
| 教徒前線 道を見失うことがある。 だが、目を瞑っても歩くことはできる。 「聞いたかい、カルト集団の話?」 茶化したようにジュビィは言い放つ。 揶揄するな物言いはいつものこと。 その言葉に視線だけで答えるカビン。 「…教徒たちが他のカービィたちへの暴力行為へと及んだ。それによる被害者は13名、うち5名は星へと帰した」 「とうとう表向きにも犠牲者が出たね…それで研究委員会から話が出たよ。 ダークマター教徒たちを敵対視し、排斥行動に移るってね」 「初耳だな」 「そりゃそうさ、今日ウィスピーの森からの伝わったことだからね。そこから話を受けたらお気楽な学者さんたちも動かざるを得ないさ」 「だろうな、星の危機に関する事態への対応はほとんどが森で決定されるからな」 遅れてやってきたドラヴィオが話に割り込むが、彼らは嫌な顔はしない。 「…で、話はどうだった?」 グリーングリーンズなど密林地帯にあるといわれるウィスピーの森。 知性のある巨木を中心に作られた小さな集落となっており、武道派のカービィたちが暮らしている。 どこにあるか定まらぬ不思議な森。 だが奇妙なことに、有事となると場所が誰にでもわかるようになるのである。 その戦士たちが鍛錬に明け暮れる場所で会議がおこなわれていた。 ポップスターに侵略者等が現れると重要な情報はここに集まる。 そこで戦いの方針が決められ、行動に移される。 ドラヴィオもそこでは幾度も顔を出したことがあり、今度も会議に参加していた。 「…正直、まだみんな今回の事に関しては戸惑っている」 「だろうね、今度の敵はわけのわからないバケモノじゃなくて、自分たちと同じ姿だからね」 「鏡を殴っても自分が痛むわけではない」 「それで踏ん切りがつくわけねえだろ」 「ああ、だからこそ、僕らだけでことをなし得たかった…」 ローブを擦りながらジュビィは落ち着き無く歩く。 「カービィによる、カービィのための、カービィの平和な世界。利己心と敵意をむき出しにした同族がいる限り叶うことは無い」 「…問おうドラヴィオ」 改まったように、カビンはマスク越しに炎の使い手を睨む。 「最初の誓い、僕らとともに果たすことができるか?」 気づけば、視線は紅いカービィに集まっている。 たった2対。物の形と言うものは2つ以上の視点があることによって形を見出すことができる。 真実を見抜くことに近づく。 点は2つつなぐことによって線となり、道を指し示す。 獣は目を2つ持つことによって距離を認識し、形を知る。 「僕らと共に」 「永遠の業を背負う」 カビンもジュビィも仲間を集めた。 共に戦う仲間。 弱い者などいらない。 侵略者、強敵、バケモノ。それよりもっと強いもの。 自分の業。 自らの罪悪感。 例え、 「…同族を殺してでも、この星と友の平和を守ることを」 知性を持たぬ命すら避けて通る道。 生存競争による已む無い生命の剥奪ではなく、信念のための略奪。 思考を持ったゆえの悲劇。 「…そういう決定となった」 「な、なにソレー!?」 家主であるラビチャは帰ってくるなり屋敷の者を集め、ウィスピーの森の決定事項を告げた。 ダークマター教の布教。 危険行為もおこなう彼らの広がりは、看過できるレベルをとうに過ぎてしまっていた。 その行為を妨害するのなら、同族への報復も躊躇しない。 被害者や犠牲者も数知れず。 行方不明となったカービィたちは入信しただけでない可能性も考えられ始めた。 巨木との話し合いの結果は、 「…場合によっては戦うことも已む無し。危険思想に陥った者たちは説得が困難。力による鎮圧も考慮すべし」 「ふん、だからどうしたってんだ?」 黙って座っていた一同の中からカビオが立ち上がる。 「…言われなくともやってくるならやり返すだけだ。今回の話は単純にお墨付きがついただけってことだろう?」 「…わかっているだろうが星に帰ったものも数知れない。それに、教徒の中には選りすぐりの戦士たちもいる」 「結構。雑魚ばっかりが相手じゃつまらねえからな」 「カビオ!」 制止の声も聞かずにカビオは外へと出て行ってしまう。 戦いの求道者として、これ以上の好機は無いとでも言わんばかりに颯爽と。 ラビチャもこれ以上話をしても気が滅入るだけだと考え皆を解散させる。 これから親しいもの同士で話し合いがおこなわれるだろう。 この屋敷もダークマターの襲撃によって一度は半壊している。 とはいえその原因は教徒たちの儀式の仕業と言う噂もある。少なからず敵意を持つかもしれない。 かといって、同族同士の争いは気が乗らない。現にラビチャも頭以外が理解を拒む。 よくも悪くもあとは自身らで決めること。 この星の思想として、同族はすべて友だという考えがある以上、そう簡単に決められたことではない。 友のために、友を倒す。 何たるジレンマ、何たるアイロニー。 どちらにしろ、自我を持った以上避けられない道なのだろうか。 知識層ならばニンゲンという種族にも類似点が見られることを思い返すだろう。 類稀なる集団性と知識を持ち、惑星の生活圏のほとんどに繁栄をした種族。 だというのに常に思想と思惑と思念の思い違いにより大なり小なりの争いが尽きない。 人類皆兄弟と歌いながらいがみ合う珍しい生き物。 相手と噛みあいながら生きるのが、知恵のもたらす恩恵なのか。 それとも、禁断の果実と言うものの味が、同族の血肉なのか。 「…ともかく、カビチャ」 ずっとラビチャの隣で俯いていた赤いマントを羽織ったカービィ。 彼もウィスピーの森へと赴き、会議へと参加していた。 大抵のカービィたちはよく訪れる場所だが、カビチャはそうでなかった。 運がいいのか悪いのか、カビチャはいつも現場にいた。 常に前線にいるというトラブルに遭いやすい体質。 無論、戦場から離れるわけにはいかないため森へと会議へ訪れることは少ない。 「…わかってる、このままじゃいけないってことぐらい」 「…気にするな。だがカビチャ、これだけは覚えていてくれ。君がどんなに嫌がったとしても、相手も同じように考えてくれるとは限らない」 「うん…」 「そして君がいなくなったら、悲しむものがいる。例えば私とかね」 泣きそうな顔でカビチャは顔をあげる。 ずっと、森で話が決まってからずっと苦悶していたのだろう。 ラビチャはただ、優しく微笑みかけただけだった。 空には白雲。 長くたなびく、綿のように。 空には暗雲。 鮮やかな空気の海に暗く漂う。 白黒の雲が混在する空。 ダークマターの大群が再び姿を現した。 山岳地帯ヨーグルトヤード付近に向かっているとの情報が伝わった。 先日のラビチャの屋敷の件もあり、研究委員会からも危険視する声もあがる。 森での決議のこともあり、いくらかのカービィたちが現場と思しき場所へと向かっていった。 「って、ボクは山歩き嫌いなんですケド」 「カビールー、好き嫌いは大罪だよー」 「何気にスゴイ悪いことになってマス。だってここロクなことがないじゃん。昔は変な機械が穴掘って襲ってきたし」 「ラビチャー、カビールがすぐへこたれるよー」 「駄目だぞカビール、自分に負けたら」 「いや、何でそんな話になるんデスカ?」 ごつごつした岩を登りながら談笑する。 ヘビチャは慣れたもので、平均以上の体格の割には俊敏に山を進んでいく。 遅れてラビチャ、カビール、そして 「カビチャ、疲れたなら休もうか?」 「いや、いいよ。僕は大丈夫、早く行こう」 歩が進まないカビチャ。 もしこれからダークマター、はともかくとして、教徒である同族と戦うことには抵抗が残るのだろう。 いくつかの小グループとなり進んでいるカービィたち。 カービィは元々大所帯で動く性質がないので、自然とこのような形となるのだ。 「さて、結構登ってきたな」 「山といったらマウンテン、マウンテンと言ったらスパゲティだね」 「…いや、まったくワカリマセン」 「トマトはアンデスの山々で見つけ出されたんだ。だからミートソースとナポリタンと言ったら山だよ」 「それはあくまで味付けの話で、スパゲティそのものは関係ないと思うよ」 ヘビチャのよくわからないウンチクに付き合いながらなだらかとなった傾斜を登っていく。 博識なラビチャをもってしても、その話には付き合いきれないようだ。 急ぎの道中ながらもゆっくりと進む。 「どうかした、ヘビチャ?」 突然歩を止めたヘビチャに、カビールはぶつかってしまう。 無言で立ち尽くす鍋を被った頭を見つめた。 「…どうかシマシタカー?」 ヘビチャは無言のまま。 その先には平らな道が続いている。 至って平凡な山道だ。 両側が緩やかな傾斜となっており、正面から見るとV字型の底辺に道があるような構造。 「早く行きましょうよ」 「だめ」 「うげっ」 先へ行こうとするカビールは帽子のツバを引っ張られて呻き声をあげる。 ヘビチャの腕力は尋常でないのだ、軽く引かれただけでも痛い。 だが、そういうときのヘビチャというのは 「…気をつけて」 何か危険を察している。 いつもならそしらぬフリをしてカビールに罠があるかの確認をする。 もちろん、その身をもってして。 大して危険性のない罠に関してはヘビチャの直感は働きにくい。 災難が大きければ大きいほど、その第六感が働く。 黙っていたヘビチャが持っていたハンマーを放り投げる。 小石でも投げるかのように、カービィの身の丈ほどもある槌が宙を舞う。 そして木槌が道の右側にある傾斜の死角部分に消えると、ドスンと地響き。 そして悲鳴。 「何だ!?」 突如聞こえた悲鳴にカビチャたちは緊張を高める。 しばらくすると、道の両側から足音。 黒いローブを纏ったカービィたちが姿を現した。 「教徒…待ち伏せか」 立ち止まらなかったら挟撃は必須であっただろう。 無言で近寄ってくる黒ローブの使徒。 フードの置くからチラチラと光が漏れている、ファイアやアイス能力者の冠だろう。 「…はぁ〜い!」 頭上から場違いなほど能天気な言葉が聞こえる。 見上げた先には白い翼と頭に金色の輪をつけたカービィ。 「エンジェルの能力者か…」 「こっから先は通行止めよん。大事な儀式の最中だからねん」 奇妙なくらいに陽気な声が響いた。 「ダークマターを呼び寄せるが、か?」 「わかってるじゃない、だから遠回りをお勧めするわ」 「同族、いや多種族にも襲い掛かるようなものを見過ごすことはできない!」 叫んだラビチャは一歩前へと歩み、さらに言葉を続けた。 「ダークマター教徒!その目的は何だ!?」 「永遠の命よ!不死のダークマターから決して星に帰らない力を得る!」 「そのために、どれだけの同胞が傷ついてもか!」 「そうよ、私も彼も永遠の命を得ればずっと一緒にいられる!大事な誰かのためなら、他の顔も知らない誰かがどうなろうと構わない!」 明るかった言葉にも、次第に悲痛な叫び声にしか聞こえなくなってくる。 ここにいるどれだけの者が、みんなという言葉の意味をわかっているだろうか。 名も顔も知らぬこの星全てにいるといわれている生物のこと。 数えて思い出せるだけの友のこと。 掬える手はあまりにも小さすぎて、何かを掴むためには何かを取りこぼさないといけない。 「…他に方法はないんデスカ?ダークマター以外で」 「無いわ。他に具体的な方法なんてあるなら教えてほしいものね」 「逆に聞こう。本当にダークマターは永遠の命を与えてくれると思うか?」 言い争いとは違った問いかけ。教義よりも答える者自身の答えを聞く。 少し黙ってエンジェル能力者、ワイスは笑う。 「ええ、もちろん。ダークマターによるカービィの力の強化、これは肉体に影響を及ぼすいい証拠だわ。不死の体を得るってことに近いのかしら?」 信じた以上は疑えない。 不明瞭な信仰とは信じて仰ぐことによって成立する。 事実を曲げてでも真実と思い、頑なに陥るように信心を深めていく。 「…モニターの前のみんなも、変な宗教に引っかかったら駄目だよ」 「ヘビチャ、モニターの前って何?」 「ともかく通らせてもらう。好き好んで被害に巻き込まれたくわないのでね」 「なら入団しなさい。そうすれば」 「お断りする」 「誰かの迷惑になるような生き方はするなって教わりませんデシタ?」 「カビールはかけっぱなしだけど」 「…やめて下サイ」 不満そうな顔でワイスは宙を浮き、弓と矢を手にとって指揮棒のようにふりあげる。 「なら、お別れね。まあ安心しなさい。あなたたちの知り合いが教団に入れたら蘇らせてくれるかもしれないから。さあ、やっておしまい!」 ワイスの声を合図に、無言のカービィたちがカビチャたちへと襲い掛かった。 後書き えーとですね、先の展開とか設定とかまったく考えないで話作ってます。 どうしましょう?(聞くな とりあえず続きます。 自分でも、自分の小説をどうするか考え中。 こうやってあとがき書ける方が落ち着くんですけどねぇ。 ブラウザを閉じてお戻りください |