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林田力「不動産広告にだまされないように」オーマイニュース2008年3月15日

東急リバブルの広告を見て思う

 大手不動産販売業者・東急リバブル株式会社(東京都渋谷区、袖山靖雄社長)錦糸町営業所が不動産仲介で虚偽内容の広告を作成・配布した。

 問題の広告対象は、東京都江東区東陽1丁目にあるマンションの1室の売却を仲介するものである。広告の虚偽内容は以下の通りである。
 第1に1LDK+DENの間取りを広告では、2LDKと表示し、広く見せようとした。

 第2に用途地域は、第1種住宅地域と商業地域からなるにも関わらず、広告では第1種住宅地域とのみ表示した。

 第3に駐車場料金は、月額3万〜3万2000円にもかかわらず、広告では月額わずか600円とした。
 不動産広告では、実際のものよりも優良又は有利であると、誤認されるおそれのある表示をすることは不当表示として禁止されている。現在または将来の環境などについて、実際のものより著しく優良、有利であると一般消費者に誤認させるような表示は不当表示にあたる。

 東急リバブルの虚偽広告に対しては、公正取引委員会も動き、東急リバブルが加盟する社団法人首都圏不動産公正取引協議会において改善措置を講じさせた(独占禁止法45条3項の規定に基づく公正取引委員会通知書、公取通第497号)。

 東急リバブルは、上記マンションの新築分譲時の販売代理(売主:東急不動産株式会社)を務めていた。新築分譲時のマンション販売資料には、間取りも用途地域も正しく記載してあるから、東急リバブルは、正確な情報を把握しているはずである。

それにもかかわらず売却仲介時には、虚偽の広告を作成・配布したところに、東急リバブルの悪質さが際立っている。

東急リバブルのチラシ広告:間取りを2LDK、月額駐車場料金を600円と虚偽の記載をする。下部の「甲第18号証の1」は東急不動産消費者契約法違反訴訟(平成17年(ワ)第3018号)で証拠として提出されたものを資料として使っている関係から付されている。(撮影:林田力)
東急リバブルのファックス広告:間取りを2LDK、用途地域を一種住居と虚偽の記載をする。下部の「甲第18号証の2」は東急不動産消費者契約法違反訴訟(平成17年(ワ)第3018号)で証拠として提出されたものを資料として使っている関係から付されている。(撮影:林田力)

林田力「東急リバブル、虚偽広告でお詫び」オーマイニュース2008年3月15日

売らんかなの姿勢と、基本的な調査不足──東陽町営業所

 すこし前になるが、2月中旬、東急リバブル株式会社(袖山靖雄社長)東陽町営業所が、ウェブサイトにお詫びを表示した。東陽町営業所が専属専任で媒介するアルス東陽町301号室(東京都江東区東陽1丁目)の広告表示の誤りについてである。お詫び内容は以下の通りである。
−お詫び−

平成19年12月28日〜平成20年2月15日の間、弊社ホームページ上に「売中古マンション(所在:江東区東陽1丁目、マンション名:アルス東陽町/3階部分、販売価格3,280万円)」の販売告知を致しましたが、表示内容の一部に誤りがありました。一般消費者の皆様並びに関係者各位に大変ご迷惑をおかけ致しました。 ここに謹んでお詫び申し上げるとともに、訂正させていただきます。
東陽町営業所長 松本猛

《 誤表示一覧 》
駐車場料金について ※正しい料金は「30,000(円/月)と32,000(円/月)」です。
12月28日〜1月4日の間 「空無600(円/月)」と表示。
1月5日〜1月7日の間 「空無20,000(円/月)」と表示。
1月8日〜2月15日の間 「空無30,000(円/月)」と表示。

間取図について
(1) 北側洋室6畳の北側窓について ※正しい表示は「窓3カ所(2カ所/嵌め殺し窓、1カ所/外開き窓)」です。
1月4日〜1月7日の間 窓2カ所(1カ所/嵌め殺し窓、1カ所/外開き窓)と表示。
1月8日〜1月10日の間 窓3カ所(2カ所/嵌め殺し窓、1カ所/外開き窓)と表示。※正しい表示 
1月11日〜2月15日の間 窓3カ所(3カ所/嵌め殺し窓)と表示。

(2) 北側洋室5畳の出入り口の建具について ※正しい表示は「3連の引き戸(扉)」です。
1月4日〜1月9日の間 「内開きドア(1カ所)」と表示。
1月10日〜2月15日の間 「3連の引き戸(扉)」と表示。※正しい表示

その他の事項
(1) 管理会社名について ※正しい社名は「日本ハウズイング株式会社」です。
12月28日〜2月15日の間 「日本ハウズィング株式会社」と表示。

(2)周辺施設(お買い物)の名称について ※正しい名称は「グルメシティ東陽町店」です。
1月6日〜1月11日の間 「セイフー東陽町店」と表示。

以上です。

 東急リバブルの広告表示の誤りは大きく5点ある。

 第1に駐車場料金である。実際は月額で機械式駐車場の上段が3万2000円、下段が3万円である。しかし、広告では600円、20000円、30000円と不正確な表示を繰り返した。

 実際よりも安く見せているため、消費者の期待を裏切ることになる(別記事「東急リバブル、またまた虚偽広告」参照)。

 第2に洋室(6畳)の窓の間取り図表示である。実際は窓が3つあるが、広告では当初、2つしか表示しなかった。また、外開き窓をハメ殺しの窓とする誤りもある。広告では洋室(6畳)の窓を目立たなくさせようとしているが、その理由としては、窓から数十センチ先に建物ができたために窓からの採光・眺望などが失われたこと、冬場に発生する窓の結露の被害を隠そうとしたことが推測される(別記事「東急リバブル、間取り図でも虚偽広告」参照)。

 第3に洋室(5畳)の出入り口の間取り図表示である。実物は引き戸であるが、広告では当初、内開きの開き戸にしていた。ちなみに東急リバブルの広告ウェブページではリビングの写真も掲載されていた。これは洋室(5畳)から撮影されたもので、写真上部に引き戸の鴨居が写されている。ここからも洋室(5畳)の扉が引き戸であることは明らかである。

 この写真自体は最初の虚偽の間取り図が掲載された1月4日から掲載されており、東急リバブルは自ら掲載した写真と矛盾する間取り図を作成したことになる。

 東急リバブルが引き戸を開き戸に虚偽表示する動機としては以下3点が考えられる。

1.フローリングの洋室には引き戸よりも開き戸が相応しい。
2.引き戸よりも開き戸の方が洋室(5畳)の独立性を示しやすい。とはいえ洋室(5畳)に行くためにはリビングを通る必要があり、見かけ上の独立性に過ぎない。
3.新築分譲時に配布された図面の中に、すでに実物とは異なり、開き戸になっているものがあった。アルス東陽町では新築分譲時に配布された図面が数パターンあり、現実の間取りと異なったものがある。これは青田売り(建物が完成していない状態で販売すること)で販売されたこと、設計変更が複数回行われたことの反映と考えられる。

 相互に矛盾する複数種類の図面集が存在することは301号室の売買代金返還が争われた裁判でも問題になった。また、アルス東陽町では設計通りに施工されていない問題も明らかになっている(別記事「マンション欠陥施工に対する東急不動産の呆れた説明」参照)。分譲時から無責任・いい加減という問題を抱えていたと言える。

 第4に管理会社の社名の誤表示である。名前を間違えるのは失礼極まりない。元々、アルス東陽町では他の東急不動産分譲物件と同じく、グループ会社の株式会社東急コミュニティーに管理を委託することを条件に分譲された。しかし、東急コミュニティーに問題があったため、管理組合が管理会社を変更した経緯がある(別記事「マンション管理会社を変更して、経費削減に成功」参照)。

 東急グループとしては面白くない展開である。故意に正確な社名を書かないことなど考えられないが、そうまでしても意趣返ししたかったのではないか、などと個人的には疑いたくなる。

 第5に、近隣のスーパーマーケットの店名の誤りである。実際はグルメシティ東陽町店だが、広告ではセイフー東陽町店としていた。新築分譲時はセイフーだったが、セイフーが2006年3月にグルメシティに変更されたため、現在の店名になった。新築分譲時(そのころはセイフーであった)の資料を写したために、古い店名を書いたものと推測される。媒介広告作成時に調査すれば古い店名を書くはずがない。いかに東急リバブルが現地を調査していないかが分かる虚偽である。

 東急リバブルはアルス東陽町301号室の新築分譲時に販売を代理したが、不利益事実(隣地建て替えによる日照・眺望の阻害など)を説明しなかったため、消費者契約法第4条第2項に基づき、売買契約を取り消された(別記事「東急不動産の遅過ぎたお詫び」参照)。今回、301号室が売りに出されたのも、新築分譲時の売買契約が取り消されたためである。

 その後、東急リバブルがアルス東陽町の別の居室を媒介した際には用途地域、間取り、駐車場料金について虚偽の広告を提示した(別記事「不動産広告にだまされないように」参照)。

 以上の経緯を踏まえれば、東急リバブルとしては間違いがないように細心の注意を払うべき物件のはずである。虚偽内容のなかには、高く売らんがため物件を良く見せようとするものがある一方で、基本的な調査不足としか思えないようなものもある。しかもアルス東陽町301号室の媒介広告掲載中にも不正確な修正を繰り返している。

 東急リバブルには消費者に正確な事実を伝える意識も能力もないとしか思えない。2007年3月ごろには3000円を越えていた東急リバブルの株価は今では1000円を切っている。この評価は、サブプライム問題や官製不況(改正建設基準法施行)の影響だけとは言えないと思う。


林田力「不動産広告の誤記が、他社の広告に伝播」オーマイニュース2008年3月28日

東急リバブルの罪深さ

 東急リバブル(袖山靖雄社長)の東陽町営業所が専属専任で媒介するアルス東陽町301号室(東京都江東区東陽1丁目)が、東急リバブルとは別の不動産業者の広告チラシでも、誤った状態で広告掲載されていた。問題の広告はナイス株式会社木場営業所が2008年2月に配布したチラシである。誤りは3点ある。

 第1に間取り図で洋室(5畳)の扉が内開きドアになっている。正しくは引き戸である。

 第2に「お買物」欄で、「セイフー東陽町店」は誤りである。正しくはグルメシティ東陽町店である。

 第3に管理会社名を「日本ハウズィング株式会社」とする。正しい社名は「日本ハウズイング株式会社」である。
 上記3点の誤りは全て、東急リバブル東陽町営業所の虚偽広告と同内容である(参照:東急リバブル、虚偽広告でお詫び)。

 不動産業界ではレインズ(REINS: Real Estate Information Network System)などの情報流通システムが整備されており、売主(売却希望物件の所有者)が直接依頼した仲介不動産業者でなくても、広告宣伝が可能である。売主から売却の依頼を受けた不動産業者は物件情報をシステムに登録し、他の不動産業者もその登録情報を閲覧できる。その情報をもとに広告を作成することも可能。複数の不動産業者が同じ物件を宣伝していることが起きるのも、このためである。

 売主から直接依頼を受けた業者以外の業者が広告チラシを作成する場合、物件に関する情報は、システムに登録された情報をそのまま使う。独自の内容は自社の社名や住所・電話番号くらいである。物件情報は同じで、チラシ下部の会社名・連絡先だけが会社によって異なるチラシは、このようにして作成される。

 ナイス木場営業所によるアルス東陽町301号室の広告も、上記のような形で作成されたものと考えられる。これは不動産業界において至極普通のことである。ナイスは東急リバブルの情報にフリーライド(ただ乗り)しているように見えるが、反対にナイスが登録した物件について東急リバブルが宣伝広告することも可能であり、相互関係にある。

 また、ナイスのような会社が宣伝広告を行った結果、買主を見つけてくれれば物件が売れることになり、売主側の仲介業者である東急リバブルにも、売主自身にもメリットがある。売主側の仲介業者の中には買主からも仲介手数料を取りたいがために物件情報を流通させないようにすることもあるが、これは不動産業者として正しい姿勢ではない(参照:不動産仲介「両手取り」の悲劇)。

 したがって、東急リバブルの専属専任物件をナイスが宣伝したこと自体はニュースとするような話題ではないが、問題は物件情報が誤っていたことである。東急リバブルが誤った情報を物件情報として登録してしまったため、それを元に広告を作成したナイスも虚偽広告を出してしまったことになる。

 東急リバブルが自社のチラシやウェブサイトで虚偽広告を出しただけならば東急リバブルに対する消費者の信頼が裏切られることになるが、東急リバブルと消費者の関係であり、東急リバブルの営業範囲内に留まる。しかし、業者間で物件情報を共有する不動産業界においては、東急リバブルの営業範囲を越えて、虚偽の物件情報が流通してしまう。

 東急リバブルが誤った物件情報を登録したために、その情報を信頼して広告を出したナイスも消費者の信頼を裏切りかねない事態となった。東急リバブルは不動産業界における信頼関係も破壊したことになる。

 東急リバブルは301号室の虚偽広告に対し、東陽町営業所長・松本猛名義で「お詫び」文を発表した。そこには「一般消費者の皆様並びに関係者各位に大変ご迷惑をおかけ致しました」と書かれているが、迷惑を被った関係者各位は直接の顧客に留まらない。

 不動産流通システムの信頼を損ないうる行為であり、不動産流通システムに加盟する不動産業者、その業者と取引しうる消費者にも迷惑を及ぼしたことを東急リバブルは自覚すべきである。

林田力「土地所有権移転の登記申請書を閲覧した」オーマイニュース2008年3月27日

信頼性の高い「登記原因」情報を作るには

 東京法務局中野出張所(中野区野方)にて土地所有権移転登記の「登記申請書」を閲覧した。

 通常、例えば不動産を購入する場合などは「登記簿謄本(全部事項証明書)」を取得する。これによって土地についての権利関係を確認できる。登記には権利推定力が認められている。即ち、登記簿の内容は実際の権利関係に合致していると推定される。このため、登記簿の内容は一応、信頼できる。

 しかし、現実には実際の権利関係とは異なる登記は存在し得る。これは登記手続きでは形式的な書類審査しか行わないためである。住民票や実印、印鑑証明書、権利証(登記識別情報)を無断で借用、または偽造できるならば、登記できてしまう。この結果、自分名義の筈の土地が登記簿上は譲渡されてしまったり、抵当権が設定されてしまったりという事態が起こりうる。このようなことを行う犯罪者は地面師と呼ばれる。

 このような場合、先ず登記簿を調べることになるが、登記簿に記録された権利変動に不審点がある場合、どのような形で登記申請がなされたのか調べる必要がある。

 調査の必要はたとえば、相続問題で生じる。故人(被相続人)の所有(相続財産)と思っていた不動産が、相続人の一人または第三者に所有権移転されていたということもある。そのような所有権移転登記の原因となる契約などが実際に行われていることを相続人が知っていれば問題ないが、そうでなければ、実体がないのに勝手に名義を変更したのではないかという疑いが生じる。

 たとえば、相続対策として特定の相続人に不動産を生前贈与する例は少なくない。全相続人了解の下で、生前贈与したならば問題ない。しかし、そうではない場合、同居の相続人が勝手に親の権利証や実印を利用して、被相続人の知らないところで登記した疑いが、他の相続人から生じ得る。このような場合に登記申請書を閲覧する必要がある。

 「登記簿」は不動産に関する権利関係の公示が目的なので、誰でも確認できる。これに対し、「登記申請書」は登記申請するために申請人(の代理人)が作成し、法務局に提出した書類なので、閲覧は利害関係のある人に限られる。たとえば前述の相続の例ならば、利害関係者とは、相続人である。閲覧中にメモをとることや写真撮影は認められるが、コピーをとることはできない。

  ◇

 法務局のカウンターで「登記申請書」の閲覧を希望したところ、受付の人では対応の範囲を越えるためか、別の人に担当が代わった。最初に、どの申請書の閲覧を希望するのか尋ねられた。問題の不動産登記の全部事項証明書を提示し、閲覧したい登記申請の受付年月日・受付番号を答える。

 続いて利害関係を聞かれた。予め用意した戸籍全部事項証明書と身分証を提示し、土地所有者であった被相続人の相続人であることを説明した。申請書を渡されるので記入し、法務局内の印紙売場で購入した登記印紙(収入印紙とは別物)を貼り付けて提出。しばらく待つと閲覧できる。

 登記申請書は大体、以下のような内容になっている。

・登記申請書
・印紙貼付台紙
・登記義務者(不動産の譲渡人)の住民票
・登記義務者の印鑑証明
・登記義務者・登記権利者(不動産の譲受人)の司法書士への委任状
・登記原因証明情報
・登記権利者の住民票
・固定資産評価証明書


 申請書を閲覧することによって、どの司法書士に依頼したのか、いつ司法書士に委任状を提出したのか、署名の筆跡などを確認できる。

 閲覧する上で最も肝心な資料は「登記原因証明情報」である。これは不動産登記法第61条に定めた「登記原因を証する情報」で、登記の原因となった事実や法律行為を示す情報をさす。「登記原因証明情報」という名前の文書が求められている訳ではなく、具体的には、売買ならば、売買契約書がこれに相当する。

 売買契約書だけでは権利移転日が不明な場合(たとえば契約書で残金支払い時を権利移転時と定めた場合、など)、売買契約書に加え、残金の領収書も必要になる。

 前述の通り、登記官は書面審査しか行わない。したがって、登記申請の内容が正しいか否かは、この「登記原因証明情報」の内容が申請内容と矛盾しないか否かによって判断される。これによって、書面審査しか行わないながらも、登記の信頼性を高めている。

 とはいえ、制度には抜け道もある。登記原因証明情報という名前の文書を作成して、登記申請することがままあるのだ。これは登記の原因についての事実を記載したものに当事者が署名押印したものである。

 例えば、「乙は、甲に対し、平成××年×月×日、本件不動産の所有権を贈与し、甲はこれを受諾した」と書かれた登記原因証明情報と題する文書に譲渡人・譲受人が署名捺印するものである。文面は司法書士が用意し、当事者は署名捺印する。登記のために用意された文書であるため、登記の原因となった契約などを調査するのは難しくなる。

 売買契約書ならば売買代金、手付金の額、その他の契約条件など詳細な内容が書かれていることが多く、閲覧によって契約の内容をつかむことができる。

 しかし、「乙は甲に本件不動産を売却し、それによって権利が甲に移転した」というだけの登記原因証明情報では契約の実体は不明である。

  ◇

 以下、登記申請のために登記原因証明情報という文書を作成することの得失をまとめたい。

 まず、社会的要請である。そもそも契約は意思表示によって成立するものであり、契約書の存在は必須ではない。口頭でも契約は有効に成立する(但し、宅地建物取引業者には書面の交付が義務付けられている。宅地建物取引業法第37条)。そのため、登記申請のために登記原因証明情報を作成する必要が生じる場合は否定できない。

 一方、登記原因証明情報の添付が登記の信頼性を高めることを目的としていることを考えると、登記原因の実体を把握できる資料の方が望ましい。可能な限り生の資料を添付することが社会的要請といえる。

 次に、登記申請人(契約当事者)の立場で考えてみる。契約当事者にとっては登記とは関係ない売買代金のような情報を、法務局に保管される登記申請書に添付したくないという思いがある場合もあるだろう。この場合、登記申請に必要最小限の情報を記載した登記原因証明情報を新たに作成する方が望ましいことになる。

 一方、契約書のような資料を登記原因証明情報とすることは申請人の権利を守るものでもある。契約書とは別に登記申請のために登記原因証明情報を作成するということは、契約書と異なる内容になってしまう可能性がある。相手方当事者と司法書士の悪意が介在すれば不可能ではない。その結果、契約書で意図したものと異なる内容で登記されてしまい、損害を被りかねない。

 登記原因証明情報も自らが内容を確認した上で署名捺印するのだから自己責任と主張されるかもしれないが、実際問題として契約書に署名捺印する時ほど熟慮して、登記原因証明情報に署名捺印することはないだろう。

 専門家である司法書士に登記手続き上必要な書類と説明されれば「そういうものか」と署名捺印してしまいがちである。契約書を登記原因証明情報にすれば、たとえ司法書士に如何なる悪意があろうとも、契約書と矛盾する内容での登記はできない。

 じつは、この点については記者に苦い経験がある。記者は東急不動産から購入したマンションの売買代金返還を求めた訴訟で、売買代金の返還を受け、登記原因を「訴訟上の和解」で所有権を移転登記するという内容の、訴訟上の和解を成立させた。

 ところが、和解の履行時期になって東急不動産側は登記原因を「和解」とする登記原因証明情報への署名捺印を要求してきた(参照「東急不動産、「和解成立」後も新たなトラブル」)。

 これに対し、記者は和解調書を登記原因証明情報とし、和解調書どおりに登記申請することを主張した。最終的に記者の正論が通ったが、東急不動産の主張に従っていれば、和解調書とは異なる内容で登記されたことになる。

 最後に申請手続きを行う司法書士の立場を考える。司法書士にとっては登記申請用に作成したとは限らない契約書を使用するよりも、自ら作成した定型的な「登記原因証明情報」に記名捺印させた方が楽という発想がありうる。

 しかし司法書士の職業倫理からすれば、登記の真実性を高める方法を選択すべきである。真実性を高めるとは、単に自分が正しいことを行うというだけではなくて、第三者が事後的に確認できるように証跡を残しておくことも必要と考える。そうでなければ唯我独尊に陥ってしまう。

 このように考えるならば登記原因証明情報に相当する資料が存在する場合は、それを登記原因証明情報として使用するのが法目的に合致すると考える。建築不動産業界には「手続きが通ってしまえば、それでいい」という発想が強いように感じられる。その極端な例が耐震強度偽装事件であった。

 登記申請のために作成された「登記原因証明情報」ばかりが利用されるならば、登記においても上記傾向に汚染されていることになる。

林田力「消費者庁よりも消費者行政の中身が問題だ」オーマイニュース2008年4月16日

一元化が消費者の利益とは限らない

 消費者行政を一元化する新組織として消費者庁の創設が議論されている。消費者行政に対する関心の高まりは歓迎すべきことであるが、消費者庁という行政機関を新設することが消費者重視の行政を実現するための唯一の解決策ではない。逆に消費者庁は行政の消費者軽視を進める方向にも機能する危険性があることに注意したい。

 消費者庁創設が議論される背景には、耐震強度偽装事件や食品偽装問題など消費者問題が相次いでいることが挙げられる。これら続発する消費者問題に対し、現行の行政が効果的に対応できておらず、それどころか被害を拡大させてしまっていることもあるのではないか、という点が出発点である。一言でまとめるならば現在の行政が消費者重視になっていないという問題意識がある。

 これには大きく2つの理由が挙げられる。これらは相互に関係している。第1に縦割り行政の弊害である。消費者行政は業務範囲が業界ごとに区切られている複数の行政機関に分断されている。経済産業省、農林水産省、厚生労働省、国土交通省、金融庁などである。このため、統一的な消費者行政が行われにくい。

 第2に行政が業界寄りの性格を有しているという点である。明治時代は富国強兵、戦後は経済発展至上主義が日本政府の政策であり、産業の保護育成が使命であった。消費者問題においても消費者の立場よりも企業の論理を代弁する傾向は否定できない。

 消費者庁創設を求める立場は、消費者庁によって上記2点の解決を企図しているものと考える。すなわち、消費者庁が消費者行政を一元的に担当することで、縦割り行政の弊害を解消する。また、消費者庁を消費者の立場を代弁できる行政機関とすることで、消費者重視の政策の実現を目指す。

消費者庁がすべてを解決してくれるのだろうか?

 しかし、消費者庁の創設は、消費者重視の行政を目指す場合の唯一の解決策ではないと考える。

 第1の縦割り行政の問題であるが、そもそも担当機関が複数あることが消費者にとって不利益であるか、という点を問題提起する。消費者問題を扱う部署が複数ある弊害としては以下が考えられる。

(1)消費者が、どの部署に行ったらいいか分からないことによる混乱がある。

(2)別の部署にたらい回しにされる危険がある。しかも両方の部署から、たらい回しにされて、結局、どの部署でも担当しないという状態になる危険もある。

 部署Aでは「部署Bが処分しない以上、部署Aが処分する訳にはいかない」と説明する。しかし部署Bでも「部署Aが処分しない以上、部署Bが処分する訳にはいかない」と説明する。誰も判断しない無責任状態が正当化されかねない。

 記者としても、上記2点は複数機関並立の弊害であると考えている。よって消費者行政を一元化する消費者庁の創設によって解消できるならば、それは改善であると評価したい。しかし、一元化組織を創設することが弊害解消のための正しい解決策とは考えない。

 まず(1)については、本当に複数部署を設置することに意義があるならば、消費者が混乱しないように分かりやすい広報を徹底することで解決することが正道である。

 次に(2)については根本的な問題は面倒な仕事をしたくないという公務員の無気力主義にある。複数部署の存在は正当化するための口実に使われているに過ぎない。担当者の体質が変わらない限り、一元化する組織が創設されたとしても別の理由を持ち出して消極的な姿勢を続けることになる。従って、一元的な組織を創設しただけでは根本的な解決にはならない。

複数機関が並立することは消費者にとってメリット

 一方、消費者にとって複数機関が並立することにはメリットもある。消費者にとっては相談先が多いことを意味する。ひとつの機関では相手にされなくても、別の機関で対応してくれる可能性がある。

 これは記者自身が不動産トラブルで身をもって経験したことである。記者は東急不動産からマンションを購入したが、不利益事実(隣地建て替えにより日照が阻害されることなど)が説明されなかったことが判明したため、売買契約を取り消した(参照「東急不動産の遅過ぎたお詫び」)。

 この問題に際して、多くの行政機関に相談や申し立てをした。主な機関を挙げると以下の通りである。

・国土交通省関東地方整備局建政部建設産業課:宅地建物取引業法(宅建業法)の重要事項不告知について
・東京都都市整備局:宅建業法の重要事項不告知について
・公正取引委員会事務総局取引部景品表示監視室:不動産広告の虚偽について
・経済産業省関東経済産業局消費者相談室:だまし売りについて
・総務省東京行政評価事務所:国土交通省による処分について
・東京都生活文化局:東京都消費生活条例違反について
・江東区都市整備部建築課:建築確認について
・江東区消費者センター:消費者契約法について

 これらの中には記者にとって有益なものもあったし、残念ながら、時間の無駄に等しいものもあった。強調したいことは、複数の機関が存在していたからこそ、有益なところに行き着くことができ、東急不動産の問題を広げることもできたという点である。もし一つしか機関がなければ、仮に、その機関でまともな対応がなされなければ、それで終わってしまう。

 窓口の一元化が消費者にとって便利であることは事実である。しかし、その窓口が消費者の声を受け止めなければ、それで終わってしまうというリスクがある。これが消費者行政を一元的に担当する消費者庁の創設によって、反対に消費者軽視の方向に進みかねないと懸念する理由である。

 上記の理由から消費者庁は、可能な限り消費者の声を行政に反映させないようにしたい立場にとっても内容によっては賛成できるものになる。近年、消費者問題が深刻さを増していることは事実である。これは企業が以前よりも悪質になったということを必ずしも意味しない。むしろ消費者の意識が高まった結果という面がある(インターネットのような情報インフラの発達も後押しした)。この傾向は今後も強まりこそすれ、弱まることはないだろう。好むと好まざるとにかかわらず、行政への消費者の圧力も強まるだろう。

 そこで、行政が業界寄りであり続けるためのいわば防波堤として、消費者庁を位置付けようとする発想が生まれてもおかしくない。従って消費者庁構想を推進する側に、そのような発想がないか注意する必要がある。結局のところ、新組織を創設することではなく、どのような機関を創設するのかが問題である。

 ここで第2の行政が業界寄りの性格を有している点が関係してくる。現実問題として現行の省庁が業界寄りであるならば、消費者の味方というべき機関を創設することには一定の意義はある。しかし、福田首相が「消費者重視」を政策として掲げるならば、現行の省庁が業界寄りであるという点から改めるべきであり、消費者行政を分担する全省庁が消費者重視の姿勢を持たせるようにするのが筋である。現行の省庁が業界寄りのままでは、消費者庁を新設しても上述の防波堤として機能するか、せいぜい政府内野党的な存在にしかならない可能性が高い。

 やはり重要なことは消費者行政の中身である。行政機関を消費者重視の姿勢に変えていく必要がある。それは「消費者重視を念頭に仕事をするように」というような精神論では変わることは難しい。官僚は業界団体や企業とはさまざまな形で交流しており、天下りという「人事交流」までしている。業界寄りになるのは当然の帰結である。

 消費者重視にするためには消費者や消費者団体が消費者行政に積極的に参加し、その声が反映される制度を構築していかなければならない。各種審議会では消費者関係の委員を増やす、消費者団体出身者を主要ポストに任命するなどの措置が望まれる。

 以上、消費者庁という一元化組織を新設することが消費者重視につながるか考察した。結論としては消費者重視にしていくこともできるし、反対に消費者軽視に機能させることもできる。縦割り行政を解消し、消費者行政を一元化する機関を創設するというだけでは消費者が喜ぶには早すぎる。どのような組織にするか、どのような政策を採るか次第である。消費者行政の一元化組織についての議論を注視していきたい。

林田力「隣接地との境界確認をめぐるトラブル」オーマイニュース2008年4月23日

境界標を設置し直すまでの紆余曲折

 不動産の境界確認をめぐるトラブルを報告する。記者が所有する都内の土地と隣接地との間で起きた事件である。境界確認と隣接地の解体工事によって損壊した境界標(きょうかいひょう)の再設置である。

 発端は隣接地(都有地)が不動産業者A社に払い下げられたことである。A社は隣接地に建てられていた古家を解体する工事を、2007年12月下旬から翌年1月にかけて実施した。その解体工事の際に記者所有地と隣接地の境界標の土台を傷つけてしまい、グラグラする状態になってしまった。そのために境界標を設置し直すことになったが、そこに至るまでには紆余(うよ)曲折があった。

突然求められた境界確認書への署名捺印

 A社が記者に求めた内容は境界確認の立ち会いおよび境界確認書への署名捺印(なついん)であった。A社は隣接地を更地として売却する予定で、買い手に境界が確認できていることを明示するために境界確認書が必要であった。しかし、A社は自ら依頼するのではなく、A社が隣接地の測量を委託した測量会社B社に依頼させた点が問題であった。記者としては知らないところから唐突に電話を受けることになった。

 しかも、B社の人間は相手の事情に配慮するということができないようで、記者が電話に出られない時は30分ごとにかけ直し、その度に「かけ直します」という類の内容のないメッセージを留守番電話に吹き込むため、メッセージを再生するだけでも通話料がかかり、迷惑なことこの上なかった。しかも記者の方から留守番電話に残された電話番号にかけ直しても通じず、結局、B社から突然かかってくる電話によってしか連絡を取ることができなかった。

 結局、2月10日にB社の測量士から電話があり、その日に会うことになった。B社の測量士は用意してきた境界確認書に署名捺印を求めた。それに対し、記者は以下の3点の問題を指摘した。

1.B社の提示する境界確認書にはA社の署名捺印がされていない。A社が先に署名捺印すべきである。

2.境界確認と言いつつ、署名捺印を求める文書の添付図がB社の測量結果となっている。測量に立ち会った訳でも、測量結果を確認する立場でもないため、測量結果を承認するような文書への署名捺印は筋違いである。

3.境界確認書の使用目的を明示して欲しい。別紙に「申請箇所」と記載されているが、何かの申請に使用するつもりではないか。申請手続きの添付資料として使用しないとのことだが、それならば条項に使用しないことを明記して欲しい。

 これらの問題についてB社測量士では判断できないため、A社と相談して対応策を決めてから、あらためて連絡することになった。

 また、B社測量士は境界標について「解体工事の影響で1センチほど北側に移動し、しかも多少グラついた状態になっており、南側に戻したい」と説明した。これに対し、記者は「原状回復は当然だが、移動させる場合は立ち会うので事前に連絡して下さい」と回答した。この日は、このやり取りだけで、具体的に境界標を戻すための方法や日時についての話はなされなかった。

 ところが、2月18日午前9時過ぎにB社測量士が無断で記者所有地の敷地内に入り、境界標の除去作業を始めた。当時、記者は所有地の住居内にいたため、作業に気付き、止めさせた。所有者に無断で作業をしたことについて詰問したが、「境界標を移動するために一度、引っこ抜く。埋め戻すための目印にするために杭(くい)を打っていた」と作業の説明に終始するばかりで、無断で作業することに対する反省がうかがえなかった。

 この出来事の後、翌19日にB社の別の従業員から電話があったが、「境界確認のためにあらためて面会したい」と要求するばかりで、当該従業員は2月10日に記者が指摘した境界確認書の問題点も2月18日になされた無断作業についても把握していなかったため、「話にならない」として拒否した。

 その後、数回のA社従業員の訪問および電子メールでのやり取りによって、相互の主張を重ねていった。残念なことにA社従業員は記者とB社とのやり取りを全く把握しておらず、そのため1から説明することになり、無駄な時間と労力を費やしてしまったことは事実である。

 指摘事項の1番目の点と3番目の点は記者の主張が問題なく受け入れられた。問題は2番目の点である。記者所有地と隣接地が接している場所について、B社の測量結果と記者所有地の登記簿上の地積測量図に相違があった。これが記者としてはB社の測量結果に署名捺印する訳にはいかない事情であった。署名捺印したならばB社測量結果について記者も同意したことになるためである。一方で逆の立場に立っても同じことが言えるだろう。

 この点については、3月15日に双方立ち会いの上で実際に測量した結果、記者所有地の地積測量図が正しいことが確認されたため、その地積測量図を参考に境界確認を行うことで決着した。境界確認書には地積測量図を添付することになった。境界が確認できたため、4月11日に双方立ち会いの上、境界標を設置し直した。

業者間の連携の悪さは業界の体質か

 一連の経緯の中で強く感じたことは、不動産業者は合意を積み上げていくという発想に乏しいのではないかということである。その場しのぎのご都合主義である。

 第1に社内および業者間の横の連絡が全くできていない。記者は境界確認書の問題をB社の測量士に説明したにもかかわらず、B社のほかの従業員もA社従業員も「聞いていない」と主張した。まるで記者がうそをついているみたいに思われるので、「過去の経緯をB社測量士に確認して下さい」と何度もお願いしたが、それでも確認しない。反対に記者に対して「もう一度説明して下さい」と要求してくる。たとえ目の前の本人に聞いた方が早いとしても、それは筋違いである。

 第2に前に言ったことと違うことを主張する。前述のように担当者が変わってしまえば横の連絡がないため、前任者に話したことが無視される。それだけでなく、同じ担当者と話していても、過去にした時の話と違うことを平気で言ってくる。

 筆者は過去に購入したマンションについてのトラブル経験を、記事「東急不動産の遅過ぎたお詫び」にした。

 その時の売り主の東急不動産や販売代理の東急リバブルは上述の2点を極端な形で行っていた。このような態度は、都合の悪い内容は反故(ほご)にして、自社の要求だけを受け入れられるまで繰り返す場合には都合がいい。しかし相手側にとってはばかにされた、軽視されたと感じるものである。

 不都合な事実を隠して問題物件をだまし売りしたようなケースでは、消費者に泣き寝入りを迫るために意図的に行っていると考えられる。一方、本記事に登場した業者には、そこまでの悪意があるとは思えなかった。だからこそ記者も腹を立てながらも話を重ね、一定の合意に至ったのだが、無意識的ではあるにせよ、似たような態度がとられたことは注目に値する。いわば不動産業界の業界的な体質なのではないかと考える。


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