
| ダークマター教 「先日、この屋敷に盗人が入った」 屋敷の一室。畳の大部屋に集められたカービィたちはラビチャの一言にざわめいた。 ラビチャの屋敷には多くの蔵があり、その中には多くの品が納められている。 屋敷に泊まっているカービィたちが持ち帰ってしまうという話は大方の住民に知れていた。 だが、そのことを話すためにわざわざ集められたのはこれが始めてだろう。 ラビチャもなくなった物があると渋い顔がするが寛大な態度をとっていた。 悪気が無いことが分かっていた。だからこそ尚タチが悪いとも言えるが。 「この不届き者は屋敷の罠にひっかかったおかげで事なきをえたが…」 そこで言葉を切る家主。一同が次の言葉を待つ。 「本来ならこんなことで集めたくは無かったのだが、少々事情が変った」 ややざわついたが直ぐに静まる。ラビチャは続けた。 「今回狙われたものがこの屋敷にあるものの中でもかなり危険なものであった。場合によっては我々の命を脅かしかねない品だ」 ざわつきが大きくなった。静粛になるまでしばらくかかる。 「今まで開放していた蔵はそのままにはしておく。そっちの方には危ないものは無い…多分」 最後に小さく言ったことは大体の者が気にも留めなかった。 ラビチャとしても、なるたけ過去の遺産を見てもらいたいという意思がある。 貴重な収集品を展示しているのもそのためだ。 歴史的に価値のあるとされた多くのものはバタービルディングの研究委員会のもとに接収されてしまっている。 だが、時代の重みに無関心なカービィたちには見る機会が必要なのだ。 本能的な欲求にしたがっていては、繁殖はできても繁栄はできない。 文化的な改心なくしては種族の没落は明らか。 「何故我々の同胞がそのような行為に走ったか、この屋敷の管理などについても色々と話しておきたい。だが、その前にまず聞いて欲しいことがある」 ぐるっと部屋を見渡せばカービィだらけ。 襖を開ければ部屋を広く使えるのが和室の利点だ。 ラビチャは息を軽く吐いてから、言った。 「みんな、ダークマター教というのを知っているか…?」 「やつらの動きは?」 「まだだね、だけどもうすぐ始めるだろう」 日も没して月が天を支配する。淡い光が白い姿を照らした。 「…カビン、君は短気だよね?」 やれやれと呟くジュビィに射すくめんばかりの視線が注がれる。 「僕が短気だと?」 「そうさ、僕らはもう少し待つべきだったんだ。やつらが動き出すまで」 やつら、と指した方向には黒いローブを纏ったカービィが数体。 こちらは岩陰に隠れているので見つかる心配は無い。 「事が動き出せば僕らの言い分も通りやすかっただろうしね。少なくともカビチャたちには嫌われちゃったよ」 「事が起こったときは手遅れだ」 常に後手に回る侵略者との戦い。 いつも侵略の多くを許してから反撃にでるのがカービィたちの戦いの歴史であった。 敵は目に見える脅威として出現する。 だから、今回のように同種族が徐々に矛先を向けようとしていることには気づかない。 「それに、僕には…」 「…時間が無いんだよね。わかってるさ」 うつむく相棒から目をそらして周囲の様子を伺うジュビィ。 岩陰から帽子がはみ出ないように押さえながら探る。 「おかげ様で、僕らの話を聞いてくれたのは指で数えるほどしかいないよ」 「僕らに指は無い」 「そうだったね。で、その指の数しかいない仲間はどこいったのかな?」 「別行動をとってもらった、ドラヴィオは好きにさせてある」 「…というか言っても聞かないだろう?彼はどうも固くて苦手だね」 「だがなすべきことを知っている。もし僕らがここで倒れたとしても彼が引き継いでくれる」 ジュビィの目の色が変った。 カビンよりも鋭く、その目を睨む。 「君も短気だな」 「付き合いが長いと似て来くるんだよ、ああ嫌だ嫌だ」 かぶりを振るジュビィ、その口は笑っていた。 「…そろそろか、満月」 「今日の星は綺麗だね…見てる暇は無いけど」 黒の天蓋にちりばめられた無数の光。 一番大きな黄色い盆を見上げて、2つの影は野に出た。 交通路となっているのだろうか、草の生えていない十字路。 硬くなった地面の上に、不可解な図形が描かれている。 入り混じった線からは鈍い光。 禍々しい空気の中、黒いローブを纏った集団が踊っていた。 口から漏れる低い言葉の羅列。無感情に唱えられる韻。 「適当くさ」 「だが、言葉は発せば意味を持つ」 呪文のような言葉を遠くから聞きながら2体は待つ。 この場の指導者だろうか、魔方陣の中央にたったカービィが虚空に向けて両手を広げた。 無情に冷たく微笑む夜。満ちた月が食われ始める。 と、頭上から舞い降りる球体がいくつかあった。 「来たね…」 「ああ、ダークマターだ」 真っ黒な体に、大きな目玉を光らせている存在。 古にはカービィと虹の欠片を巡り死闘を演じたといわれる。 実際を確かめる術は無いが、現在でも敵としてみなされている。 手を広げたカービィは淡い光を放っていた。 それに吸い寄せられるように黒い球体が近づいていく。 「虹の欠片…こんなことのために使うか」 「予測はしていたが…愚か」 ジュビィとカビンは目を逸らさずに注意を払う。 来訪者たちは黒ローブの集団の上空を漂い始める。 一心に儀式じみたことをしていたカービィたちは動きを止め、自らを見下ろす存在に見入っているようだった。 一体のダークマターが虹の欠片をもったカービィに近づく。 そのカービィは黒い存在にゆっくりと手を差し伸べようとした。 その時。 悲鳴。 「まずい!」 「いや、待て。確認したい」 飛び出そうとするジュビィは制されてその場に留まる。 よく見れば、今にも飛び出したいのはカビンの方であった。 「待つのは…今日だけだ」 「…ああ」 ダークマターに手を伸ばしたカービィは叫びながらのたうち回る。 周囲にいたカービィたちもパニックになると思われたが、冷静。 この状況を見越していたのだろうか。 憎憎しい。 苦しんでいる同胞を目の前にして黙っているとは。 近づいていたダークマターはというと、姿は無い。 無理も無い、そのダークマターは今、悶え苦しむカービィの中に飛び込んだのだから。 他者にとりつき、力を与え、意のままに操るのである。 やがて呻き声も聞こえなくなり、起き上がる。 その顔に眼は無かった。 ノッペラボウ、いや、顔に横一直線に黒いものが走り、開いた。 体の半分も埋めつくす瞳、まるでダークマターの如き姿。 その手にある七色の光を見ながら瞳を歪ませる。 手にした瞬間の達成感、喜びの感情。 敬服した態度で、黒いローブの集団が一斉に跪いて額を地面につける。 畏怖と畏敬の態度で迎えられたダークマターたち。 その礼と言わんばかりに。 「…もういいだろう」 「ダークマターに乗っ取られ、しかも被害者も出た。これで少しは危機感を持ってくれればね」 始まる攻撃。黒いローブのカービィたちは逃げ惑う。 隠れ場から飛び出し、自らの愚かさにやっと気づいた同胞を守り抜く。 「まったく、ダークマターなんて崇めるから…!」 長きに渡る闘争の歴史。ダークマターの名も多く残されてきた。 今現在でもその敵同士の関係が続いている。 目的は不明。だが押し寄せる黒き者たちは容赦なく桃色の住民の命を奪う。 カービィとダークマター。互いに相容れない関係。 いつも同じ姿で、いつも現れ続けるダークマターはいつしか不滅であるという噂が流れ始めた。 それは永遠の命のシンボルとさえも言われ、尽きることの無い無限の力の象徴とも言われ。 ダークマターの位置づけは変った。命と力の存在。 一つの生しかもたず、各々の意識を持つカービィたちは死を恐れていた。 憧れた、その力強き姿に。 そしてダークマターを崇め、慕い、讃える者たちが現れ始めた。 その教え、ダークマター教という…。 後書き 宗教問題です。 そして色々な表現や知識を中途半端に投入した試験的な感じに。 カビンたちの役回りもまだ謎です。いい奴なんだか、悪い奴なんだか。 ブラウザを閉じてお戻りください |