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俳句雑誌 滝 SINCE 1992 |
飛沫抄(238)
菅原 鬨也
琲にシナモンを振る秋はじめ
馬積んで船出てゆけり鰯雲
名を呼ばれ檸檬一瞥して立てり
たはむれに被る小面竹の春
星ひとつ死におしろいの花ひらく
桐一葉音をわすれし調律師
乾杯の歌の中なる桃ひとつ
無花果が割れて昭和の流れだす
小鳥来る地球儀の螺子ゆるびしまま
母と子の影踏み月の苅田かな
飛沫抄(237)
菅原 鬨也
約束を違へて別の蛍川
鵙高音泥の中より曼荼羅図
星一つ死に二つ生る虫時雨
秋風や魚のにほひの手を洗ふ
笠智衆夢に出て胡麻叩きをり
木槿咲く明るき沖へ船行けり
湯の音を奏でる釜や鳥兜
啄木鳥や眼帯とれし少年に
賢も愚も柘榴裂ければ無口なる
月出でて苅田いよいよ広きかな
飛沫抄(236)
菅原 鬨也
東北六魂祭・試作五句
その名よき六魂祭や花氷
六魂祭・大震災復興を願って東北の祭を仙台に結集。7月16、17日開催。
死者悼む六魂祭の花火なり
六魂祭鉄線は藍ほしいまま
六魂祭死者も生者もともに跳ね
魂を山河へおくり祭果つ
転生の兜太の蟹ぞ瓦礫山
遺影あり佞武多囃子によみがへれ
星飛ぶや津波遡上の川上へ
三陸の海に盂蘭盆近づきぬ
島びとのみ魂芙蓉となりにけり
飛沫抄(235)
菅原 鬨也
紫雲英田の微風や眉のやはらぎぬ
花屑の水割つて出づ河馬の貌
プリズムの中の曼陀羅鳥の恋
海見つつ梅干の種かみくだく
囀やひとり目を剥く釈迦の弟子
春暮るるダムの底より手鞠唄
蟷螂の生まるる膝の疼きかな
山門をひとり出てゆく夕立あと
夏霧や死者まじりゐる地引網
魚屋の大きまな板夕の虹
飛沫抄(234)
菅原 鬨也
東日本大震災 十句
竜天に登り津波は都市を呑む
春夕焼目のなき魚の散乱す
呆然と佇む少女春の海
流されし玫瑰のなほ芽吹きけり
追憶のサイレン響く春の海
桜満開津波残せし泥ひかる
海底の瓦礫より蝶生れにけり
塩水に襲はれし田を起しをり
水仙を活ける亀裂の壁があり
春逝けり漁師は海を恋ひはじむ
飛沫抄(233)
菅原 鬨也
東日本大震災 十句
雀つぎつぎもんどりうつて冴返る
抽斗に泥かぶりたる紅椿
叫喚のありたる海や梅真白
余震なり蝶ひらひらと夜空より
人の世にたしかに鳴ける鶯ぞ
仏壇の倒れしままの彼岸かな
遺されし犬の鎖や桜樹下
杖の人に死の海照らす春の月
きまぐれな佐保姫都市を壊しけり
瓦礫より記憶の欠片春夕焼
飛沫抄(232)
菅原 鬨也
東日本大震災 十句
大仏の頭落ちたり春の星
菩提寺報恩寺
この廃墟日本にあらず春満月
瓦礫残し三月の都市異次元へ
身ぬち過ぐ蝶の溺るる濁り川
津波去つて三月の馬あらはるる
幾千の仏体沈む寒き海
三月の飛雪われらの顔を消す
佐保姫の傾斜すなはち大津波
津波去つて魂抜けの彼岸の樹
濁流を越え春禽の羽づくろひ
飛沫抄(221)
菅原 鬨也
雪降れり百の椿に雪降れり
(4月17日)
縄文の笛春の蚊をいざなへり
糠雨に薄墨たらす桜かな
五次元の微音を秘めて馬生るる
花衣脱げば骰子ころがりぬ
黒豹のごときが走る桜かな
空撓みけり蛇出でにけり
きのふより泥のかがやく春祭
踏絵なき仙台藩史かげろへる
草餅や五重塔の尖見ゆる
飛沫抄(220)
菅原 鬨也
縄文の甕焼きあがる雪解かな
紙漉女水をいちまいづつ掬ふ
鳥の巣の卵落ちたる南部かな
馬の仔の跳ねみづうみの乱反射
石鹸玉無数に吹けどすげなき樹
人工衛星軌道外れたる桜鯛
夜桜の翼の下に水をのむ
生者死者入れかはりけり花篝
遠ざかる仏陀を見つめ春の鹿
男一人紫雲英あふるる村を捨つ
飛沫抄(219)
菅原 鬨也
マグダラのマリアを飾る春の島
紅梅は咲くべき音をとらへけり
鑑真の指触れ春の水となる
能衣裳春夕焼へ飛ぶごとし
水温む国後島近くなりにけり
亡き母に音の高まる花篝
幻のベルリンの壁蝶越ゆる
納骨を終へたる陸奥の春山河
白藤のほろほろと散る木魚かな
目薬をさせば海市の消えてをり
飛沫抄(218)
菅原鬨也
初髪に幟の棒の軋みをり
初景色いづこに住める俵万智
長靴の白のまぶしき御慶かな
かたくなな塗椀の蓋笹子鳴く
丸善の一隅寂し売初
初日記ゆつたりと川流れをり
四日なり野村萬斎飛び跳ねる
病院の見舞の春着姿かな
どんと燃え梢の闇を深うせり
女正月重ねし本の崩れけり
飛沫抄(217)
菅原 鬨也
枯芙蓉銅鐸の音つづきをり
石の目に楔うちこむ小六月
銃口をふつと出でたる冬の蠅
焚火して縄文を埋め戻しをり
目玉もてわかつたといふ吸入器
父のなきスケーターかな幾度も跳ぶ
雪女郎灯に近くきて引返す
暖房や果実を剥けばしたたりぬ
生涯に元日の虹見てみたし
門松のかくまで小さくなりしかな
飛沫抄(216)
菅原 鬨也
米沢・稽照殿
直江状桜大樹の紅葉せる
冬星へ木彫の鷹の鋭き目あり
松島芭蕉祭・瑞巌寺修復のため陽徳院で。二句
陽徳院あふるるほどの冬日かな
愛姫のこゑたとふれば冬椿
市川彳水逝く 三句
風花や遠く三春のかごめ唄
山刀伐のひときは大き雪螢
多賀城の吹雪に遇ひし幾そたび
冬の虹立つ勾玉の首飾り
画鋲もて壁にとめおく百合鴎
渦潮を越えきて冬の蝶となる
飛沫抄(215)
菅原 鬨也
東北歴史博物館十周年記念
「東北の群像」を観て 10句
鰐口や冬あかときの流れ星
強北風に朱の奪はれし土偶かな
神将の逆立つ髪や遠雪嶺
線刻の仏に冬の星ひびく
山眠る顎こはれたる獅子頭
風花や木目ながるる観世音
舎利塔に匂ふ越後の冬椿
能面の裏の鑿あと冬の雷
如意輪観音
頬杖の頬につかぬ手冬景色
地吹雪の奥に金剛鈴鳴りぬ
飛沫抄(214)
菅原鬨也
七夕に鈴吊るならひなかりけり
新藁のにほひの中の一会かな
鬼やんま通し土間ある村に生る
落鮎にマリアカラスのオペラかな
胡弓絶えまぶたにつづく踊かな
菩提寺の斧老いにけり鰯雲
卓上のすべて片づけ檸檬置く
新絹の感触一夜にて去りぬ
月天心海にただよふ丸太かな
片山由美子の随筆(中国杭州・霊隠寺の竜の玉のこと)を読んで
禅の無をきはめて竜の玉と化す
飛沫抄(213)
菅原鬨也
岸壁の灯をふりかへる立泳ぎ
遠野かな馬をはなるる朝螢
富姫の赤きまなじり鏡花の忌
秋の蝶罪をつぐなふ高さかな
水牛の角見えてをり秋桜
みづいろの陶のかけらと夜長し
河馬の口鬼灯ひとつ放られし
一揆史や蟋蟀の鳴く水車小屋
岩頭は父の形見ぞ野分立つ
蓮の実のまだ飛び出せぬ実が一つ
飛沫抄(その212)
菅原鬨也
寸鉄に出羽の麦秋映りをり
暗がりにつぎはぎの壺麦の秋
麦秋や轍の先の星エロス
昭和消え嗚咽消えたり麦の秋
麦笛にひかる硝子の花瓶かな
ひときれの海鞘を口にし海鞘さばく
興福寺・阿修羅像
愁眉仏梅雨明けちかき太宰府へ
蝉のこゑ聞きわけてゐる蝉の穴
般若面箱の中なり火蛾狂ふ
天上の橋織姫の鈴鳴れり
飛沫抄(その211)
菅原鬨也
しほさゐの高まる夜の新樹かな
郭公なく地震に崩れし山に鳴く
日傘よりはじまる出羽の山河かな
アヴェマリア流れでで虫みづみづし
前列はおほかた逝けり麦の秋
ふるさとを恋ふ麦笛や雲熟るる
雪渓の軋みののこる女体かな
向日葵のだんだん昏し老僧去り
松島に箱持つ少女虹立ちぬ
ジュピターの余韻に蠅の生れたる
飛沫抄(その210)
菅原鬨也
曲屋の吐きつづけゐる朧かな
はつ夏の彗星馬のまどろめる
麦秋の晴夜だれとも会はず来し
百合の花生のはじめの暗きかな
夏蝶生る維摩の毛穴ひらくとき
虹立ちて賢者ふたりの黙ふかむ
夕蝉や弥勒の指の頬を離る
鈴鳴つて死のはじまりぬ夏の暮
明るさの月にうなづく蝸牛
七夕の竹ゆさゆさと街に入る
飛沫抄(その209)
菅原鬨也
石鹸玉吹く望郷の男かな
どんよりと空どんよりと蝌蚪の紐
追はざれば逃げぬ逃水黙示録
頬杖にかけらのやうな春の雷
水平にかまへる扇花月夜
花冷や缶詰の骨皿に盛る
水ぎはの脚立ひかりぬ春祭
行間を埋めつくしたるミモザかな
春たけなは駝鳥はどこを見て歩く
母の日の海に向つて歩きをり
飛沫抄(208)
菅原鬨也
葛飾柴又十句
花ゆすら回廊乾きはじめけり
彫刻にたどる仏説蝶の昼
八歳の龍女の宝珠さくら咲く
春惜しむがに柴又の六牙象
法華経の一字化したる黄蝶かな
以上帝釈天題経寺
水嵩を増す江戸川や猫の恋
旅鞄江戸川の春ひろごれり
春帽子山本亭に入りにけり
春月に濡れ寅次郎像ひかる
柴又の恋の哲学さくら散る
飛沫抄(その207)
菅原鬨也
高音の黒鍵ひとつ冴返る
金平糖の陶の器や初音せり
佐保姫にいもうとあらば片ゑくぼ
春昼や音かはりたる洗濯機
宙にかく僧の梵字や花の冷
上扇おろして春の山を切る
竹の秋垂直といふ知性かな
春眠やテレビ修羅場となつてゐし
蜂の巣の下とは知らず笑ひ過ぐ
蜃気楼低く太鼓の鳴りつづく
☆飛沫抄 (その206)
菅原鬨也
北山の雪解うながす木遣唄
白檀の香のひとすぢ鳥雲に
末黒野のひろびろ勝者なかりけり
ブロンズの手の春雷を呼ぶごとし
春なれや智恵子紙絵の皺もまた
犀となるからくり細工春の虹
春宵の湿り弦楽四重奏
むんむんと浴場の湯気謝肉祭
かぎろへる砂の器のピアノ曲
春惜しむ素描の裸婦の黒子かな
☆飛沫抄(その205)
菅原鬨也
辻に説く観音経や小鳥来る
武将の名つけて呼びたし橦木鮫
日の坂の掛大根や鳥礫
異次元へ還りし如く火事消ゆる
ちちははの谺を葬り冬の滝
三叉路の高きに家や年惜しむ
思ひ出のかたちに熊の眠りをり
傾きしままの牛小屋去年今年
実方の墓のまへなる手毬唄
一本の水平の縄淑気かな
☆飛沫抄(その204)
菅原鬨也
花巻十句
宮澤明裕氏(清六翁令孫)に会ふ
賢治学会守る青年のさはやかに
森荘已池、森三沙親子による
秋の野をへだて賢治の句碑二つ
森荘已池選句
秋霖に孤客のごとき賢治句碑
イーハトーブ館
秋の水漆黒の像うつむける
宮沢賢治記念館
片時雨修羅像の朱のうすれをり
イーハトーブ銀河より降るセロの音
白金の鉱区に星の流れけり
稗貫の地いとほしむ冬帽子
本田貴侶作「横球体・ゆう」
黄落や裸婦像の婉きはまりぬ
大沢温泉山水閣(賢治の句を清六翁が揮毫)
賢治句の色紙に秋を惜しみけり
☆飛沫抄(その203)
菅原鬨也
かなかなや海坂藩の桶の水
籾殻を木箱に満たし天仰ぐ
命綱下がる檸檬のかなたかな
眼帯をしてコスモスに溺れをり
兄おとと野菊のそばに魚籠を置き
餌を競ふ鯉をへだてて糸瓜あり
ゆたかなる耳たぶへ鷹渡るなり
明日ありぬ枕辺に置く酸橘かな
家持と兜太のあはひ水澄めり
ひらひらとアルミ貨沈み猟期来る
☆飛沫抄 (その202)
菅原鬨也
つんつんと奏づるごとく木賊立つ
忘れえぬ鬼の醜草てふ名かな
秋草のこゑにまぎるる海ゆかば
絵皿よりはじまる律の調べかな
鬼房に本郷の坂いわし雲
空砲に鬼灯の色ふかまりぬ
勾玉と糸瓜とともに正午かな
渡り鳥ロボット卓を踏み外す
長き夜や閉ぢて志功の板画集
かまきりのむくろ荒野を荘厳す
☆飛沫抄(201)
菅原鬨也
螢飼ふ少女黒帯とは知らず
淋代へゆく雲ならむ曼珠沙華
映像の狂言跳べり桐一葉
音楽や馬柵のあたりの秋螢
水澄むや源氏に次の千年紀
枝先の枝と見まがふ鵙の贄
秋の日のなか望郷の坐礁船
秋の虹島に老いたる喉ぼとけ
穴まどひ豊旗雲といふべかり
甲板のひろびろとあり鶴渡る
☆飛沫抄 (その200)
菅原鬨也
麦の秋老いて竹刀をつくろへり
その杭を抜けば青嶺に地震はしる
夏暁や水平線をひとりじめ
夏袴第一局へ臨みけり
飾りある馭者の鞭かな遠花火
ターバンの少女の瞳白雨過ぐ
空缶にすべり込んだる蜥蜴かな
雷鳴のさなかや馬を離れざる
滴りを兵士のごとく手の窪に
先頭は柩夕焼の地平線
☆飛 沫 抄(その199)
菅原鬨也
鎌倉・寿福寺
花は葉に寿福寺まへの水溜り
青時雨矢倉の虚子に見えたる
梅雨の蝶愛子の墓をめぐりをり
鎌倉虚子立子記念館
夏鶯雨にひかりて虚子の句碑
でで虫や立子の俳画ほのぼのと
虚子の前鰻いただく縁かな
鶴岡八幡宮
菖蒲祭果てたる宮に手を洗ふ
人力車ならぶ鎌倉著莪の雨
鎌倉・高徳院
斜に見ればなほ美男仏梅雨の空
鯖鮓を提げ鎌倉を後にせり
☆飛 沫 抄 (198)
菅原鬨也
小さき靴出づる落花の吹溜り
遠郭公継目おびだだしき土器に
緑蔭に湖を恋ふトーシューズ
蝉塚に蝉前線の至りけり
木下闇くるぶしひとつ記憶せり
昼寝覚宙に玉子のかたち浮く
堤防に空瓶灼くる読経かな
暑に対す布目瓦の破片置き
炎を上げてうなじを細く踊るなり
億年後さそり座の目とまた遇はむ
☆飛 沫 抄 (197)
菅原鬨也
火打石打つてきさらぎ終りけり
太陽やつぎつぎ北へ蝌蚪の水
真後ろに啐啄の音春の昼
亀鳴けるなり約束のなき日なり
弾かずとも聴こゆる箏や春衣
かの馬の孕み五次元より還る
仲達を勝者と思ふ黄沙かな
喜太郎の曲のさなかの春嵐
残像の波間の帽子春惜しむ
杏より古き記憶に戦あり
☆
飛 沫 抄 (その196)
菅原鬨也
薄氷の用あるごとし流れゆく
涅槃会の時間の生るる柱かな
わが犀の白梅の夜を盲ひたる
割られたる薪跳びすぎし光悦忌
蒲公英にきのふの風のまつはれり
春時雨海豚の濡れてゐたりけり
春の野に大きな錨吊るさるる
仏生会半日過ぎしふくらはぎ
静かなる涙をだまき咲きにけり
太陽系出でてただよふ桜かな
☆
飛 沫 抄 (その195)
菅原鬨也
東北歴史博物館 十句
生涯の木簡づくり鳥雲に
春風に黒曜石の鏃かな
銅溶かす古代の坩堝囀れり
屈葬に片栗の花おびただし
をみならも蝦夷と呼ばれ耕せり
麗かやわつぱの蓋の紙文書
砦麻呂の怒号や雪解川奔る
多賀城の炎上のあと蝶よぎる
阿弖流為の静かな涙山ざくら
春の虹ナウマン象の牙やすらか
☆ 飛 沫 抄 (その194)
菅原鬨也
悼・石崎素秋氏
一月の海鳴り高き日なりけり
鳥雲に入る老僧ののどぼとけ
野火すすむ先に大きな捨錨
足音にさとき三色菫かな
安達太良の風のはぐくむ葱坊主
まぼろしの荷車の音花菜畑
蝶生るる関節こきと鳴りにけり
蛇穴を出でてかがやく青瓦
まどろめる馬や春月雲を出づ
鰐の全長さくらの国を歩むなり
☆ 飛 沫 抄 (その193)
菅原鬨也
白菜に板書の音の近きかな
山時雨刀匠の影灯にうごく
クリスマス近づいてゐる滑り台
黒猫を抱き紙漉にかかはらず
寒月の浜狼藉の轍かな
ビル崩れ落つる映像冬牡丹
冬の雁参道百歩までかぞへ
的を射る背筋や陸奥国冴ゆる
壁に張る降誕祭の紙の星
羽子板の勧進帳台詞出よ
☆ 飛 沫 抄 (その192)
菅原鬨也
今年米フルートの音に目覚めけり
黒服の妙齢のこゑ水澄めり
海苔篊のかがやきに向く六地蔵
時雨けり観音経のしぐれけり
水晶の数珠に波音蔦紅葉
旅にある姉妹に白き時雨虹
若き日と瞳かはらず冬に入る
翁の句秘めて詠みたり草紅葉
運ばるる縄の匂や冬の寺
貝殻の道鳴りにけり冬銀河
☆ 飛 沫 抄 (その191)
菅原鬨也
初冠雪おのづと言葉あらたまる
爽やかに人褒め青き耳飾り
黄落をはるかに髭を剃りにけり
雨樋の継ぎ目のはづれ雁渡る
口止めをされて紅葉の山下る
冬麗や小指を立てて神籤結ふ
兵隊のごとくに鮭の並びをり
つみびとは野菊とともに南下せり
ニホンオホカミ馳せよ果てなき芒原
糸通すべく雪嶺に針かかぐ