。

偶然にもリニューアルと前後して警視庁が芸能人のスマイリーキクチ氏のブログを事実無根の内容で集中攻撃した男女18人を立件すると報道された。この点では非常にタイミングの良いリニューアルとなった。

但し、この種の事件が起きるとネットの負の面を煽り立てる風潮が出てくるが、それに流されるだけでない点がヤフーの評価できるところである。今回のリニューアルではコメントに対する評価として賛成だけでなく、反対の意思表示も可能になった。賛成できるコメントには「私もそう思う」、同意できないコメントには「私はそう思わない」に投票できる。

これは一見すると的外れなコメントへの牽制に思える。しかし、表示コメントの並べ替え機能では「そう思わない順」として、反対票が多いコメントから順に表示できる。多くの人に評価されるコメントだけでなく、反対者が多いコメントにも読むべき価値があるという発想である。少数意見が圧殺されがちな日本社会において注目すべき姿勢である。

ブログ炎上の摘発報道では事実無根の内容に基づく攻撃であった以上に、ブログ炎上という態様に問題があるかのような報道が散見される。しかし、インターネットによってダイレクトな批判が可能になったことは、これまで発言の場がなかった個人にとって大きな進歩である。ネットがもたらす負の面を抑制しつつ、ネットの利点を潰さないようにするという困難な課題にバランス感覚を失わないヤフーを積極的に評価したい。

 

コメント機能をリニューアルしました - Yahoo!トピックス スタッフブログ

http://blogs.yahoo.co.jp/yjtopics_blog/38088317.html

 

Googleが急上昇ワードを追加

マスメディアとの近接

大手ポータルサイトのグーグル(Google)は200925日にトップページをリニューアルした。リニューアルによってトップページの検索窓の下へ大きく2つの項目が追加された。「急上昇ワード」欄と各種サービス(GmailYouTubeなど)へのリンクボタンである。注目すべきは急上昇ワードの追加で、ここにはマスメディアへの近接が感じられる。

Googleはロゴと検索窓だけのシンプルなデザインで、検索に特化したポータルとしてスタートした。ポータルサイトとしては後発ながら、検索結果の網羅性・正確性が支持され、世界的にはトップの座を占めるに至った。検索に特化したサイトデザインは、優れた検索機能という自社のコアコンピタンスを最大限にアピールしている。

グーグルの倉岡寛・プロダクトマネージャーは「このデザインを決めたのは創業者のサーゲイ ブリンで、彼はその理由を聞かれると、彼自身が HTML が書けなかったから、ということと、当時ウェブマスターがいなかったと言っています」と謙遜する。しかし、シンプルなデザインにしたことには積極的な意義がある。インターネット勃興期にポータルを制したのはYahoo!であった。そのYahoo!も当時の競合であったLycosInfoseekと比べてシンプルなデザインを特徴としていた。GoogleYahoo!の成功法則を徹底している。

その後、Googleは衛星写真や航空写真を取り入れたGoogle Mapなど検索エンジン以外のサービスでも注目を集めた。動画投稿サイトYouTubeを買収するなど多角化にも積極的である。各種のサービスへのリンクボタン追加はGoogleの総合ポータルサイト化を象徴する。

一方で今回の追加によっても、様々なメニューが溢れてページがゴチャゴチャしてしまうという状態にはなっていない。他のポータルサイトと比べると依然としてシンプルである。サービスは増やすが、埋没させることはしない。尖がったサイトであり続けようとしている。

リニューアルのもう一つの特徴は「急上昇ワード」の追加である。これは検索数が急上昇している検索キーワードを紹介する。Googleモバイルホームページ上のガジェットとしては2008415日から提供されていたものである。20092814時時点では「イタガキノブオ いしだ壱成 骨肉腫 日本歴史占い ミステリーショッパー」が急上昇ワードとなっている。

検索エンジンは自分の知りたい情報に辿り付くための能動的なメディアである。これに対して急上昇ワードは最近話題になっているキーワードを教えてくれる。ネット以前のメディア(新聞やテレビ)は自分が調べたいことがあるためではなく、世の中の動きについていくために購読や視聴をする傾向があった。似たような受動的な側面が急上昇ワードにもある。インターネットも普及するにつれてマスメディア化する一面があるようで興味深い。

この急上昇ワードは20分毎に更新されるためにリアルタイムな動きに連動する。検索数が急上昇している検索キーワードというファジーな指標になっていることも特色である。単純に検索語として使用された数のランキングとした場合、誰もが知っている言葉が上位を占めてしまう。それでは世の中の動きについての新たな発見にはなりにくい。20分という短いスパンで急上昇しているキーワードを抽出することによって、ソコソコ話題になっているものの初耳のキーワードとの思いもよらぬ出会いになる。

一方で使用された検索キーワードの上位ランキングというような厳密な指標になっていないため、うがった見方をすればグーグルによるマッチポンプが可能になる。グーグルが流行らせたいと考えるキーワードを急上昇ワードに表示させることができてしまう。ポータルサイトでは検索結果に連動して広告を表示させる仕組みを導入しており、そのようなことを行う経済的な動機もある。何を伝えるかをコントロールできるという意味で、良くも悪くもグーグルはマスメディアに近付いていると言える。

 

市民メディア

記事と無関係なコメントが悪い理由

市民メディアJANJANが2009年10月2日から10月5日まで「ご意見板」を一時的に中止する。記事とは関係のないコメントが増加していることを原因とする。9月26日の市民記者懇談会でも「ご意見板」の問題は強く指摘された(「市民記者懇談会に参加し、「ご意見板」について考えた」)。

本記事では記事と無関係なコメントが何故問題であるのかを検討する。

「ご意見板」は、あくまでも記事に付属したものである。仕組みに類似性があるとしても、特定のテーマについて自由に討論する掲示板とは異なる。記事の趣旨に沿わない内容をコメントすること自体が的外れな脱線である。

記事が取り上げた話題について執筆記者とは異なる視点や問題意識を有している人は当然のことながら存在する。中には記者の問題意識よりも、より重要な問題があると考える人もいるかもしれない。記事の主題とは離れることを認識した上で、別の視点からコメントで問題提起すること自体は必ずしも否定すべきものではない。

しかし記事の主題そっちのけでの論争は記事の付属品である「ご意見板」のあるべき姿から離れている。「ご意見板」は記事読者の意見交換の場であって、記事の主題とは無関係に記事が取り上げた話題について思うところを放言する場ではない。

記事に対してコメントするからには、記者の言わんとしていることを理解した上で行いたい。同意と理解は別である。記者の主張に同意する必要はないが、読者ならば理解しようと努める必要はある。対象のテーマについて一家言あるからコメントを寄せる場合が多いとはいえ、記者の主張を理解しないで批判コメントを書くならば、ためにする批判である。

本来、記事の主題から脱線したコメントを書くことは、自らの理解力や読解力のなさを曝け出すことを意味し、恥ずべきことである。記者が何を主張しているのかを把握しようと努めることが読者として最低限のマナーである。記事を書いている記者も生身の人間であり、相手をリスペクトする姿勢は忘れないようにしたい。

そして、あるテーマについて一家言あるならば記事を書くべきである。市民メディアの双方向性とはコメントを書き込むことにあるのではない。読者によるコメントを書き込みは新聞社のサイトでも実装されている。市民メディアの独自性は市民が記者となって記事を発表できることにある。

記事に対する正面からの反論も、短文が即座に反映されるコメントではなく、記事という形で意見を表明することにより、感情的な応酬は抑制できる。「ご意見板」の今後は利用状況から検討するとのことだが、記事で主張できる市民メディアにとってコメント欄は必須ではなく、無理して残す必要はないと考える。

 

市民メディアは左が定位置

市民メディアは左寄りと思われるくらいが健全である。JANJANや旧オーマイニュースを含め市民メディアには左寄りに偏向していると非難されることがある。記事に悪意あるコメントが繰り返され、コメント欄が荒れる一因も、市民メディアの記事が左寄りと感じられることへの一部の不満が背景にある。

市民メディアの性質上、左寄りの記事が集まることは自然の成り行きである。市民メディアは純粋に記事を書きたい、意見を表明したいという市民記者の思いに支えられている。わざわざ手間隙かけて記事を書くことは、世の中に対する何らかの問題意識がなければできない。私自身、市民記者となったきっかけは大手不動産会社との新築マンション購入トラブルであった(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』参照)。

そして社会への問題意識を持つ人が左派寄りになることは自然の成り行きである。何故なら全てを自己責任・自助で片付ける新保守主義的発想では苦しんでいる人は救済されない。焼け野原から経済大国にしてしまう前に進むことしかできない発想で、苦しんでいる人に頑張れと激励することが美徳だと勘違いするような従来型の特殊日本的精神論では益々苦しめられるだけである。

このため、日本では苦しんでいる人々の受け皿になれる存在は左派系の団体や運動ばかりである。年越し派遣村では支援団体の思想的背景を問題視する論調が散見されたが、そのような団体でなければ派遣切りにより困窮する人々を救済しようとしない点が日本の現実である。このため、苦しむ人々が左派思想にシンパシーを抱くのは自然である。しかし、左派系団体にも偏狭で教条主義的なところがあるという問題がある。ここに市民メディアのニーズがある。社会への問題意識があり、それを自分の言葉で表現したいという欲求を持つ人々が市民記者となる。

それ故に編集部が意図的に記事を選別するまでもなく、市民メディアには左寄りの記事が自然と集まる。実際、旧オーマイニュース編集部も「左派リベラルの記事が多かったのは、そのような記事を投稿する人が多かったため」と説明した(「No more OhmyNews 〜オーマイニュース消滅記念!(元)編集部発・最後の炎上大会〜」2009年5月25日)。

日本社会でも右からの市民運動の可能性はある。逆に歴史的には右からの草の根の運動が大きなうねりを起こしている。日露戦争時の日比谷焼き討ち事件や五・一五事件犯人の助命嘆願運動が代表的である。近年も朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の拉致問題では市民運動的手法で広い国民的共感を呼び起こした。

しかし、それらの運動は感情的・非現実的で、日本の国際的な孤立をもたらす危険を抱えている。戦前の日本が無謀な侵略戦争で破滅した一因には右からの運動に押し流されたことである。現代の拉致問題でも自国の植民地支配を棚上げする身勝手さと国際政治の現実無視により手詰まり感がある。在日朝鮮人排斥を唱える運動もあるが、文明社会ならばヘイトスピーチとして活動自体が許容されないものである。

この点を踏まえると、まだまだ市民メディアが扱うレベルに到達するものは少ない。だからこそ街宣右翼が拡声器で怒鳴るようにコメント欄の荒れという形で意思表示されることになる。市民メディアの擁護者も否定者も市民メディアは左が定位置くらいの気持ちで接した方がお互いにとって気楽になる。

 

コメントありがとうございます

本記事は鳩山政権に対するスタンスを述べるものではなく、親権力か反権力かは論点が異なります。日本の右派思想と左派思想を比較し、右派思想の問題点を明らかにし、左派よりにならざるを得ないと主張するものです。親権力か反権力かは右か左かの一歩先を進む論点ではなく、別次元の論点です。

反対に権力批判をする場合でも、その先の右からの反権力か左からの反権力かが問題になります。右からの反権力の危険性については記事本文で指摘したとおりです。現実に鳩山政権を批判する場合でも右派からの批判と左派からの批判では全く主張内容が異なります。それらを反権力でまとめることは本記事の問題意識から外れます。