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林田力『東急不動産だまし売り裁判』新聞 二子玉川ライズ第二地区問題

 

二子玉川東第二地区市街地再開発事業計画(案)に対する意見... 3

景観の破壊... 3

住環境悪化... 4

反公共性... 5

都市計画の私物化... 6

組合員構成の偏り... 6

社会状況に逆行... 7

住民無視... 8

不誠実な説明... 9

乱暴な工事... 9

結語... 10

二子玉川第2地区再開発事業計画縦覧と住民陳情... 10

二子玉川東地区まちづくり協議会が陳情審査結果を報告... 11

もう一つの二子玉川住民運動 玉川にエコタウンを作る会... 13

二子玉川の環境を守ろう お花見交流会開催... 14

お花見交流で見た二子玉川の環境破壊(1) 二子玉川ライズ タワー&レジデンス... 15

お花見交流で見た二子玉川の環境破壊(2) 多摩川暫定堤防... 17

お花見交流で見た二子玉川の環境破壊(3) 三菱地所玉川1丁目マンション... 18

多摩川暫定堤防の見直しを求めるお花見交流会開催=東京・世田谷... 19

世田谷区玉川のタウンミーティングの呆れた実態... 20

不満が残った世田谷区砧のタウンミーティング... 22

世田谷区議会が二子玉川ライズ答弁で騒然... 24

世田谷区議会で二子玉川再開発補助金削除の予算案組み換え動議... 24

建築紛争... 25

商業地域の仮処分決定に見る日照権保護の積み重ね... 25

開発審査会のあり方を考えるシンポジウム... 26

景住ネット第4回首都圏交流会が浅草で開催... 27

地域活性化には外部の目を取り入れた柔軟な思考... 29

 

 

二子玉川東地区再開発・差止訴訟被告側証人尋問(1)

http://www.news.janjan.jp/living/0801/0801158957/1.php

住民無視が見えた「二子玉川東地区再開発・差止訴訟」被告側証人尋問(2)

http://www.news.janjan.jp/living/0801/0801168999/1.php

二子玉川東地区再開発・見直しを求める集い

http://www.news.janjan.jp/area/0801/0801199192/1.php

二子玉川東地区再開発を問う住民の会発足

http://www.news.janjan.jp/area/0812/0812022692/1.php

二子玉川再開発の解決をめざす集会開催

http://www.news.janjan.jp/living/0903/0902288449/1.php

「これで良いのか二子玉川再開発」の集い開催

http://www.news.janjan.jp/living/0904/0903290449/1.php

二子玉川住民が再開発を意見交換

http://www.news.janjan.jp/area/0908/0908018086/1.php

二子玉川再開発差止訴訟は洪水被害が焦点に

http://www.news.janjan.jp/area/0909/0909180387/1.php

林田力「二子玉川東地区住民まちづくり協議会が住民提案を披露」JANJAN 20091027

http://www.news.janjan.jp/area/0910/0910252196/1.php

二子玉川再開発差止訴訟・住民側はあらためて「洪水被害」を主張

http://www.news.janjan.jp/living/0910/0910292391/1.php

二子玉川再開発差止訴訟・洪水被害の立証へ一歩前進

http://www.news.janjan.jp/living/0912/0912164460/1.php

二子玉川第2地区再開発事業計画縦覧と住民陳情

http://www.janjannews.jp/archives/2235623.html

「もう一つの二子玉川住民運動 玉川にエコタウンを作る会」JANJAN 201038

http://www.janjannews.jp/archives/2832798.html

林田力「二子玉川東地区まちづくり協議会が陳情審査結果を報告」JANJAN 2010315

http://www.janjannews.jp/archives/2882906.html

林田力「二子玉川の環境を守ろう お花見交流会開催=東京・世田谷」PJ News 2010328

http://www.pjnews.net/news/794/20100327_6

http://news.livedoor.com/article/detail/4684711/

「お花見交流で見た二子玉川の環境破壊(1) 二子玉川ライズ タワー&レジデンス」JANJAN 2010329

http://www.janjannews.jp/archives/2958303.html

林田力「世田谷区議会で二子玉川再開発補助金削除の予算案組み換え動議」PJ News 2010329

http://www.pjnews.net/news/794/20100328_5

http://news.livedoor.com/article/detail/4685904/

「お花見交流で見た二子玉川の環境破壊(2) 多摩川暫定堤防」JANJAN 2010330

http://www.janjannews.jp/archives/2965799.html

「お花見交流で見た二子玉川の環境破壊(3) 三菱地所玉川1丁目マンション」JANJAN 2010331

http://www.janjannews.jp/archives/2971738.html

「多摩川暫定堤防の見直しを求めるお花見交流会開催=東京・世田谷」PJニュース201045

http://www.pjnews.net/news/794/20100404_5

http://news.livedoor.com/article/detail/4699733/

 

二子玉川東第二地区市街地再開発事業計画(案)に対する意見

私は、二子玉川東第二地区市街地再開発に関係のある土地、建物に権利を有する立場から、意見書を提出する。

私は二子玉川東地区再開発に関する住民運動を継続的に取材してきた。建築・不動産分野を中心に記事を発表しており、該当分野について単行本を出版している(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社、2009年)。二子玉川東地区再開発についても継続的に取材してきた。取材などでの住民の声を踏まえ、地域の抱える課題を解決し、住民の生活環境の向上に寄与する街づくりとなることを願い、本意見書を作成した。

標記計画案については以下の理由から反対意見を表明し、計画案の廃案などの抜本的見直しを求める。尚、この意見の審査にあたっては、口頭意見陳述を申し立てる。

 

景観の破壊

本計画案では地上31階、高さ約137mの超高層ビルが立ち、それ以外の敷地のほとんどを約3020mのビルが覆うことになる。これは二子玉川の景観を破壊し、地域の魅力を損なう。景観は住民が毎日見て暮らすものであり、その心理状態への影響は甚大である。

再開発地域の二子玉川は国分寺崖線と多摩川に挟まれた自然環境豊かな風致地区である。富士山、桜、花火、多摩川、崖線(坂道)など、水と緑と景観を大切にすることが二子玉川スタイルである。これら二子玉川らしさを本計画案は破壊する。国分寺崖線上から富士山や丹沢連峰を望む景観も河川岸辺から崖線を望む連続性のある景観も超高層ビルが妨げてしまう。

再開発組合の有力地権者である東急不動産自身が再開発地域周辺の東京都世田谷区上野毛2丁目に分譲マンション・上野毛ファーストプレイスを2003年頃に販売した際、景観をセールスポイントとした。即ち、所在地は従来から豊かな自然に恵まれ、国分寺崖線から多摩川の夕日や、多摩川越しの富士山の眺望が望まれる地域とし、「品格と趣を脈々と継承する静謐の地」であるとして本来の本件地域の特質を最大の広告文句とした。

物件の広告Webサイトでも以下のようにアピールしていた。

l         「第一種低層住居専用地域・風致地区という閑静な邸宅街。国分寺崖線の緑に調和する3000本以上の緑化計画・屋上緑化などの環境条件のみならず、そこには多摩川や富士山を見渡す絶景が広がります。」

l         「国分寺崖線の傾斜を利用し、多摩川の潤い、富士の頂きを遠景に豊かな緑を暮らしの借景として望められるよう多摩川を望む西向住棟としました。」

l         「黄昏時、多摩川に映えるあたたかい夕日に、時を忘れたかのような美しさを覚え、バルコニーから鑑賞する夏の夜空を彩る花火に迫力と感動を知る。そして晴れた日の遠景に富士山の荘厳さを思う。この窓辺には心奪われる瞬間が今日も広がっています。」

その景観を東急不動産自身が組合員となっている再開発組合が破壊することは自己矛盾である。景観の良さというセールスポイントを信用して購入したマンション購入者との信義の点から許されない。現実に販売時のみ都合の良い説明をする詐欺的商法は訴訟(東急不動産消費者契約法違反訴訟アルス東陽町301号室事件)になった。

東急不動産は江東区東陽でも洲崎川緑道公園への眺望などをセールスポイントとして分譲マンションを販売したが、不利益事実(隣地建て替えによる景観・眺望阻害など)を説明しなかった。このため、301号室の購入者(=筆者)は消費者契約法第4条第2項(不利益事実不告知)に基づき売買契約を取り消し、東京地裁平成18830日判決(平成17年(ワ)3018号)は東急不動産に購入者への売買代金全額返還を命じた(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』88頁)。

景観の保全は行政上の要請でもある。条例が以下のように宣言するとおりである。

l         世田谷区風景作り条例前文「風景は、風土と文化や歴史の表れであり、そこに生活する人々によって創造され、受け継がれてきたものである。それゆえ風景は、そこに生活する人々のまちへの愛着を深め、地域の個性や価値観を形成するものであり、そこに生活する人々の貴重な共有の財産である。」

l         東京都景観条例前文「良好な景観は、生活に快適さと潤いをもたらすものである」

石川啄木は「汽車の窓はるかに北に故郷の山見えくれば襟を正すも」と詠んだ。山を望む景観は人々の心の原風景である。その貴重な共有財産である景観を本計画案は破壊するものである。

 

住環境悪化

住宅地における超高層ビル建設は住環境を悪化させる。そもそも住宅地に100メートル超の超高層ビルが建設されること自体が異様である。以下、各論を詳述する。

第一に日照被害(日照権の侵害)である。日照が喪失したことにより、病気になることもある。起床後に清々しい朝の光を体いっぱい浴びれば、体内時計がリセットされ、脳もスッキリと目覚めることができる。

実際、新築マンション「東急ドエル・アルス南砂サルーテ」(東京都江東区東砂)において、マンション購入後に隣地にマンションが建設され、日照時間が0時間となった住戸(計八戸)では住むに値しないため、いずれも所有者自身では住まず、部屋を賃貸マンションとして貸し出した(「街が変わる 江東マンションラッシュ」毎日新聞2002516日)。ここでも売主の被告東急不動産は、隣接地の再開発計画により日照がなくなることを説明せずに販売したとして購入者とトラブルになった。

第二に風の流れが乱れる「ビル風」による風害である。ビル風によって高層建築の周辺地域では歩行が困難になり、物が飛ばされることがある。ビル風害により転居を余儀なくされた住民による損害賠償請求が認容された事例がある(大阪高判平成151028日判時1856108頁、大阪地判平成131130日判時180295頁)。しかし、裁判で勝訴しても元の住環境がビル風で損なわれた事実は変わらない。このような悲劇を回避することが行政の務めである。

第三に圧迫感である。本計画案では約137mの超高層ビルを筆頭に敷地のほとんどを約30〜20mのビルが覆うため、見る場所によっては大きな圧迫感を与えることになる。

第四に大気汚染である。本計画案は再開発地域周辺の交通量を増加させ、大気汚染を深刻化させる。その結果、地域住民に甚大な健康被害をもたらす。以前より二子橋の交通渋滞が地域課題であったが、本計画案では何の考慮もされていない。

第五に電波障害である。地上波デジタルやスカイツリーへの移行が計画されている現在、電波障害は現時点で解消できれば済むという問題ではない。たとえば東京タワーからスカイツリーに変わったならば別の場所が電波障害になる可能性がある。この点については大きな問題になるとビジネス誌で指摘された(「盲点は都会に潜む“陰”」日経ビジネス2009127日号95頁)。

 

既に第一期工事(分譲マンション・二子玉川ライズ タワー&レジデンス建設など)が進行中であり、上述の被害が顕在化している。ビルの反射光により、変なところから変な時間帯に光が照射されるという想定外の被害も明らかになった。また、住民が親しんで来た多摩川からの風も届かなくなってきている。

住民は生命と健康を危険に晒す複合被害に苦しんでいる。住民は多大な心理的、生理的な影響を受けている。この状態で新たに超高層ビルを建設すれば住民の被害激化は明白である。

 

反公共性

本再開発事業は、規制緩和・容積率割増の上に巨大な超高層ビルを建設することを主眼とし、有力地権者である東急グループが開発利潤を追求する営利事業に過ぎない。本再開発事業に公共性は皆無である。これは以下の点が裏付ける。

第一に本事業は1988年の世田谷区長と東急グループとの密約を出発点としている。

第二に予定されている建物は商業施設やオフィス、ホテルである。これらは私企業が自らのリスクと負担で行うべきものである。文化・医療施設などの不足を感じている地域のニーズとの乖離が甚だしい。

第三に再開発事業予定地の85%以上が東急電鉄、東急不動産ら東急グループの所有地である。

二子玉川ライズが営利中心の再開発であり、二子玉川の魅力を喪失させるものであることはマスメディアでも認識されている。

「日本初のショッピングセンターが発散するおしゃれな雰囲気と、昔ながらのひなびた風情。東京都世田谷区の二子玉川駅周辺、通称ニコタマの魅力は、外来者と地元住民が織り成す『モザイク』にある。都心から離れた多摩川べりの人気エリアが1,000億円を投じる巨大開発の波に洗われるとき、何が失われ、何が残るのだろうか」

玉川高島屋SCのリニューアルにかかわった建築家の彦坂裕氏は以下のように語る。「ここは都心から離れた、いわば『離宮』。一般的な経済原理ではなく、時間軸が違う何かが求められる。山手線の駅前のような、ごく普通の開発になってしまえば、ニコタマのクォリティーは保てない」(「二子玉川−「離宮」に寄せる波」日経マガジン2009419日)。

 

都市計画の私物化

本計画案は東急グループの利潤追求のために東急グループに都合の良いように歪曲された都市計画に基づくものである。現実に二子玉川東地区再開発は駅前に都市計画公園を整備する風致地区という当初の都市計画から逆行している。

1988年に東急電鉄株式会社・東急不動産株式会社と当時の世田谷区長・大場啓司の間で「二子玉川公園計画に関する協定」が締結され、それに沿って計画公園の予定地が変更された。その結果、現在の形の二子玉川東地区再開発事業が可能になった。

また、再開発地域の容積率は200%、建ぺい率は60%であった。ところが都市計画決定によって容積率520%、建ぺい率80%に変更された。公園になるべき土地に高層ビルが建てられるようになり、東急グループに莫大な利益をもたらすことになる。

しかも再開発予定地周辺は高さ制限が課せられているが、再開発予定地には高さ制限がない。お互い様ではなく、周辺住民が一方的に迷惑を被る再開発である。周辺住民を犠牲にして東急グループの利益を図る再開発事業に公共性はない。

また、元々の再開発の計画では広域生活拠点を目指すとしつつ、吉祥寺や立川、町田をモデルとしていた。新宿や六本木のような高層ビル街にする現在の再開発とは乖離している。

 

組合員構成の偏り

本再開発事業は組合員構成の偏りの点でも重大な疑義がある。再開発事業予定地の85%以上が東急電鉄、東急不動産ら東急グループの所有地である。このため、再開発組合といっても圧倒的な大土地所有者である東急グループの意を体現したものに過ぎない。

実際、第1期事業は、二子玉川東地区市街地再開発組合の組合員の中に設立認可申請にも同意しなかった明確な反対地権者や具体的な権利変換に応じない実質的反対者を含めると、相当数の反対者がいたにもかかわらず、持分による多数決原理で強行された。地権者の真の総意に基づく再開発ではなかった。同じ悲劇を繰り返してはならない。

再開発は「当該区域内の土地の利用が細分されていること等により、当該区域内の土地の利用状況が著しく不健全である」地域を対象とする(都市再開発法第3条)。しかし、本事業は以下の理由から上記の要件に該当しない。

l         再開発事業予定地の大半は東急グループの所有地であり、「土地の利用が細分」の要件に該当しない。

l         予定地は風致地区であり、土地の高度利用を想定しておらず、「利用状況が著しく不健全」との要件に該当しない。

再開発は土地所有権などの財産権を制限するものであり、その適用は厳格に行われなければならない。大地権者である大企業が再開発組合を牛耳り、中小地権者を事実上追い出す大企業本位の再開発は都市再開発法の趣旨に反する。

 

社会状況に逆行

本計画案は現在の経済・社会状況に逆行する時代遅れの計画である。

第一に本計画案は経済状況・市況の悪化を無視した大規模な計画であり、事業が破綻する可能性は少なくない。100年に一度の大不況とも称される経済情勢下でバブル的な発想の営利施設が成功する可能性は低い。

人口減少で将来的にはオフィスも余ることは確実である。高層建築は維持費用・補修費用も高額になる。高くなればなるほど、メンテナンスの費用が指数関数的に増加する。建設会社は建設すれば儲かるが、再開発事業が行き詰ったら税金で穴埋めさせられる危険が高い。現実に身の丈に合わない、過大規模の再開発事業が破綻した例は少なくない。

「二子玉川再開発の解決をめざす集会」(にこたまの環境を守る会主催、2009228日)では「東急グループの「事業遂行能力」の危うさ」という表現まで飛び出している(「二子玉川再開発の解決をめざす集会開催」JANJAN 200932日)。

もともと本計画案は社会・経済情勢の変化を名目に第1期の事業計画認可(20053月)では白紙とされたが、その後にサブプライム・ショックやリーマン・ショックが起きた。経済状況は悪化する一方である。

現実に各地の再開発事業で規模縮小が行われている。たとえば小山市城山町3丁目の再開発事業では計画規模を当初の地上27階建て(高さ約100メートル)から20階程度(約60メートル)に縮小する(「100メートルビル60メートルに縮小 小山の再開発高層マンション」下野新聞20091029日)。

第二に区民負担である。世田谷区の財政は決して豊かではない。世田谷区では保育園、幼稚園の保育料値上げ、各種施設使用料値上げなど、区民の負担増加が見込まれている。再開発への税金投入は負担増加に苦しむ区民の納得を得られない。

第三に大規模開発そのものが時代遅れとなりつつある。歴史的な政権交代により誕生した鳩山政権は「コンクリートから人へ」をキャッチフレーズとし、開発中心の土建国家的発想からの決別を宣言した。現実に公共事業の大幅な削減方針が打ち出されるなど、建築界・土木界を取り巻く環境は激変した。

第四に環境問題である。大規模開発は環境保全・二酸化炭素削減の動きにも逆行する。

以上より、本計画を現在の社会状況に合わせた現実的な計画に軌道修正することを要望する。

 

住民無視

地域環境に大きな影響を及ぼす再開発事業では周辺住民との合意形成をきちんと持ちながら詳細計画をつくり、また、実際の建設を行っていく必要がある。しかし、計画案では住民意見が反映されておらず、周辺住民との合意形成を作っていく手法が担保されていない。

本事業には計画変更を求める多数の請願署名が集められ、区議会及び都議会に陳情が提出された。「二子玉川東地区住民まちづくり協議会」「にこたまの環境を守る会」「二子玉川の環境と安全を取り戻す会」「玉川にECO townを作る会」など様々な住民団体が活発に活動し、「二子玉川東地区住民まちづくり協議会」からは具体的な提案も提示されている。これらの動きに対し、事業者や行政の対応は不十分である。現段階で本計画案は地域住民の合意形成を得た計画とは程遠い状況にある。

住民集会「わたしたちのまち二子玉川を守る集い」(にこたまの環境を守る会主催、2008114日)で出された住民意見を紹介する(林田力「二子玉川東地区再開発・見直しを求める集い」JANJAN 2008120日)。

「今の景観が気に入っている。再開発ビルが建つようであったら、引越ししたい」

「バス停の前のケヤキが全て伐採されたのがショックであった。再開発によって自然が失われてしまう」

「世田谷区は何故、再開発組合の言いなりになっているのか」

「税金によって地域住民を追い出し、税金によってビルを建て、公害を撒き散らす」

「後世に残す財産がコンクリートの建物だけというのは貧しい」

「再開発組合主催の説明会に出席したが、腹が立って仕方がない。ガス抜きのための説明会であって、住民の意見を聞こうという姿勢は皆無である」

再開発事業の住民無視の例として、以下で「不誠実な説明」と「乱暴な工事」について述べる。これらは第一期事業で明らかになったことである。第一期と第二期では事業主体(再開発組合)は形式的には別組織であるが、東急電鉄・東急不動産が有力地権者である点は変わらず、同じ体質である。この状態では住民無視が繰り返されることは確実であり、周辺住民と合意形成していく制度的手当てを担保する必要がある。

 

不誠実な説明

本再開発事業の住民軽視の体質は既に第一期事業で明らかになっている。

第一期事業は地権者や住民に十分な説明もなく、東急グループ中心に進められた。たとえばIb街区の商業棟は元々8階建てと説明されていた。それがいつの間にか16階建てとなり、階数が倍増してしまった。このような不誠実な説明が横行している状況に住民の不信感は高まっている。

この不誠実さは東急グループの体質的なものである。以下の事例がある。

東急不動産は不利益事実(隣地建て替えなど)を隠してアルス東陽町301号室をだまし売りし、裁判で消費者契約法に基づく売買契約取り消しが認定された(前述の東急不動産消費者契約法違反訴訟)。

東急不動産はアルス横浜台町(横浜市神奈川区台町)でも隣地マンションの建替え計画を説明せずに販売し、購入者から買戻し及び損害賠償を求めて提訴された。購入価格5220万円の物件が日陰になったために売却査定では3100万程度しかならなかった。

東急不動産は東急ドエル・アルス南砂サルーテを「再開発計画などまったくない」「ここ5、6年で何か建つことはない」と説明して販売したが、入居から僅か4ヵ月後で11階建てのマンション建設計画が持ち上がった。東急不動産は開発計画を知らないと主張したが、マンション問題に詳しい折田泰宏弁護士は「状況から判断して知らなかったはずはない」と指摘する(「日照権をめぐるトラブル 事前説明のないマンション建設」日本消費経済新聞200073日)。住民の一人は「誠意ある対応をしてもらえなかったのが残念」と憤る(「街が変わる 江東マンションラッシュ」毎日新聞2002516日)。

また、東急電鉄については秘密主義と住民への不誠実な対応が住民反対運動を噴出させていると分析されている(「「ブランド私鉄」東急沿線で住民反対運動が噴出するワケ」週刊東洋経済2008年6月14日号)。

東急グループは沿線の住宅を優良住宅地として分譲してきた。その東急が二子玉川東地区再開発で住環境破壊・街壊しを進めている。この点で二子玉川東地区再開発も上述のマンションだまし売りも「売ったら売りっぱなし」「売り逃げ」という同根の問題である。

 

乱暴な工事

現在進行中の第一期工事も住民を無視した乱暴なものである。町中至る所で工事を行っており、工事現場の中を道路が通っている感がある。二子玉川駅東口を出ると目の前が工事現場で塞がれる。工事現場を迂回しなければ目的地に着くこともできない。工事の都合で道路が突然、通行止めになり、住民は毎週のようにルートを変えなくてはならない。夜間、自転車で走っていて通行止めのバーに衝突した人もいる(林田力「二子玉川住民が再開発を意見交換」JANJAN 200983日)。

住民団体「二子玉川東地区再開発を考える会」総会では「工事の振動と騒音が酷すぎて、寝ていられない。」との声が上がった(林田力「二子玉川東地区再開発を問う住民の会発足」JANJAN 2008123日)。

NHK総合のテレビ番組「ブラタモリ」(20091015日放送)でも二子玉川を訪れたタモリに「工事ばっかり」と酷評された(林田力「TV番組「ブラタモリ」と再開発で失われるニコタマの魅力」JANJAN 20091017日)。

 

結語

二子玉川は後世に悔いを残すバブルの遺物となる瀬戸際にある。鳩山内閣による八ツ場ダム建設中止発表後の混乱が象徴するように一度進行したプロジェクトの中止には大きな痛みを伴う。この点を踏まえるならば本計画も早急に進めるべきではない。住民の合意形成を得るための話し合いの場を作り、住民の意見を幅広く集約して計画案を検討し直すことを要望する。

 

二子玉川第2地区再開発事業計画縦覧と住民陳情

二子玉川東第2地区第一種市街地再開発事業(第2期事業)の事業計画の縦覧が2010年1月7日から開始された。第2地区は東京都世田谷区玉川の二子玉川東地区再開発地域の中央部分に位置するが、2005年の二子玉川東地区第一種市街地再開発事業(第1期事業)の事業計画認可に際して、社会・経済情勢から白紙になっていた。

第1期事業では住環境破壊などを理由に住民から訴訟や反対運動が起きているが、第2期事業に対しては住民団体「二子玉川東地区住民まちづくり協議会」(飯泉善一郎会長)が住民参加の街づくりを目指し、水と緑と景観を重視する住民案を作成した(「二子玉川東地区住民まちづくり協議会が住民提案を披露」)。その上で約1000筆の署名を集め、「二子玉川東地区第一種市街地再開発事業第2期事業基本計画等について、住民、行政、事業者で協議する場を設ける事に関する陳情」を世田谷区議会議長に提出した。

ところが東急グループを中心とする再開発準備組合は2009年11月18日に事業計画の認可申請を世田谷区に提出し、区は11月24日に東京都に進達した。事業計画の認可権者は都知事であり、認可申請前の事前調整の段階から、認可申請を審査する都に主戦場が移行したことになる。

都にあっさりと進達した区への失望と批判の声が住民から出たものの、住民まちづくり協議会は情勢の変化に即応した。区議会への陳情を取り下げ、住民まちづくり協議会会長・にこたまの環境を守る会事務局長・二子玉川の環境と安全を取り戻す会代表の連名で「二子玉川東第2地区第一種市街地再開発事業に関する陳情」(2009年12月15日付)を東京都議会議長に提出した。ここでは事業認可申請の審査にあたり、住民の意見を十分に聞くように事業者を指導すること及び住民と事業者が話し合う場を調整するように世田谷区へ働きかけることを求めた。

にこたまの環境を守る会は第一期事業の反対運動や裁判を支援する団体であり、二子玉川の環境と安全を取り戻す会は玉川一丁目の大規模堤防計画の見直しを求める団体である。二子玉川の住環境の問題に取り組む3団体が団結することで、広範な住民意見を背景にしていることをアピールした。

一方、認可申請を受けて世田谷区では事業計画の縦覧を開始した。縦覧期間は1月7日から21日まで(土・日曜、祝日を除く)の午前9時から午後5時までである。縦覧に供された事業計画に対しては2月4日までに意見書を提出することができる(都市再開発法第16条第2項)。

事業計画によると、人工地盤の上に地下2階、地上31階、搭屋1階建て、高さ137mの超高層ビルが建てられる。敷地面積28083平米に対し、建築面積は22466平米で、建ぺい率80%を目一杯使用する。ビルの用途はオフィス、シネコン、フィットネスクラブ、ホテルなど営利性の強いものばかりである。

住民まちづくり協議会では1月9日に玉川町会会館で集会を開催し、区議会に提出した陳情の取り下げなどの経緯を説明し、今後の対応を話し合った。既に縦覧を見に行った住民も多かったが、一様に縦覧の不親切さを指摘した。具体的な指摘内容は以下の通りである。

・世田谷区の広報誌(2009年12月15日号)に縦覧の案内が掲載されたが、縦覧場所には区拠点整備第二課しか掲載されていない。実際には準備組合事務所でも縦覧されている。再開発で最も影響を受ける周辺住民にとっては区役所よりも、再開発地域内にある準備組合事務所の方は行きやすい。

・午前9時半に準備組合事務所に行ったが、門が閉まっており、入れなかった。

・平日夜間や休日にも縦覧をしなければ勤め人は見に行くことができない。特に土曜日は第1期事業の工事を行っており、対応は可能な筈である。

・資料を見ている間、係員にじっと見つめられており、気分が良いものではない。

「縦覧の手続をコソコソしている」「住民に見に来てもらいたくないのではないか」との感想が出され、分からない点は積極的に「これは何ですか」と質問しようと確認し合った。最後に飯泉会長が「多くの力を合わせて、意見を出し、良い街づくりをしていこう」と呼びかけ、集会は幕を閉じた。

 

二子玉川東地区まちづくり協議会が陳情審査結果を報告

東京都世田谷区の住民団体「二子玉川東地区まちづくり協議会」(飯泉善一郎会長)が2010年3月13日に玉川町会会館にて集会を開催し、東京都議会に提出していた陳情の審査結果を報告した。

協議会は二子玉川東地区第1種市街地再開発事業(主に第2期事業)に住民の声を反映させることを目的として結成された団体である。協議会会長・にこたまの環境を守る会事務局長・二子玉川の環境と安全を取り戻す会代表の連名で1138筆の署名を集めて「二子玉川東第2地区第一種市街地再開発事業に関する陳情」(2009年12月15日付)を都議会に提出した。陳情内容は第2期事業の事業認可の審査にあたり、再開発組合が住民の意見を十分聞くように事業者を指導すること、住民と再開発組合が話し合う場を調整するように世田谷区に働きかけることの2点である。

2010年2月22日に都議会都市整備委員会で陳情が審査され、継続審査となった。自民党と公明党の2会派が継続審査を主張したためである。一方、委員会で行われた栗下善行議員(民主党)と大島よしえ議員(日本共産党)の質問によって二子玉川再開発の問題が改めて浮き彫りになった。

栗下議員は再開発に対する周辺住民の生活環境への影響が大きいと指摘した。2005年の第1期事業の事業計画認可時も多数の反対意見が意見書として提出されたが、取り上げられずに住民は納得していないとする。住環境の悪化に加え、多額の税金投入にも反対意見が強い。

石川進・民間開発担当部長は再開発で使われる税金の内訳を答弁した。それによると補助金は国202億円、都6億円、世田谷区167億円の計375億円で、これに公園・道路の整備費用が加わり、トータルで700億円になる。二子玉川再開発が世田谷区だけでなく、都民・国民にとっても利害関係のある問題である。

石川部長は再開発組合に話し合いを働きかけ、説明会を開催させたと答弁したが、栗下議員は「形式的な働きかけを行っても住民は納得していないから今回の陳情となった」と批判する。住民は説明だけでなく、計画の変更を求めており、都職員は権限の許される範囲内で都の株主である住民のためにベストを尽くす姿勢を忘れないで欲しいと注文した。

大島議員は「現地を見たが、水とみどりのまちとは異質なものになっている」と指摘した。その上で第2期事業計画案に対する意見書の内容説明を求めた。答弁によると、199通の意見書が提出された。

賛成意見は僅か8通(ホテルや映画館などを期待)で、残りの191通は反対意見である。日影被害、風害、景観の喪失、環境悪化、道路・鉄道の混雑激化、税金投入などを理由として、事業計画の抜本的見直しを求めた。この答弁を受け、大島議員は「住民の意見の価値、重みを受け止めるべき」と注文した。

都議会では2009年の都議選によって民主党が第一党になり、自民党・公明党が過半数割れした。この状況から協議会では陳情採択に期待を抱いていたために、継続審査という結果には失望を隠せなかった。一方で民間施行の再開発事業は再開発組合対住民という民間対民間の問題として政治は一方に肩入れすべきではないという意識が依然として根強い中で、都議会で再開発の問題点が具体的に議論されたことは変化である。

石川部長は「今後も区と再開発組合に住民と話し合うように指導する」「199通の意見書をしっかり審査する」と答弁した。この答弁を言葉だけで終わらせず、住民の意見を街づくりに反映させるために、協議会では今後の主張で活用していくことを確認した。

 

もう一つの二子玉川住民運動 玉川にエコタウンを作る会

東京都世田谷区の二子玉川では二子玉川東地区再開発に対する住民運動が活発化している。再開発差し止め訴訟や世田谷区の公金支出差し止め訴訟を支援する「にこたまの環境を守る会」や住民参加の街づくりを目指す「二子玉川東地区住民まちづくり協議会」の活動は既に先行記事で紹介したことがある。

本記事では未着工の第2地区を「風と緑のあるエコタウン」とすることを目指す「玉川にエコタウンを作る会」(トシコ・スチュワート代表)を紹介する。

東急グループを中心とする再開発準備組合の計画案(第2期計画案)に依ると、二子玉川駅を出たらオフィスビルをはじめとする高層ビル群が目に入ることになる。これに対し、エコタウンを作る会では二子玉川らしさのある緑に溢れ、自然に負担をかけない次世代に残せる低層の街作りを訴えている。オープンカフェや小ホールそして図書館等のある緑の空間にテラスハウスを配した、コンクリートのビル群ではなく風の道を確保し、環境負荷を軽減した街作り構想である。

エコタウンを作る会は2009年7月に結成された。同じく第2地区を対象に住民主体の街づくりを目指す「まちづくり協議会」と別団体にして結成した理由は、今迄にない提案型の住民運動を目指していることである。つまりは自分たちの街作りとしてのコンセプトを示し、賛同者を募りパワーとする考え方だ。複数の団体がそれぞれ活動することで、住民運動の裾野が広がり、再開発問題自体の認知度が上がるという効果もある。「まちづくり協議会」ら他の住民運動とも情報交換しながら独自に活動している。

エコタウンを作る会では最初に住民向けにアンケートを実施したところ、エコタウン構想に圧倒的な賛同を得られた。アンケートは2009年9月に1ヶ月間実施し、回答数200強のうち、反対意見は僅か2名であった。

最近の二子玉川では昼間、若い母親層が子どもと高島屋に遊びに来ているのが目に付く傾向にある。しかしデパートしか行く場所がない状態は親子共々不幸だと思う。そのような親子連れにショッピングにプラスして提供したい場所がエコタウンである。

第2期計画案では巨大なオフィスビルが中心であり、親子連れの居場所もない。たとえシネコンのような娯楽施設を作ったとしても、高層ビル群では空がなく、息が詰まる。エコタウンでは映画館もミニシアターで低層棟に入れ、空を確保し、憩いの場所を作る。このエコタウン構想は次世代の親子が楽しめる場所であると共に、シニア世代も呼び込め少子高齢化という日本社会の課題にも対応できるものである。

第2期計画案は、第1期再開発事業で建設中の高層マンション「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」に入居する住民にとってもデメリットである。マンションから駅までの間にコンクリートで固められたオフィス中心の高層ビルが立ち塞がることになる。これに対してエコタウンならば従来からの住民にも高層マンションに入居する新住民にも共に心地よい出会いの場を提供できる。

エコタウンを作る会が第2地区を低層建築物中心にすべきだと主張する背景には、東急田園都市線の混雑・遅延状況がある。この数年、田園都市線沿線では数多くの高層マンションが建設され、人口が膨れ上がっているため、ダイヤ通りに電車が動いていない。この上に二子玉川に巨大ビルができたら、爆発的な人口が二子玉川に集中するため、田園都市線及び同じく二子玉川駅を通る大井町線はラッシュ時には危険なほどパンク状態に陥るであろう。その将来的不安を避けるために人口を抑える事が大切だ。

エコタウンを作る会では結成当初から世田谷区や東京都、区議会議員、都議会議員、準備組合、東急電鉄などに直接訴えてきた。スチュワート代表は、エコタウン構想に賛同する議員等も少なくないと語る。世田谷区は都市計画法を盾に再開発推進の姿勢を変えていないが、これからも将来を見据えて働きかけて行きたい。それには住民パワーを集め、二子玉川が好きで訪れる人々等に会の認知度をアップさせて行くことが次の運動となる。そして将来的にはエコタウンを作る会を、玉川に緑の豊かな環境を維持する運動に繋げて行きたいと考えていると話す。

 

二子玉川の環境を守ろう お花見交流会開催

東京都世田谷区の二子玉川地域で街づくりを考える住民団体が集まった「二子玉川の環境を守ろう お花見交流会」が2010327日に多摩川の土手(多摩堤通り脇)で開催された。

以下の団体をはじめとする多くの住民団体の会員が交流した。

・にこたまの環境を守る会:二子玉川東地区第1種市街地再開発事業差し止め訴訟や再開発への公金支出差し止めの住民訴訟を支援する

・二子玉川東地区住民まちづくり協議会:二子玉川東第二地区第一種市街地再開発事業に住民の声を反映させることを目指す

・二子玉川の環境と安全を取り戻す会:多摩川の堤防建設の見直しを求める

・玉川にエコタウンを作る会:再開発地域(II-a街区)を「風と緑のあるエコタウン」にすることを目指す

会場となった多摩堤通り脇の土手は再開発で町中が工事現場となってしまった二子玉川の異様さが実感できる場所である。土手には桜の木が並び、お花見スポットであったが、道路の拡幅で道路側の枝が切られてしまった(写真参照)。また、多摩堤通りは慢性的な渋滞状態であり、再開発による人口集中で渋滞の一層の悪化が懸念される。その奥には盛り土がされ、小山のような都市計画公園が周辺住民を拒絶するようにそびえている。

交流会では多くの住民運動関係者が各々の運動について説明した。二子玉川東地区住民まちづくり協議会の飯泉善一郎会長は都議会に提出した陳情(「二子玉川東第2地区第一種市街地再開発事業に関する陳情」)など、二子玉川東第二地区第一種市街地再開発事業をめぐる状況を説明した。

差し止め訴訟や住民訴訟の住民側訴訟代理人である淵脇みどり弁護士は「地域を見て回ったが、街全体が工事で作りかえられている。住民にとっては街壊しになっている」と指摘した。世の中は開発優先を見直す方向に動いているので、力を合わせて頑張っていきたいとまとめた。

玉川にエコタウンを作る会のトシコ・スチュワート代表は再開発の問題点を指摘した。再開発で計画されている二子玉川公園(仮称)の盛り土の安全性について世田谷区に確認したところ、「検査して汚染されていないことを確認したから大丈夫」との回答であった。ところが、検査結果のデータは提示できないとする。「本当に検査しているのか疑わしい」と主張した。また、公園の下にトンネルを通す計画になっているが、トンネル内に充満する排気ガスを外に出す装置を設置していないとする。

その二子玉川公園の問題に取り組む木村氏は工事主体が東急建設の二子開発建設事務所であることが最近になって分かったなど、事業者や世田谷区は住民に対して隠す傾向にあると指摘した。きちんと追及していかなければならないと主張した。

「二子玉川の環境と安全を取り戻す会」の関代表は、暫定堤防建設工事によって河川敷が見るも無残な姿になってしまったと説明した。住民らは2010129日に国と工事業者を相手として建築工事差し止め仮処分を東京地方裁判所に申し立て、現在も係属中である。

巨大な堤防は無用の長物であり、反対に雨水排水の障害となり、内水氾濫の危険を増大させる。また、堤防で河原への視界が悪くなり治安が悪化する。しかも、堤防建設は鳥獣保護区の貴重な自然環境を破壊するなどと主張している。いい環境を残せるように精一杯取り組みたいと述べた。

三菱地所のマンション(世田谷区玉川一丁目計画)建設見直しを求める吉倉氏は低層住宅地が広がる地域に川べりに沿って8階建てのマンションが建設されると、川からの景観が悪くなり、北側の戸建ての日当たりも悪くなると訴えた。地域に一つでも高層建設を許してしまうと、どんどん建ってしまう。

住民らの説得行動に対して三菱地所は東京地方裁判所に妨害禁止の仮処分を申し立てたが、工事現場に対する抗議行動は毎朝続けている。現地周辺の道路は狭く、玉川福祉作業所が隣接しており、大型の工事車両の進入は歩行者の安全も脅かしている。三菱地所本社前でのアピールも続けている。

交流会では二子玉川東地区再開発地域や多摩川暫定堤防や三菱地所のマンション建設現場を見て回り、開発による環境破壊の実態を確認した。

 

道路の拡幅で道路側の枝が切られた桜の木(撮影:林田力、327日)

 

お花見交流で見た二子玉川の環境破壊(1) 二子玉川ライズ タワー&レジデンス

二子玉川(東京都世田谷区)の環境を考える住民団体が集う「二子玉川の環境を守ろう お花見交流会」が2010年3月27日に開催された。

一年前の同時期に二子玉川東地区再開発の見直しを求める「にこたまの環境を守る会」では集会を開き(「「これで良いのか二子玉川再開発」の集い開催」)、集会終了後には花見をした。今回は再開発問題だけでなく、他の問題に取り組む団体も参加し、それぞれの現場(二子玉川ライズ タワー&レジデンス、玉川の暫定堤防、三菱地所の玉川1丁目マンション)に足を運ぶことで、相互に問題を理解しあった。4月3日の11時(雨天4日)にも多摩川の川岸で再び「お花見交流」が行われる。

本記事では「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」の問題について述べる。「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」は二子玉川東第二地区第一種市街地再開発事業で建設された超高層マンションである。タワーイースト・タワーセントラル・タワーウェストの3本のタワーを中心とする分譲マンションである。2010年5月竣工予定であり、完成に近づきつつある。

近隣住民は風致地区の二子玉川に超高層マンションは不似合いであり、日影被害や景観破壊・電波障害、人口増加による鉄道・道路のパンクなどの問題があると指摘されている。お花見交流では「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」の風害と圧迫感を改めて確認した。

急速に発達した低気圧の影響で3月21日に吹き荒れた強風は、「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」の風害の強さを示す置き土産も残した。「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」の目の前にある樹木が曲がってしまった。近隣住民は強風がビル風で増幅された結果と分析する(写真1参照)。

再開発地域の南側に位置する二子玉川南地区では「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」の圧迫感は想像以上である。一見すると細長いタワーマンションでは圧迫感は相対的には小さいと考えたくなる。しかし、3本のタワーが微妙な位置関係で建っている「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」では、どの角度から見ても視界を大きく遮ることになる(写真2参照)。

この3本のタワーの位置関係はマンション購入者にとっても微妙である。写真撮影時はタワーセントラルがタワーウエストの日陰になっていた。タワーセントラルは他の時間帯はタワーイーストの日影になる。日影になるような高層マンションの高層階が住民にとってメリットがあるか疑問である。

多摩川の河原からでも「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」の圧迫感は大きい。河原と再開発地域の間に位置する南地区の住民の圧迫感は甚大である。これだけ近くに見えるならば、上から覗かれるというプライバシー侵害も現実的な懸念になる。

再開発の反対運動では、これまで再開発地域の北側の被害に注目する傾向があった。伝統的な日照権の枠組みでは高層建築の被害は建設地の北側に目が向きがちである。また、再開発差止訴訟控訴審の争点になっている洪水被害も再開発地域の北側の問題である(「二子玉川再開発差止訴訟は洪水被害が焦点に」)。しかし、南側にも被害を及ぼしている問題であることを実感した交流会であった。

 

写真1:100327riseTree.JPG:「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」前の樹木。3月21日の強風で曲がっている。

写真2:100327tamaRise.JPG:多摩川の河原から撮影した「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」。手前中央がタワーイースト、タワーイーストの日陰になっている右側がタワーセントラル、左側がタワーウエスト。

 

お花見交流で見た二子玉川の環境破壊(2) 多摩川暫定堤防

前回の記事に引き続き、二子玉川の住民団体が集った「二子玉川の環境を守ろう お花見交流会」を報告する。本記事では多摩川の暫定堤防を取り上げる。

二子玉川南地区の多摩川の川岸では暫定堤防の建設工事が進められ、自然が破壊されている。もともと二子玉川南地区は既存堤防よりも川寄りに位置している。これは地域の住民が川べりの景観を破壊する川岸への堤防建設に反対したためである(「TV番組「ブラタモリ」と再開発で失われるニコタマの魅力」)。川べりの自然環境と共存してきた二子玉川南地区であったが、国土交通省は2009年11月頃から暫定堤防の建設に着手した。

暫定堤防の建設地域は鳥獣保護区であり、「せたがや百景」に選定された松林(多摩川沿いの松林)があった。役所広司と渡辺謙が共演した映画「絆」(根岸吉太郎監督)に登場した桜も存在する。これらの貴重な自然が暫定堤防建設工事で破壊される。既に松林は伐採され、一部の樹木だけが移植された。しかし、元々の松林は樹齢百年を超える樹木が群生して根が絡み合っており、簡単に根付くものではない。

根付く前に洪水でも起きれば、水によって掘り起こされ、倒木が障害となって大きな災害を起こす危険もある。兵庫県佐用町などを襲った台風9号の豪雨水害(2009年8月)も流木が被害を拡大させた(「大切な奥山の生物多様性を取り戻すために」)。

松の木を移植した場所は公園になる予定であるが、数日前の雨でできた水溜りが広がっていた(写真1参照)。暫定堤防建設のために樹木を伐採して裸地だらけになった結果、雨水浸透力が落ちている。暫定堤防が内水氾濫の危険を増大させるとの住民主張の正しさを裏付ける状況である。

暫定堤防建設は区民の憩いや遊びの場も減少させた。玉川一丁目河川広場の入口には世田谷区玉川公園管理事務所と国土交通省京浜河川事務所田園調布主張所の連名で「多摩川の河川工事に伴い、11月16日をもって閉鎖いたします」との看板が立てられていた(写真2参照)。

この看板は手続き上の問題を示す証拠となる。世田谷区議会では議案第99号「世田谷区立身近な広場条例の一部を改正する条例」が2009年12月4日に自民党、公明党、民主党などの賛成で可決され(共産党、生活者ネットワーク、社民党などは反対)、玉川一丁目河川広場は廃止された。

廃止されるまでは玉川一丁目河川広場は広場として存在しており、行政が条例に基づかずに広場を閉鎖したことになる。これに対して区議会は広場廃止の議決で追認した。行政の暴走をチェックするのではなく、事後的にお墨付きを与える機関と成り下がったかのような区議会の議決に日本の民主主義とは何かと自問した住民も少なくない。

残された樹木には「桜や松を切るな!これ以上自然を壊すな!」の横断幕などが付けられ(写真3参照)、住民側は必至の抗議活動を続けている。

 

写真1100327park.JPG:移植された松の木。手前には水溜りができている。

写真2:100327kanban.JPG:玉川一丁目河川広場閉鎖を告げる看板

写真3:100327matsu.JPG:「桜や松を切るな」の横断幕が付けられた樹木

 

お花見交流で見た二子玉川の環境破壊(3) 三菱地所玉川1丁目マンション

前回の記事に引き続き、二子玉川の住民団体が集った「二子玉川の環境を守ろう お花見交流会」を報告する。本記事では三菱地所の玉川1丁目計画を取り上げる。

玉川1丁目計画は世田谷区玉川1丁目のパイオニア研修場跡地に8階建ての分譲マンションを建設する計画で、施工は浅沼組である。建設地周辺は4階建てのマンションを除くと2階建ての住居が大半であり、8階建ての威圧感は大きい。周辺住民は「玉川1丁目の住環境を守る会」を結成して、抗議活動を続けている。

建設地周辺には反対運動の幟や看板が林立しており、反対運動の根強さを示している。赤字で「三菱地所・浅沼組 地域住民無視 怒 怒 やめろ」と書かれた激烈な看板もある(写真1参照)。

建設地の北には二子玉川東地区再開発で建設される16階建てのビル(「二子玉川ライズ ショッピングセンター」などが入居予定)が建てられている。このため、建設地の北側の住宅は2つのビルに挟まれる(写真2参照)。その圧迫感の中での生活を強いられることになる。

建設地には「二子の渡し」の目印となっていた樹齢150〜300年の松の木が5本生えていた。住民側は松の保全を要求していたが、2009年11月19日に4本の松を住民に予告せずに突然伐採した。住民の抗議によって最後に残った1本の赤松だけが保全されることになった(写真3参照)

お花見交流会では現地を訪れた参加者の要望で工事責任者である浅沼組の沢田氏が説明したが、住民感覚との乖離を印象付けた。「8階建てにする根拠は?」と聞くと、「メイズプランに聞いてください」と答える。問い合わせ先が建築主の三菱地所ではなく、メイズプランである根拠を聞くと、最初は「看板に連絡先として書いてあるから」と答えたが、その後で「三菱地所に直接尋ねてもいい」となった。

住民から抗議を受けていることは認識しているが、それに対しての意見を尋ねると「ノーコメント」を貫いた。住民から失笑が起きたが、発注者の要望通りに施工するのが施工者の役割であり、コメントする立場にないとの主張である。これに対して、住民は「内部では役割分担があっても全体が一体として工事をしており、人間の住む環境を破壊している。それに対して私はコメントする立場にない」で済ませるのかと反発した。

「たとえ住民が不幸になっても発注者の計画に従って建設するのが淺沼組のスタンスですね」と確認すると、「それが請負者の立場だ」と回答した。ここからはハンナ・アーレントの言葉「服従は支持と同じ」を想起する。発注者の指示があるとしても、それを支持しているから浅沼組は工事を請け負っている。「コメントする立場にない」は卑怯な回答である。

三菱地所マンション問題での住民の一番の不満は、住民の意見に耳を傾ける姿勢が事業者に根本的に欠けていることである。それが実感できた交流会であった。

 

写真1:hantai.JPG:反対運動の看板

写真2:100327mitsubi.JPG:玉川1丁目計画工事現場。後ろに見えるのが「二子玉川ライズ ショッピングセンター」などの入る再開発ビル

写真3:100327akamatsu.JPG:住民の抗議により、伐採を免れた赤松

 

多摩川暫定堤防の見直しを求めるお花見交流会開催=東京・世田谷

東京都世田谷区の二子玉川地域で街づくりを考える住民団体が集う「二子玉川の環境を守ろう お花見交流会」が2010327日に続いて、43日にも開催された。今回は暫定堤防建設の見直しを求める「二子玉川の環境と安全を取り戻す会」が主体で、多摩川のほとりで開催された。

お花見は棋士・阪田三吉をモデルにした名曲「王将」の歌手・村田英雄と作詞家・西条八十が出会ったとされる桜の木の下で行われた。美空ひばりや島倉千代子ら女性歌手の歌を作詞していた西条は、「女の歌しか書かない」と当初は村田の作詞に難色を示した。しかし、村田の熱心な頼みは西条の心を動かし、戦後初のミリオンセラー「王将」が誕生した。

この出会いの桜の隣には役所広司と渡辺謙が共演した映画「絆」(根岸吉太郎監督)に登場した桜がある。言わば芸能界に由緒ある花見スポットである。すぐ先にはオレンジ色のネットが張られ、殺風景な工事現場となってしまった。桜の木も2009年度中に伐採される予定であった。これに対して、住民の粘り強い運動が桜の木を今日まで守ってきた。

芸能界に縁深い場所ということでヒット曲を用いた説明を許してもらうならば、歌手・中島美嘉が2005年に発表したシングル「桜色舞うころ」のプロモーションビデオでは桜の木を舞台とした人形劇が繰り広げられている。そこには思い出の桜の木を伐採しようとする工事業者に対し、身体を張って阻止するシーンがある。住民の運動は、まさにそのようなものであった。今年も花見を楽しむことができたのは、そのお蔭である。

327日には蕾の状態であった桜も43日は見事に咲き誇っていた。花見客や散歩者も多く、「二子玉川の環境と安全を取り戻す会」のメンバーは自然が破壊される暫定堤防建設の問題点を説明し、暫定堤防建設の見直しを求める署名を集めた。これは運動の内部で交流を深めるだけでなく、外部に訴えて運動を広げていくべきという考え方に基づくものである。

前日(2日)は強風が吹き荒れたが、まるで花見に来てもらうのを待っているように花は散らずに残っていた。古来、日本で桜が愛された理由には散り際の潔さが挙げられる。「散る桜 残る桜も 散る桜」(良寛の辞世の句とされる)や「散りぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ」(細川ガラシャの辞世)と歌われたとおりである。

しかし、散り際の潔さを是とする美意識が十五年戦争における特攻や玉砕という無謀な行為を正当化するために悪用されたという悲劇も忘れてはならない。むしろ、風雨に見舞われても、一部花びらが散ってしまっても、しぶとく残っている花びらには自然の生命力の強さが感じられる。やがて散ってしまう運命は避けられないが、それでも精いっぱい、花を咲かせ続ける桜に生物としての美しさがある。

工事業者は伐採を控えているだけで、伐採を諦めた訳ではない。しぶとく残っている花びらのように粘り強く運動を続けていくと「二子玉川の環境と安全を取り戻す会」のメンバーは決意を新たにしていた。

 

歌手・村田英雄と作詞家・西条八十が出会ったとされる桜の木(撮影:林田力、43)

 

世田谷区玉川のタウンミーティングの呆れた実態

東京都世田谷区玉川地域のタウンミーティング「区長と区民との意見交換会 地域の活性化・地域の絆の再生」が2009年12月6日に世田谷区等々力の玉川総合支所で開催された。区長と区民との意見交換という題目とは裏腹に住民には失望と不満が残ったタウンミーティングであった。

タウンミーティングは定刻の14時を約5分過ぎてから、根津典史・玉川総合支所副社支所長の司会で始まった。最初に熊本哲之・世田谷区長が「穏やかで和やかな会にしたい」と挨拶した。続いて西澤和夫・玉川総合支所長が玉川地域の活性化をめぐる状況について説明した。ここまでで20分弱である。一方的な挨拶や説明が長くなり、肝心の意見交換の時間が少なくなるような運営もある中で、区長挨拶などを短時間で済ませたことは評価できる。

問題は意見交換であった。住民の発言は事前に住民が提出した質問票に基づき、司会者の指名によって行われた。出された意見は公園への健康器具設置、防犯カメラ、まちづくりセンターのバリアフリー化、保育園、教育、庁舎など様々であった。司会者は二子玉川についての意見が最も多いとしながら、最後にまとめて行うとした。

住民意見への区側の答弁は各セクションの部長や次長が行うことが多かった。しばらく後、住民から政治家としての区長の回答を聞きたいとの意見が出され、会場からも「役人の答弁はいらない」と同調の声が出た。このため、熊本区長が自ら答弁する機会も増えたが、区民感覚との断絶が浮かび上がった。

象徴的なやり取りは区長が業者とゴルフをした事実についての質疑である。質問者は区長側がゴルフをした事実をオープンにしなかったことを問題視した。これに対して熊本区長はゴルフをプライベートとして正当化した。会場からは「区長は公人である」「疑惑を招く行動は説明すべき」との声が上がった。

最も意見が多かった二子玉川東地区再開発は最後に回されたために時間切れとなってしまい、意見交換としては不十分であった。それでも住民側から断片的に鋭い主張がなされた。

・二子玉川東地区再開発への税金の支出は東急グループへの援助ではないか。住民は恩恵を受けていない。

・世田谷区の職員が再開発組合に天下りしている。

・二子玉川園など緑地であった再開発地域の自然を破壊した上で、一部に新たな公園を造るのではなく、既存の緑地を大切にすべきである。再開発地域は盛り土して小山になるために北側の住民が多摩川に行くためにはトンネルを通らなければならなくなる。わざわざ山にしてトンネルを造ることに意味はない。

熊本区長は最後の意見に答弁したが、問題意識は噛み合っていなかった。まず安心・安全をまちづくりの最優先とし、トンネルが悪いわけではないと主張した。これに対して、会場から「区は水と緑の街づくりを目指しているのではないか」と指摘された。

これに対して区長は「緑の重要な供給源は農地である」と話題を変えた。固定資産税や相続税が高いために農家の跡継ぎがいなくなることが問題とする。区長答弁は再開発地域の自然がなくなることへの回答になっていない。肩透かしを食らった会場からは諦めと絶望から溜め息が漏れた。

予定時間を過ぎたために司会が意見交換を終了しようとした際、一人の女性住民が抗議した。「タウンミーティングといっても、この雰囲気は総会屋対策である」と主張した。その上で世田谷区議会(平成21年第4回定例会、2009年11月25日)における区長答弁を批判した。これは二子玉川再開発の抜本的見直しを求めた岸武志議員(日本共産党)の代表質問への答弁である。熊本区長は「(再開発に)反対の方は共産党に煽られた一部の住民だと私は理解しています」と答弁した。この答弁に区議会では「暴言だよ」「取り消しなさい」「撤回しなさい」と騒然となった。

しかし、意見交換は終了したとして女性の発言は区側に遮られた。会場からは女性の発言を聞きたいとの声が出されたが、聞き入れられなかった。区長による閉会の辞が述べられ、タウンミーティングは閉会した。

タウンミーティングは区民からの自由闊達な意見交換とは程遠いものであった。会場では区の職員が立ち並び、質問者の質問中は複数の職員が質問者の周りに集まるという異様な光景が見られた。高齢の住民は戦前の「弁士注意」を想起したと語った。また、持ち時間を越えて区政を鋭く批判した質問者に会場から暴言から吐かれたが、区側は暴言を止めさせることよりも、暴言に反応した質問者を押しとどめることに注力していた。

二子玉川再開発の問題について十分な時間配分をしなかったことは、住民の関心に応えるという点では大失敗である。二子玉川再開発は民間施行では最大規模の事業であり、住民への影響も甚大である。様々な住民反対運動が続いており、複数の訴訟が係属中である。しかも二子玉川東第二地区市街地再開発準備組合による第2期事業の動きが出てきた上に、前述の区長答弁で区議会が紛糾したばかりである。それ故に再開発についての意見が集中することは予想できることである。

意見交換の前半で出た健康器具や防犯カメラの設置などは通常の陳情や窓口の相談で対応できる問題である。それらを長々と行って、再開発は時間切れとしたことに作為的なものを感じた住民も少なくない。小泉内閣のタウンミーティングでは「やらせ質問」が発覚したが、陳情で済むような質問をした質問者には民生委員などの役職者が多かったことも住民の疑心をかき立てる結果となった。再開発に問題意識のある住民にはガス抜きにもならなかったタウンミーティングであった。

 

不満が残った世田谷区砧のタウンミーティング

東京都世田谷区砧地域のタウンミーティング「区長と区民との意見交換会 地域の活性化・地域の絆の再生」が2010年2月7日に世田谷区成城の砧総合支所で開催された。世田谷区では5つの地域(烏山、北沢、世田谷、玉川、砧)で順番に意見交換会を開催しており、今回が最後になる。大荒れになった玉川地域に比べれば穏やかであったが、それでも参加者の不満が残った運営であった。

最初に熊本哲之・世田谷区長が挨拶した。熊本区長は経済情勢の悪化の中で区の歳入も大幅に減少する見込みであり、区民の力が必要であると強調した。続いて須田成子・砧総合支所長が地域の状況を説明した。砧地域は大型マンションの建設で人口が増加し、特に子どもの人口が多いとする。また、農地が多いため、緑地率が他地域に比べて相対的に高いとした。

意見交換は玉川地域の意見交換会と同じく、事前に住民が提出した質問票に基づき、司会者の指名によって行われた。多摩川の河川敷のグラウンドの土の飛散、汚水、豪雨対策、防犯パトロールカー、緑地の維持・拡大、独居高齢者の見守りなど住民の意見は多岐に渡ったが、陳情的な内容が多く、激しい意見対立にはならなかった。区長の答弁終了後に次の質問に移ろうとする司会者に対し、区長が「質問者が回答に納得したか確認しなさい」とたしなめるなど、余裕も見せていた。

玉川地域の意見交換会では論争になった区役所庁舎の建て替え問題も、あっさりと終わった。玉川地域では質問者が「横浜市など他の自治体では財政事情から庁舎建て替えの優先順位を落としている」と迫ったが、区長は「横浜は横浜、世田谷は世田谷」として、自分が責任を持って推進すると言い切り、平行線となった。

今回は質問者が庁舎の文化性の要否について区長の見解を質した。これは区本庁舎等整備審議会(照井進一会長)の答申(2009年8月13日)にある以下の内容に基づいている。

「本庁舎等に求められる「文化性」に関する意見として、第一庁舎、区民会館は、設計コンペによって選出された日本を代表する建築家(注:前川國男)が設計したもので、区民にとってもその文化的意義は高く、保存活用すべきであるという意見がありました。他方では、文化的価値がどれほどのものなのか、庁舎に文化性は必要ないという意見も少なくありませんでした。」

質問者は庁舎に文化性を不要とした少数意見を暴論と批判したが、区長も「文化性が不要とは考えていない」と答弁した。

一方、住民間でも温度差のあった問題に外環道(東京外郭環状道路)があった。地権者であるという発言者は老後の生活設計のために早期の促進を訴えた。別の発言者は住民の意見を聞き、住民の総意が計画に反映されることを求めた。

外環道には環境問題が残っているとの指摘もなされた。大深度地下トンネルとなる外環道の換気塔から放出される排気ガスによる大気汚染が懸念されている。外環道単体だけでなく、清掃工場の排煙などと重合(複数の分子化合物が結合して別の化合物になること)して有害性が高くなる危険性も調査しなければ安全ではないと主張した。

興味深い内容として、区民の自助努力を求めた区長の発言があった。集中豪雨時に「浸水した地下室に閉じ込められた」などの救助要請が多数寄せられるが、行政では人手が足りず、完全に対応できないという。そのため、たとえば建築確認前に建築主が水害対応を十分に検討すべきと主張した。

これは二子玉川東地区再開発反対運動と通じるものがある。近隣住民が再開発の見直しを求める理由の1つに再開発が水害の危険を高めることが挙げられる(参照「二子玉川再開発差止訴訟・洪水被害の立証へ一歩前進」)。これは行政任せにせず、水害に強い街づくりを目指す住民の自助努力であり、区長発言に合致している。この点で区は反対運動と協力できるにも関わらず、そのようになっていないところに不幸がある。

順調に進行した意見交換会も最後になって味噌を付けた。予定時刻を過ぎたために司会者が閉会しようとした際、参加者から「質問票を記入して提出したのに選ばれないとはどういうことか」との抗議の声が上がった。自分の質問の番が来るのを待っていたという。区内の2つの清掃工場から排出されるダイオキシン問題について発言しようとしたが、遮られた。

会場からは「話を聞きたい」「言論封殺するな」との声が出たが、終了させるという区側の姿勢は頑なであった。会場からの要望で発言を記録に残すことだけは約束した。玉川地域と同じく、後味の悪さが残ったタウンミーティングであった。

 

関連記事:世田谷区玉川、タウンミーティングの呆れた実態 2009/12/07

http://www.news.janjan.jp/area/0912/0912074112/1.php

二子玉川再開発差止訴訟・洪水被害の立証へ一歩前進 2009/12/16

http://www.news.janjan.jp/living/0912/0912164460/1.php

 

世田谷区議会が二子玉川ライズ答弁で騒然

世田谷区議会の平成21年第4回定例会(20091125日)は二子玉川ライズ(二子玉川東地区再開発)の問題で騒然となった。日本共産党の岸武志議員は代表質問で、二子玉川再開発の抜本的見直しを求めた。これに対する熊本哲之区長の答弁が問題であった。

区長は「(再開発に)反対の方は共産党に煽られた一部の住民だと私は理解しています」と答弁した。この答弁によって場内は騒然となり、区長への激しい批判が続出した。

「今の発言は問題だ。区長、煽られたと言うなよ。」

「煽られたなんて酷すぎるじゃないか。」

「共産党が煽ったということはどういうことだよ。大問題だよ、それは」

「暴言だよ、それは」「取り消しなさい」「撤回しなさい」

「それはおかしいぞ。動議、動議を求めるぞ。」

この経緯を知った住民団体のメンバー達は「議場と言う神聖な場所で、首長がこの様な発言をすることはあり得ない。これから始まる第二期事業は環境的にも問題のある計画なので、やむにやまれず住民が再考をと訴えているのに我々の要望を無視した上に、この様な暴言で納税者の発言権を封じ込めるつもりか?都内で一番人口が多い世田谷区の区長がこの様なレベルの低さでは情けない。即刻辞めるべきです」と憤る。

記者は東急不動産(販売代理:東急リバブル)に新築マンションをだまし売りされ、裁判で売買代金を取り戻した(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』)。裁判闘争を進める記者に対し、共産党員や創価学会員、中核派、在日朝鮮人であると勝手に決め付けられたことがあった。そのような悪意は反発を生み、闘争心を強固にするだけである。

http://hayariki.seesaa.net/article/134978895.html

http://blog.livedoor.jp/hayariki2/archives/1125934.html

 

世田谷区議会で二子玉川再開発補助金削除の予算案組み換え動議

世田谷区議会予算特別委員会では最終日の2010324日に、生活者ネットワーク・社会民主党・区民の会から平成22年度世田谷区一般会計予算案に対する組み換え動議が提案された。動議は一般会計予算案から二子玉川東地区再開発第2期事業(二子玉川東第二地区第一種市街地再開発事業)への補助金52720万円を削り、予算の組み換えを求める。竹村津絵議員(生活者ネットワーク)が提案理由を説明した。

二子玉川東地区第一種市街地再開発事業は2005年に東京都から事業計画認可されたが、再開発地域の中央部分(II-a街区)は社会・経済情勢の変化を理由に白紙になっていた。このII-a街区の大規模地権者である東京急行電鉄・東急不動産らを中心とする再開発準備組合は200911月に第2期事業として事業計画認可を東京都に申請した。世田谷区は事業計画認可を前提として補助金を計上したが、認可は未だ下りていない。

二子玉川東地区再開発に対しては、高層ビル建築による日照被害・風害・電波障害・圧迫感・景観破壊など住民から反対意見が根強く、「にこたまの環境を守る会」「二子玉川東地区住民まちづくり協議会」「玉川にエコタウンを作る会」など様々な住民団体も活動している。第1期事業には再開発組合に対する再開発差し止め訴訟と世田谷区に対する公金支出差し止めの住民訴訟の2件の訴訟が係属中である。

このような状況から第2期事業の事業計画案縦覧に対して、199通もの意見書が提出され、そのうちの191件は計画の見直しを求める反対意見であった(2010222日の東京都議会都市整備委員会での大島よしえ議員質問に対する答弁)。東京都では4月下旬に口頭陳述の場を設け、意見書を審査する予定である。このため、第2期事業が計画案通りに進められるかは未確定であると竹村議員は説明する。

世田谷区基本構想は「区民の主体性をもとにした区民自治」「区民参加のまちづくり」を掲げる。また、補助金の交付原則には「広く区民に対して納得の得られることが必要である」と明記する。これらを理由に竹村議員は、これから口頭陳述で明らかになる区民意見を踏まえ、区民の意思を受けとめた上で補助金交付の是非を判断すべきと主張した。

動議には提案会派に加え、共産党と無党派市民が賛成したが、賛成少数で否決された。動議に反対した議員は「第2期事業も区の基本計画・実施計画となっている」「第1期事業と一体にすすめるべき」と主張した。一方で反対議員からも「住民の声を聞かなければならない」との声が出るなど、波紋を投げかけた動議であった。

 

建築紛争

商業地域の仮処分決定に見る日照権保護の積み重ね

尼崎市の阪急塚口駅北側で建設中の14階建てマンションをめぐり、北隣の8階建てマンション住民らが日照権侵害などを理由とする建築差し止めの仮処分申し立てに対し、神戸地裁尼崎支部(工藤涼二裁判官)は10階以上の工事を差し止める仮処分決定をした。

建築地は日影による建築物の高さ規制がない都市計画法上の「近隣商業地域」に当たり、日照権を理由にした工事差し止めが認められたことは異例である。住民側弁護士は「最低限の行政基準だけ守ればいいと考える業者が多い中、日照権の存在を明示したことは意義がある」とコメントする。

日照権は海外でもローマ字の「Nisshoken」として紹介されるほど知名度が高い。太陽の光を浴びるという当たり前の状態を権利として主張しなければならないという日本の異常性は海外でもインパクトを与えた。「ウサギ小屋」と揶揄される日本の住環境の貧困は物理的スペースの狭さだけの問題ではないことを海外では見抜いていた。

言葉だけが先行する感のある環境権の中で古くから権利性が認められた日照権であったが、裁判所の適用範囲は極めて狭く、被害者救済には不十分であった。行政法規の日影規制を超えて日照権が保護されることが稀であったためである。その意味で、商業地域で日照権を理由に工事差し止めを認めた神戸地裁尼崎支部決定は画期的である。

日照権の根底には人間らしく生きていくためには日照が必要という発想がある。それならば商業地域であろうとも人が居住している以上、日照権は認められるべきである。今回の決定は、ようやく日本の司法も開発よりも人権を優先させるようになったことを示している。

司法は判例の積み重ねである。今回の決定に至るまでにも積み重ねがあった。既に東京地裁平成18830日判決(平成17年(ワ)3018号)では北側隣地建て替えによる、敷地の一部が商業地域のマンション住民の日照被害を認定した。

これは新築マンション売主の東急不動産が不利益事実(隣地建て替え)を説明せずに販売したとして、マンション購入者である林田が消費者契約法に基づき、売買代金の返還を求めて提訴した裁判である。そのために日照権という言葉は使われていないが、日影規制の有無で形式的に判断せず、北向きの窓からも採光があり、それが妨げられることの被害を認めた。ここには日影被害から日照被害というパラダイムの転換がある。この東京地裁判決は神戸地裁尼崎支部決定の先駆となるものである。

基本的人権は「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」である(日本国憲法第97条)。日照権も人々の裁判闘争の積み重ねが権利に実質的な内容を付与している。

 

開発審査会のあり方を考えるシンポジウム

開発審査会のあり方を考える会がシンポジウム「開発審査会・建築審査会のあり方を考える−委員選任・会の役割を中心に−」を2010年1月11日に東京都港区の建築会館で開催した。開発審査会のあり方を考える会は東京都開発審査会の委員不再任問題を契機に結成された。委員不再任問題は東京都開発審査会委員であった稲垣道子氏が1期のみで再任されず、不再任の理由も説明されなかった問題である。

シンポジウムでは最初に稲垣氏が「東京都開発審査会における委員不再任問題の報告」と題して経緯を説明した。稲垣氏は東京都の担当者に不再任理由を尋ねたが、「任命権者(都知事)の問題である」との回答のみであった。そのために石原慎太郎・都知事に要望書を送付したが、回答はなされていない。

猪瀬直樹副知事への面談などから浮かび上がった理由は「2回に渡って一度決まったことを覆す発言をした」であった。稲垣氏は1回については思い当たる点があるとする。その時は委員会で納得の上、審理し直した。これを不再任理由とすることは審査会運営への干渉であると批判した。

続いて水口俊典・芝浦工業大学名誉教授が開発審査会・建築審査会の問題点と論点を整理した。審査会では合法であるか違法であるかを判断するだけでなく、社会的公正や地域環境保護の観点から不当性がないかも審理する努力をすべきなどと指摘した。

パネルディスカッションでは柳沢厚・C-まち研究室代表、浅野聰・三重大学大学院助教授、日置雅晴弁護士、稲垣氏がパネリストとして開発審査会や建築審査会の問題点を発言した。

柳沢氏は事前明示基準の功罪として、基準が杓子定規に適用され、現地の具体的な状況を斟酌していない実態を問題視した。

浅野氏は地方都市の状況を説明し、審査請求の件数が少ない地方都市では事前予防が重要と主張した。

日置氏は浅草の高層マンション建設問題など様々な問題を紹介した。裁決が審査請求人の問題意識(高層マンションによる住環境破壊)に応えられていないケースも多い。

稲垣氏は自治体には人口増・税収増をもたらす開発を歓迎する傾向があり、その自治体が乱開発を抑制する責務を負っているところに難しさがあるとした。

コメンテーターの福川裕一・千葉大学大学院教授は審査会委員を専門家とする前提を疑問視した。外国では事務局がバックアップするものの、必ずしも専門家が判断していないという。この指摘に対しては水口氏から密室で運営されている審査会の運営のままで、市民が参加しても市民的常識が反映されるとは限らないとの意見が出された。一方で司会の内田雄造・東洋大学教授は専門家よりも市民の方が不当な計画に声を挙げるため、市民がいる方がいいと主張した。

このシンポジウムでは近隣住民の立場で建築紛争に取り組む参加者も多く、会場からは大船観音前マンションや地下室マンション、二子玉川東地区再開発など実際の紛争を踏まえた生々しい話も登場した。多くの近隣住民は近隣対策業者への住民対応丸投げに象徴される不動産業者の不誠実な姿勢に憤りを抱いているが、それを糾弾する場が現行制度には欠けている。「違法でないから問題ない」という現状を肯定しない審査委員がいることを心強く感じた。

 

景住ネット第4回首都圏交流会が浅草で開催

景観と住環境ネットワーク(景住ネット)第4回首都圏交流会が2010年1月22日、総合設計制度をテーマとして東京都台東区の生涯学習センターで開催された。

会場所在地である台東区西浅草は藤和不動産・三菱倉庫・三菱地所の超高層マンション「西浅草3丁目計画」の舞台である。この計画に対しては、周辺住民と浅草寺が総合設計制度の許可取り消しを求めて東京都を提訴した。そのために交流会では地元住民の参加者も多かった。また、事前に新聞で紹介されてために遠方からの参加者も多かった。景住ネット会員外の参加者の多い、熱気のある集会となった。

集会では最初に西浅草3丁目計画の取消訴訟の原告の一人である白田信重氏が西浅草3丁目計画の問題点を説明した。台東区都市計画マスタープランでは中低層(3〜5階)に誘導されることになっている計画地に37階建ての超高層建築を許可する矛盾を主張した。

総合設計制度により、本来の容積率などの規制では建てられない巨大なマンションが建てられてしまう。空地を作ることで容積率などを緩和するのが総合設計制度であるが、西浅草3丁目計画は既存の空地である金竜公園を日影にしてしまい、むしろ市街地環境を悪化させる。

最後に浅草には既に浅草寺からの景観を遮る浅草ビューホテルが存在するが、景観は長期的に形成されるものであると指摘した。ビューホテルは高層建築の景観への影響という意識が低かった時代に建てられたものである。ビューホテルの築年数は古く、建て替えとなれば新たな議論が生じる。これに対し、建てられたら数10年は永続してしまう西浅草3丁目計画は浅草寺からの長期的な景観形成を台無しにすると力説した。

続いて東京都世田谷区用賀1丁目の桜並木周辺の環境を守る会の山本氏が小田急不動産のマンション建設計画を阻止した体験を語った。通常の反対運動とは異なるユニークな点があった。

第1に入会金である。入会して口だけ出して運営を引っ掻き回すという人を排除するために、入会金を高額にして軽い気持ちでは入会できないようにした。協力は広く募りつつも、会自体は少数精鋭とした。

第2に専門家任せにしないことである。多くの専門家から意見を聴いたが、専門家任せにせず、内容を精査して取捨選択した。

第3に運動方針の絞り込みである。総合設計制度や地下室マンションなど制度論的な批判も可能な計画であったが、問題の計画が周辺環境に合わないことに特化した。

最終的に小田急不動産は土地を売却して撤退したという。

続いて都市計画コンサルタントの稲垣道子氏が総合設計制度について解説した。総合設計制度は空地を確保して市街地環境を整備させるアメとして容積率などの緩和を認めるもものである。ところが、制度趣旨が変質し、都心居住の推進など様々な目的に使われ出した。

また、許可を出す建設審査会にも問題がある。委員選任の公正性の問題(「開発審査会のあり方を考えるシンポジウム」参照)に加え、審査会で全く発言しない委員もいる。行政OBが中心となる点も問題だが、行政OBがいなければ誰も発言しないという現実もある。

加えて許可という制度は極めて運用が難しい。許可すべきか否かを判断するための機械的に適用する基準に合いさえすれば許可となりやすい点が問題である。基準を作れば、それさえ満たせばよい、という発想に陥りやすい。細かい基準を決めれば決めるほど、抜け道もできてしまう。必要条件に過ぎないものが、必要十分条件と受けとめられやすい。

質疑応答では参加者の幅広さを反映して通常の集会とは異なった発言もなされた。たとえば阿佐ヶ谷住宅建て替え問題で周辺住民が行政訴訟を起こして困っている住民からの発言がなされた。高層建築による住環境破壊を阻止する運動にとっては反対の立場にあたるような人も参加した点に建築不動産紛争の複雑さと景住ネットの存在感の大きさを感じた。

また、台東区のまちづくり大学「下町塾」に参加したという住民から「西浅草3丁目計画の取消訴訟は、どうせ敗訴するのではないか」「身近な場所で問題が起きてから反対運動をするのではなく、区で制度を策定する段階から参加すべきではないか」との意見が出された。

これに対して、白田氏は西浅草の訴訟はマスタープランと総合設計制度の整合性や宗教的景観など先例がない分野であり、新たな先例を作る裁判であると反論した。また、「身近な場所で問題が起きてから反対運動をするのではない」との批判には、白田氏自身は下町塾の一期生で前々から街づくりに問題意識を有していたと答えた。その上で自分の身に降りかかってきて分かることもあると主張した。

参加団体からは港区の小山町3・5地区再開発、渋谷区の原宿団地建替え、世田谷区の二子玉川東第2地区再開発、千代田区の富士見2丁目10番地区再開発の問題を報告した。

最後に景住ネットの日置雅晴代表が閉会の挨拶をした。ここ数年、住環境を守る運動の盛り上がりを感じている。景住ネットは困っている人を一方的に助ける組織ではなく、一緒に戦う組織である。皆が戦うことで世の中を変えていきたいと述べた。

 

関連記事:東急不動産だまし売り裁判を報告・景観と住環境を考える全国ネットワークで

http://www.news.janjan.jp/living/0911/0911253617/1.php

開発審査会のあり方を考えるシンポジウム

http://www.janjannews.jp/archives/2250396.html

 

地域活性化には外部の目を取り入れた柔軟な思考

鳩山由起夫首相が所信表明で「コンクリートから人へ」と演説したことが象徴するように経済成長を求めた開発優先の街づくりは行き詰っている。東京都心部でやりつくした開発の真似をするのではなく、地域独自の魅力を活かした街づくりが求められている。

地域独自の魅力を活かした街並みの代表例は埼玉県川越市の蔵造りである。時の鐘を中心に蔵造り商家が点在し、ありふれた地方都市とは異質な江戸風の世界が広がっている。高度経済成長期には乱開発で取り壊しが相次いだが、市民団体などによる保全活動のお蔭で川越は「小江戸」という街の魅力を維持している。

開発を進める側からは川越の蔵造り商家には保全するほどの価値はないとの考えもあった。江戸情緒を伝える蔵造り商家であるが、大半の建造時期は江戸時代ではなく、明治以降である。川越が蔵の街になったこと自体が明治26年(1893年)の大火の後である。また、蔵造り商家は防火目的で建造された。その実用本位の重厚さは、数奇屋造りのような日本建築の美的感覚とは対照的である。

このように蔵造り商家は歴史性でも文化面でも主流派的な価値観から必ずしも高く評価されるとは限らないものであった。しかし、蔵造り商家を保全したことで、江戸情緒を伝える貴重な観光資源となっている。学術的な価値判断では切り捨てられてしまうようなものの中にも地域の魅力は存在する。

このような地域の魅力は実は地域の中では見つけにくい面がある。地元の人には当たり前でも地元以外の人にとっては魅力に感じるものは少なくない。地元の人が見落としがちな地域の価値を発見するためには外部の目で見つめ直すことが必要である。実際、川越の街づくりに取り組むNPO法人・川越蔵の会は全会員の約2割を川越市在住在勤ではない会員、「川越ファン」とも呼ぶべき人達が占めている。

また、長野県小布施町ではアメリカ人のセーラ・マリ・カミングス氏が地域活性化の立役者となっている。ステンレスやホーロー製の桶が当たり前となっていた酒造で、木桶仕込みを再興させた。

また、過疎の町の成功例として、徳島県上勝町の「葉っぱビジネス」がある。正式名称は「彩事業」で、山に落ちている葉っぱを集めて高級料亭に卸すという事業である。この「葉っぱビジネス」の発案者の横石知二氏も余所者扱いされている部外者であった。

これらの事例からは外部の目を取り入れた柔軟な思考が地域活性化につながることを示している。