俳句雑誌 滝 since 1992

                                    

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「滝集」一句集 〈20097月号〉  自選の一句です

            平成20年6月−21年5月

 

寒すばる砂漠の民の祈りかな     あいざわ静子

松の芯龍立ちあがる題経寺      相澤さつき

海峡をよぎる昼月葱坊主       青山 一誠

いつの間に二月逃げたり耳の裏    赤間 白石

枯芒昭和は馬に乗つてくる      赤間  学

冬の月ポストの底の虚ろなる     秋山 陽子

草いきれひかりを返すオールかな   浅野  広

ラジオ体操ガラス戸つたふ白露かな  浅野 リサ

かまくらに星の宿りし一夜かな    浅野  稜

雁返る裸婦像展のヘッドホン     阿部風々子

 

朴の葉の散る一瞬の刻とまる     池添 怜子

虫干のにほひまとひて日記書く    池田 愛子

今年こそ見たしと庵の山桜      石川 宗浩

選ばれて母を看取りし花八つ手    石崎 敏恵

原泉に水蜜桃の離陸かな       石母田星人

冬木の芽未来あるものみな眩し    和泉 瑞枝

音重く踏切通過そして夏       伊藤 敬吾

蟷螂や池の水位の下がりゐる     伊藤 春友

水彩の絵筆のにじみ初便り      伊藤 英子

石榴の実口をすぼめる少女かな    猪俣百合子

 

素謡の声吸はれゆく竹の秋      岩井 進也

万葉の森の蕨や阿佐緒の絵      上村 博水

並べ干す人形の首花カンナ      内山貴美子

小春日や語る相手はどのこけし    宇野 成子

山桜湖底の村の離縁状        梅森  翔

蝋梅や御朱印の朱の生乾き      江戸 裕子

天然の松茸飯に微笑みて       榎本  静

立ちつくす少年秋のピカソ展     遠藤 恵子

帆船の絵皿一対明易し        遠藤 玲子

面とれば卵に目鼻寒稽古       及川 源作

 

沈丁の香に疲れたる男かな      大島てい子

幕あひの火蛾乱舞する能舞台     太田  杖

クラクション鳴るたび梅の花咲けり  大竹 寛子

下北の深き海霧なり大太鼓      大友みつ子

火鉢寄せ雑魚寝で終るクラス会    大倉憲一郎

北国にひび割れし手の疼きけり    岡崎しず子

島々は祈りの刻ぞ牡蠣を食ふ     小野 憲彦

きさらぎやひよこ三羽の注文書    小野寺禮喜子

パンジーの彩の中なる散歩かな    小野寺幸子

爽やかやオール一気に揃ひ立つ    小幡 浩子

 

単線のホームのしじま青蜥蜴     加川 則雄

囀や定義豆腐が水吸へる       勝見捴一郎

花吹雪ホルスタインと機関車と    加藤 信子

かんじきの子がかんじきの子を背負ひ 上遠野三恵

どんと燃ゆ納め忘れし札のあり    鎌形 清司

いつの世も乳房つめたき螢かな    鴨  睦子

春寒しカタログで来る内祝      川島 美恵

柿食へば望郷の胸いたむなり     川名 禾乃

捨小舟ぐらりぐらりと彼岸かな    菅野 明子

稲妻に魂抜かれたる妻を抱く     菊池 博志

 

新米のゆつくり噴くや忌日前     菊地 孜乃

男には男の時間薔薇真つ赤      木下あきら

白玉や解きし跡ある数学書      熊谷貴志子

冬の海踊り子号に残る帽       栗田 昌子

いきいきと六月の川星額       小泉 久子

戦ひの終らぬむくろ炎暑かな     古屋 河童

葉牡丹の渦よりつづく儀式かな    越谷 双葉

研磨機に火花とび散る蝉時雨     後藤 外記

おほまかに愛されてをり草矢打つ   小林 邦子

年の夜や羽田に降りる灯のいくつ   小林 俊一

 

ソムリエの腕のナプキン花の冷    今野紀美子

日盛りの榧の大樹や鬼子母神     今野 信子

かがり火の雅楽の夕べソーダ水    近藤 裕子

人体と繋がつてゐる冬の海      佐伯 時子

漁火のまたたく浦に帰省せり     斉藤 弘子

切先の欠けし石錐紅葉照る      斉藤 淑子

五月晴お玉に我の顔映す       齋藤 理絵

綾取やぼんぼん時計三つ打ち     酒井 恍山

かなかなや絆を深く島ぐらし     桜井アエコ

桃剥けば花一匁とほき友       佐々木經義

 

波の音溜めし雪吊解きにけり     佐々木ひろ子

登高や弥勒世あての嘆願書      佐々木博子

春逝くや身の奥の琴掻き鳴らし    佐々木文子

箸袋書き出す一句雛の夜       佐竹イツ子

おはやうと置かれてありし夏蕨    佐竹 高子

ボサノバの流るる夜の檸檬かな    佐藤 珱子

想はざり秋高き日の別れとは     佐藤 憲一

さつきまで迷うてゐしが葱刻む    佐藤千代子

雪うさぎ母のぬくもりほのとあり   佐藤 輝子

花りんご駿馬傾ぎて疾走す      佐藤 時子

 

おい青年とフーテンの寅春動く    佐藤  秀

秋海棠寝釈迦の足裏ふつくらと    佐藤 よし

いちぢくに笑はれてゐる鴉かな    渋谷 益子

氾濫の銀河に笛を吹きにけり     庄子 紀子

ペン持てば影の生るる久女の忌    庄司 縫子

鎮魂の篝火ふたつ白芙蓉       庄司四四男

刀匠の探る火の色蕗の薹       菅原  祥

異次元へ還りし如く火事消ゆる    菅原 鬨也

何ぞ独り白まんじゆしやげ火にくべよ 菅原緋沙子

大鉢の冬瓜スープ赤子泣く      鈴木 清子

 

耿々とイーハトーブの銀杏散る    鈴木 三山

紅葉グラスにジャズのあふれけり   鈴木 弘子

伏せ置きし清少納言猫の恋      鈴木ひびき

オルガンの深き眠りや遠蛙      鈴木 幸子

黒塚に棲むものの声冴返る      鈴木 要一

点駆ける貞任の馬冬ざくら      清野 やす

涅槃西風真向にして身の浮力     相馬カツオ

つくし誰の子少女ふたりの手話弾む  そね 杜季

開拓は父祖三代の座禅草       高井 武子

年の花生けて俄に口乾く       高橋 栄子

 

水仙のむかうの海や婚衣裳      高橋千代美

棟門に涼しき日射し生れにけり    瀧川實樹男

太陽を抱へてみたり冬の朝      瀧川 澄江

ふんはりと新雪をおく落し穴     田口 啓子

観世音寒九の雨に微熱もつ      田口 令子

沢水の溢れてゐたり仏生会      田崎 熙子

絵双六この世の外に出てしまふ    谷口 加代

寄鍋をかこむ家族やピアノ曲     田村 洋子

掛軸の大の一字や明易し       田元 憲子

漆黒のピアノの上の秋扇       丹 ツネ子

 

返り花ボタン外して街を行く     千葉  恵

星月夜星を啄む風見鶏        中鉢 益生

空家訪ふ亡母愛でたる寒椿      富沢 房子

折紙の角箱に盛る年の豆       中内美知子

蝶舞へり地球を包む波の音      中井由美子

マイセンの白沈みゐる春の月     中川 浩子

春なのに心に鍵をかけたまま     中嶋こま子

渓谷の風吹き渡る青胡桃       長沢 利子

てのひらの熱き黒糖卯月波      仲村美佐子

断崖の開山堂やつつじ燃ゆ      成田 清治

 

にせもののやうな太陽黍畑      西村  薫

若き喪主涙乾かぬ猛暑かな      西山 誠子

白鳥に見つめられいるカメラマン   野田 孝子

晩秋の音となりたる鍵の音      野村あい子

浮寝鳥の夢はアラスカ夕陽落つ    芳賀 翅子

大いなる石仏の耳花粉症       橋浦 幸恵

短冊の文字やはらかに星まつり    橋本千代乃

炎帝や鋼の匂ふ波しぶき       長谷川幸子

さかさまにめくる絵本や良寛忌    畑中 伴子

水のやうに過ぎゆくひと日冬薔薇   服部きみ子

 

シュマロのやうなるほつぺ竜田姫   日野紀恵子

鳥籠に降りつむ時間大花野      平川みどり

縷梅やうつくしき老いありやあり   平賀 良子

色違ふベレーの姉妹花の宿      藤村 千枝

たましひの遅れてまはる走馬灯    堀内きくえ

卓球の珠の回転蜃気楼        堀籠 政彦

修羅像の肘の鋭角日永し       堀籠 益子

草もみぢ馬の足音せまり来る     牧野 春江

新緑や封書でとどく片ピアス     松ノ井洋子

山並へ射撃のこだま春の雲      三浦 しん

 

夏の夜の静けさ破る地震あり     三浦 チエ

書くほどに初心忘るる葱坊主     三浦 柳子

白百合の己が重さに当惑す      三上 由枝

半眼の如来見てゐる良夜かな     三品 知司

春雷の一過に山野よみがへる     嶺  徳子

山を恋ふ団栗ひとつペン皿に     宮崎 里子

濁酒や熊の棄てたる森寂か      武藤  正

地球より溢れんばかり冬の海     村上 幸次

釣竿の横切つて行く芒原       森  京子

放牧の牛の足音谷紅葉        森田 光子

 

水仙や阿蘇の噴煙うすみどり     森田 美乗

生木焚く音の弾ける冬隣       八木れい子

木漏れ日を啄む鳥や冬帽子      八島  敏

おんぶばつたつづけて跳んで覚束な  矢田  涼

花は葉に画集重たき神保町      山口  舞

鳴き砂の声すくひけり冬北斗     山崎 真中

背に傾ぐ楽器ケースや風光る     山田 通子

花の宿輪島の椀に灯の映ゆる     吉田 茂子

大の字の男を越ゆる子猫かな     吉村 裕一

花冷の産土参り鈴の音        米澤恵美子

 

太葱を束ねるあそびごころかな    渡辺 民子

山椒魚森平らかな息づかひ      渡辺登美子

竹林の緑に映ゆる能舞台       渡部美和子

新婚の二人に揚がる雲雀かな     渡辺 ふみ

 

                     以上