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林田力『東急不動産だまし売り裁判』新聞 東急リバブル虚偽広告

 

住民反対運動を招く東急電鉄の不誠実... 1

東急東横線で車椅子の女性が転落死... 2

昔も今も空気が読めない(KY)二代目... 3

「ブラタモリ」と再開発で失われるニコタマの魅力... 4

渋谷区桜丘町の地上げの現場を見た... 5

マンション近隣対策の実態... 7

スカパー巨大アンテナに反対する住民の会住民大集会... 9

 

 

住民反対運動を招く東急電鉄の不誠実

住民反対運動 東急電鉄 東京急行電鉄 週刊東洋経済

週刊東洋経済が東急沿線の住民反対運動を特集

ビジネス誌・週刊東洋経済2008614日号は「「ブランド私鉄」東急沿線で住民反対運動が噴出するワケ」と題する記事において、東急沿線で続出する住民反対運動を取り上げた。企業の訴訟リスクに注目した「超・訴訟社会」と題する特集の一環である。

この特集では元役員に583億円の賠償が命じられた蛇の目ミシン株主代表訴訟や度重なる不祥事(賞味期限切れ、産地偽装など)から廃業に追い込まれた船場吉兆の問題も取り上げている。それらの記事と並び、地域住民からの訴訟リスクという観点から、東京急行電鉄(東急電鉄)の姿勢を批判的に論じた。

記事では計画撤回に追い込まれた、すずかけ台駅変電所建設計画を中心に東急沿線で頻発する紛争を紹介する。他には、たまプラーザ駅高圧鉄塔移設計画、鷺沼4丁目高層マンション建設計画、二子玉川東地区再開発事業、等々力駅地下化工事計画、荏原町駅社員寮建設計画、中延駅葬祭場建設計画、戸越公園駅前マンション建設計画と合計8つの紛争を挙げる。

記事は東急電鉄の秘密主義や住民への不誠実な対応が紛争を拡大させていると指摘した。その上で、企業改革がなければ東急のブランド価値は低下すると結ぶ。

実はビジネス誌で東急がネガティブに取り上げられたことは今回が初めてではない。週刊ダイヤモンド20071117日号では記事「ウェブ炎上、<発言>する消費者の脅威−「モノ言う消費者」に怯える企業」において、インターネット掲示板「2ちゃんねる」上で東急リバブル・東急不動産の批判が溢れ、炎上状態になっていると伝えた。

週刊ダイヤモンドの記事によると、マンション購入者が売主の東急不動産を提訴した20052月以降、「自分もこのような目に遭った」と上記訴訟の枠を越えた批判が続出したという。

上記訴訟は記者も度々言及しているものである。東急不動産(販売代理:東急リバブル)が隣地建て替えなどの不利益事実を説明せずにマンションを販売したため、消費者契約法に基づき、売買契約が取り消された事件である(参照「東急不動産の遅過ぎたお詫び」)。

地縁や地域コミュニティーに根ざした住民反対運動と、顔も名前も知らない匿名のネチズンによるインターネット上の炎上では性格は全く異なる。にもかかわらず、批判の矛先がともに東急である点は興味深い。リアルスペースでも電子空間でも東急は激しく批判されていることになる。

共通点は個人の信頼を平然と裏切る東急の不誠実な体質である。週刊東洋経済の記事では「東急グループが大切に紡いできた、美しい田園都市」などの謳い文句で、東急沿線の環境の良さをアピールしておきながら、自社が変電所のような嫌悪施設を建設する時は「建築協定など知らない」「守る必要もない」と主張する。

週刊ダイヤモンドの記事で言及された裁判もマンション販売時には「緑道に隣接するため、眺望・採光が良好!」「風通しや陽射しに配慮した2面採光で、心地よい空間を演出します」をセールスポイントとしておきながら、実態は異なっていたことが問題であった。

インターネットの問題をネットの特殊性から説明する傾向があるが、リアルもネットも動かしているのは個々の人間である。不誠実な対応をされれば憤るのは当然であり、そこにリアルとネットの区別はない。個人は地域住民だったり、消費者だったり、ネチズンだったりと様々な顔を持つ。東急が個人を軽視し続けるならば、今後も様々な形で批判が噴出するだろう。

 

週刊東洋経済2008614日号

http://www.toyokeizai.co.jp/mag/toyo/2008/0614/

週刊ダイヤモンド20071117日号

http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=20243111707

 

東急東横線で車椅子の女性が転落死

東急東横線多摩川駅(東京都大田区)で2009913日に車椅子がホームから線路に転落し、乗っていた女性が死亡するという痛ましい事故が起きた。事故当時は車椅子に乗った川崎市の81歳の女性が、付き添いの長女とエレベーターで1階改札から2階ホームに移動した。長女が下で待っている利用者のためドアのボタンを押して閉めようと車椅子から手を離したところ、車椅子が動いて約1.2メートル下の線路に転落した。

この事故を受けて東急電鉄が調査した結果、別の7駅でもホームの傾斜が原因で車椅子が線路に転落する危険があることが判明した(「東急7駅ホーム過傾斜、車いす転落のおそれ」読売新聞2009926日)。問題の7駅は、新丸子、中目黒、自由が丘、武蔵小杉(以上、東横線)、渋谷、鷺沼、長津田(以上、田園都市線)である。

いずれの駅も1メートル当たり2センチ以上の傾斜がある(多摩川駅の傾斜は1メートル当たり2.5センチ)。これら7駅は乗降客の多い駅が集中しており、問題の深刻さをうかがわせる。東急電鉄は、これら7駅について警備員を配置し、11月末までに転落防止柵を設置する。

東急電鉄の事故前後の対応には問題があると考える。

まず事故前の対応である。多摩川駅では2年前の20079月にも車椅子の女性がホームに転落し重傷を負う事故が起きていた。その時も95歳の女性が、付き添いの家族が離れたすきに線路に転落している。この事故後に適切な対応をしていれば今回の死亡事故は防げた筈である。ここには過去の教訓を活かさない企業不祥事に共通する構図が浮かび上がる。

次に事故後の対応であるが、転落防止柵の設置は11月までは行わず、それまでは警備員配置で済ませようとしていることである。2回の事故とも家族が付き添っていながら発生しており、警備員の注意力に頼るだけで十分か疑問である。たとえば危険エリアをマーキングして注意を喚起することくらいならば即日対応可能な筈である。

安全性は人命に関わる問題であり、鉄道会社には出費や労力を惜しまない対応を期待する。

 

昔も今も空気が読めない(KY)二代目

安倍晋三、福田康夫、麻生太郎と3代続けてKY(空気が読めない)な首相が登場した。KYであることは第一義的には個人の資質の問題であるが、立て続けにKYな首相が輩出されると、日本の指導者層の質の問題と思えてくる。

このような問題意識を抱いていたところ、興味深い記事を発見した。それは今から20年以上前のビジネス誌の記事である。創刊40周年を迎える日経ビジネスは「日経ビジネスが描いた日本経済の40年」と題して過去の記事をWebサイトに掲載している。

その一つとして「【時代のリーダー】五島昇・日商会頭」との見出しが付けられた記事が2009217日に公開された。これは五島昇・東急電鉄社長(当時)に注目した日経ビジネス(日経BP社)の記事である(「「ドンになり切れないプリンス」ケンカ嫌いがケンカの連続 財界世代交代劇の主役に」日経ビジネス1987511日号)。

五島昇は東急グループの創業者・五島慶太の長男である。記事では二代目社長の五島が日本商工会議所会頭(日商会頭)として財界のトラブルメーカーとなっている様子を伝えている。一言でまとめれば五島はKYである。本命視されている人物を押しのけて政府の審議会の会長職を引き受けようとし、財界主流に不評の他社会長を徹底的にかばうなど、安倍・福田・麻生の歴代首相に匹敵するKYぶりを発揮している。

事前の根回しも事後の説明もせずに思いつきで進めるならば周囲が反感を抱くのは当然である。本人は「こっちは解説抜き。舌足らずなんだ。それで色々と誤解を生じてね」と言い訳するが、自らの説明不足を棚に上げて相手の誤解を責めることはKYと批判される人に共通する論理構造である。五島がKYと呼ばれなかったのは、当時はKYという言葉が存在しなかったからに過ぎない。

記事は「企業経営や政治に新しい時代を切り開いたリーダー」を振り返るというスタンスで紹介されており、あからさまに五島を批判するものではない。むしろ五島を財界の世代交代の主役とする好意的な視点でまとめている。しかし、読む人が読めば五島の問題点が分かるように指摘されている。

記事では東急グループ内の五島のワンマン体制を天皇制になぞらえている。しかも、五島には諌めてくれる側近もブレーンもいないという。お友達はいても諫言者はいない裸の王様という点で初代KY首相の安倍氏に対する批判に通じる。

KY首相が3代も続けば政治家の質の低下を憂いたくなる。しかし、KYな二代目御曹司は昔も存在した。昔が今と異なる点はKYという言葉が存在しなったために、KYと批判されなかったことである。その意味ではKYという言葉がある現代の方が幸福である。KYな人間の存在を嘆くのではなく、KYな人間を批判することが現代に生きる我々の使命である。

 

「ブラタモリ」と再開発で失われるニコタマの魅力

NHK総合のテレビ番組「ブラタモリ」は20091015日に二子玉川を特集した。二子玉川は東京都世田谷区にある東急田園都市線・大井町線二子玉川駅周辺の地域で、ニコタマノ愛称で知られている。この放送では二子玉川東地区再開発(二子玉川ライズ)で失われるニコタマの魅力を再確認した。

「ブラタモリ」はタモリと久保田祐佳アナウンサーが東京都内の町を散策しながら、過去の風景に思いを馳せる番組である。名物料理を食べるだけの紀行番組とは一味も二味も違う薀蓄の豊富なカルチャー番組になっている。これまでは原宿、早稲田、上野を取り上げた。

二子玉川駅前に立ったタモリの第一声は「工事ばかり」であった。実際、現在の二子玉川は街中が工事現場になった感があり、それが街の魅力を削いでいる(参照「二子玉川住民が再開発を意見交換」)。

http://www.news.janjan.jp/area/0908/0908018086/1.php

一行は工事現場ばかりの東口・再開発地域ではなく、西口の玉川高島屋ショッピングセンターへと向かった。1969年に開店した玉川高島屋は日本初の本格的ショッピングセンターとされる。

当時の開発責任者・松沢邦光氏が顧客集めの工夫を説明した。競走馬の即売会やボーリング場開設などを行ったという。ここには略奪的・ハイエナ的な金儲けではなく、顧客に喜ばれたいという健全なビジネス精神が存在する。地域住民を押しのけるようにして工事を進める二子玉川東地区再開発との対照性が感じられた。

次に一行が訪れた場所は多摩川河川敷である。ここでは土手が川岸から50メートル程度離れた場所に存在する。これは大正時代に堤防を建築した際、川沿いの料亭を中心として、川べりの景観の破壊に反対する声があがったためである。そのために川岸から離れた場所に堤防が築かれた。二子玉川東地区再開発でも景観破壊は重要な論点であり、先人に学ぶことも多いと思われる。

その後で一行は玉川電車(玉電)の廃線跡を探訪する。鉄道柵が駐車場敷地の境界に使われているなど、意外なところに面影を残していた。また、地元の小学生が生まれる前に廃止されていた玉電の駅を知っているなど、生活の中に歴史が溶け込んでいた。この点でも過去の痕跡を壊して街の形を変えてしまう二子玉川東地区再開発は残念である。

 

「ブラタモリ」と「タモリ倶楽部」

「タモリ倶楽部」との類似性については同感です。これは雑学知識豊富な中洲産業大学・タモリ教授のキャラクターに負うところが大きいと思います。

NHKらしい点は高島屋ショッピングセンターの店内に入り、当時の開発責任者にインタビューをしたにもかかわらず、店名を表示しないところです。高島屋が表示されたシーンは開店を報道する当時の新聞記事を写したところのみでした。企業宣伝をしないNHKのポリシーです。

しかし、店名を表示しないというポリシーを機械的に適用することには安直さを感じました。開発責任者をデベロッパーの従業員と紹介しましたが、東急沿線の二子玉川を開発したデベロッパーとなると東急電鉄や東急不動産と誤解される恐れがあります。実際のところ、高島屋の出店は沿線に安住する東急グループを出し抜いた成功例です。その点も踏まえて番組で紹介された集客の苦労話を聞くと味わいが一層深まります。この点でも東急グループが営利追求のみで好き放題する感のある二子玉川東地区再開発(二子玉川ライズ)とは対照的です。

 

渋谷区桜丘町の地上げの現場を見た

地上げ 渋谷 再開発

生活や街を破壊する地上げの怖さ

地上げの舞台となった渋谷区桜丘町の雑居ビルを見たので報告する。このビルをめぐっては、テナントの日焼けサロン経営者に立ち退きを迫り脅したとして、暴力団員や不動産会社役員が暴力行為法違反の疑いで逮捕された。

調べによると、暴力団員らは200712月から翌年3月にかけ、放火を仄めかして脅迫した上、出入り口をふさいだり、共用部分の電気を切断したりするなど物理的な妨害を繰り返した。

このビルには他のテナントも存在したが、残ったのは日焼けサロンのみである。日焼けサロンを地上げで追い出せないまま、2008325日に所有権が東急不動産株式会社に移転した。

現地はJR渋谷駅から徒歩すぐの場所に位置する。ターミナル駅至近の立地ながら、中小規模の敷地に古い建物が並ぶ地域である。渋谷から想起される一般的なイメージとは、かなり異なる町である。

大勢の人と無機質な高層ビルに息苦しさを感じる生活者にとっては身の丈にあった快適な街である。しかし、ここも渋谷駅桜丘口地区市街地再開発事業が検討されるなど、再開発の波が押し寄せている。これが本件のような強引な地上げが行われた背景となっている。

地上げ現場の雑居ビルは人気がなかった。シャッターが降りており、入口の扉には鍵がかかっていた。シャッターにはペンキで落書きがしてあるが、周囲の建物にも同様な落書きがあり、地上げの嫌がらせとは直接関係ないようである。

ビルの入口には日焼けサロンの看板が置かれており、3階の窓には広告が貼られていたが、営業状況は確認できなかった。表札にはテープが貼られ、店名が確認できないようになっていた。生活や街を破壊する地上げの怖さを実感できた。

 

200807221315001.jpg 建物外観。3階の窓には日焼けサロンの広告が出ている。

200807221232000.jpg シャッターと入口の扉、日焼けサロンの看板

200807221317000.jpg ビルの表札。写真下部の赤い板は日焼けサロンの看板

林田力 2008722日撮影

 

コメントありがとう御座います

先ず営業できないとありますが、地上げ屋の妨害が影響している可能性があり、営業できないことをもってテナントに不利な判断をすべきではないと考えます。

ある報道ではテナント側は地上げ屋の立ち退き交渉の誠意のなさを問題にしているため、意地という面が多少はあると思いますが、不誠実な行為があるならば自己決定権として尊重されるべきです。所有者は東急不動産に変わりましたが、私自身も東急不動産の不誠実な対応には憤った経験がありますので、テナントの気持ちには大いに共感できます。

分譲における消費者保護も、賃貸における賃借人保護も、社会経済的弱者保護という点では同じと思います。古くから賃借人保護の法整備は進む一方で、分譲物件購入者の保護は置き去りにされていることは確かです。故に管見も分譲物件購入者が強く保護されるべきと考えますが、賃借人保護を弱くすべきとは思えません。

どちらも社会経済的弱者として保護すべきという価値判断になります。むしろ分譲物件を購入できる消費者よりも、賃借人の方が弱い立場にあります。敷金・礼金の問題がありますし、アパートを追い出されてネットカフェ難民となった人もいます。

 

被害者の連帯

コメントの発想には興味深い点があります。社会的弱者を保護すべきというのは一つの価値判断であり、万人と共有できるものではないことは自覚しています。業界よりの立場ならば弱者保護の強化ではなく規制緩和という結論になります。

価値観が異なること自体は構わないのですが、分譲物件の消費者保護は強化する一方で、賃借人の保護を弱めるべきという価値判断になるのが興味深いです。誤解を恐れずに申し上げればプチブル的な発想となるのでしょうか。

社会的弱者から見れば分譲物件購入者という存在自体が、ある意味勝ち組な訳で、敵意を向ける対象にもなります。耐震強度偽装事件において疑惑の解明を積極的に主張した人々の中にも、偽装マンションが次々と明らかになり、分譲マンション購入者の破滅を喜ぶ意識がなかったとは言えません。一方で耐震強度偽装事件が風化してしまったのは、自分達のマンションの真相を知りたくもないという分譲マンション住人の保守性が影響している面もあります。

賃借人も分譲購入者も共に不動産業界の被害者として連帯すべきと思いますが、そのようにならない点に不動産問題が大きく広がらない一因があるのではないかと考えます。

 

マンション近隣対策の実態

マンション 建築紛争 近隣対策

デベロッパーの文書は住民の悪口だらけ

高層マンション建設に際しての近隣対策の実態を示す文書が公開されたので報告する。デベロッパーから管理会社に新築マンションの近隣住民について説明する文書だが、近隣住民の身辺(職業、血縁関係)を不気味なほど調べている上、住民に対する誹謗中傷表現に満ちている。デベロッパーが近隣住民を攻略すべき障害としか見ていないことを示す貴重な文書である。

問題の文書は株式会社大京・東京支店から20021119日付で大京管理株式会社に送信されたファックス文書「「LS小平」近隣関係」及び添付地図である。大京は大手マンションデベロッパーであり、大京管理は系列の管理会社で、現在は式会社大京アステージに社名変更されている。LS小平は大京が分譲したマンション「ライオンズステージ小平」(東京都小平市天神町、9階建て、200211月竣工)を指す。

文書では先ずマンション東側の6軒の住民にそれぞれ補償費70万円〜120万円を支払ったと記述する。マンション建設で被害を受ける住民に金銭を支払う例は多いが、具体的な金額が明かされている点で貴重である。

続いて近隣住民の各々を説明し、注意点を述べているが、その内容に驚かされる。大別すると近隣住民に対する身辺調査と誹謗中傷表現の二点である。

1に近隣住民の職業や血縁関係など、近隣対応に必要とは思えない範囲まで調査している。「イトーヨーカドーの労働委員会所属」「小平消防自動車運転手」などと、どこで入手したのか勤務先以上の情報を得ている。情報の入手自体も問題だが、入手した情報を近隣関係への配慮のために活かそうとする姿勢が微塵もないことにも驚かされる。

ファックス文書では「消防署勤務のため、昼寝て、夜間仕事の時もあり、工事中は、振動騒音等で、文句多かった」とある。夜勤のために昼間寝なければならない人にとって建設工事の騒音や振動は耐えがたく、苦情が出るのは自然である。しかし、大京は苦情が出る背景まで調査していながら、文句が多いとしか受け取っていない。住民に対し、配慮しようという姿勢も迷惑をかけたという反省も皆無である。

血縁調査についても詳しく調べている。「嫁の実母」「兄弟ですが、あまり仲良くないと感じました」などである。このような情報が近隣対策にとって何の役に立つのか理解に苦しむ。

私自身、東急不動産とのトラブルでは東急不動産の代理人弁護士に管理組合理事長をしていることや私自身の年収、家族構成について暴露された上、ブローカーに勤務先にまで圧力をかけられ、東急不動産の物件には住んでいられないと思ったものである(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社、2009年)。

第2に近隣住民への誹謗中傷表現である。前述の6軒の住民を「この連中」と呼んでいる。しかも「性格異常者」「しつこい、うるさい、ばばあ」と罵倒表現のオンパレードである。苦情の多い住民のみならず、大京が相対的に良好な関係を保てた住民に対しても「暗〜い感じの人」とネガティブな表現をしている。

ファックス文書では引越し・マンション関係の車両の路上駐車場所についても指示している。道路Aは路上駐車に対し、近隣住民から苦情が出たため、道路Bに駐車することを指示する。道路Bに駐車してもクレームはないとの予想するためである。

ここで注目すべきは大京にとって、路上駐車場所の判断基準が苦情の有無である点である。このファックスが出された2002年時点は路上駐車についての運用が現在と異なるため、「路上駐車を推奨するとはけしからん」という類の主張をするつもりはない。問題なのは大京の「近隣住民に迷惑をかける場所では路上駐車をしない」ではなく、「苦情が出る場所での路上駐車を避ける」という発想である。

マンション建築紛争では業者寄りの立場から住民の所謂「ゴネ得」に対して厳しい視線が向けられることがある。しかし本件の大京のように住民の迷惑をかけないように自発的に配慮するという姿勢がなく、苦情が出るか否かで対応するのでは住民としてもゴネるより他に対策がなくなる。

最後に本資料の出所について説明する。本資料は大京労働組合のウェブサイトに公開されたものである。大京労働組合では本資料の公開を公益通報と位置付け、近隣住民に対し、大京への抗議及び法的請求を推奨する。マンション建築紛争は全国各地で発生し、反対運動も組織化されてきているが、デベロッパー内部の実態は本件のような内部告発がなければ明らかになりにくい。大京労働組合の勇気ある内部告発に感謝したい。

 

 

ファックス文書:ライオンズステージ小平周辺地図

 

内部告発は近隣住民の利益

大京労働組合による内部告発は近隣住民の利益になると考えます。プライバシー侵害や侮辱的な発言をしたのは大京であって、大京労働組合ではありません。大京は近隣対策に不必要な情報までを収集し、第三者である大京管理にファックスという機密性を保持しにくい形で送付しています。不必要な個人情報を収集することも、それを他社に流すことについても問題視する意識はありません。大京労働組合が告発しなければ、この状況が永続することになります。

今回のファックス文書の性質上、書かれた内容は大京と大京管理の担当者間だけの秘密ではなく、関係者間で広く知れ渡ってしまうものです。ファックスを受け取った大京管理は管理組合からマンション管理を委託された管理会社の立場で受け取っています。グループ企業内の情報共有とは性質が異なります。引継ぎ文書と言うこともできますが、現場への引継ぎ文書ではなく、むしろメーカーによるユーザーへの引継ぎ文書に近いものです。要するに同一組織内の人間への引継ぎではなく、第三者への引継ぎです。

大京管理は管理組合に対して責任を負っており、管理組合に報告する義務があります。今回のファックス文書も管理組合に見せる義務があり、ライオンステージ小平の区分所有者全員が見ることができる立場にあります。「知らぬは住民本人ばかりなり」という状況の可能性もあります。その意味で、今回、大京労働組合がインターネットで告発したことは誰も知らなかった秘密を暴露したということとは相違すると考えます。

大京労働組合の告発がなければ何も変わらない状況であり、内部告発によって必要以上に個人情報を収集し、社外に送信する大京の問題点が明らかになりました。これは住民の利益です。

 

スカパー巨大アンテナに反対する住民の会住民大集会

電磁波 反対運動 電波

電磁波問題への関心の高さ

スカパー巨大アンテナに反対する住民の会が主催する住民大集会が200832日、江東区教育センターで開催された。約160人(主催者発表)という大勢の参加者が詰め掛け、電磁波問題に対する関心の高さを示した。

同会は東陽町の住民を中心に結成され、株式会社スカイ・パーフェクト・コミュニケーションズ(以下、スカパー)によるパラボラアンテナ設置に反対する団体である。スカパーは東京メトロ東陽町駅から徒歩5分の場所にスカパー東京メディアセンターの建設を進めている。そこでは屋上に直径約7m8mの巨大なパラボラアンテナを12基、直径約4mのパラボラアンテナを6基設置する計画である。

建設地の真向かい30メートルの至近距離にはマンションがあり、周辺には集合住宅やオフィスビルが林立する。そのような人口密集地でのパラボラアンテナ設置により、近隣住民は電磁波を24時間浴びる環境になり、人体のみならず精神に悪影響を与えるため、アンテナの設置を中止すべきと、同会は主張する。

同会では提訴や区議会への陳情、署名活動などを展開しているが、一方でスカパー側は工事を進め、既成事実を作ろうとしている。しかし同会が集会で160人もの参加者を集めたという事実は反対運動の広がりを物語っている。

集会の内容は以下の通りである。

・住民の会代表挨拶

・弁護団による解説

・江東区議会議員紹介・挨拶

・荻野博士による講演

・集会決意

最初の代表挨拶では門川淑子代表が状況を報告した。近隣住民らは2007119日、スカパーに対し、アンテナ設備建設の差し止めを求めて東京地方裁判所に提訴し、係属中である。2008年1月28日で7回目の口頭弁論が行われた。また、東陽二丁目町会会長が江東区議会や東京都議会に陳情を提出した。

続いて、原告弁護団による解説である。弁護団は榎本武光、鳴尾節夫、中村欧介、高木一昌、中村悦子の5人の弁護士からなる。高木弁護士が代表して「スカパー裁判のこれまでと今後」と題し、これまでどのように戦い続け、これからどのような戦いをすべきかと語った。

高木弁護士は最初に裁判の根拠を説明する。スカパーによるパラボラアンテナ設置で周辺に生活している人は不利益を被る。電磁波は人体に悪影響を及ぼすため、健康・安全に毎日を暮らしていく権利が侵害される。スカパーの経済的利益のために人として生きていく権利が脅かされる。これが差し止めを求める根拠である、と。他にも被侵害利益として精神的苦痛、日照・景観の阻害、嫌悪施設ができることによる資産価値低下を挙げる。

スカパーの問題は住民の権利を侵害する実体面だけでなく、住民に対する姿勢という手続き的な面にもあるとする。住民とスカパーの間に話し合いと呼べるものはなかった。理解を求める努力をせずに事業を進めようしている。話し合いのコミュニケーションがないまま、工事だけが進んでいる。

そして不誠実な姿勢は裁判手続きにおいても現れている。裁判において原告弁護団は被告側に求釈明(説明を求めること)を行ったが、スカパー側の回答は具体的内容ではなく、人を食った回答ばかりであった。

例えば「東陽町以外の場所にメディアセンターを建設することは検討しなかったのか」という問いには、検討場所として複数の地名を挙げるのみで、検討場所の具体的な地番や検討内容、選ばれなかった理由を開示しない。原告弁護団としては不十分な回答に対しては再度、求釈明を行うが、「裁判の中でもスカパーの対応には問題があることを心にとどめて欲しい」と強調した。

続いて裁判の争点について説明した。裁判の争点は、パラボラアンテナから発する電磁波は人体に悪影響を及ぼすか、である。この点について国内はもとより世界各国の研究結果を入手して立証を続ける方針とする。

スカパー側は「電波防護指針」を下回っているから問題ないと主張するが、日本の電波防護指針は先進諸国の基準に比べて緩やかである。しかも電波防護指針は熱効果を念頭に置き、生理的効果や免疫系やガンなどの非熱効果による健康影響の予防を考慮していないと主張する。

弁護団による解説後は休憩を挟み、出席した江東区議会議員が紹介された。斉藤信行、前田かおる、薗部典子、中村まさ子の各議員が紹介され、代表して斉藤議員が挨拶した。斉藤議員は区議会建設委員会の委員長で、建設委員会ではスカパー問題の陳情を審議中である。

斉藤議員は自らをスカパーとメディアセンターを施工する竹中工務店に憤りを感じている一人とする。建設委員会で建設現場を視察したが、両者は係争中であると主張して議員を現場に入れさせず、説明もしなかった。仕方がないため、隣のマンションから視察したという。

また、両者に電話で連絡したが、「責任者は留守」「社長は不在」の一点張りで、伝言を依頼しても連絡は皆無であった。200821日には委員長名で両者の社長宛に文書で申し入れをしたが、本日に至るまで何の音沙汰もない。区民の代表である区議会さえ、ないがしろにする対応である。一方で住民の戦いが両者を追い詰め、殻に閉じこもらざるを得なくなっているとも言える。「皆さんの戦いは地域住民の健康を守るだけでなく、電波行政にも影響を与え、各地の戦いの励みにもなる。共に頑張りましょう」と結んだ。

続いて荻野晃也・電磁波環境研究所所長(理学博士)による「電磁波による健康への影響について」と題した講演である。最初にメディアセンターの建設現場を見たと語る。「このようなところに、何でパラボラアンテナを作るのか」と悲しい気持ちになったとする。

荻野博士は「健康とは何かということを理解して欲しい」と語る。世界保健機関は健康を以下のように定義する。「健康とは身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない。(Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.)」

健康には精神的・社会的に良好な状態も含まれ、現実にパラボラアンテナが稼動して電磁波が発信され、ガンや小児白血病にならなくても、現在の状態でもスカパーは周辺住民を不健康にしていると主張する。

本論の電磁波の健康被害については世界中の研究成果を基に様々な問題を指摘した。

・電磁波の人体の影響には熱効果と非熱効果がある。規制は熱作用のみを対象とされがちだが、近年の研究では熱作用を起こすレベルよりも低い電磁波レベルで様々な生体への影響が出ることが明らかになっている。

・電磁波は大人よりも子どもに悪影響を及ぼす。携帯電話の電磁波が大人の頭よりも子どもの頭の方が遥かに深く貫いていることを示した研究がある。

・世界各地の疫学研究では放送や携帯電話のタワー周辺で白血病やガンが増加する。例えば韓国での研究では放送タワーの2km以内の小児白血病の増加率は2.29%である。

・スペイン北部のバラドリッドの調査では携帯電話のタワー周辺のコウノトリの巣ではヒナがいない巣が急増する。

・電磁派に過敏な人が増加している。電磁波で免疫機能が低下し、心臓圧迫、ストレス、精神不安、頭痛、睡眠不足などを引き起こす。

・日本で死産した胎児の性比を研究した結果、女子死産100人に対する男子死産の割合が1970年ごろから急激に増えていて、最近では220人を超えた。妊娠初期の1215週の死産に限定すると、男子は女子の10倍にも達していた。

参加者からの質疑応答ではパラボラアンテナ設置による悪影響について指摘された。

・パラボラアンテナが地震や災害で倒壊する危険性。アンテナは軌道上の人工衛星と通信するが、アンテナが倒壊すれば住民に向かって強力な電磁波が放射されることになる。

・電磁波が天空に向かって放射されるということは、付近のマンションは建て替えにより、高層化することが難しくなる。建て替えで容積率を活かせないマンションとなり、資産価値を低下させる。

最後に原告団長から集会決意が読み上げられた。スカパーは自社の経済的利益のために住宅密集地にパラボラアンテナを建設しようとする。原告団は勝利するまで戦うことの責務を感じている。戦いは容易ではないが、多くの力を結集すれば勝利は可能である、と。

 

●参考URL

スカパー巨大アンテナに反対する住民の会 公式ホームページ

http://www.ab.auone-net.jp/~fmt/skphp2.htm

スカパー巨大アンテナに反対する住民の会

http://www.geocities.jp/kotofamily2006/

マンションの隣りに巨大アンテナ一二基!?

http://www.jlaf.jp/tsushin/2007/1227.html

東京都議会都市整備委員会速記録第八号(東陽2丁目町会会長による陳情)

http://www.gikai.metro.tokyo.jp/gijiroku/tosei/d3040064.htm

 

パラボラ建設反対運動について

パラボラアンテナ建設は景観問題でもあります。この意味で口径の大きいパラボラアンテナならば周辺環境への影響は少ないというような主張は住民感情から言えば噴飯物です。加えて近接のマンション分譲主の一社である竹中工務店が、マンション分譲後に隣接地(自社所有地)にスカパーを誘致し、嫌悪施設の施工を行うことは信義則上問題ないかという論点もあります。

 

記事本文とコメントについて

私は「記事には責任があるが、コメントには責任がない」という主張はしておりません。その点についての主張は既に行いました。前提条件が誤っており、これ以上論じる意味はありませんが、記事本文とコメントの関係については興味深い話題ですので、ここで私の考えを述べたいと思います。これは反論(反論は実施済み)ではなく、むしろ独り言のようなものです。

私は記事とコメントは別物と考えます。コメントの内容を直接の理由として記事に対する評価を上下させるべきではないと考えます。勿論、コメントに問題があるため、記事そのものの信憑性が疑わしくなることはあります。しかし、それは記事とコメントが一体だからではなく、コメントを記事評価の間接証拠としたからです。記事を評価するに際し、記事外の間接証拠を評価対象とするか否かは一つの論点です。

間接証拠が許されるならば、記事のコメントだけでなく、他の間接証拠も評価対象とすることが許されるべきです。当該記者の過去の記事や、他人に記事に寄せたコメント、他の媒体に掲載した記事、面識がある場合の人柄などです。当該記事のコメント欄のコメントのみを他の間接証拠よりも優遇させる理由はありません。現実問題としても、同じ記者が過去に同一テーマで書いた記事の方がコメント以上に証拠価値があると思います。

コメントによって記事の評価が上がる場合もあります。記事本文だけでは、よく分からないがコメントによって疑問が解消したというような場合です。これはコメント欄を設けたことのメリットです。しかし、記事そのもの評価という点ではコメントがなければ理解できないような記事は、記事本文の表現が足りなかったということになり、その分、評価は低くなります。

 

本記事の位置づけについて

本記事の位置づけについて説明したいと思います。

本記事は「スカパー巨大アンテナに反対する住民の会」が主催した住民大集会をテーマとした記事です。パラボラアンテナ建設反対運動を述べた記事でも、建設そのものを論じた記事でもありません。このため、記事の内容は基本的に集会で出た話題に限定されます。

一方で記事を読まれた多くの方が結局、スカパーの電磁波で周辺住民に健康被害が生じるのか、という点が気になったという事実は受け止めております。但し誤った前提に基づいて、論理的に誤った非難を行われる方とは妥協するつもりはありません。

あくまで集会での話に限定する限り、健康被害については弁護団から裁判において、主張立証しており、今後とも証拠を提出し続けるとの報告がなされました。荻野博士の講演は電磁波の健康被害についての研究の紹介で、スカパーのパラボラアンテナに特化したものではありませんでした。スカパーそのものについては「スカパーの出す値を、そのまま信用していいか」と助言されました。

以上より、今回のテーマで書いた本記事は読者諸賢の問題意識を必ずしも満たせるものではなかったことは認めます。しかし、これは反対運動が健康被害についての具体的な根拠を有していないことを意味するわけではありません。住民大集会は反対運動の活動の一環であって、反対運動の全てではありません。弁護団も漠然と健康被害があると主張するわけで差し止めが認められるものではないと説明しており、そのために主張立証を続けています。

しかし反対運動や訴訟の全てについて書くのが本記事のテーマではありません。この点が本記事の限界であると認識しております。上記の問題意識に基づき、テーマ選定への批判や提言が出されることはもっともなことと思います。しかし、それは別テーマとなりますので、本記事の訂正や撤回、コメント欄での補足ではなく、別記事で実現すべきことと考えています。

尚、電磁波の健康被害のような問題を議論する場合については「科学的な議論」というような言葉が出てくることがあります。私は、この「科学的」という言葉が曲者と考えています。本件からは離れますが、この点については別の記事で論じたいと考えています。