
| 教徒戦線 何かとぶつかること、それが戦いである。 押しのけ、打ち倒せば勝者。 臆せば敗者。 どちらにしても、傷つくことは避けられない。 襲い掛かる大量のカービィ。 その中で戦い抜く青い瞳のカービィ。 「ブルァア!」 スピンキックをもろにもらったカービィが切りもみ回転をしながら吹っ飛んでいく。 途中で数体の教団たちを巻き込んで。 大勢がカビオを取り囲むものの、実力が大人と赤子ほどの開きがある。 戦いが始まって数十分が経過しているが、未だカビオに触れたものはいない。 入団している信者は実力が二極化している。 能力が使いこなせず死を恐れて永遠の命を欲するもの。 強くなったがゆえに今もつものを失うのが恐くて無限の時間を欲するもの。 カビオに襲い掛かってくる集団は前者。 ろくに能力が使えないのか、棒切れを振り回すものまでいる。 一体一体向かっていても手が出せないと気づいたのか、何体かがまとまって攻撃するように変化してくる。 勿論、カビオにとっては小細工にしかすぎず、戦況は全く変わらない。 「欠伸がでるぜ…」 さらに大人数で輪を組むようにして、プレッシャーをかけるように戦術を変える。 いや、戦術と言うにはお粗末すぎる。 単純に自分が殴られるのが恐くて自分から攻撃する果敢さすらないのである。 ほとんど片手で払いのけるように相手をしながら、怒りを隠そうとはしない。 「…雑魚ばっかじゃねえか。メガパワーショット!」 両手に溜め込んだ光を黒ローブの木偶の坊に向かって打ち出す。 光は射線上にいた数十のカービィを跳ね飛ばしながら遥か遠くに消えていってしまった。 あたりが静まり返る。 カビオとしては不本意である。まったく気の入らない攻撃だったため威力も低い。 だのに彼らにとってはとてつもない脅威と認識されてしまったのか、蜘蛛の子散らすように逃げていってしまった。 後に残されたのは、カビオにのされたカービィたちだけ。 「くだらねぇな」 変な意味で疲れたカビオは不機嫌なことこの上ない。 カービィ同士で戦うことを嫌う風潮があるこの時代。 研究委員会やウィスピーの森で聞かされた話もあり、強い同胞とも心置きなく戦えると思ったのに。 目の前の敵はみんな、背を向けて遠くなっていった。 一体のカービィを除いて。 「…テメェは帰らなくていいのか」 「…」 語る気は無いのか、無言のままカビオに近づいていく。 姿から察するにストーン能力者、額宛の形状が若干違う。 茶色いカービィはカビオを睨みつける。 硬質的な瞳。幾度もの修羅場を潜り抜けて研ぎ澄まされた石のような瞳。 「ほお…」 「去れ、これより先は立ち入り禁止だ」 淡々と、先程までのプレイバック。 同じ忠告だというのに、目の前の敵から聞かされると改めて脅威だと感じる。 「知るか。オレはオレの進みたいように行く」 「ならば…」 ストーン能力者は構えた。自然体で、両手を突き出すような格好。 カビオは身震いする。構えを見ただけで不足は無い。 「…オレはカビオ。テメェ、名前は?」 「…シュターン」 両者構える。 言うべきことは既に言ってある。不足分は拳で語る。 「っ…!」 先に仕掛けたのはカビオ。様子見とばかりにジャブ、拳を顔面に叩きつけようとする。 シュターンは顔色一つ変えず、片手で拳を受け止める。 「ち…」 見切られたとばかりの動きにカビオは舌打ち。心はこの上なく躍っている。 続けざまに連続でジャブ、それらもすべて吸い込まれるように防がれてしまう。 さらにストレートやフックを交えたコンビネーションで迫るが、これも最小限の動きで守られてしまう。 「スマッシュ、パンチ!」 これならどうだ、といわんばかりに必殺の一撃。 もともとは闘気を飛ばす攻撃であるが、ここまで接近した攻撃ならばそうそう防げまい。 カビオの光のパンチが迫る。 あたった。直撃したかと思った攻撃。 シュターンは平然とした顔で、カウンターのパンチをお見舞いする。 「な、何?」 何が起きたかわからずカビオはバックステップで飛びのく。 拳を振りぬいたシュターンは再び不動の構えをとる。 スマッシュパンチは確かにあたった。だがその瞬間、彼の体が一部だけ石になったのを見た。 つまり、体の一部をストーン化したということ。 シュターンは不動で構える。 再びカビオの攻撃。手数に勝るコンビネーションで堅い守りを突き崩そうとする。 対してシュターンは山のように悠々と構え、全ての攻撃を受け止める。 威力のある攻撃はどうしても隙ができるため、ストーン化する時間を与えてしまう。 しかも、時折の反撃にも石化した拳を繰り出してくるため守りに移れば不利となる。 生身の拳に交じって石が飛んでくるのだ。 「…ヘヘヘヘ」 口元を綻ばせてカビオは笑い出す。 「…何がおかしい?」 「…これだよ、これ!戦いってのは、こうじゃねえとなぁあああああ!」 「それ」 適当にハンマーを振るうヘビチャ、そのたびに数体のカービィが宙を舞う。 烏合の衆がいくらかかってこようとも冒険で鍛えた猛者には敵わない。 距離をおいてファイアやビームで攻撃されても、割と俊敏なため当たらない。 いざとなったらストーン能力を駆使して守りを固める。 カビールは、ホイール能力を駆使して必死に逃げ回る。 そしてラビチャは、そこいらの教徒を蹴散らしながらワイスと戦っていた。 「ほらほら、踊りなさいよ!」 次々と矢をつがえて放つワイス。幾本もの矢が白い雨となって降り注ぐ。 地を蹴りラビチャは矢を避ける。時折教徒へも突き刺さるのを横目で視認する。 「お仲間まで巻き込むか!?」 「あたる鈍間が悪いの、よ!」 反撃とばかりにラビチャはクナイを空へ投げる。 空中と地上からの投射。お互い弾は無限ともいえるが、分は空にいるワイスへあった。 白い翼をはためかせながら翻るカービィと、大地を縫うように跳ね回るカービィ。 時折黒いローブを着たカービィがラビチャに襲い掛かるが、死角からの攻撃を見もせずに避けてはクナイを投げつける。 投げ放たれたクナイが幾つも空を切る。 「無駄だって言ってるのよ!」 矢をつがえて獲物に向かって弦を引く。 乾いた金属音。 目の端に映ったのは、自分に向かって水平に飛んでくるクナイ。 「何で!?」 咄嗟にその場から離れる。 下から飛んでくるのはわかる。だが何故正面からクナイが飛んでくる理由がわからない。 再びラビチャが腕を振るう。 一投で複数の刃が飛び出す。 ほとんど垂直に飛んでくるためコースが読みやすい。 身を翻すだけで余計な回避はしない。 そして再びラビチャの姿を捉えると、先程とは逆のポーズ、つまり逆の手で何かを投げた姿。 再び金属音。 目の前で起きた火花。 飛んでいったはずのクナイが数本、あらぬ方向へ飛んでいっている。 「うそ!?」 慌てて翼で体全体を覆うようにして身を守った。 考えられないことが、一度投げたクナイに後から投げたクナイをぶつけてコースを変えたのだ。 ワイスは落下する。羽が傷ついたため、高度を保てなくなったのだ。 何とか持ち直すものの、かなり低空。カービィの脚力ならジャンプして届く。 「やってくれるじゃない…!」 「褒めても何も出ないぞ?」 「あら残念」 軽口をたたきながらお互いに鋭い視線を飛ばす。 高空から低空へと舞台を移した投射対決が再び始まる。 「ワイスといったな!お前は何を望んで教徒に入った!」 「もちろん永遠の命よ!」 向かってくる矢をクナイで撃ち落しながら山並みを疾走するラビチャ。 時折大きく羽ばたきながら、より高い場所より矢を射るワイス。 「何ゆえ永遠の命を欲する!死を恐れるか、名誉を失う恐れか!?」 「違うわ、私が望むのは…友と永遠に共にあること!」 複数の矢をつがえて一斉に放つ。 狙いは甘くなるがかなり広範囲を攻撃できる。 あたりをつけた矢はラビチャの元へと土砂降りのように降り注ぐ。 「アナタには無いの…そういった友が」 「いる!だからこそ私は信者にはならない。彼は、自分のために誰かを不幸にすることを望まない!」 ふと浮んだカビチャの姿。 岩影を次々と渡り飛びながら空を駆けるワイスに迫っていく。 「誰かを踏みつけないと、幸せには届かないのよ!」 「限度を知れ!ダークマター教徒が何をした、多くのカービィが、私の友が危険な目にあったのだぞ!」 連続して複数の矢をまとめて放つ。 岩陰から岩陰に移ろうとしたラビチャは遮蔽物を失い、逃げ場を失ってしまう。 今にもハリネズミにされてしまうか、と見えた。 そしてラビチャは爆発した。 「え!?」 元いた場所には靄がかった煙が漂っている。 爆発物を利用した煙幕だろうか、この場から離れようと注意を払いながら後退する。 「遅い…!」 横目に影。 見えたと思ったときには、岩を駆け上ってきたラビチャが飛んでいた。 ワイスは弓を構えてクナイを受け止める。 手は2本。ラビチャは空いていた手でクナイを投げる。 翼の根元に突き刺さる刃。痛みを堪えるがこれ以上羽ばたくのは難しい。 ラビチャを突き放して地面に足をつける。 「…みじんぎり!」 かけよりさらなる追撃を迫る。 踏み込みよりさらに加速。 目視すら難しいすれ違いざまの斬撃。 羽ばたいて上空に逃げるワイス、やはりあまり高く飛べない。 「ファルコンダイブ!」 落ちるに任せて地面に向かって羽ばたく。 完全に斬り終った体勢であったためきわどい所でようやく避ける。 「トス!」 ほとんど目の前、無事な翼を大きく広げてラビチャに向かって振り上げる。 すると突風が巻き上がり、軽い体が宙を舞った。 「な、!?」 「シャトループ!」 1回小さく宙返りをしてからワイスは空中にいるラビチャに向かって体当りをしかける。 自由の効かないラビチャは跳ね飛ばされるようにさらに宙を舞った。 「くっ!?」 地面に危うく叩きつけられるも、素早く身を起こし岩陰に隠れる。 まさかウイング能力まで持っているとは知らなかったため、接近戦をしかければ有利だと思ってしまっていた。 「…まったく、これ以上は厳しいわね」 片側の羽はほとんどやられ、飛ぶことが難しい。 無理は利くが、相手も強豪であるためアドバンテージを失ったまま交戦を続けるのはよろしくない。 無理して戦うのは性分ではない。 ワイスは微妙に空いた距離を広げながら、クナイの射程から離れたあたりで背を向けて飛び去っていった。 カビチャは苦戦していた。 相手は彼と比べれば格段に腕が劣るカービィたち。 だが、カビチャは戦えなかった。 向かってくるカービィたちの攻撃を防ぎ、逃げ回るだけ。 教徒たちはそれで自分らでも勝てると思い込み、他の相手に向かっていた者まで集まってくる。 逃げる逃げる。 追いかける追いかける。 足場の悪い山道をハイジャンプで飛び跳ねながら逃げ回る。 おかげでラビチャたちとはかなり離れてしまった。無事だろうか。 「この!」 ソードを持った黒いローブのカービィを押しのけて帰路を探す。 すでに囲まれてしまったため、包囲から逃げ出そうと道を探す。 その間にも、輪を狭めて迫ってくる教徒たち。 このまま押し切られたら、押し返せないカビチャは、 「く、くるなー!」 剣を振るって威嚇するも、無駄な徒労に終わる。 手が出せない、出したくない。 「お願いだから、来ないで…」 傷つきたくない。 傷つけたくない。 どちらかを叶えば、どちらかが叶わない。 カビチャには、どうにもできない。 「…愚かだ」 どよめきが悲鳴と嘆きに変わる。 次々とカービィたちを押しのけ、跳ね除けて近寄ってきたのは白い体と黒いマント。 「カビン?」 「…失せろ、ソードビーム!」 カビンが剣を振るうと、剣状の光線が放たれる。 地面を抉った光線が、土を派手に巻き上げながらはじけ飛ぶ。 さらに続けてソードビーム、信者たちは大慌てで逃げ始める。 「…ありがとう、カビン」 誰も彼もいなくなり、お互いだけになったカビチャはカビンの後から呼びかけた。 振り向いたカビンは、 パシンッ。 「…え?」 腕を振り切ったカビン。 遅れて頬を殴られたことに気づくカビチャ。 「愚かだ。自殺がしたいなら別の場所でしろ、見苦しい」 浴びせかけられる辛辣な言葉に目を点にする。 「戦う気がないなら失せろ、目障りだ」 「…でも、同じカービィ同士、戦えない」 「…!」 カビンは剣を構えてカビチャに突きつける。 「…これでもか!これでも君は戦わないと言うのか!」 「…嫌なんだ」 正直に、それだけのため。 カビチャは古参のカービィである。 長い間、コピー能力がカービィたちに芽生える前から生きてきた。 幾星霜を戦い続け、多くのカービィたちと出合った。 そして別れた。 出合った者たちが遅かれ早かれ皆星に帰ってしまった。 みんな先に行ってしまう。 寂しさに胸をかきむしり、悲しさで一晩中涙し、切なさで起き上がれない日もあった。 辛かった。 それでも生き続けた。 まだどこかに友がいると信じ、ぽっかり空いた穴に風が吹きすさぶような毎日を過ごした。 そして、やっと多くのカービィたちと知り合える時代となった。 孤独ほどの絶望は無い。 それを知るカビチャだからこそ、相手が見ず知らずのカービィでも傷つけたくなかった。 「嫌なんだ、誰かが傷つくのは、痛い思いを、苦しい思いをするのも、させるのも」 「そして結局傷つくのは君だけだ」 マスクの下から冷たい視線を向けるカビン。 「…聞こう。住み良い場所に住もうとした者が、元から住んでいた者たちに追い出される」 「それは…」 「侵略者とそれを追い払うカービィ、どちらが正しい?」 立つ場所を変えただけの同じ話。 立った場所が正義で、向こう側が悪になるだけ。 「皆が皆、同時に幸せになることは不可能だ」 「でも」 「戦え。相手が同じカービィだとしても」 剣を収めたカビンはマントを翻らせながら背を向ける。 「…同じ姿をしていても、違う生き物であることを知れ」 白いカービィはそういい残し、ピンクのカービィから離れていった。 戦い続ける2体のカービィ。 シュターンは距離があるにも関わらず、思い切り蹴り飛ばそうとする動きをする。 土を蹴り飛ばす。しかもストーン化した足のため生身以上に地面を抉る。 目を細めながら顔に土を受けるカビオ。 その程度では怯まない。 向かってくるシュターンに踏み出し拳を引く。 ジリ貧になりつつある勝負にお互い消耗、余力があるうちに決着をつけようとする。 「しっ!」 「しゃっ!」 切り裂くように息が吐かれ。 鈍い音。 腕と腕を交差させてお互いに顔を打ち抜きあう格好。 クロスカウンターと呼ぶ。 両者、拳をめり込ませながら硬直。 死力を出し尽くした姿は彫刻さながらの様相を呈す。 先に足元がぶれたのはカビオ、石化した拳を受けて膝をつく。 「はぁ…はぁ…へへへへへへへ」 地面に手をつき、不動のままのシュターンを見上げる。 そして、ゆっくりと、相手が前のめりに倒れたのを確認した。 「…いいか、勝負ってのはな…最後に立ってたヤツが勝ちなんだぜ」 おぼつかない足に支えられながらカビオは立ち上がる。 のろのろと歩きながら戦場を後にした。 弱りきった一体のカービィ。 その背中には、敗者と弱者。 揺れる視界の中で、カビオは確かに悦びを感じていた。 後書き ホントは続かないで一つの話の中で戦って終わるはずなんですけどね。 戦闘最高。 ワイスもシュターンも若干消化不足なんですけどね、次のバトルに期待しましょう。 カビチャ側はあまり芳しくありません。 ちゃんと勝ったのはカビオだけですか? 一番キャラが落ち着いてなかったカビチャも段々確立してきました。 ここからどう心境が変化するか、書き手の腕の見せ所ですね。 ・・・う〜ん。 ブラウザを閉じてお戻りください |