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出会い頭のウィスピー
古木を見たらばすぐさま離れよ。
なぜならそれは、心ある木。
かといって、心ある、優しき木だとは限らない。
「って、どこデスカここ?」
「鬱蒼とした森」
「見ればわかりますって」
昼間であるに関わらず、暗く生い茂った深い森。
木漏れ日も厭うように枝葉が日差しを遮っている。
「どうしてこーも薄気味悪いとこばっかり行くんデスか?」
「恐いなら帰っていいよー」
「できたらそうしてマス!」
ビクビクしながらヘビチャの背中に張り付くようについて行くカビール。
放浪することを好む性分であるが、誰かしらに引っ付いている方が多い。
この日も何となくヘビチャについていったら、この通りあからさまに怪しい森の中まで入ってきてしまった。
独りでは怖くて戻るに戻れず、結局どんどん森の奥にまでついて行く破目になったのだ。
「こういう寂しいところに秘宝とか財宝が隠されてるんだよ」
「そんな教え要らないですから、早く帰りまショウ?」
「カビールの根性無しー」
「…世の中必要な根性と必要じゃない根性があるんですケド」
減らず口とも冗談ともつかない会話をしながら奥へと進んでいく。
苔生した岩や根っこをヒョイと軽い身のこなしで乗り越えるヘビチャに、カビールは必死についていく。
置いていかれたらシャレにならない。
いつだったかははぐれて…まあ、酷い目にあったとさ。
茂みが揺れ、遠くで奇怪な鳴き声がするたびにカビールは小さく悲鳴をあげる。
そんなことはそしらぬと、ヘビチャは鼻歌交じりに時折スキップするなどご機嫌であった。
そして
「あ」
「うべ!…って、何デスか?」
急停止したヘビチャに激突したカビールは顔をさすりながら周囲を窺う。
森は静かなまま、時折不気味な鳴き声が木霊するだけと変わりないまま。
それだけでも恐ろしい。
だが、第6感が異常に働くヘビチャは、周囲の微弱な変化を感じ取っていた。
「わかんないの?」
「何が?」
「ほら、ここで亡くなった生き物達の恨み辛みの霊魂が解放されぬ苦しさに呻き声をあげ、
自分達の仲間に加えようと怒りと憎悪の感情を滾らせながらぼくらを襲おうとしてるんだよ」
「ウソぉ!」
「うん、うそだよ」
今のリアクションいらないじゃん、とか思いながら空いた口が塞がらないままカビールは放心。
「でも何か来るのは本当だよ」
「まぎらわしい冗談はやめてくだサイ。体に悪いデスから」
「刺激は必要だよ」
「いらん刺激はあたえないで下サイ」
一通り落ち着いたところで、森が揺れた。
突風が吹き荒れ、地震でも起きたのかのような激しさ。
しかし地は揺れず、風も全く吹いていない。
尋常ならざる様子に上を見上げる。
「あ」
「リンゴ?」
たわわに実った赤い果実。
黒に近い緑に実るリンゴは、その鮮やかさが逆に毒々しく見えた。
いくつかのリンゴが落下してくる。
見る見るうちに大きくなってくるリンゴ。
ゴン。
「…デカいデスね」
「でもこれおいしくないし」
落ちてきたリンゴはカービィと同サイズ。無駄に巨大である。
落ちてきた高さを考えると粉々に砕けそうなものだが、形を保ったままバウンドして転がる丈夫さ。
「…ああ、アレですか」
「うん、アレだよ」
ヘビチャが視線を向けた先には、一本の巨木。
他の木々よりも一際年齢を感じさせる硬そうな表面に濃い苔。
その木には、目と口がついたような3つの穴がポッカリと空いていた。
「ウィスピーウッズ」
「一本なのに複数称」
「そこ関係ないデス」
一際大きな巨木が成ると言われるウィスピーウッズ。
古来よりしょっちゅうカービィと戦いを繰り広げてきた古参の生物である。
ウィスピーの森中心に生えているが、グレープガーデンなどでも複数確認されている。
それなりに沢山あるらしく、所々で見かけられる。
自分のテリトリーに近づくものに対してリンゴや何かを落として攻撃を仕掛けてくるという害がありそうで無い。
ただ不意をつかれて脳天にリンゴが直撃すると結構痛いので、見かけ次第黙らせることが習慣となっている。
「実は宝の守り神、とかだったらよかったのに」
「そんなもんデスか?」
「そういうの無いときって、別の罠が仕掛けられたりとか厄介だからね」
激しく体を揺さぶるように、再び揺れる枝葉。
「うわ、キタキタキタ!」
「じゃ、お仕事しますか」
降り注ぐリンゴの中をヘビチャたちは駆け出した。
このリンゴ、肥大化するために栄養を使い果たしたのかおいしくない。
食べるには食べられるが、食用にはできないのである。
ヘビチャは動きが遅いというわけではないが、リンゴを避けながらということでウィスピーまで中々たどり着けない。
その間にホイールへと変じたカビールが駆け抜ける。
リンゴの雨の中、落下した巨大果実を跳ね飛ばしながら走る。
そして巨木に激突。ウィスピーウッズが揺れた。
「あー、食べ物を粗末にしたー」
「いや、何でソコをつくんですか!」
「どうでもいいけど、早く離れた方がいいよー」
「へっ?…わっ!?」
注意され、地面の下から伝わる振動に目を向ける。
土を掻き分けて現れたのは鋭い根っこ。
触手のようにうごめく太い根から逃れようと慌ててホイールに変身して離れる。
「逃げるのは早いよね」
「そう言われましてもネ」
ヘビチャとはすれ違いざまに言葉を交わし、大きくカーブを描いてまた巨木に向かっていく。
木が揺れると赤い果実が降り注ぐ。
中には毛虫やゴルドーといった嫌らしいものも含まれている。
カビールはジグザグに避け、ヘビチャは身軽に飛び跳ねて避け。
高速で接近するホイールの体当り、そして遅れてヘビチャがハンマーを叩きつける。
顔のような虚ろな穴が歪んだようにも見えるが、それも一瞬。
突き放さんと地面から無数の根っこが飛び出て彼らに襲いかかる。
ヘビチャはストーンに変身してやり過ごし、カビールは距離を大きくとって攻撃の機会を窺う。
根が引っ込んだ途端にヘビチャは巨大なハンマーを振り下ろし、カビールも果敢に体当りを仕掛ける。
半ばパターン化した戦い。
対応がさほど素早くないウィスピーウッズの傷は見る見る増えていく。
そして、泣き崩れるような音が森中に木霊し、巨木は動かなくなった。
「…倒したかな?」
「倒したんじゃない?」
空いた穴が顔をしかめたように歪み、鼻のように突き出た枝は圧し折れている。
これでしばらくは大人しくしているだろう。
「しばらくってどのくらいデスか?」
「2、3日くらい?関係ないけど」
「どうしてデスか?」
「だって、あと5、6ヶ月はこの森に居座るつもりだし」
「…へ?」
魂の抜けたような顔で、カビールの精神は忘我の境地へと旅立っていった。
「カビールー、早く来ないと獣とか亡者とか亡霊が襲ってくるよー」
「ハッ!…え、それも嘘デスよね」
「うん、半分は」
「半分!?」
後書き
アニメのように一本だけにするかどうか迷いましたが、スパデラを思い出したら複数いました。
よってウィスピー複数案を採用。
64でもちっこいやつがいますから増殖できそうですし。
とにかくカビールの戦闘が書き辛くてしょうがない。
場所限定能力だと割り切った方がいいんですかね?
初期設定ではかなり強いはずだったんですが。
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