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二子玉川ライズ(二子玉川東地区再開発)問題記事

林田力(『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者)

 

二子玉川ライズは街壊し... 2

住環境の破壊... 3

東急グループの営利事業... 4

住民軽視... 5

二子玉川で進む街壊し... 5

二子玉川東地区再開発見直しを求める集い... 6

にこたまの環境を守る会集会... 9

二子玉川東地区再開発を問う住民の会発足... 11

二子玉川再開発の解決をめざす集会開催... 13

「これで良いのか二子玉川再開発」の集い開催... 15

玉川土手で早めのお花見【二子玉川】... 17

二子玉川ライズ反対スピーチ... 18

にこたまの環境を守る会11・3集会開催... 19

二子玉川住民が再開発を意見交換... 20

二子玉川東地区住民まちづくり協議会が住民提案披露... 22

二子玉川東地区再開発差止訴訟... 24

二子玉川東地区再開発差止訴訟被告側証人尋問(2... 26

二子玉川東地区再開発差止訴訟結審... 30

一審判決... 34

二子玉川再開発差止訴訟は洪水被害が焦点... 37

二子玉川再開発差止訴訟で住民側は洪水被害を改めて主張... 38

二子玉川再開発差止訴訟・洪水被害の立証へ一歩... 39

 

二子玉川東地区再開発・差止訴訟被告側証人尋問(1)

http://www.news.janjan.jp/living/0801/0801158957/1.php

住民無視が見えた「二子玉川東地区再開発・差止訴訟」被告側証人尋問(2)

http://www.news.janjan.jp/living/0801/0801168999/1.php

二子玉川東地区再開発を問う住民の会発足

http://www.news.janjan.jp/area/0812/0812022692/1.php

「二子玉川再開発差止訴訟は洪水被害が焦点に」JANJAN 2009919

http://www.news.janjan.jp/area/0909/0909180387/1.php

「東急東横線で車椅子の女性が転落死」ツカサネット新聞2009928

http://news.livedoor.com/article/detail/4368703/

「TV番組「ブラタモリ」と再開発で失われるニコタマの魅力」JANJAN 20091017

http://www.news.janjan.jp/living/0910/0910161751/1.php

「二子玉川東地区住民まちづくり協議会が住民提案を披露」JANJAN 20091027

http://www.news.janjan.jp/area/0910/0910252196/1.php

「二子玉川再開発差止訴訟・住民側はあらためて「洪水被害」を主張」JANJAN 20091030

http://www.news.janjan.jp/living/0910/0910292391/1.php

 

二子玉川東地区再開発を考える会

http://www.futakotown.net/

 

二子玉川ライズは街壊し

ニコタマの愛称で知られる二子玉川で街壊しが進んでいる。二子玉川は東京都世田谷区にある東急田園都市線・大井町線二子玉川駅周辺の地域である。多摩川に沿った地域で豊かな自然を残し、戦前から風致地区に指定されてきた。駅周辺には数は少ないが昔ながらの商店があり、銭湯もあった。

この二子玉川で二子玉川東地区第一種市街地再開発事業(二子玉川ライズ)が進行中である。東京都世田谷区玉川の約11.2haの土地に超高層ビルを建設し、道路を拡幅する。民間施行の再開発事業としては全国最大規模になる。この再開発事業に対して地域住民を中心として反対運動が起きている。

反対運動は2件の裁判によって司法の場でも争われている。第1に二子玉川東地区市街地再開発組合(川邉義高・理事長)に対して再開発事業の差し止めを求めた民事訴訟である(平成17年(ワ)第21428号)。第2に世田谷区に対する再開発事業への公金支出の差し止めを求めた住民訴訟である(平成19年(行ウ)第160号)。

このうち、民事訴訟については一審で請求棄却となったが、住民の控訴により東京高裁で係属中である(平成20年(ネ)第3210号)。東京地裁平成20年5月12日判決は再開発による圧迫感や景観破壊が権利侵害となることを認めながらも、再開発事業の公共性を理由に権利侵害は受忍限度を超えないとした。住民側は控訴審では都市工学や社会学などの知見を活用して、分譲マンションやホテルを建設する再開発計画に公共性がないことを主張する。

本稿では再開発の問題点として大きく3点指摘する。第1に住環境の破壊であり、第2に公共性の欠如であり、第3に住民軽視である。

 

住環境の破壊

再開発の第1の問題は住環境の破壊である。再開発では地上42階(約150m)及び28階(約100m)を擁するタワーマンション「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」をはじめとする超高層ビル群が建設される。これら超高層ビル群によって周辺住民は景観の破壊、日照の阻害、ビル風、電波障害、交通量増加による大気汚染など複合的な被害を受けることになる。

既に「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」は建設中であり、日照・眺望の妨げ、風害(ビル風)、電波障害などの被害が顕在化した。以前から住民が親しんで来た多摩川からの風も届かなくなってきている。加えてビルの反射光により、変なところから変な時間帯に光が照射されるという想定外の被害も明らかになった。

加えて大規模住宅開発による急激な人口増加が交通量の増加を引き起こし、大気汚染の深刻化が懸念される。また、既に飽和状態の東急田園都市線のラッシュが一層殺人的になる。二子玉川からの転居を真剣に考えているという住民の声も報道された(土屋亮「崩れ落ちるブランド住宅地 首都圏沿線別下落率で東急苦戦」アエラ2008年12月1日増大号14頁)

二子玉川東地区再開発の異様さは再開発地域を人工地盤で約7メートルもかさ上げすることにある。再開発地域に接する周辺住民にとっては目の前に約7メートルの壁ができることになり、甚大な圧迫感を受けることになる。これによって再開発地域と周辺地域はパレスチナの分離壁のように心理的にも物理的にも分断されたものとなる。これは再開発が地域コミュニティの発展を目指すものではなく、地域コミュニティを破壊するものであることを雄弁に物語る。

この人工地盤には周辺住民を犠牲にして再開発地域のみ洪水被害を免れようとする浅ましい発想が透けて見える。再開発地域の北側を流れる丸子川は過去に何度も氾濫を繰り返している。東海豪雨(2000年9月)並みの豪雨(時間最大雨量114ミリ)の場合は、2メートル以上の浸水も予想される(世田谷区洪水ハザードマップ)。世田谷区では約700世帯1700人が、この2メートル以上の浸水範囲に居住していると推計する(世田谷区議会定例会2008613日における村田義則議員の一般質問への答弁)。

このような環境において再開発で人工地盤が造られると水が流れずに滞留し、再開発地域周辺の住宅地の洪水被害を激化させることは明白である。この点で再開発は周辺住民の生命や健康、財産を侵害しうるものである。

この問題について再開発事業のコーディネーターである宮原義明(株式会社アール・アイ・エー)は再開発事業差止訴訟の証人尋問(2007年11月10日)で以下のように証言した。

「もともと、そこに流れ込んでいたということ自身が、それぞれの敷地としては、当然敷地の中で単独で整備することだと思いますから、それを前提としてのお話は少しおかしなことと思いますね」(林田力「住民無視が見えた「二子玉川東地区再開発・差止訴訟」被告側証人尋問(2)」JANJAN 2008年1月17日)。

再開発事業では周辺環境の洪水被害について配慮しておらず、再開発によって地域住民が洪水被害で苦しむことになっても構わない、という論理である。

この洪水被害は地域住民にとって看過できない被害であり、因果関係も説明を聞けば納得できる。しかし、差止訴訟一審では資料が十分ではなく、住民側は踏み込めなかった。控訴審では超高層ビルと集中豪雨やヒートアイランド現象の関係などの研究成果を交えて水害の危険を主張している。

 

東急グループの営利事業

再開発の第2の問題は私企業である東急グループの営利目的の事業であり、事業に公共性がないことである。予定されている建物はマンション、商業施設、オフィス、ホテルであり、私企業が自らのリスクと負担で行うべきものである。また、大規模開発は環境保全・二酸化炭素削減の動きにも逆行する。

二子玉川ライズが営利中心の再開発であり、二子玉川の魅力を喪失させるものであることはマスメディアでも認識されている。

「日本初のショッピングセンターが発散するおしゃれな雰囲気と、昔ながらのひなびた風情。東京都世田谷区の二子玉川駅周辺、通称ニコタマの魅力は、外来者と地元住民が織り成す『モザイク』にある。都心から離れた多摩川べりの人気エリアが1,000億円を投じる巨大開発の波に洗われるとき、何が失われ、何が残るのだろうか」

玉川高島屋SCのリニューアルにかかわった建築家の彦坂裕氏は以下のように語る。「ここは都心から離れた、いわば『離宮』。一般的な経済原理ではなく、時間軸が違う何かが求められる。山手線の駅前のような、ごく普通の開発になってしまえば、ニコタマのクォリティーは保てない」(「二子玉川−「離宮」に寄せる波」日経マガジン2009419日)。

二子玉川東地区再開発の本質が東急の利益追求であることは再開発事業予定地の85%以上が東急電鉄、東急不動産ら東急グループの所有地であることが示している。このため、再開発組合といっても圧倒的な大土地所有者である東急グループの意を体現したものに過ぎない。本来、再開発は「当該区域内の土地の利用が細分されていること等により、当該区域内の土地の利用状況が著しく不健全である」地域を対象とする(都市再開発法第3条)。この都市再開発法の趣旨に二子玉川東地区再開発が合致するかは大いに疑問である。

この公共性に欠ける東急の利益中心の開発関連事業に約10年間で700億円もの税金が投入される予定である。一方で世田谷区では保育園、幼稚園の保育料値上げ、各種施設使用料値上げなど、区民の負担増加が見込まれている。ここにおいて再開発反対運動は周辺住民のみならず、全ての納税者が関心を持たなければならない問題となる。

しかも納税者にとって恐ろしいことは税金の負担が増加する可能性があることである。100年に一度の大不況とも称される経済情勢下でバブル的な発想の高層マンションや営利施設が成功する可能性は低い。人口減少で将来的にはマンションもオフィスも余ることは確実である。建設会社は建設すれば儲かるが、再開発事業が行き詰ったら税金で穴埋めさせられる危険が高い。このため、反対運動とは別個に、具体化していないIIa街区について住民主導でまちづくりを提言する動きも活発である(「二子玉川東地区住民まちづくり協議会」など)。

 

住民軽視

再開発の第3の問題は地権者や住民に十分な説明もなく、東急グループ中心に進められていることである。たとえばIb街区の商業棟は元々8階建てと説明されていた。それがいつの間にか16階建てとなり、階数が倍増してしまった。このような不誠実な説明が横行している状況に住民の不信感は高まっている。

この不誠実さは東急の体質的なものである。筆者は東急不動産(販売代理:東急リバブル)から東京都江東区の新築マンションを購入したが、不利益事実(隣地建て替えなど)を隠してだまし売りしたものであり、裁判で売買代金を取り戻した(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社、2009年)。また、東急電鉄については秘密主義と住民への不誠実な対応が住民反対運動を噴出させていると分析されている(「「ブランド私鉄」東急沿線で住民反対運動が噴出するワケ」週刊東洋経済2008年6月14日号)。

広汎な反対運動にもかかわらず、現在は第1期工事が進行中である。町中至る所で工事を行っており、工事現場の中を道路が通っている感がある。二子玉川駅東口を出ると目の前が工事現場で塞がれる。工事現場を迂回しなければ目的地に着くこともできない。

再開発工事は住民の日常生活に大きな悪影響を及ぼしている。ニコタマの魅力や住民が抱く街への愛着が日々壊されている状態である。二子玉川は後世に悔いを残すバブルの遺物と成り果てる瀬戸際に立たされている。

 

二子玉川で進む街壊し

ニコタマの愛称で知られる東京都世田谷区の二子玉川で街壊しが進んでいる。多摩川に沿った地域で豊かな自然を残し、戦前から風致地区に指定されてきた。この二子玉川で二子玉川東地区第一種市街地再開発事業(二子玉川ライズ)が進行中である。分譲マンション(二子玉川ライズ タワー&レジデンス)やオフィスビル、ホテル、商業施設などの超高層ビルを建設する計画で、公共性がなく、住環境を破壊するとして地域住民を中心として反対運動が起き、2件の訴訟も係属中である。

既に建設中の高層ビルによって日照・眺望の妨げ、風害(ビル風)、電波障害などの被害が顕在化した。以前から住民が親しんで来た多摩川からの風も届かなくなった。

この再開発の異様さは再開発地域を人工地盤で約7メートルもかさ上げすることにある。再開発地域に接する周辺住民にとっては目の前に巨大な壁ができることになり、圧迫感を受けることになる。これによって再開発地域と周辺地域はパレスチナの分離壁のように心理的にも物理的にも分断されてしまう。

この人工地盤には周辺住民を犠牲にして再開発地域のみ洪水被害を免れようとする浅ましい発想が透けて見える。再開発地域の北側を流れる丸子川は過去に何度も氾濫を繰り返している。

このような環境において再開発で人工地盤が造られると水が流れずに滞留し、再開発地域周辺の住宅地の洪水被害を激化させることは明白である。これに対して再開発組合側は訴訟で「人工地盤の下は駐車場などの空間であり、洪水時には水没するため、人工地盤が水害を拡大させるおそれはない」と反論した。

これが事実ならば駐車場が貯留槽となってしまい、マンション居住者にとって問題である。ここには売ったら売りっぱなしのマンションデベロッパーの体質がある(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』参照)。既存住民も新たに流入する住民も幸せにしない再開発は工事を中止し、計画を見直すべきである。

 

二子玉川東地区再開発見直しを求める集い

「にこたまの環境を守る会」(野崎宏会長)主催で「わたしたちのまち二子玉川を守る集い」が2008114日、二子玉川地区会館(世田谷区)で開催された。二子玉川東地区第一種市街地再開発事業(以下、二子玉川東地区再開発)による住環境悪化に対する住民らの懸念の高さが浮かび上がった。

守る会は二子玉川東地区再開発の見直しを求めて活動している団体である。二子玉川東地区再開発では東京都世田谷区玉川の土地に超高層ビルの建設や道路の拡幅を計画する。

守る会が再開発に反対する主な理由は以下の通りである。

・再開発により、環境が破壊される。具体的には超高層ビル群による景観破壊、日照阻害、風害、電波障害、交通量増大による大気汚染などである。

・事業予定地の85%以上を東急電鉄、東急不動産らの東急グループが所有しており、開発目的に公共性が全くない。

・地権者や住民に十分な説明もなく世田谷区と東急グループ中心に進められている。

・東急の利益中心の開発関連事業に約10年間で700億円の税金が投入される。一方で世田谷区では保育園、幼稚園の保育料値上げ、各種施設使用料値上げなど、区民の負担増加が見込まれている。

「集い」の正式タイトルは「今からでも遅くない、この再開発はやめ、やり直そう、わたしたちのまち二子玉川を守る集い」である。守る会メンバーが事前にチラシ配布や電子メールで参加を呼びかけていた。参加者の中には個人的立場と断りを入れつつ、世田谷区議会議員もいた。

「集い」は大きく3部のパートに分かれた。最初に主催者側からの説明、次に参加者から再開発事業で困ったことについて意見聴取、最後に再開発事業を見直させるためのアクションについて議論した。

主催者側の説明では、冒頭で野崎会長が挨拶した。「長年、東急沿線に住み、東急ファンだった。しかし、住民のことを考えず、利益優先で再開発を進める東急の姿を見て、現在は東急不安になっている」と冗談を交えて語り、会場の笑いを誘った。

再開発事業の問題点説明では「市民政策を実現する会・せたがや」の成田康裕氏が中心となった。成田氏は東急大井町線等々力駅の地下化への反対運動を進めた人物である。本来はパワーポイントで作成した資料をプロジェクタで映す予定であったが、機械の調子が悪いとのことで、急遽、紙で配布した資料で説明することになった。

主な説明内容は以下の通りである。

・住宅地で100メートルを越える超高層ビルが複数棟も建てられる例はない。

・超高層ビルによる不快な圧迫感は形態率という客観的な数値によって実証されている。これは東京都環境影響評価条例に基づく東京都環境影響評価技術指針でも採用されている基準である。圧迫感は主観的な問題にとどまらない。

・超高層ビルが建てられればデジタル放送でも電波障害は発生する。顔が二重に映る。

・再開発予定地周辺は高さ制限が課せられているが、再開発予定地には高さ制限がない。お互い様ではなく、周辺住民が一方的に迷惑を被る再開発である。

・過去に丸子川の洪水で床上浸水になったことが複数回あるが、再開発で盛土を行うため、多摩川へ雨水が流れていかず、周辺地域の浸水被害が拡大する危険がある。

特に最後の浸水被害の問題は深刻である。高層ビル建設による景観破壊や交通量増加による大気汚染は容易に推測がつくが、再開発によって浸水被害が増大するという点は説明されなければ気付かない問題である。

続いて再開発で困っていることについて、参加者の意見を徴収した。様々な意見が出された。主な意見は以下の通りである。

「今の景観が気に入っている。再開発ビルが建つようであったら、引越ししたい」

「バス停の前のケヤキが全て伐採されたのがショックであった。再開発によって自然が失われてしまう」

「再開発地域で盛り土をするため、家の上を道路が通る形になる。排気ガスが心配」

「世田谷区は何故、再開発組合の言いなりになっているのか」

「税金によって地域住民を追い出し、税金によってビルを建て、公害を撒き散らす」

「後世に残す財産がコンクリートの建物だけというのは貧しい」

「超高層マンションでは住民間の確執が生まれるのではないか。地域住民としての一体感は生まれないのではないか」

「再開発組合主催の説明会に出席したが、腹が立って仕方がない。ガス抜きのための説明会であって、住民の意見を聞こうという姿勢は皆無である」

最後に「どうすれば再開発を止められるか」というテーマで議論された。まず成田氏が「必ず止められる。今からでも決して遅くはない」と力説した。既に一部で工事が始まっているが、それらは東急の息のかかった場所である。工事着手の既成事実で住民に諦めさせるのが再開発組合側の狙いである。等々力駅地下化工事を止めさせる運動の中心になった成田氏の発言だけに説得力があった。

会場からは成田氏に同調して、「今からでも止められるという点をもっと強調すべき」との声が出された。チラシには「今からでも遅くない、この再開発はやめ、やり直そう」と書いてあるが、もっと大きく目立つように書いた方が良いとの意見が出された。

別の意見として、「東急ストア・プレッセや東急百貨店での買い物をしない」というものもあった。再開発を実質的に進めているのは東急グループであり、彼らは経済的利益になると判断しているから進めている。従って近隣住民から反発を受ければ経済的損失が生じることを分からせなければならないという意見である。

一方で「電車に乗らない訳にはいかない」ため、不買運動の限界も指摘された。東急電鉄の基幹事業である鉄道事業は地域独占の公益事業という性格を持つ。本来、公共性の高い企業が周辺住民の声を聞かず、反対されている再開発を進めようとしているところに問題があるとの意見が出された。

主催者側からは、二子玉川東地区再開発を巡り、現在2件の訴訟が東京地方裁判所に係属していることが説明された。

・再開発組合に対し、再開発事業の差し止めを求める民事訴訟(平成17年(ワ)第21428号再開発事業差止等請求事件)

・世田谷区に対し、再開発事業への公金支出の差し止めを求める住民訴訟(平成19年(行ウ)第160号公金支出差止請求事件)

野崎会長は「人によっては『裁判までは……』という意見もあるが、裁判から逃げていたら絶対に解決しない」と語る。住民側が裁判まではしてこないと分かれば、事業者側も恐れることなく事業を進め、当然得られるべき譲歩さえ得られなくなるのが実情である。

2回目の集いを28日の18時から二子玉川地区会館で開催する予定である。この場で、より具体的な対策を考えていくことが確認された。

今回の「集い」の良かったところは、第1に出席者の意見を広く聞き、議論する姿勢があったことである。この種の運動では中心的に活動している人と、そうでない人とでは知識の差が生じる。そのため、新参の人の発言が古参の人には分かりきっていることも少なくなく、頭ごなし否定したり、一方的な説明が延々と続いたりということになりがちである。今回の集会では主催者側がすぐに回答を全て説明してしまうのではなく、対話の中で答えを出していく姿勢であった。

第2に時間配分を適切に行っていたことである。この種の集会では発表者が夢中になって予定時間以上の時間を費やし、最後は時間切れになることが多い。再開発で困る点について参加者から活発な意見が出されたが、最後の30分間は「再開発を止めるための手立て」を議論する時間として確保した。これら進め方については同種の集会を主催する人々にとって参考になると考える。

参加者からの発言主体の主体では議論の発散や脱線が起こりがちであるが、「集い」では、それほどでもなかった。これは司会の巧みさに加え、参加者間で集約できるほど、二子玉川東地区再開発は問題点が明確化しやすいことを意味していると考える。

 

にこたまの環境を守る会集会

再開発 世田谷 二子玉川 集会 反対運動

組織依存ではなく、自立的な住民の反対運動

「にこたまの環境を守る会 公正な判決を求める原告・支援者の集会」が2008223日、東京都世田谷区の上野毛地区会館にて開催された。同会会員を中心に約50名が参加した。集会では住環境を破壊する二子玉川東地区再開発事業の見直しを求めるための活動状況を報告しあった。組織に依存するのではなく、住民が自発的に行動する点が印象的であった。

同会は二子玉川周辺の住民を中心に結成され、二子玉川東地区再開発事業の見直しを求めて活動中である。同会にとって現在は一つの節目に当たる時期である。同会のメンバーら周辺住民らが原告となって、二子玉川東地区市街地再開発組合(川邉義高理事長)を相手に再開発事業の差し止めを求めた訴訟が2008128日に結審したためである(記事「二子玉川東地区再開発差止訴訟結審」参照)。

訴訟手続きの点では後は512日の判決を待つだけという状況である。しかし、座して待つだけとしないところが同会の素晴らしい点である。同会は現在の二子玉川東地区再開発事業の中止を求めているが、会の目的は「参集する住民の総意で「新たなまちづくりの夢」を語り合い推進すること」である(会則第2条)。判決が出されて終わりではなく、現在の再開発計画の問題・違法性を多くの人々に周知し、地域全体に運動の和を広げ、住民主体のまちづくりを目指す。今回の集会は、そのために各自の活動を報告しあい、お互いに取り組めることを確認しあう場であった。

最初に野崎宏会長が挨拶した。結審は一つの通過点という。自分達が既成概念にはまってしまっては駄目である。民意を強めて、なすべきことをなしていきたい、と。

続いて再開発差し止め訴訟で代理人を務める渕脇みどり弁護士と吉田悌一郎弁護士が「私たちの闘いを振り返り、今後の展望を切り開くために」と題して話した。

渕脇弁護士は怒りの対象の具体化を目指したと語る。裁判の過程で真実を明らかにしていくことで、何が問題で何が行われているのかが明確になり、怒りの対象が具体化する。怒りはパワーの源であり、同じ怒りを共有する人々の連帯は一層大きな力になる、と。

吉田弁護士は薬害肝炎訴訟原告の例を出しながら、「辛い時こそ頑張り時」と強調した。薬害肝炎訴訟は血液製剤「フィブリノゲン」などを投与され、C型肝炎ウイルスに感染させられた患者らが国と製造元の製薬会社「ミドリ十字」を引き継いだ「田辺三菱製薬」(大阪市)などに損害賠償を求めた裁判である。

吉田弁護士は「原告にとって大阪高裁の和解骨子案を拒否した時が一番辛かったはず」と語る。和解骨子案を受け入れれば自分達原告には和解金が入るが、同じ被害者でも救済されない人々も出てしまう。一方、拒否すれば自分達も救済されずに終わってしまう可能性もあった。それでも原告側は被害者全員の一律救済との原則論を貫き通し、それが世論を動かし、政治決着となった。そこに至ったのは地道な活動の積み重ねがある、と。

続いて住民から活発な報告がなされた。注目すべきは各住民が自発的に行動していることである。報告された内容は以下の通りである。

1.再開発により、洪水時の周辺地域の浸水被害が悪化しないことの具体的な根拠の説明を世田谷区に要求し、回答待ちの状況である。再開発地域は人工地盤で数メートルの盛り土を行う計画のため、雨水が再開発地域で塞き止められ、洪水被害が起きやすくなることが懸念されるためである。

2.建設会社での業務経験と再開発で建設されるマンションの施工会社の工事所長に直接確認した結果から、盛り土の人工地盤が想像以上に高くなるとの推測を披露した。再開発を推進する側は曖昧な説明しかせずに、住民に真実を知らせないようにしていると主張する。

3.世田谷区議会議員に再開発関連予算の見直しを求めるべく働きかけている。活動を始めた頃に比べると、再開発に反対する議員が数倍に増えた。

4.自分の住む地域で再開発見直しを求める署名活動を始め、世田谷区議会に提出した。

注目すべきは報告された住民の活動は、守る会の執行部が指示を出した結果ではなく、住民各々が自発的に動いていることである。二子玉川東地区再開発事業の見直しを求める運動は決して特定の反対運動家だけが行っている訳ではないことがポイントである。

反対運動にとって組織化は力であるが、反面、組織への依存心も生じやすい。一般のメンバーは「自分がやる」ではなく、「組織がやってくれる」という意識になってしまいがちである。その結果、活動しているのは役員だけとなってしまう危険性がある。

最初の洪水被害が悪化しないことの根拠説明要求を例にすると、周辺住民としては関心事であっても、自分で直接、世田谷区に問い合わせるのは気が引けるという方も少なくないだろう。その結果、自分で問い合わせることよりも、守る会の執行部に対し、「守る会として世田谷区に問い合わせて欲しい」と要望することを選択する人も少なくないと思われる。これを一概に誤りと否定するつもりはない。個人ではまともに取り合ってくれなくても、反対運動組織の代表者名で問い合わせれば、それなりの回答が返る場合もある。しかし、皆が皆、そのような形にしたならば反対運動組織の役員に負荷がかかってしまうことも事実である。

そして役員のみが活動するという状況は反対運動組織にとって不健全である。積極的に活動する役員が何らかの理由で活動を止めてしまえば全体の活動が止まってしまう。「うるさいのは役員だけ」という誤った印象を開発側に与えてしまう可能性もある。開発側の切り崩し工作によって、役員が地域から孤立してしまう恐れさえある。

この意味で守る会は反対運動として強い組織と言える。メンバーが組織に依存するのではなく、自立的に行動している。これは守る会が「二子玉川東地区再開発を考える会」、「駒沢通りの環境を守る会」、富士見台や上野毛の住民有志などの様々なグループから構成される連合型組織として発足した経緯も影響している面もある。何よりメンバー一人一人の意識が高いことが一番の要因である。

活発な活動報告に対しては、江東区東陽町から集会に参加した「スカパー巨大アンテナに反対する住民の会」の門川淑子代表も感心する。スカパー巨大アンテナに反対する住民の会は電磁波から近隣住民の健康・安全を守るため、株式会社スカイ・パーフェクト・コミュニケーションズが東陽町に建設するパラボラアンテナに反対している。しかし、反対運動を進める上で住民の組織化に苦労している面もあり、今回の集会は大いに励みになったと語った。

最後に二子玉川東地区再開発中止を求める決議文を読み上げて集会を終えた。決議文では再開発反対の理由を大きく3点にまとめた。

1に再開発の内容である。再開発は住環境・自然環境を破壊する。

2に再開発の進め方である。再開発地域の最大の地権者である東急グループ主導で進められ、住民は蚊帳の外に置かれている。例えば用途地域が変更され、公園になるべき土地に高層ビルが建てられるようになり、東急グループに莫大な利益をもたらすことになる。

3に税金の無駄遣いである。世田谷区が財政難・受益者負担と称し、区民の負担を増やすならば、再開発事業への公金投入を先ず止めるべきである。

 

●参考URL

スカパー巨大アンテナに反対する住民の会

http://www.ab.auone-net.jp/~fmt/skphp2.htm

 

二子玉川東地区再開発を問う住民の会発足

住民団体「二子玉川東地区再開発を考える会」総会が20081130日に世田谷区玉川総合支所・第1集会室で開催された。総会では「二子玉川東地区再開発を問う住民の会」(略称:二子再開発を問う会)に満場一致で改組することが決議された。

二子玉川東地区第一種市街地再開発事業は東京都世田谷区の二子玉川駅周辺に高層マンションやホテルなどを建設する計画である。これに対し、世田谷区民を中心として結成された「二子玉川東地区再開発を考える会」は景観破壊など再開発の問題を広く追及する。総会には50名近くの住民らが参加し、小さな子ども連れの家族も出席するなど世代的な広がりを感じさせた。

総会は経過報告や会計報告といった事務的な議事で始まった。司会進行は事務局の飯岡三和子氏が務めた。内容は大きく、「二子再開発を問う会」への改組、再開発差し止め訴訟の方針についての弁護士の説明、会員による討議の3つに分かれる。

1に改組については世話人の保坂芳男氏が説明した。「考える会」は再開発計画の内容を開示させて、住民が街づくりについて考える判断材料としていきたいとの思いから、この名称になったという。その後、再開発工事が開始され、再開発地域に建設される分譲マンション「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」の販売登録が受け付けられるなど再開発の状況は大きく変わった。住民運動も「考え、研究する集団」から「工事を差し止める戦う集団」へと性格が変わった。それに相応しい名前として「二子再開発を問う会」としたいと提案した。

「二子再開発を問う会」は「会の目的」において二子玉川東地区再開発を「周辺住民の迷惑を顧みない東急グループの利益優先の事業」と批判する。そして「安心して住める豊かな自然・住環境」と「住民参加の街づくり」を確かな権利として確立することを目指すとする。

その上で保坂氏は重点的な活動方針を説明する。既に再開発への反対運動は裁判という形で具体化している。二子玉川東地区市街地再開発組合に対して再開発事業の差し止めを求める民事訴訟と世田谷区に対する再開発事業への公金支出の差し止めを求める住民訴訟の2件を提起した。訴訟の原告と支持者によって「にこたまの環境を守る会」が組織され、法廷活動を進めている。これに対し、「問う会」は法廷外の住民運動を拡大し、世論を喚起することが使命と説明する。

続いて「問う会」の体制の説明に移る。住民運動の拡大という使命を実現するため、体制は大きく強化された。世話人は従来の10名弱から20名弱に倍増された。世話人の住所も、これまでは玉川、瀬田、上野毛など再開発隣接地域に偏在していたが、新任の世話人は豪徳寺、等々力、川崎など地理的に広がっている。

2に再開発差し止め訴訟についての説明である。代理人の淵脇みどり弁護士ら3名の弁護士によって訴訟の方針が説明された。再開発地域周辺の周辺住民ら64名は再開発組合に対して再開発事業の差し止めを求めて東京地方裁判所に提訴した(平成17年(ワ)第21428号)。東京地裁平成20512日判決は請求を棄却したが、住民は控訴し、現在は東京高裁で係属中である(平成20年(ネ)第3210号)。

原希世巳弁護士は最初に地裁判決の構造を説明する。地裁判決は再開発による圧迫感や景観破壊が権利侵害となることを認めながらも、再開発事業の公共性を理由に権利侵害は受忍限度を超えないとした。この判決は住民にとっては残念な内容であるが、控訴審を勧める上では戦いやすい判決であると解説する。

「再開発に公共性があるから許される」という論理ならば、再開発に公共性がなければ前提が崩れる。そのため、控訴審では都市工学や社会学などの知見を活用して、分譲マンションやホテルを建設する再開発計画に公共性がないことを立証すると述べた。

次に牧戸美佳弁護士が水害の問題について説明した。一審では再開発による水害の危険性について資料が十分ではなく、踏み込めていなかったと振り返る。高層ビルと集中豪雨やヒートアイランド現象の関係など研究成果を踏まえて水害の危険を訴えていくと表明した。

最後に淵脇みどり弁護士は「町全体が東急グループによって私物化され、住民が犠牲になっている」と再開発の状況を分析した。世界的な経済不況の中でハコモノを建設する余裕はなく、地域にあった街づくりを再検討する必要があると力説した。再開発事業をめぐっては多くのステークホルダーが存在するため、様々な分野で支持を広げていくべきとする。

事務局からは2008121611時から東京高裁822号法廷で行われる控訴審口頭弁論の傍聴の呼びかけがなされた。

3の住民の討議では再開発の深刻な問題が改めて明らかになった。主な意見を紹介する。

・再開発組合解散後に発生した被害(地盤沈下など)については誰も責任をとろうとしない。

・再開発地域の降雨は水害の危険を高めるので周辺地域に流さず、敷地内で処理することを求めたが、法律の規定以上のことは行おうとしない。

・工事の振動と騒音が酷すぎて、寝ていられない。

・世田谷区の税金が東急グループのハコモノに浪費されているのは区民全員の問題である。

興味深い点は住民が自発的に行動している点である。署名集めや工事中止の申し入れ、日影図の提示依頼など様々な活動を報告しているが、これらの活動は世話人の指揮の下、会として行っているわけでは必ずしもない。各人が問題意識に沿って自発的に動いた結果である。組織に期待するのではなく、各人が活動した結果を組織にフィードバックする。ここには理想的な市民運動の姿がある。住民意識の高さと街づくりへの真剣な思いを感じさせる総会であった。

 

二子玉川再開発の解決をめざす集会開催

住民団体「にこたまの環境を守る会」は2009228日に「二子玉川再開発の解決をめざす集会」を玉川区民会館(東京都世田谷区)にて開催した。集会では生存条件の破壊反対・公共性に反する事業への公金支出反対・国民主権のまちづくりの3点を骨子とするアピール文を採択した。

「にこたまの環境を守る会」は「二子玉川東地区再開発事業を問う住民の会」など二子玉川東地区第1種市街地再開発事業を問題視する住民団体が結集した上位団体である。周辺住民らによる再開発事業の差し止めを求める民事訴訟や世田谷区に対して公金支出の差し止めを求めた住民訴訟の支援団体となっている。

二子玉川東地区再開発事業は2007年に工事が開始され、高層マンション「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」などの建設や広告が進められている状態である。しかし、集会に参加した住民達は意気軒昂であった。これには大きく3点の要因がある。

第1に現実に工事が行われていることにより、被害が顕在化し、再開発事業に対する住民の怒りが共通認識として高まっていることがある。

第2にサブプライム問題に端を発した世界同時不況の深刻化がある。100年に一度の不況下でタワーマンションを建設する再開発事業は明らかに時代錯誤的である。これは反対運動の正しさを再確認させる結果となった。集会では「東急グループの「事業遂行能力」の危うさ」という表現までされたほどである。

第3に前々日の26日に鳩山邦夫総務相が東京中央郵便局の局舎取り壊しの見直しを表明したニュースがある。これも鳩山総務相が突然表明したわけではなく、ここに至るまでには局舎保存を求める人々の地道な活動があった。諦めてはいけないという重要性を再認識させた。

集会では世話人の浜田博氏が司会を務めた。浜田氏は冒頭で集会を今後のとりくみの検討・行動提起の場と位置付けた。

続いて同じく世話人の飯岡三和子氏より活動報告及び今後の予定が説明された。大きなものに再開発事業の差し止めを求める民事訴訟の控訴審の証人尋問がある。41414時半から東京高等裁判所822法廷で住民側が申請した坂巻幸雄・証人が洪水や災害問題、公共性について陳述する予定である。坂巻氏は築地市場の豊洲移転の問題点を指摘した人物であり、証言内容が注目される。

次に志村徹麿氏(世話人)が二子玉川再開発問題の解決を目指すアピール文について説明した。内容は大きく3点からなる。

第1に生存条件の破壊を許さないことである。大気汚染や洪水を悪化させる再開発事業は生命と健康を危険に晒す複合被害であると被害の性質を踏み込んでいる。これは周辺住民の不利益は受忍限度に過ぎないとの再開発組合側の主張への反論になる。

第2に公共性に反する事業への公金支出反対である。二子玉川東地区再開発は周辺住民の犠牲によって最大地権者である東急グループが利潤を追求する事業であり、700億円もの税金を投入することは許されないと主張する。ここにおいて再開発反対運動は周辺住民のみならず、全ての納税者が関心を持たなければならない問題となる。

第3に国民主権のまちづくりである。人口減少・高齢化社会で持続可能な経済発展につながるように事業計画を住民参加で見直すべきと提言する。

再開発の訴訟で住民側の代理人を務める淵脇みどり弁護士は「工事の着工を遅らせたことは粘り強い反対運動の成果」と強調した。今や鳩山総務相のような自民党の閣僚までが再開発の見直しを発言する時代である。この時代になるまで再開発事業を遅らせたことは大きな成果であり、価値観の変化を積極的に利用すべきと発言した。また、淵脇弁護士は自らが作詞作曲した歌「にこたまに愛を」を披露した。

後半は住民の意見発表や活動報告にあてられた。深刻な工事被害、行政や議会への積極的な陳情活動など活発な発言がなされた。夜間の工事を工事現場に抗議しても、現場担当者は「東急電鉄の担当者がドンドンやれと言っている」として取り合わなかったという。また、議会への請願では自民党・公明党議員の消極的姿勢に失望したとの感想が述べられた。

印象的な意見として東急電鉄の「新しい街づくり」のキャッチコピーへの批判があった。東急電鉄が「新しい街づくり」を宣伝する何十年も前から、住民は地域に愛着を持って住み続けている。東急電鉄は既存の住民を否定して新しい街づくりをしようとしているとしか思えないと批判した。

集会には竹村津絵、山木きょう子の両世田谷区議会議員(共に生活者ネットワーク)も出席した。竹村議員からは世田谷区の平成21年度予算について簡単に説明した。山木議員は「議会を変えるのは皆様であり、住民がまとまって運動すれば変えられる」とエールを送った。

最後にアピール文を採択して集会は終了した(このアピール文には私も賛同した)。世の中は大きく変わりつつある。「国民主権のまちづくり」という積極的価値を打ち出した住民運動の新たな展開に期待したい。

 

「これで良いのか二子玉川再開発」の集い開催

住民団体「にこたまの環境を守る会」は2009328日に「これで良いのか二子玉川再開発」の集いを玉川町会会館(東京都世田谷区玉川)で開催した。最後には外に出て再開発現場に対してシュプレヒコールを行うというアクティブな集会になった。

集いの冒頭で世話人の飯岡三和子氏は「現地では日夜、工事被害に苦しんでいる。夜間も工事の照明がピカピカしている」と工事被害の切実さを訴えた。実際、私は東急電鉄・二子玉川駅を降りて会場に向かったが、駅前の大部分が工事中で会場に着くまでに回り道をしなければならなかった。再開発工事が住民の日常生活に大きな悪影響を及ぼしていることは想像に難くない。

合わせて飯岡氏は4141430分から東京高裁822号法廷で再開発差し止め訴訟控訴審の証人尋問が坂巻幸雄・証人が洪水被害の危険性などを証言すると紹介し、傍聴を呼びかけた。

 

渕脇みどり弁護士からは裁判の説明がなされた。渕脇弁護士は再開発の差し止めを求める民事訴訟や公金支出の差し止めを求める住民訴訟の住民側の代理人である。

渕脇弁護士は「事実が一つ一つ明らかになり、原告の怒りが強まっている」と語る。二子玉川東地区再開発は昭和50年代に検討されたバブル経済の遺物である。巨大な建物が出来上がりつつある状況で、これまで関心がなかった層にもおかしいと立ち上がる人が増えているという。

裁判で訴えている問題は大きく2点である。

第一に再開発事業そのものが大気汚染や洪水など住民の生存権を侵害するものである。住民に複合被害をもたらす再開発は生存権に関わる侵害である。

第二に再開発事業の進め方が、民間企業である東急グループによる再開発制度を濫用した乱開発であり、公共性が存在しないことである。東急が再開発制度を濫用し、二子玉川を住みにくくしている。風致地区の規制を取り払い、住民の健康や生命に悪影響を及ぼしている。

裁判の中で調査を進め、大きな武器を手に入れた。元々の再開発の計画では広域生活拠点を目指すといっても、吉祥寺や立川、町田をモデルとしていた。新宿や六本木のような高層ビル街にする現在の再開発とは乖離している。しかも昔から二子橋の交通渋滞が問題にされていたが、現在の再開発計画では何ら解消されていない。また、控訴審では複合被害について専門家による主張の裏付けも得られた。

再開発見直しの方向に物事を動かすことは決して簡単ではない。しかし、バタフライ効果という言葉がある。蝶の羽ばたきのような小さな行動がトルネードのような大きな影響をもたらすこともある。勢いを作り出すことが重要であると渕脇弁護士は結んだ。

 

続いて保坂芳男氏から世田谷区役所との折衝について特別報告がなされた。保坂氏は何年も再開発の問題に取り組み、何百回と世田谷区役所に電話や訪問で折衝しているという。

保坂氏が世田谷区役所の課長に電話したところ、「二子玉川東地区市街地再開発組合から請求書が送付されたら、年度内に支払う」との回答を得た。請求書の中身を精査することなしに何十億円もの区民の税金を払う区の姿勢に強く抗議した。

また、別の課長には公園関係の予算額について電話で問い合わせた。課長は複数年にまたがる予算総額は回答したが、単年度の予算額の回答を拒否した。区議会にも提出しないという。保坂氏は再開発の実態を公開しようとしない区の閉鎖性や秘密主義を批判した。今後も大勢の住民と共に区役所に行き、主張を続けるとする。

二子玉川再開発で700億円もの税金が投入されているという事実はほとんど知られていない。東急が自社の敷地に自社の費用で建設していると考えている人が大半であることを問題とした。

加えて区民にとっては税金を使うならば再開発よりも保育所や老人ホームが切実であると主張した。社会保障関係の部署に電話したところ、50億円があればベッド数が100の老人ホームを作ることができるとの回答を得た。老人ホームに入りたいと希望する人は多い。火災で10人が死亡した群馬県渋川市の老人施設「静養ホームたまゆら」の入所者の多くが墨田区などから斡旋されたものであったという報道がなされたばかりである。都内の老人ホームが不足しているために遠隔地の施設に入居しなければならない。

この点について社会保障関係の職員に意見を求めたが、「部署が違うので言えません」と回答拒否された。区民全員が自分達の問題として税金の使い道を真剣に考えなければならないと主張した。

 

今回の集いでは多くの政治家が出席したことも特徴である。二子玉川再開発が政治的な争点として浮上しつつあることを示している。

竹村津絵・世田谷区議会議員(生活者ネットワーク)は「もっと良い再開発の仕方があったと感じている一人である」と挨拶した。差し止め訴訟で住民側の証人となる坂巻氏に二子玉川再開発の問題を紹介したのは竹村議員という。「未だ具体化していないII-a街区は住民の意見を踏まえた内容にしなければならない。再開発事業で現実に様々な問題が噴出していることを行政は受け止めなければならない」と主張した。

たぞえ民夫・東京都議会議員(日本共産党)は再開発などに膨大な税金を支出する都の来年度予算が可決されたが、反対したのは共産党だけと紹介する。その上でオフィス需要やマンション需要も低迷する中で、二子玉川再開発事業は時代の流れに逆行すると主張した。住民の戦いは重みがあるとし、日本のあり方を変えるものとエールを送った。

岸たけし・世田谷区議会議員(日本共産党)は不況が深刻化し、区民の生活を守ることが区に求められる中で、700億円もの税金を再開発に費やすことが許されるのかと発言した。

世田谷区の予算案は議会で可決されてしまったが、区議会には今までにない話が出ている。共働きをしないと食べて生けない世帯が増えている。認可保育園に入れない人は1600人以上もいる。特別養護老人ホームに申し込みをしても入れない人は2300人。最初から諦めている人も含めれば3000人以上いると考える。

区内の事業者も減少しており、区は生活を守ることに本腰を入れなければならない。区が出している予算では足りない。このような主張に対して、自民党などは財源を持ち出してくるが、区が溜め込んだ700億円を再開発に使うのが良いか。公共性の名目に何でもできるとまかり通ってしまうことがおかしい。再開発への税金投入に反対する運動は生活や営業を守ることにもつながると力説した。

村田義則・世田谷区議会議員(日本共産党)は住民運動が政治を動かすとし、政権構想では差異があるとしても、世論が盛り上がれば党派を超えて共闘できると主張した。

衆議院議員の予定候補者の宮本さかえ氏(東京5区)と佐藤なおき氏(東京6区、共に日本共産党)も挨拶した。

集会後は多摩川の土手に移動し、建設中の高層マンション「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」を見ながら、圧迫感や景観が破壊されている状況を確認し、「再開発をやめろ」「税金を投入するな」とシュプレヒコールを上げた。道行く人にはビラを配り、再開発の問題点をアピールした。

 

玉川土手で早めのお花見【二子玉川】

住民団体「にこたまの環境を守る会」が東京都世田谷区玉川の多摩川の土手で2009328日に少し早い花見を行った。「にこたまの環境を守る会」は二子玉川東地区第1種市街地再開発事業の環境破壊を批判し、国分寺崖線と多摩川に挟まれた自然豊かな風致地区として二子玉川の環境保全を訴える団体である。

「にこたまの環境を守る会」は、この日に玉川町会会館で集会「これで良いのか二子玉川再開発」を行い、再開発の建設現場に向けてシュプレヒコールを繰り返した。その後での花見であり、肌寒さが残る中でも参加者は熱気に包まれていた。花見会場には「住民不在、二子玉川再開発に700億円の税金投入はやめて」の幟も立てられた。

花見ではハンドマイクを手に参加者が思い思いに一分発言を行った。記者も自身の不利益事実(隣地建て替え)を隠して騙し売りされた新築マンション購入経験を踏まえて、「周辺住民を犠牲にして開発を進める建設する不動産業者のマンションが住民にとって良いものであるはずがない」と主張した。

参加者は周辺住民が中心であったが、他の団体からも幅広い参加者があり、各々の団体の活動を紹介した。多摩川の大規模堤防工事に抗議する「二子玉川の環境と安全を取り戻す会」(旧二子玉川の環境と安全を考える会)や下北沢の再開発計画の見直しを求める訴訟を提起中の「まもれシモキタ!行政訴訟の会」、川崎市内の住民団体が集まった「まちづくり・環境運動川崎市民連絡会」(川崎・まち連)などである。

また、再開発の差し止めを求める民事訴訟や再開発への公金支出差し止めを求める住民訴訟の住民側代理人を務める渕脇みどり弁護士は自らが作詞作曲した歌「にこたまに愛を」を披露した。これは自然豊かな二子玉川の情景を描いた歌である。渕脇弁護士のマンドリン演奏に合わせて、参加者全員で唱和した。事前に用意した風船は、遊びに来ていた子ども達に配布し、大好評であった。

この日の多摩川の土手の桜は二分咲きといったところであったが、この桜も再開発の一環として伐採される計画で、今年で見納めになる可能性があるとのことであった。再開発で失われる自然の貴重さを噛みしめられた花見であった。

 

二子玉川ライズ反対スピーチ

市民記者の林田力と申します。インターネットメディアで二子玉川東地区再開発の問題について記事を発表しております。今日は東急の開発が周辺住民だけでなく、東急のマンションに住む人も不幸にするものであることを主張したいと思います。

実は私は東急不動産の新築マンションを購入したことがあります。ところが、そのマンションは問題物件でした。隣の土地では建て替えが予定されており、マンションは日影になってしまいました。東急不動産と販売を代理した東急リバブルは隣が建替えられることを知っていながら、私には不利益事実を隠して騙し売りしました。

後から真相を知った私は消費者契約法に基づいて売買契約を取り消し、裁判で売買代金を取り戻しました。裁判を進める中で東急リバブルと東急不動産が売ったら売りっぱなしという不誠実な企業体質であることが分かりました。自社の金儲けだけで購入者のことは何一つ考えていませんでした。

この不誠実な姿勢は二子玉川再開発と完全に同じものです。周辺住民の生活を破壊して平然とするような会社がマンション住民の利益を考えられる筈がありません。二子玉川の再開発に反対することは地域の環境を守るだけでなく、消費者を守る運動でもあります。

 

にこたまの環境を守る会11・3集会開催

「にこたまの環境を守る会11・3集会〜『こんな理不尽な再開発は許せない』の怒りを、これからの運動につなげるための集会」が2009年11月3日に上野毛地区会館(東京都世田谷区)にて開催された。「にこたまの環境を守る会」は二子玉川東地区再開発の問題に取り組む住民団体である。集会では様々な団体の参加者が出席し、再開発の問題の広がりが感じられた。

冒頭挨拶では新井英明副会長が集会の趣旨を説明した。当初は総会として企画したが、軽視的名内容は避け、決起集会にしようということで、この形になったとする。

淵脇弁護士からは係属中の2つの裁判について説明がなされた。再開発組合相手の民事訴訟では裁判所が洪水被害に関心を示し、その点の審理を進めているところである。世田谷区相手の住民訴訟では世田谷区が再開発組合の報告書だけで公金の支払いをしている実態が明らかになった。領収書などの添付もない杜撰さである。

両訴訟とも相手方は形式的な反論しかしていない。民事訴訟では洪水時には高層マンション「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」の駐車場を水没させるから問題ないという、まともなマンションならばあり得ない反論がなされた。住民訴訟では再開発によって移り住む新住民が幸せになるから、既存住民は我慢しろと言わんばかりの反対尋問であった。これら相手方の論理の穴を炙り出すことに成功しているとする。最後に淵脇弁護士は二子玉川の美しさを自ら作詞作曲した歌「にこたまに愛を」を披露した。

住民訴訟で証言した岩見良太郎・埼玉大学教授からは日本の都市計画の異常性が説明された。開発が善とされ、高層ビルを建てて企業が金儲けする計画が経済成長するということで公共性があると正当化されてしまう。本当の公共性は何かということを考えなければならない。

そこで公共性の判断基準として「地域環境の優れた資質を引き継ぎ発展させるまちづくり」など5つの公準を立て、二子玉川東地区再開発が公共性を満たしていないことを意見書や証人尋問で示したという。最後に岩見教授は二子玉川の住民運動は日本中のまちづくりに影響を及ぼす可能性があるし、そのようになるべきであるとエールを送った。

集会では他団体からの参加者も発言し、交流を深めた。代表的な団体は以下の通りである。

・二子玉川東地区住民まちづくり協議会

・二子玉川の環境と安全を考える会

・玉川1丁目の住環境を守る会

・外環道検討委員会

・景観と住環境を考える全国ネットワーク

・八ツ場ダムをストップさせる東京の会

特に印象的であった内容は二子玉川の環境と安全を考える会の発言であった。これは二子玉川南地区の大規模堤防計画の見直しを求める団体である。巨大な堤防ができると、玉川一丁目は堤防と再開発地域で挟まれた、すり鉢の底のようになり、かえって洪水被害が増大する。これは再開発地域の北側が再開発地域の人工地盤によって洪水被害が激化することと同じである。堤防と再開発は同根の問題であり、共通の認識の下に戦わなければならないと主張した。

また、景観と住環境を考える全国ネットワークの小磯盟四郎副代表は人口減少によって住宅が余りつつあり、放置マンションが出始めていると説明した。この中で「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」のような巨大マンション建設は幽霊マンションを作ることになるとしか思えないと批判した。

住民からは様々な意見が出されたが、工事被害の深刻さが改めて浮き彫りになった。工事の重層的な下請け構造で、責任が有耶無耶にされる。元請けの東急建設らに約束させた内容が下請けや孫受け会社まで徹底されない。工事会社は説明会を開催せず、戸別訪問で済ませようとするため、被害の実態を共有して共同行動することの重要性が確認された。

また、その場しのぎの工事会社の説明のエピソードも披露された。住民が工事会社に夜間工事を抗議したところ、「急に決まった工事で、人手がないから夜にやる」と開き直られたという。そもそも工事が急に決まること自体が不自然である上、優先度が高い工事ならば他の現場の要員を使えばよく、あえて夜間に行う必要はないと改めて抗議した。

これを受けて、工事は機械掘りから手掘りに変わり、騒音・振動は緩和された。工事を手堀りで進めるということは時間的余裕があることになる。つまり緊急性のある工事だから住民は我慢しろという当初の工事会社の説明は崩れた。再開発事業自体がだましだましで進められており、工事説明も住民をごまかそうとする傾向がある。このために企業の説明を疑う姿勢が必要と指摘された。

目の前で行われている工事被害対策というミクロの世界から、他団体と共通するまちづくりの問題共有というマクロの世界までを包含する有意義な集会であった。

 

二子玉川住民が再開発を意見交換

東京都世田谷区の住民団体・二子玉川東地区住民まちづくり協議会による住民意見交換会が2009年8月1日、玉川町会会館にて開催された。

協議会は2010年3月に事業認可が予定されている二子玉川東地区第一種市街地再開発事業(主に第2期工事)について周辺住民が自ら街づくりを考えて行政や事業者に提案することを目的として2009年7月に結成された。

協議会では住民の意見を集めることを目的として住民意見交換会を3回開催する。1回目は7月29日行われ、今回が2回目である。3回目は8月9日17時半から19時半まで玉川町会会館で開催される。曜日と時間帯を分けて開催することで、広汎な住民の意見を集約する。

この活動は早稲田大学卯月研究室(卯月盛夫教授)の協力により進められ、今回の意見交換会でも早稲田大学芸術学校の奥村玄氏らが出席した。奥村氏は「再開発は周辺住民に大きな影響を受けるが、これまで再開発計画に地権者以外の住民の意見が反映されることはほとんどなかった。協議会の試みは大きな挑戦であり、日本社会に求められていることでもなる。皆さんの願いをお手伝いしたい」と挨拶した。意見集約にはKJ法を活用した。住民は再開発への意見をポストイットに記入する。それを模造紙に貼り付けることで整理していった。

二子玉川東地区再開発事業は住環境を破壊するとして住民から反対運動が起き、再開発組合に対する事業差止訴訟や世田谷区に対する公金支出差止訴訟が裁判所に係属中であるが、第1期工事は進行中の状態である。一方で再開発地域の中央部に位置するII-a街区は具体化されていない。再開発地域の中心部分が具体化していないということ自体が再開発事業の無理を印象付けるが、そこに住民主導の計画を提言することが協議会の狙いである。

意見交換会の内容として注目すべきものを4点指摘する。

第1に高層ビルへの嫌悪である。大規模地権者の東急電鉄及び東急不動産の基本計画ではII-a街区に31階建て(約137m)のオフィスビルを建設することになっている。これに対し、意見交換会では高層ビル不要論が噴出した。

既に第1期工事での高層マンション「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」建設で日照・眺望の妨げ、風害(ビル風)、電波障害などの被害が顕在化した。加えてビルの反射光により、変なところから変な時間帯に光が照射されるという想定外の被害も明らかになった。そのため、駅から離れた場所に盛り土で公園を造ることを止めて、II-a街区を公園にすればいいとの意見も出された。営利施設を建設しても、これからの経済情勢では採算は困難であり、建物を建てない方が経済面でも合理的と主張された。

第2に住民への情報公開が不足する再開発事業への不信感である。I-b街区の商業棟は元々8階建てと説明されていた。それがいつの間にか16階建てとなり、階数が倍増してしまった。この変遷は東急電鉄・東急不動産の基本計画から確認できる。このような不誠実な説明が横行している状態に「おかしい」との声があがった。

第3に住民無視で行われる建設工事である。二子玉川は町中が工事現場になり、工事現場の中を道路が通っているような感がある。工事の都合で道路が突然、通行止めになり、住民は毎週のようにルートを変えなくてはならない。夜間、自転車で走っていて通行止めのバーに衝突した人もいる。

ここでは住民に事前に周知するという姿勢が施工会社や再開発組合に欠けていることが槍玉に挙げられた。工事担当者に意見を言った住民もいるが、工事の進行によって刻々と変わるから掲示板を出せないと開き直られたという。会場の玉川町会会館の道路も「七月三〇日この道路封鎖」の看板が8月1日時点でも残っており、紛らわしい状態である(写真参照)。

この工事の問題は多くの住民が不満に思っており、一人が発言すると堰を切ったように発言が続いた。自分の感覚が過敏なのではなく、皆が我慢を強いられていると確認できたことは意見交換会の大きな成果である。

第4に住民のバランス感覚の良さである。税金を投入する再開発で営利施設(ホテルやオフィスビル)を建設することに疑問が呈された。そのため、図書館などの公共施設が要望されたが、一方で「公共施設が入居した場合、税金で賃料を支払うのか」との意見も出された。

他所の再開発事業では主要テナントの撤退の穴埋めとして公共施設を押し込むことで破綻を回避した例がある(NPO法人区画整理・再開発対策全国会議『区画整理・再開発の破綻』自治体研究社、2001年、98頁)。住民にとって図書館が歓迎できるとしても、区の財政や図書館整備計画と整合するかは検討しなければならない。再開発事業とは無関係に再開発地域外で図書館を建設することもでき、その方が安上がりということも考えられる。その意味で利便施設を求めるだけではなく、その維持コストにも目配りする意見が出たことは貴重である。

意見交換会で浮かび上がったことは、大規模地権者の東急グループの営利目的の開発と住民の快適な生活の衝突である。現在の二子玉川は工事だらけで魅力的な町とはお世辞にも言えない。住民本位のまちづくりを進められるか、地域の力が試されている。

 

「これで良いのか二子玉川再開発」の集い開催

http://www.news.janjan.jp/living/0904/0903290449/1.php

 

二子玉川住民意見交換会開催8/9

【転送・転載歓迎】二子玉川東地区まちづくり協議会からの転送です。

二子玉川東地区まちづくり協議会では第3回住民意見交換会を20098917:30-19:30まで玉川町会会館(東京都世田谷区玉川)で開催します。

二子玉川では大規模地権者の東急電鉄・東急不動産の営利優先の二子玉川東地区第1期再開発工事が進行し、地域住民の住環境が破壊されています。その上に第2期工事の計画まで予定されています。

今年度中に予定されている事業計画作成の前に住民自らが自分達の住む街のあり方を話し合い、要望としてまとめることで事業者(再開発組合)や行政に提案していきます。昔からの良好な住環境を維持できるまちづくりを目指す行動が必要です。積極的な御参加をお待ちしております。

http://hayariki.seesaa.net/article/124909942.html

 

二子玉川東地区住民まちづくり協議会が住民提案披露

東京都世田谷区の住民団体「二子玉川東地区住民まちづくり協議会」(飯泉善一郎会長)が2009年10月24日に「住民提案お披露目&意見交換会」を玉川町会会館で開催した。

協議会は二子玉川東地区第1種市街地再開発事業(主に第2期工事)に住民の声を反映させることを目的として結成された団体である。今回は7月から8月にかけて開催した意見交換会で出された住民意見を踏まえた提案を披露し、改めて住民の意見を集めた。住民提案は協議会に協力する卯月盛夫・早稲田大学芸術学校教授が説明した。

最初に卯月教授は意見交換会で出された住民意見を整理した。現状の再開発の問題は以下の7点になる。

第1に事業者(再開発組合)の説明不足である。説明や告知がほとんどなく、回答も不親切極まりない。

第2に高層ビルの悪影響である。建築中の二子玉川ライズ タワー&レジデンスにより既に日照、電波、プライバシー、ビルの照り返し、景観、通風の問題が生じている。これ以上、高層ビルが増えれば住民の被害は一層増大してしまう。

第3に水害の懸念である。再開発地域の人工地盤と盛り土で雨水がせき止められ、周辺地域が水浸しになりかねない。

第4に渋滞の激化である。既に駅も道路もパンク寸前である。

第5に都市計画公園への疑問である。公園を駅から最も離れた場所に移動する合理性がない。

第6に現状の再開発は二子玉川らしさを壊している。富士山、桜、花火、多摩川、崖線(坂道)など、水と緑と景観を大切にすることが二子玉川スタイルである。

第7に公共施設の少なさである。二子玉川は福祉と文化の谷間であり、住民の暮らしに役立つ公共施設を希望する。

住民提案では、これらの意見を踏まえ、5つのコンセプトを打ち出した。高さ、ボリューム配置、用途構成、自然環境、安全安心である。

高さでは二子玉川の魅力である多摩川の水辺、及び国分寺崖線の緑の連なり、水平的な連続空間を断ち切らないため、計画敷地内の建物の高さを国分寺崖線の高さ25m以下に制限する。

ボリューム配置では周辺住宅地の魅力を損なわず、調和させるために、建物のボリュームをできるだけ小さくして分散配置する。大きな建物を集中して配置するのではなく、ヒューマンな雰囲気とする。

用途構成では玉川地域の新たな生活文化拠点とするため、商業業務施設に特化せず、芸術文化施設や福祉保健施設を充実する。また、多世代で多様な区民が暮らせる街にする。

自然環境では高層ビルの足元を彩る人工的な緑ではなく、多摩川の水辺から吹き渡る風を感じながら、土や緑に触れることのできる二子玉川らしい暮らしと自然の共存する姿を追求する。

安全安心では自動車交通の過度の集中と水害に対する不安を取り除き、安全と安心を確保するため、分散を前提とした交通マネジメントを行う。また、雨水浸透率を向上させ、計画敷地内で周辺地域の治水にも貢献する。

この上で卯月教授は住民提案の具体的な内容を模型と共に披露した。まず比較のために東急電鉄・東急不動産が200812月に出した第2期事業基本計画を説明する。ここでは再開発地域II-a街区には約137mの超高層ビルが立ち、それ以外の敷地のほとんどを約30〜20mのビルが覆う。建物の用途はオフィス・ホテル・商業施設である。

このII-a街区は容積率200%、建ぺい率60%と定められていた。ところが容積率520%、建ぺい率80%に変更されたために東急案が可能になった。高層ビルを建てる場合は通常、空き地を広く取るため、容積率は高くても建ぺい率は少なくする。このため、建ぺい率が80%という高い値に変更されたことを卯月教授は疑問視した。住民からも「このような勝手が通っていいのか」との声が出た。

住民提案はA案とB案の2パターンを用意した。A案はII-a街区に公共施設(図書館、多目的ホール)、商店、オフィス、住居、緑地を配置する。東急案と異なり、建物の規模を小さくし、分散させた。これによって様々な機能が適度に混在するミックス・コミュニティを実現する。

B案ではII-a街区に都市計画公園を充てる。II-a街区の建物は公共施設と3棟ほどの商業施設(レストランなど)だけで、残りは緑地とする。II-a街区を公園としたため、公園予定地の西半分をIV街区として住宅とする。

住民の反応はB案への支持が圧倒的であった。そのB案に対しても、これ以上の住宅は不要との意見が出された。また、高さ制限の25m以下については反論が出た。風致地区であった二子玉川の歴史を踏まえると25mでも高過ぎ、第2種風致地区の制限である15m以下とすべきとする。この点は再検討することになった。協議会では住民提案を確定後に世田谷区や事業者に説明する方針である。住民の声が街づくりに活かされるか、二子玉川の取り組みが注目される。

 

関連記事:二子玉川住民が再開発を意見交換

http://www.news.janjan.jp/area/0908/0908018086/1.php

 

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東急案を基づいて作成した模型。II-a街区には巨大な超高層ビルが塞がり、敷地のほとんどが30m程度の建物で覆われる。

 

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住民提案B案の模型。

 

二子玉川東地区再開発差止訴訟

二子玉川東地区再開発差止訴訟被告側証人尋問

二子玉川東地区第一種市街地再開発事業の差し止めを求める訴訟(平成17年(ワ)第21428号)の第3回口頭弁論が東京地方裁判所で20071110日に開催された。二子玉川東地区再開発事業は東京都世田谷区玉川の約11.2haの土地に超高層ビルの建設や道路の拡幅を行う。民間施行の再開発事業としては全国最大規模になる。

これに対し、近隣住民らは事業者の二子玉川東地区市街地再開発組合(川邉義高・理事長)を被告として、都市再開発法違反などを理由として再開発事業の差し止めを求めて提訴した。具体的には都市再開発法第1条違反(公共の福祉に寄与しない再開発である)、第4条違反(都市計画公園の指定のあった場所を再開発する)などである。提訴の背景には超高層ビル群による景観の破壊、日照の阻害、ビル風、電波障害、交通量増加による大気汚染など、再開発による環境悪化への懸念がある。

3回口頭弁論では再開発事業のコーディネーターである宮原義明(株式会社アール・アイ・エー)の証人尋問が行われた。この度、証人尋問の速記録を入手したので、報告する。証人は再開発を進める側の人間であり、証言の基調は当然のことながら、再開発事業を擁護するものであった。しかし原告の問題意識に正面から回答していない回答も見られ、再開発により住環境に大きな影響を受ける住民と再開発を進める側の意識のギャップが浮かび上がった。

 

速記録7ページには以下のやり取りがある。

被告代理人「原告らは、組合設立認可手続きについても違法であるというようなことを主張されてるんですけれども。例えば、都計審(記者注:東京都都市計画審議会)で75パーセントの賛成があったと報告したのに、実は75パーセントの賛成がなかったんではないかと」

証人「(前略)……再開発事業の都市計画決定に当たりましては、行政がその地域をどのように整備すべきかということの判断の下に都市計画を行うわけでございまして、地元権利者の方々の同意とか、それらは法律上の要件に全く入っておりません。その点では、75パーセントうんぬんという問題については、その当時、そういう数字の中で動いていたかと思いますけれども、その数字そのものが具体的には都市計画の要件になっているわけではございませんで、あくまでも行政として必要な状況の中で都市計画を定めていくというのが都市再開発法、都市計画法の中での内容でございます」

原告は、都市計画審議会で地権者の75パーセントの賛成があったと実態と異なる説明をしたことを追及している。それに対し、証人は「都市計画を決定する上で地権者の同意割合は要件になっていない」と答えるが、これでは反論になっていない。肝心の事実と異なる報告をしたかについては回答から逃げている。都市計画審議会としては報告内容から都市計画決定の是非を判断する。もし報告内容に虚偽の情報があるならば、それに基づいた決定の正当性も揺らぐことになる。

 

原告代理人の反対尋問では、証人が再開発計画の初期に、再開発を考える会(再開発組合の母体となった団体)と世田谷区の双方のコンサルタントとして活動していたことが明らかになった。この点について、原告代理人は「これは、真に行政から公共性の担保、機能チェックができない、お手盛りの体制じゃないですか」と指摘した。

これに対し、証人は「私の立場は、その両者の意見、そしてそれらを調整しながら、そしてなおかつ都市計画としてふさわしいものを定めていくことのために意見をし、また作業する、そういう立場でございます」と説明した(速記録17-18ページ)。

同一人が自治体と民間事業者の立場でコンサルティングすることにより、自治体による公のチェック機能が働かなくなるのではないかと指摘するのに対し、同一人の中で公の目的と民間としての事業採算性を調整すると宣言する。このような形で公共性が担保できるならば、三権分立を定める必要性も弁護士の双方代理を禁止する必要性もなくなる。

 

尋問を通して浮かび上がるのは再開発コーディネーターである証人が実質的な問題点を把握しようとせず、形式的な説明で正当化してしまうスタンスでいることである。この点は尋問の最後の方で原告代理人も「今までの証人の御発言を聞いていますと、法を形式的には適用されてるようですけれども、本来の目的趣旨に沿った適用を導くということから言うと、大変問題だというふうに感じております」と述べている(速記録37ページ)。

裁判の場では法律の条文に違反するか否かという形で争われるが、住民が裁判を起こす背後には住み慣れた街が悪くなるのは許せないという思いがある。そのような住民の思いは二子玉川東地区市街地再開発組合には通じそうにもない。逆に言えば、そのような形で再開発事業が進められてきたからこそ、住民側から裁判を起こされたともいえる。

次回口頭弁論は12810時から東京地裁611号法廷で開催される。

 

再開発の看板。二子玉川駅西口駅前で撮影。2007114

 

二子玉川東地区再開発差止訴訟被告側証人尋問(2

前回の記事に引き続き、二子玉川東地区第一種市街地再開発事業差止訴訟(平成17年(ワ)第21428号)の第3回口頭弁論における被告側証人・宮原義明(株式会社アール・アイ・エー)の証人尋問内容を報告する。原告代理人は再開発事業の違法性を追及するが、証人との意識のギャップが明らかになるばかりであった。

 

原告側は二子玉川東地区再開発事業が都市再開発法第4条第2項に違反すると主張する。この条文は、公園などに関する都市計画が定められている場合においては、その都市計画に適合するように再開発事業に関する都市計画を定めなければならないとする。二子玉川の再開発区域の一部は風致地区であり、昭和32年には二子玉川公園として都市計画決定されていた。従って二子玉川で再開発事業を行う場合、これらの都市計画を前提としなければならない。

ところが、東急電鉄株式会社・東急不動産株式会社と当時の世田谷区長・大場啓司の間で「二子玉川公園計画に関する協定」が締結され、それに沿って計画公園の予定地が変更され、その結果、現在の形の二子玉川東地区再開発事業が可能になった。原告は上記経緯から、東急グループの経済的利益のために公園予定地を変更し再開発を進めたとして、違法性を結論付ける。

反対尋問では区長が議会にも説明せずに私企業である東急電鉄・東急不動産と既存の都市計画に反する内容の協定を締結することの問題が追及された。

速記録23ページには以下のやり取りがある。

原告代理人「ここはまだ都市計画の決定までいってないわけですよ。いっていない以前の段階で、そういう恣意的な合意をしていいのかということです」

証人「恣意的合意については当事者の議論ですから、特に問題ないと思います」

街づくりに影響を与える問題が行政担当者と私企業の合意で決められることが問題であると証人は感じていないことになる。再開発によって影響を受ける住民にとって到底容認できる発言ではないだろう。

 

二子玉川東地区再開発事業が超高層ビルの建設ありきで検討されたことも明らかになった。証人は二子玉川の再開発事業では中低層を想定した計画を検討したことはなかったと証言した。

「それは先ほど来ありますように、やはり足下のほうを、都市から自然へという、つなげるために、足下空間をできるだけ空けていこうと、そういう考え方がございましたから、その点では中低層でべたっという考え方は当初から検討しておりません」(速記録24ページ)

これはル・コルビジェ的な「Towers in Space」の発想である。建物を高層化すればオープンスペース(緑地を含む)が増え、都市の過密を下げられる、だから高層化は善という思想である。しかし、そのような形で作られるオープンスペースは建物の上に緑を貼ったようなものでまやかしに過ぎず、地域の社会関係を壊してしまうと批判されている。

20071129日に開催された東京環境行政訴訟原告団協議会発足記念集会の場で福川裕一・千葉大学教授は、この「Towers in Space」という思想こそが環境を守ろうとする人々にとって敵であり、これが日本の政財界では未だに大手を振っている点が問題であると指摘した。この点で二子玉川再開発差止訴訟は二子玉川という地域に限らず、再開発の是非を巡る普遍的な論点を提供する裁判でもある。

東京環境行政訴訟原告団協議会・発足記念集会の報告

http://www.news.janjan.jp/living/0712/0712026574/1.php

原告代理人は代案を含めて議論するのが民主的ではないかと主張したが、証人は二子玉川のコンセプトは高層と言い張った。

原告代理人「普通は超高層を選択することの問題点も当然出てくるわけですから、それ以外の設計内容等を併せて、代案を含めて議論するのが民主的な議論じゃないですか」

証人「いや、民主的という話はちょっと、今の話の中ではどうか分からないんですが、先ほど来申し上げましたように、この二子玉川でのコンセプトとしては、当然、足回りについてそういう空間を広げていこうという考え方になります」(速記録25ページ)

二子玉川東地区再開発が高層化ありきで進められ、様々な選択肢を検討する姿勢がないことが良く分かる。二子玉川のコンセプトを高層化とする発想は、住宅地・ベットタウンと思っている住民からは出て来ないものである。

 

二子玉川東地区再開発による洪水被害の悪化も指摘された。

二子玉川駅の南側を南東方向に多摩川が流れている。多摩川の北側は基本的に多摩川に近い場所ほど土地の高さは低くなっている。雨が降れば土地の高いところから低いところに雨水が流れ、多摩川に注がれる。

ところが、二子玉川東地区再開発は人工的に最大7メートルの盛り土をして地盤をかさ上げする計画である。これが実現してしまうと、再開発地域の北側の住宅街にたまった雨水は再開発地域で堰き止められ、深刻な洪水被害となる可能性がある。

この指摘に対し、証人は以下のように答えた(速記録30ページ)。

「もともと、そこに流れ込んでいたということ自身が、それぞれの敷地としては、当然敷地の中で単独で整備することだと思いますから、それを前提としてのお話は少しおかしなこととお思いますね」

再開発の結果、周辺住民が洪水被害で苦しむことになっても構わないという主張である。

 

再開発事業の一体性も問題になった。都市再開発法や都市計画法では一体的かつ総合的な再開発が重要な要件になっている。ところが、二子多摩川東地区再開発事業では再開発地域の中心部に位置するII-a街区は具体的な事業内容が決まっていない。

これに対する証人の反論は以下である。

「私自身が、昭和57年から25年間、今やっておりますように、これ自身を一体的と考えていただければ、一体的というものの範疇がお分かりいただけるかとお思いますね」(速記録32ページ)

これは噴飯物の珍回答である。再開発コーディネーターが四半世紀、四半世紀も再開発事業に取り組んでいながら具体案が練られていない点こそ、二子玉川が一体的に再開発する場所としてそぐわないことを示していると思われる。

 

再開発事業の進め方も問題になった。最初に原告代理人は再開発組合が権利変換計画を多数決で議決したことを問題視する。権利変換計画は再開発地域の地権者の権利を再開発建物およびその敷地に関する権利等へ変換する内容を定めた計画である。

権利変換計画では再開発建物の敷地には建物の所有を目的とする地上権を設定するものとして定めることが原則である(都市再開発法第75条第2項)。但し、これが「適当でないと認められる特別の事情があるときは」地上権を設定しなくても良いとも定められている(同法第111条)。

二子玉川東地区再開発組合は、この111条を採用するか否かということを多数決で決めている。これに対し、原告代理人は「本来、地権者は、自分の大事な権利が建物の中の床の返還されるわけですから、全員同意して、納得して返還されるのが望ましい」と述べる(速記録33ページ)。しかも総会では地上権の設定や設定しないことの意味について説明せずに議決している。

加えて権利返還計画の公告縦覧では地権者本人のもののみを閲覧し、他の人の分を閲覧しないように申し合わせ事項を議決した。これは権利変換計画を二週間公衆の縦覧に供することを定めた都市再開発法第83条違反と原告代理人は指摘した。これについて証人は、以下のように答えた。

「申し合わせ事項とします、ただし、どうしても見たい場合には、法律の趣旨から見て、全員が見られますということも全部述べてます」(速記録34ページ)

これに対し、原告代理人は萎縮効果を生じさせ、法の趣旨に反すると再反論した。しかも再開発組合が本当に縦覧したかも疑わしい。日本共産党世田谷区議団が20061121日に世田谷区長に宛てた申し入れでは再開発組合が閲覧希望者に対し、閲覧を拒否しているとする。

「実際の公告・縦覧は、一般の区民が縦覧しようとすると「組合総会で申し合わせをしているので、地権者以外の方の縦覧はご遠慮願いたい」「組合理事長と協議し、縦覧できるかどうか返答する」など、閲覧が拒否されてしまいます。

また地権者も、本人の部分しか見ることができず、本人の財産評価が他の地権者と比較して妥当な評価を受けているかどうか、比較・検討できないなど、地権者の権利保障としても、適切な条件での縦覧とはいえません。」

「二子玉川東地区再開発権利変換計画の「公告縦覧」に関わる申し入れ」

http://www.jcp-setagaya.jp/kugidan/mousiire/20061121futago.html

 

再開発組合の総会(20061226日)で事業計画が大幅に変更された点も問題視された。変更により、建築面積が5.3パーセント、住居施設が94戸(約10パーセント)も増加した。事業計画を変更する場合、都道府県知事の認可を受けなければならないと定めた都市再開発法第38条第1項が問題となる。これに対し、証人は、東京都の関心は権利返還計画と事業計画の一致にあり、権利返還計画の認可申請をしていない段階で事業計画の変更認可申請をするのは技術的に困難と答えた。

また、総会決議による変更は周辺住民にも大きな影響を与えるが、周辺住民に告知し、意見を受け付ける機会を設けていなかった。これについて証人は、法令では軽微な変更について義務付けていないから不要と答えた。原告代理人は「再開発組合、若しくは、速やかに事業を進めるコーディネーターとしてのお立場として、当然こういうご説明の機会はあってしかるべきではなかったか」と追及した。

 

証人尋問は以下のやり取りで終わっている。

原告代理人「過ちを正すに遅すぎるということはないのではないでしょうか」

証人「過ちという御指摘そのものが全く違うかと思ってますので」

全体を通して感じられるのは、再開発コーディネーターとして再開発を中心的に進める立場の人が住民の目線を持っていないということである。住民の思いは無視された街づくりになってしまうのは、ある意味当然と言える。そのような住民不在の再開発に膨大な税金が投入される矛盾。住民は恩恵を受けず、不動産業者や建設会社が儲ける構図。各地の再開発で抱える問題と同根の問題が今回の証人尋問で炙り出されたと言える。

 

二子玉川東地区再開発差止訴訟結審

再開発 差し止め 二子玉川 訴訟

反対運動の広がりが裁判にも波及

 

二子玉川東地区第一種市街地再開発事業の差し止めを求める訴訟(山田俊雄・裁判長、平成17年(ワ)第21428号)が2008128日の東京地裁における口頭弁論で結審した。

二子玉川東地区再開発事業は東京都世田谷区玉川の約11ヘクタールの土地に超高層ビルを建設し、道路を拡幅する事業である。これに対し、計画地周辺住民が再開発事業の施行者である二子玉川東地区市街地再開発組合(川邉義高・理事長)を相手に、都市再開発法違反などを理由に再開発事業の差し止めを求めて提訴していた。

再開発は様々な行政手続きを経るもので、個々の行政手続きに違法性がある場合、行政訴訟として争われる。しかし、本訴訟では再開発事業そのものを住民の権利侵害と位置付け、事業者を被告として再開発の差し止めを求める点で、住民にとって直接的である。

口頭弁論では原告から提出された多数の住民による意見陳述書と本件訴訟の証人尋問についての市民メディア記事が論議された。この時点で大勢の住民が陳述書を書いたということは再開発反対の声が地域に浸透していることを示している。また、証人尋問が市民メディアに取り上げられたことも二子玉川東地区再開発事業に対する関心の高まりを示している。反対運動の広がりが法廷内にも波及したことを象徴する口頭弁論であった。

口頭弁論は以下の流れで進行した。

・原告代理人による準備書面の陳述

・原告の意見陳述

・原告代理人の意見陳述

・被告代理人による準備書面の陳述

・裁判官3名による合議

・証拠(甲第183号証拠〜甲第224号証)の採否の決定

・判決言い渡し期日の発表

事前に原告側は「最終準備書面」及び書証(甲第183号証拠〜甲第224号証)、被告側は「準備書面(8)」及び「準備書面(9)」を提出していた。

原告・被告双方の代理人による準備書面の陳述は、単に準備書面を陳述する旨の発言をするだけである。準備書面の内容を読み上げる訳ではない。これによって準備書面に書いてある内容を法廷で主張したことにするという扱いになっている。このため傍聴者には何が論じられているのか、全く理解できない。「口頭」弁論と言いつつ、書面の交換に過ぎず、形骸化していると指摘される所以である。

 

原告の意見陳述では原告の一人である女性が裁判官の前で意見陳述した。意見陳述では再開発が住民に周知されずに進められることの理不尽を語った。緑が豊かで環境が良いから二子玉川に住み続けているが、最近まで再開発があること自体、知らなかったという。

東急不動産から分譲マンションを購入した知人は「便利なショッピングセンターができる」との説明を受けたが、超高層ビルが建設されることは説明されなかったと語る。裏切られた気持ちだと聞かされた。住民に隠して進められる再開発の実態を語った。

続いて自動車交通量の増大による大気汚染など、再開発による被害について陳述した。「この場所から引っ越したい」と鬱屈する住民もいるという。再開発組合には住民への配慮は全くないとする。最後に「司法を信頼しています。正しい判決を宜しくお願いします」と述べ、意見陳述を結んだ。

 

原告代理人の意見陳述は、原告の主張のまとめと被告準備書面(9)への反論から構成される。先ず主張のまとめである。原告代理人は、この裁判において、二子玉川再開発事業による被害が、生命身体の安全を脅かし、生活の基盤である街そのものを破壊する深刻なものであると立証できたと主張する。その上で、一部で工事が開始されたことにより、再開発事業による被害が現在進行形で現実化していると述べる。再開発事業差し止めへの期待が原告64名の枠を越え、住民全体、世田谷区全体に急速に広がっているとして一日も早い司法の公正な判断を求めた。

「被告準備書面(9)」への反論は準備書面記載の2つの論点に反論した。

第1に時機に後れた攻撃防御方法(「後れた」は法律の条文の用語をそのまま使用)についてである。被告は、原告が今回の口頭弁論の一週間前に提出した書証(甲第183号証拠〜甲第224号証)は時機に後れた攻撃防御方法として、却下すべきと主張する。

これは民事訴訟法第157条第1項に基づく主張である。第157条第1項は以下のように定める。

「当事者が故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法については、これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認めたときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる。」

これに対し、原告代理人は、再開発事業の工事着工により、被害が拡大していると主張した。過去に起きた事件ではなく、現在進行中の問題であり、進行中の違法性を立証する証拠を提出することは時機に後れたものではないと反論した。

第2に訴訟記録の流用批判への反論である。20071110日の第3回口頭弁論では被告が申請した証人として、再開発事業のコーディネーターを務める宮原義明(株式会社アール・アイ・エー代表取締役専務)の証人尋問を実施した。被告は、この証人尋問についての記事が市民メディアに掲載されたことを問題視する。問題の記事は以下である。

林田力「二子玉川東地区再開発・差止訴訟被告側証人尋問(1)」

http://www.news.janjan.jp/living/0801/0801158957/1.php

林田力「住民無視が見えた「二子玉川東地区再開発・差止訴訟」被告側証人尋問(2)」

http://www.news.janjan.jp/living/0801/0801168999/1.php

被告が問題視したのは上記記事で訴訟記録(証人尋問速記録)を引用している点である。民事訴訟法第91条第3項は以下のように定める。

「当事者及び利害関係を疎明した第三者は、裁判所書記官に対し、訴訟記録の謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は訴訟に関する事項の証明書の交付を請求することができる。」

これは訴訟記録を謄写できる人の要件について定めた条文であるが、被告の論理は、利害関係のない第三者が訴訟記録の謄写を請求できないことをもって、訴訟記録が第三者に公表されることを予定していないと飛躍する。その結果、訴訟記録をインターネット記事に引用することは法の趣旨から妥当ではないと主張し、遺憾の意を表明した。

これに対し、原告代理人は以下のように反論した。原告以外のジャーナリストが強い興味を抱き、裁判について自己の意見を堂々と記名記事で発表することは裁判の公開の原則(憲法第82条)から何ら問題がない。報道の要請に対し、訴訟資料を提供することはいくらでもある。むしろ被告側証人の証言が広くジャーナリズムの批判に耐えられないことは再開発の問題を示している、と。

被告が準備書面において市民メディアへの記事掲載を取り上げて非難したことには驚かされた。被告が準備書面で取り上げたということは、市民メディアの記事をチェックしているということを意味する。市民メディアの影響力を示す事象である。

一方、被告が準備書面で批判することは理解に苦しむ。準備書面は口頭弁論での主張の準備のために自己の主張や相手方に対する反論をまとめた文書である。被告の立場では原告の請求を棄却または却下するための主張を書かなければならない。

ところが、被告準備書面での記事批判は、原告の請求を否定するための論拠を書いた訳ではなく、遺憾の意を表明しているに過ぎない。準備書面に書くべき内容ではないことを準備書面の場を借りて主張することは目的を逸脱した裁判制度の悪用である。

加えて被告は記事が証人の会社名を明らかにしたことを非難するが、宮原証人は被告が申請した唯一の証人である。本来ならば被告内の責任ある立場の人間が立証するのが基本だが、古くから再開発事業に携わり、最も状況を知っている立場であるため証人申請されたという。被告本人尋問に代替する位置付けであり、証人の所属、被告との関係に関心が向かうのは当然である。

また、証人が代表取締役専務になっている株式会社アール・アイ・エー(東京都港区)は再開発事業で建設される高層ビルの設計も受注している。

二子玉川東地区第一種市街地再開発事業V街区

http://www.eonet.ne.jp/~building-pc/tokyo-kensetu/tokyo-151tamagawa.htm

【東京】二子玉川東地区再開発がスタート(2/21

http://www.kentsu.co.jp/tokyo/news/p02184.html

証人尋問では証人が再開発コーディネーターとして再開発の企画段階において主要な役割を果たしたことが明らかになった。発注者(再開発組合)や行政(世田谷区)のコンサルタントとして活動した人物が代表取締役となっている企業が、一方で発注者が建てる建物の設計を受託する。二子玉川東地区再開発を論じる上で、アール・アイ・エーに関心が向かうのは当然の成り行きである。だからこそ、被告は社名の公表を問題視したとも考えられる。

 

被告代理人からは、準備書面を陳述するとの発言のみで、特に主張はなされなかった。裁判官は別室に退席し、合議を行った結果、原告が提出した証拠のうち、被害の客観的な状況を証明するものを採用し、それ例外を却下すると決定した。却下された証拠の大半は再開発で受ける被害や再開発に反対する理由を綴った住民の陳述書である。

これに対し、原告代理人は工事が着工され、周辺住民の怒りが現実化したために、この時期の証拠提出となったもので、証拠として採用しないのは不当と反論した。しかし、山田裁判長は現在進行中の問題であるとの原告側主張を踏まえた上で、「最近の事情については採用する」と譲らなかった。原告代理人は個々の証拠としては採用しなくても、工事着工によって被害が激化し、周辺住民の反対が盛り上がっている状況については弁論で述べたとおりであり、これを踏まえた判決を求めた。

原告が提出した証拠の一部が、被告による「時機に後れた攻撃防御方法」との主張を容れられて却下されたことは、原告住民らに、やり切れない思いを残したものと思われる。

これまで被告は、「反対住民は地域住民の一部である」旨の主張を繰り返してきた。それに対する反論として原告は多数の住民の陳述書を証拠として提出した。原告としては被告の問題意識に正面から向き合い、誠実に応じるための証拠提出である。ところが被告は正面から反論しようとせず、民事訴訟法の規定を持ち出して、却下を求めた。民事訴訟法が時機に後れた攻撃防御方法の却下を定めたことは、時間稼ぎを抑制するために必要なことではある。しかし、今回の証拠提出の経緯を踏まえるならば被告が証拠却下の申立てをしたことは公正な態度とは思えない。

原告ら住民は一方的に説明し、理解を要求するだけで、住民の声には耳を傾けようとしない再開発の進め方に対して強い憤りを抱いている。それが裁判を続ける原動力になった面もあるだろう。ところが再開発組合は裁判においても住民と正面とは向き合おうとしていないように感じられる。原告らの怒りや失望は大きいだろう。

 

多くの民事訴訟では、代理人が予め提出した準備書面を陳述すると発言するだけで終わってしまう。法廷ドラマやジョン・グリシャムの小説のような緊迫したやり取りを期待すると失望することになる。

しかし、この裁判において原告側は意見陳述を多用することで、その主張を明確に説明した。とりわけ一般の住民である原告本人の意見陳述は実際に被害を受ける当人の言葉であり、迫力があった。このような形での口頭弁論が増えれば市民の司法への関心も高まるのではないかと思われる。

口頭弁論は山田裁判長が結審を宣言し、判決言い渡し期日を発表して終わった。判決は5121310分から東京地裁611号法廷で言い渡される。この裁判は内容面(再開発への差し止め)でも手続き面(意見陳述の多用)でもユニークである。判決の内容が注目される。

 

一審判決

二子玉川 再開発 裁判

住民の不利益を認定したものの、差し止めは棄却

二子玉川東地区第一種市街地再開発事業の差し止めを求める訴訟(山田俊雄裁判長)の判決が2008512日東京地方裁判所にて言い渡された。これは東京都世田谷区玉川の約11ヘクタールの土地に超高層ビルなどを建設する再開発事業の差し止めを求めて、周辺住民ら64名が二子玉川東地区市街地再開発組合を提訴した裁判である。

山田裁判長は主文で「原告らの請求をいずれも棄却する」とし、原告敗訴の判決を言い渡した。原告住民側は判決を不服として控訴を検討すると表明した。

判決が言い渡された東京地裁611号法廷には原告ら地域住民が多数詰め掛け、傍聴席をほぼ満席状態にした。多くの住民が廷内に入れるよう、書記官の配慮で原告席に椅子が追加されたほどであった。事前に取材申請がなされたため、判決言い渡し前にはメディアにより法廷内の撮影が行われた。

一方、判決言い渡しは主文のみで理由の朗読はなされなかった。そのため、言い渡しは、あっという間に終わった。撮影時間の方が長かったほどである。二子玉川東地区東地区再開発の問題が社会の関心を集め、その波が裁判所にまで押し寄せている一方で、裁判官のやり方には変化がないことを象徴しているようにも思えた。

判決は二子玉川東地区再開発事業により、眺望の破壊や圧迫感などの不利益が生じると認定した。しかし、社会生活上の受忍限度を越えるものではないとして、差し止め請求を否定した。また、二子玉川東地区再開発事業が都市再開発法などに違反しているとの主張については、原告らの権利や法的利益の侵害の主張ではないとして、法違反の有無を判断せずに退けた。

 

原告側は記者会見で怒りを表明

判決後、原告及び原告代理人弁護士による記者会見が第二東京弁護士会1002号室及び司法記者クラブにて行われた。

原告主任代理人の渕脇みどり弁護士は「原告の主張を理解していない、大変不当な判決」と述べた。民事訴訟で再開発差し止めを求めたことについては「東急グループの利潤追及のための再開発であることが明確であったため、再開発の責任主体である再開発組合を提訴した」と説明した。渕脇弁護士によると、大地権者である大企業が再開発組合を牛耳り、中小地権者を事実上追い出す大企業本位の再開発の問題が他でも起きているという。その典型的な事案として二子玉川東地区再開発事業の差し止めを求める意義は大きいとする。

原告の飯岡氏は「判決文で一番腹が立ったのは、都市再開発法などの違法性について追求していたにもかかわらず、内容を判断せずに僅か3行でバッサリと切られてしまったこと」と述べた。加えて「判決では再開発の問題について細かく分け、個別に判断を加えているが、原告は総合的な問題と主張している。判決には、その点の考慮がない」と批判する。

「東急グループは沿線の住宅を優良住宅地として分譲してきた。その東急が地域住民の犠牲の上に街壊しをしている。だから東急が主体の再開発組合を訴えた。再開発をめぐるトラブルで心の病気になった住民もいる。街壊しは景観を破壊するだけでなく、人も壊してしまう。控訴して戦い続けたい」と述べた。

原告の野崎氏は「二子玉川東地区再開発は街づくりの計画ではない」と断言した。「東急がビルと床を作って売り逃げする計画である。現地を見れば誰も良いプロジェクトとは思わないだろう」と主張した。

原告の辻氏は「とても怒りを感じる。再開発地域の85%が私企業である東急グループの所有地であるのに、どうして公共の利益をもたらすものができるのか。700億円の公金を支出するのか」と問題提起した。そして国分寺崖線と多摩川の間の狭い土地に高層ビルを建設する危険性を訴えた。

 

判決では住民の不利益を認定

本判決では差し止めは否定したものの、二子玉川東地区再開発事業により原告住民に不利益が生じることを認定した。

判決が差し止めを否定したのは、それを認めるほどの受忍限度を越えた不利益ではないとしたためである。「不利益があっても、我慢(受忍)しろ」と言われたことと同じであり、原告にとって受け入れ難いものである。実際、原告からは「想像力がない」「現地で生活している人の視点がない」との声があがった。控訴審では圧迫感など再開発事業で生じる不利益が人間としての生活を損なうほどの不利益であることを緻密かつ具体的な立証をしていくことが課題になる。

本判決での受忍限度は差し止め請求の判断でなされたものであることは理解しておく必要がある。これは被告が違法性段階論として強く主張した点である。即ち差し止め請求は、損害賠償と異なり社会経済活動を直接禁止し、影響範囲が大きいため、その受忍限度は金銭賠償の場合よりも更に厳格な程度を要求されるべきとする。

この考えに立つならば本件は差し止め請求であるため棄却されたが、原告に不利益が生じることは認定しており、損害賠償請求ならば認容される余地があることを意味する。即ち再開発組合にとっては周辺住民の被害が顕在化した際には不法行為として損害賠償請求を受ける危険がある。周辺住民としては被害を顕在化させたくないために、再開発の差し止めを求めており、損害賠償請求を行う時は最悪の事態であるが、そのような状況になれば再開発事業も成功とは評価されなくなるだろう。

再開発組合にとっては本訴訟に勝訴することではなく、再開発事業を成功させることが目的の筈である。再開発事業が住民にメリットではなく、不利益をもたらすものでしかないことが確認された。再開発を進める側は住民に対し、「受忍限度内だから我慢しろ」と主張することでしか再開発を正当化することができない。そのような再開発事業では、反対の声が消えることはないであろう。

原告らは本件訴訟について控訴の意向を表明した。また、周辺住民らは世田谷区に対しても二子玉川東地区再開発事業への公金支出差し止めを求めて住民訴訟を提訴しており、現在係属中である。本判決によって、二子玉川東地区再開発をめぐる紛争は、住民に不利益が生じることを前提とした新たな戦いの段階に突入したと言える。

 

DSCF0199.JPG 弁護士会館で記者会見する原告の飯岡氏。右隣は同じく原告の野崎氏。

林田力(2008512日撮影)

 

コメントありがとうございます。

先ず裁判そのものについては別に記事を書いており、本記事では重複を避け、当事者の主張内容については最小限にしました。

周辺住民が訴えた理由は超高層ビル群による景観の破壊、日照の阻害、ビル風、電場障害、交通量増加による大気汚染など再開発による環境悪化が人格権などを侵害するということです。加えて再開発には都市再開発法第1条違反(公共の福祉に寄与しない再開発である)、第4条違反(都市計画公園の指定のあった場所を再開発する)などの法令違反があるとするものです。

一般論として公共の利益との比較考量で判断するという点はもっともです。その場合、二子玉川東地区再開発には公共性があるのか、という点が問題です。原告は再開発に公共性はないと主張しており、具体的に都市再開発法違反の主張をしていました。しかし判決は、この点を判断せずに結論を出しており、それが原告住民の怒りの理由です。

 

二子玉川再開発差止訴訟は洪水被害が焦点

二子玉川東地区再開発差止訴訟控訴審(平成20年(ネ)第3210号)の口頭弁論が2009年9月17日に東京高裁822号法廷で開催された。これは東京都世田谷区の二子玉川周辺住民らが二子玉川東地区市街地再開発組合(川邉義高・理事長)を相手に二子玉川東地区第一種市街地再開発事業の差し止めを求めた訴訟である。一審・東京地裁では請求が棄却され、住民側が控訴していた。

口頭弁論では住民側が「準備書面(3)」を陳述し、証拠を提出。再開発組合は原本を提示していなかった証拠の原本を提示した。住民側代理人の淵脇みどり弁護士は「準備書面(3)」について補足説明した。説明内容は3点である。

第1に都市計画学者の岩見良太郎・埼玉大学教授の立論に沿って、二子玉川再開発は公共性に欠け、違法であると主張した。岩見教授は住民らが世田谷区を相手に再開発事業への公金差し止めを求めて提訴した別訴(平成19年(行ウ)第160号)で2009年7月9日証言し、その証人調書を甲365号証として提出した。

第2に洪水問題である。再開発事業によって洪水被害が激化するとの主張に対する再開発組合の反論は科学的な裏付けがなされていないと批判する。現地進行協議などによって説明することを要求した。

第3に被害の広がりと解決の道筋である。工事強行によって、図面上では予想できなかった被害が顕在化し、拡大している。被害を拡大しないために再開発組合は工事を中止し、計画を見直すべきと主張した。特に具体化されていない第2期事業(U−a街区中心)は抜本的に見直すべきとする。

裁判官は住民側に坂巻幸雄・元通産省地質調査所主任研究官の追加意見書提出の目処を確認した。坂巻氏は住民側申請証人として4月20日に「再開発事業で人工地盤がかさ上げされることによって周辺地域の洪水の危険が増す」などと証言した。これに対し、再開発組合は「人工地盤の下は駐車場などの空間であり、洪水時には水没するため、人工地盤が水害を拡大させるおそれはない」旨を反論した。坂巻追加意見書では再開発組合反論に対する専門的見地からの再反論が予定されている。

この点に関して、裁判官は「洪水時に駐車場が吸収できる水量が明らかでない」として再開発組合に反論の準備書面提出を求めた。但し、まとめて反論したいとの再開発組合の主張を容れて、再開発組合の準備書面提出は坂巻追加意見書提出の後とした。坂巻追加意見書提出の内容を踏まえて、住民側が主張を追加する可能性もあり、口頭弁論は住民側の主張立証の追加という形で続行となった。次回期日は10月29日14時から同じ法廷で行われる。

今回の口頭弁論では洪水対策が大きな論点になることが明らかになった。再開発地域の北側を流れる丸子川は過去に何度も氾濫を繰り返している。ところが再開発では人工地盤で約7メートルもかさ上げする計画である。その結果、水が流れずに滞留し、周辺住宅地の洪水被害を激化させると住民側は主張する。これに対して、再開発組合は洪水時には駐車場が貯留槽代わりになると反論したが、これは別の問題を抱えている。

この議論はV街区に建設されるタワーマンション「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」を念頭に置いているが、大事な財産の保管場所になる駐車場が洪水時に貯留槽になる仕組みはマンションの商品価値を損なうものになる。もし洪水被害を緩和させるために駐車場を水没させなければならないとしたら、マンション住民にとっては大きな制約になる。

岩見教授は証人尋問で「新たに住みたいという人々の欲求を満足させることと地域環境を良くしていくことの両者が街づくりの課題」と証言した。再開発マンションに居住する新住民と再開発で被害を受ける住民の対立として論じられることが多いが、二子玉川東地区再開発が新住民を幸せにする計画であるのかも吟味する必要がある。

 

二子玉川再開発差止訴訟で住民側は洪水被害を改めて主張

東京高裁で2009年10月29日に口頭弁論が開かれた二子玉川東地区再開発差止訴訟控訴審では住民側が改めて再開発による洪水被害の激化を主張した。これは東京・世田谷の二子玉川周辺住民らが二子玉川東地区市街地再開発組合(川邉義高・理事長)を相手に二子玉川東地区第1種市街地再開発事業の差し止めを求めた訴訟である。

住民側は「準備書面(4)」と証拠として坂巻幸雄・元通産省地質調査所主任研究官の「意見書(2)」(追加意見書)を提出した。坂巻氏は既に意見書及び証人尋問によって再開発による再開発による洪水激化の危険性を主張し、再開発組合側は「準備書面(3)」で反論した。それに対する再反論が「意見書(2)」である。そして「準備書面(4)」では「意見書(2)」に基づき、洪水の危険性に論点を絞って主張を展開した。

口頭弁論では住民側代理人の牧戸美佳弁護士が「準備書面(4)」の趣旨を説明した。牧戸弁護士は、坂巻証人の集中豪雨の設定が非現実的であるとの再開発組合の反論に対し、30名の死者を出した平成21年7月中国・九州北部豪雨を例示して十分現実的であると主張した。

また、再開発組合は再開発が周辺地域の洪水被害を激化させないとする点について科学的に明らかにすることも住民を納得させることもしていないと批判した。結論として二子玉川東地区再開発は再開発の名に値しない乱開発であると断言した。

今回は再開発組合側からの書面や証拠の提出はなされなかった。前回の口頭弁論(9月17日)で住民側の主張立証が出尽くされてから、まとめて反論することを希望していたためである。次回期日で反論することになるが、裁判官が再開発組合の代理人に「証拠も提出しますよね」と念押ししていた点が印象的であった。住民側から専門家による意見書が提出された洪水被害について科学的・専門的な知見を踏まえて判断したいとの裁判所の意気込みが感じられる。

次回口頭弁論は12月15日午後2時から開かれる。

 

二子玉川再開発差止訴訟・洪水被害の立証へ一歩

二子玉川東地区再開発差止訴訟控訴審が東京高裁で2009年12月15日に開かれた。これは東京・世田谷の二子玉川周辺住民らが二子玉川東地区市街地再開発組合(川邉義高・理事長)を相手に二子玉川東地区第1種市街地再開発事業の差し止めを求めた訴訟の控訴審である。洪水被害などを立証するために住民側が申請した証人の尋問可否を判断するために審理続行となった。

口頭弁論では再開発組合側が準備書面(4)、住民側が準備書面(5)を陳述した。住民側代理人の淵脇みどり弁護士が準備書面(5)を口頭で補足説明した。

淵脇弁護士は最初に再開発事業が周辺地域の洪水被害を激化させることが問題であると裁判の経緯に沿って論点を整理した。再開発組合側は人工地盤の下に雨水を流入させるから洪水被害を激化させないと反論するものの、人工地盤がどのような構造になっており、どれだけの水量を保てるのか何ら科学的に論証しておらず、資料も提示していないと批判した。

しかも、準備書面(4)では人工地盤の下の機械式駐車場は約1.5mまでは浸水を免れることができると認めている。これは裏返せば水深約1.5mまでは塞き止めるということである。つまり、周辺地域は約1.5mの浸水を覚悟しなければならない。淵脇弁護士は「再開発組合の主張によって洪水被害が一層明らかになった」とまとめた。

最後に淵脇弁護士は裁判の進行について述べた。住民側は5人の本人尋問を申請している。特に洪水被害に関係ある低地居住者や洪水被害経験のある人らの採用をお願いしたいと結んだ。

裁判長は再開発組合側に「主張は準備書面(4)で尽きたということで宜しいですか」と尋ねた。これに再開発組合側代理人は同意し、「準備書面(4)を良くお読みいただければ」と答えた。

裁判長は住民側には「準備書面(5)を読むと、まだ反論がありそうですが」と水を向けた。これに淵脇弁護士は「最終的には反論するが、本人尋問をした後で最終準備書面を提出する形でお願いしたい」と述べた。

裁判長は「本人尋問の申請は出ているが、尋問事項書は出ていない。どの当事者に何を聞くかを明らかにしていただきたい。洪水被害に重点を置くのであれば、それに沿った形でお願いする」と述べ、住民側に5人分の尋問事項書の提出を求めた。

本人尋問の採否を決定するために弁論の続行とし、次回期日を1月26日14時半からと定めた。その上で住民側に「まだ何か主張がありそうに見えたので、主張があれば次回提出してください。最終準備書面まで取っておかないで結構です」と語った。この言葉に傍聴席の住民から笑いが漏れた。法廷で笑いが起こることは珍しい。

今回の弁論では再開発地域の周辺住民以外にも関心を持たずにはいられない内容があった。本記事では2点指摘する。

第一に再開発組合側は再開発地域の人工地盤が洪水時の周辺住民の避難場所になると主張する点である。住民からすれば1.5mの洪水は床上浸水であり、甚大な財産的損害を確実に受けることになる。しかも想定される洪水は一般の成人でも首まで浸かるレベルであり、安全に避難できる状態ではないことは淵脇弁護士も弁論で指摘した。

それ故に住民からは到底容認できない主張だが、再開発地域のマンション「二子玉川ライズタワー&レジデンス」購入者にとっても問題がある。機械式駐車場を貯留槽代わりにすることや人工地盤を周辺住民の避難場所にすることはマンション住民にとっては負担・制約である。

社会的には地域に負の効用をもたらしたマンションによる負担は正当であるが、マンション購入検討者にとっては悪条件の物件となる。分譲マンションではデベロッパーは売ったら終わりであり、マンション購入者が制約や負担を負い続けなければならない。実際、ビジネス誌でマンション建設による電波障害解消のための共聴施設がマンションの新たなリスクになると指摘されている(「盲点は都会に潜む“陰”」日経ビジネス2009年12月7日号95頁)。

住民側は再開発組合側の主張が事実と異なると反論するが、仮に再開発組合側の主張が正しいならば、マンション購入者は洪水時に機械式駐車場を水没させることや周辺住民の避難場所となることを覚悟しなければならないことになる。

第二に多摩川スーパー堤防との関係である。再開発地域を人工地盤でかさ上げすることに対し、住民側は周辺地域を犠牲にして洪水被害から自衛するためのものと批判した。これに対し、再開発組合側は多摩川スーパー堤防に人々が安心安全にアプローチするためのものと位置付ける。

しかし、スーパー堤防自体が税金の無駄遣いと古くから批判されている。二子玉川南地区の堤防整備も地元住民の反対が強く、国土交通省は当初計画より小規模化した暫定堤防整備に転換したが、それでも反対の声が上がっている。暫定堤防でも堤防のサイズが現状にそぐわない上、堤防建設で自然環境が失われ、川岸が南地区と分断されることで無法地帯化する恐れがあるためである。

鳩山政権の理念は「コンクリートから人へ」である。これは開発優先・公共事業偏重・土建国家に対する国民の厳しい批判を受けてのものである。スーパー堤防を前提に再開発を正当化する再開発組合の論理は、無駄な公共事業削減を求める立場からも議論を呼びそうである。