今日と昨日のお客さん







ある穏やかな昼下がり。

緑に揺れるグリーングリーンズ。

ラビチャの屋敷は、穏やかな日常を送っていた。

「大変だ、親分!」

「そんなに慌ててどうしたんでい!?」

「それが…じゃなくて」

障子を乱暴に開けた赤い帽子を被ったカービィはかぶりを振る。

ついそれに乗ってしまったラビチャも反省。カビチャはポカンとしている。

「ところで、何かあったの?」

「そうそう、道場破りが…」

「道場破りだと!?」

何故かラビチャの屋敷には道場破りが訪れる。

本来なら道場に売るべき喧嘩を屋敷に売り込むとは勘違いも甚だしい。

文献に載った風習が誤って伝わってしまったことが大きいと思われている。

記念日や慣わしというのは作為的作られるもの。いつかちゃんとした教育体制を敷いた方がいいのだろう。

ちなみに、この道場もとい屋敷の看板が奪われるようなことはなかった。

当然の如くラビチャは強いし、たまたま居合わせたといってカビオが門前払いしてしまう。

真剣に手合わせする分には問題ない。

たまに手加減できずに能力を酷使して屋敷に害が及ぶことがあるほうが厄介なのである。

「道場破りか…早くお茶とお菓子を準備せねば」

「ラビチャ、それはお客さんの場合。それで、道場破りはどうしてるの?」

問題はそこはかとなくそこ。道場破り紛いのせいで小火が起きたことも記憶に新しい。

「えっとね、さっき返り討ちにされたよ」

しばらくして、廊下で喜色満面のカビオとすれ違った。










「いや、申し訳ない。私の友が迷惑をかけて…」

「いえいえ。私のほうこそ言葉足らずな点がありまして…」

屋敷の前で伸びていたカービィ。今は介抱されて屋敷の主と話している。

人気の無い門の前で「たのもー」と声をあげたところ、カビオが通りがかってしまったらしい。

間が悪いというか、カビオの虫の居所が悪かったというか、ともかく運がなかったのか。

一言二言交えたところ、カビオにスイッチが入ってしまって先制の拳をもろに食らったそうだ。

悲劇なのか、喜劇なのか。

その来訪者はラビチャと和やかに会話中。頬が赤く腫れている。

「でも、珍しい格好ですネ」

「うん」

そのカービィの容姿は、カビールの言うとおり滅多に見られるものではない。

まず額から生えた一本の角。ニードル能力の保有者だろか。

そして鉄の肩当と空色のマント。

個性を出そうと変った姿をとろうとする。

それはちょっとしたアクセサリだったり、色を変えたりする程度。

しかしこのごろは一目見ただけでは保有している能力がわからないような容姿も見られている。

カビンたちの姿がそう。

コピー能力本来の力を引き出すためには特定の身支度を整えなければならない。

その容姿を変えるということは、ある能力を十分に使いこなせるということ。

カビオの腕が鳴ってしまったのもしょうがない。

蒲団に横たわっていたカービィ、ユニコスは2本の剣を背負う。

「さて、我が家にはどのようなご用件で訪れたのだろうか?」

「ふむ、私はここで収集されているという物を拝見させて頂きたい」

屋敷の蔵に収められている珍しい品々。

真の価値をわかるものは少なく、ラビチャも「価値がつかないからこそいいのさ」とのこと。

しかし、いまでは簡単に見せられたものではない。

もともとは無制限に公開していたのだが、盗難事件の発生。

日没と同時に蔵は錠をされ、特に貴重なものは家主の許可なしには見られなくなってしまった。

「…というわけで、残念ながら全部をお見せすることはできない」

「いえ、構いませんよ」

「ところで、特に見たいものなどはあるかな?」

「ええ、できれば…剣を」

ラビチャの表情が固まった。

できれば、一見さんにそのようなものは見せたくないのである。

「拝見できないようであればそれで構わない。ただ聞かせて頂きたい…」

ユニコスは背中の方に手を伸ばす。

そして背負っていた剣をゆっくりと引き抜き、横に構える。

長剣。ソード能力のものとは剣の形状が大分違う。

「ここ最近、これよりも一回りほど大きな剣を見たことは無いだろうか?」

柄にも模様のような装飾がなされた剣。磨き上げたように美しい刀身。

しばし見入るように眺めていたが、ラビチャは頭を振る。

「ところで確認したいたいのだが、お求めのものは西洋式の剣か、それとも東洋の刀か?」

「断ち切る方の剣。柄は金で宝石がはめられている」

「それならば私の持ち合わせはないようだ…で、そこ。寝るな」

どこか遠くことのように聞いていたカビールは寝息を立て始めていた。










日が没す。

夕闇に染まる緑の平野。常闇に消え入る中、ポツンと照らされる点が一つ。

ラビチャの屋敷からは賑わいの明かりが零れている。

夕食時、数百居るといわれる屋敷の住民が一堂に会する。

銀シャリと芋の味噌汁、漬物と茄子の揚げびたし。

「…ここは仏門デスカ?」

「文句言うな」

ブツブツといいながら米をかっ込んでいくカビール。

その隣にはユニコス。

「むぅ、これは…」

と悪戦苦闘している。箸の持ち方が覚束ない。

「スプーンでもお持ちしましょうか?」

「いや、これは、この…」

何とか口に運んでいたが、持ち方は個性的であり特殊である。

「まあ、慣れれば簡単なモンですよ」

というカビールの持ち手はユニコスと同じ。

食べ終わると各自で食器を片付けてデザートが配られる。

本日は善哉のようだ。










翌日。日も高くなり、干された洗濯物が眩しい。

結局一晩厄介になったユニコスは、ついでだということでラビチャに色々な蔵の内部を見せてもらっていた。

「暇だね…」

「そう?」

他のカービィの帽子を縫いながらカビチャは返事をした。

緑色の帽子、ソード能力保有者のものだ。

使い込んでいるのだろう、色あせてほつれた部分が多い。

能力を完全に使いこなせるのならば、手持ちの道具は新品同様のものと入れ替えることができる。

つまり古びたということは、能力を使いこなせていない証拠。

自分はどうなのだろか、思いながら針を通していく。

カビチャには帽子すらない。

能力に目覚めてからずっと固有の装飾品を纏っていなかった。

ハイジャンプの能力を持った時にはちゃんとマントが現れたが、やはり何かが足りなかった。

至らない。

劣等感というものか。

針先が触れる感覚に手を引いた。

外が騒がしい。

様子を伺おうと立ち上がると、廊下を疾走するピンクの影。

「よし、今度こそ道場破りだな!」

不吉な高笑いが遠ざかっていく。

カビチャとカビールも急いで追った。

どうやらまた道場破りのようだ。

いや、それは違うかもしれない。道場破りと勘違いされただけの何ものか。

ともかく先んじなければカビオに襲われてしまう。

門へと到着。大きく開け放たれた扉の前に屋敷の住民がちらほろ。

給仕として働いているワドルディやキャピィの姿も見える。

「カビオ!早まるな」

砂煙をあげながら横へと並ぶ。どうやら間に合ったようだ。

門の向こうには2つの姿。出入りの多い屋敷にとって、連日の来客は珍しいことではない。




珍しい客であった。





カービィによっては変った容姿を取るものが多い。

しかし、仮面をつけているというのは初耳だ。

「…随分と、賑やかに歓迎されたようですね」

静かに呟いた一方。

薄紫色の丸い仮面に縦一直線空いた穴から瞳が覗いている。一つ目だろうか?

「…」

もう一方、巨大な円形の盾を持ったまま沈黙。

全身を覆うような面に十字型の穴が覗けるように開いている。

「バケツ?」

「こら」

見慣れぬ相手を睨みつけたままのカビオ。頬が歪んでいるのは気のせいではない。

「で、何者だ。テメエラ?」

「汝、口を慎め。バロンにそのような口を聞くとは…」

「止めなさい、フロデ」

怒りを押し隠さないバケツ、ではなくフロデはバロンと呼ばれた方にたしなめられる。

「申し訳ございません…」

「いえ。私たちの用件は家主に伺いたいことことがあるだけです」

「ちっ、何だ」

つまらなそうに踵を返すカビオ。屋敷の中に戻ると入れ替わりにラビチャが現れる。

「…どうかしたか?」

「いや、特に無いよ。それより…お客さん」

「そうか。…お騒がせしたようで申し訳ない」

「いえいえ、こちらこそ急な来訪で」

来客者の姿を認めたときには怪訝な顔をしたラビチャであった、差し当たりの無い会話を進めていく。

お互い学があるためか、非常に丁寧な言葉遣い。

腹の内は計りかねるが。

おおまかに察するに、彼らもラビチャのコレクションが見たいようだ。

「う〜ん、こうやって物の価値がわかる人っていいねぇ…」

ラビチャがしみじみとするのもしょうがない。

ほとんど本能の赴くままに生きているカービィたち。

そういった彼らにワビサビといった風情や趣はあまり理解されないのである。

研究委員会あたりでは話も変るだろうけど。





「ともかく、立ち話もなんなので」「何用だ、サー・バロン」





屋敷に上げようとしていた面々が声のした方を振り返る。

そこには、先日の来訪者。

「おや、これはソードマニア。お久しぶりですね」

「そうでもないがな。それに、私はソードコレクターだ」

面識があるのだろうが、空気がピリピリとしだす。

顔をあわせた途端にかけられた刺々しい口ぶり。これだけで両者の関係が推し量れそうだ。

「お友達デスカ?」

「まさか」

ささやかな質問に脇目も振らず答える。視線は仮面の者と向き合ったまま。

「…」

「…」

見詰め合う目と目。

このまま誓いの口付けといきたいところだが、生憎メロドラマの時間ではない。

「…止めにしましょう、剣騎士。大王陛下も望みません」

「…承知した。貴方と剣を交えるのはお断りだ」

ユニコスが締めると空気が緩んだ。

周りでは屋敷の住民たちが冷や冷やしながら事の次第を見守ってきたが、やっと安堵。

安心したのか、野次馬根性がそそらないのか、彼らは敷地内に散っていった。

「…さて、話が一区切りしたようだが、お茶でも出しましょうか?」

「そうして頂けるとありがたい。では上がらせてもらいましょう」

ようやく門の中に入れられた仮面の騎士、そして一角の騎士。





不穏な噂が絶えないダークマター教。

次々と行方をくらます有名なカービィたち。

依然として動向が不明なカビン。





空は晴れ。雲が少し多く、雨が降ってくるかもしれない。

曇天は不安を掻き立てる。冷たい滴が落ちてくると嫌な気分になってくる。

でも。





時には、面白い形の雲が流れていくのもいいと思う。
















後書き





やりました、スランプです(何?

新キャラ導入でしか話が作れないのはもうダメダメな証拠。ああ、でもまだ追加したいキャラが五萬と残っています。

後半から文章の毛並みがちょみっと違います、まあサラサラとシットリの違いぐらい・・・ってどんな感じだか。

もうネタと伏線の張りまくりです、どうしましょう?

主観と客観をもっと入り交えて文が書ければな、と反省。

今まで焦点があってないきゃつら視点で話を作るといいのかもしれません。






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