幕の裏で







一方通行の道でさ、別々の方向から誰かがやってきたとする。

片方にしか進めないわけだから、どちらか一方がよけてあげないといけないんだ。

でもさ、後退できない場合はどうすると思う?

答えはとっても簡単。





…どっちかを消してしまえばいい。










「ちっ!多い!」

炎を身に纏い戦場を駆け抜ける紅、ドラヴィオ。

蚊柱のようにたかってくるダークマターを焼き尽くさんと炎を吐き出す。

灼熱に迫られ散り散りとなる黒い塊だが、別の方向にはすでに集まり始めている。

「この…イグニッションッ!」

掛け声と共に、ドラヴィオの体から炎が噴出し始めた。

熱風が吹き荒れ、空に浮かぶ黒い粒が押し流されていく。

ここから本番。手にした剣を掲げ、その先に炎を収縮させる。

「エグゼーキューション…ブレイドォ!」





「ごくろうさん」

鼻をつく焦げ臭さ。風が空気から熱を奪っていく。

焼け跡に唯一立つドラヴィオに近づく2体のカービィ。

長いローブを引きずらせて声をかけてきたのはジュビィである。

「お前らか…何か用か?」

「つれないね…折角デートのお誘いでもしようかと思っているのに」

「悪いが用事がある、後にしろ」

「…待て」

低く、鋭い声に足を止める。

クルリと背を向け立ち去ろうとするドラヴィオを引きとめたのは白いカービィ、カビンであった。

「…アレは元を叩かないといけない」

そして上を見上げる。

突き抜けるような青。空には白い雲と、黒い塊。

どこからともなく現れた大量のダークマター。

数日前から続いている現象であり、いくら倒してもきりが無い。

ただどこかへ向かって移動している様子があり、ドラヴィオもその途中で戦闘となったのである。

「行き先は君と同じ、ダークマターたちを止める」

「ま、君のことだからアレ全部倒すつもりだったんだろ?」

「…悪いか」

射抜くような固い瞳で語るドラヴィオ。

うぬぼれにしか聞こえなくとも、事実彼はそのつもりであった。

ファイア能力を新たに発展させ、"炎を極めし者"と称されるようになって幾星霜。

数々の戦歴を立て、他者に教えを施すまでになっていた。

「悪くは無い、それが僕らの定め」

「目的を持って移動しているみたいだけど、時々群れを離れてカービィを襲っているみたいだからね」

「ああ、だから急がないと」

そして彼らは歩き出す。ダークマターたちが目指している場所へ。





青い空を分け隔てる黒い線。

それは遠目から見たダークマターの大群。

その黒い川が行き着く先へと辿りついたドラヴィオたち。

「これは…とんでもないね」

「ああ…」

できるだけ身を隠しながら移動をしていく。終着点であるここには無駄に浮遊している敵が多すぎた。

「…で、何だ?あの模様」

「魔方陣だ、ダークマターを引きよせる波動でも起こしているのだろう」

「詳しいな」

「僕らって博識だから」

光る模様線の上を浮遊する大量の黒い点。カービィの歴史上、これほどの敵が集合したことなどなかっただろう。

「…魔方陣を消す。少しでも線を崩せばその効力は失われる」

「でも、どうする?神風特攻でもしますか?」

いつものようにジュビィはおちゃらけた風に言ってみせる。

彼らの隠れ場所から魔方陣までは距離もあり、身を隠す場所も見当たらない。

目的地の奥には鬱蒼とした森が広がり、ここから飛び出すよりは安全であり、早く済むだろう。

だが、森に行き着くためにはここから迂回していく必要があり時間がかかりすぎる。

これ以上被害を増やしたくない彼らとしては、早急に事を運びたい。

それに

「消したとしても、ダークマターが全部黙って帰ってくれると思う?」

彼らの安全を保障してくれるものはいない。

「いいじゃねえか」

隠れ場所から身を乗り出してドラヴィオは答える。

「これ以上同胞に害を及ぼす奴らを…放っておくわけにはいかねぇ」

「だろうね、それが僕らのやることだし」

「そう、僕らはカービィによる、カービィのための、カービィの新たな繁栄のために…」

すべきことは決まった。後は口火を切るだけ。

「…ドラヴィオ、ジュビィ。あの大群は君たちに任せる」

「オッケー。ま、君の能力で牽制は難しいからね」

「問題ねぇな。全部…燃やすだけだ!」

真っ赤な火の玉が平原を突っ切る。

それに続いて2つの丸い姿。

戦いの狼煙が上がった。





まず襲い掛かってきたのは宙に浮かぶダークマターたち。

ここまでは予想済みだった。

ドラヴィオの火炎が燃え盛り、ジュビィの放つ光線が道を穿ち、カビンの剣が煌く。

そこからが問題だった。

黒いローブを着たカービィたちが襲い掛かってきたのである。

「ダークマター教のやつらか!」

同族であるため手を抜かざるを得ない。

とはいえ、ドラヴィオからしてみると裏切り者であるため容赦はあんまりしない。

返り討ちにあう者は皆黒焦げになる。

「だが」

カビンに向かってくる者も、すぐに峰打ちで気絶させられてしまう。

実際に実力が伴っている面子はこの信者たちには少ないようだ。

「しかし、面倒なことになったね…」

手加減したビームウィップで相手を痺れさせているジュビィはため息混じりに呟く。

ダークマターを永遠の生命の象徴とし、その恩恵を預かろうという集まり。

平々凡々に穏やかな日々を過ごすのがカービィの本分であるが、最近その性質に危うい兆候が現れ始めたのだ。

寝る、食べる、が基本概念であったカービィたちは、次第に怠け始めたのである。

力量的にも開きが生まれ、自分が戦ってもしょうがないと思い鍛錬を惰る。

傍から見ればそれほど悪いことのようには見えないが、星のために戦うことを放棄したカービィが増加。

本業を捨てた彼らはその存在意義を失い、ただ惰眠をむさぼり、活動とは名ばかりのどうでもいい趣味を見つけて没頭するようなった。

堕落。

さらには道徳観念も歪み始めたのか、あれほど倦厭していたダークマターにも興味を持ち始めた。

そしていつしかダークマター教という、永遠の命を獲得しようとする集団が生まれた。

これが図々しく生きながらえているカービィたちには非常によくマッチングしたのだろう。

信者は爆発的に増えていった。

元来から好奇心の強い種族であるため、気になってしょうがないのだろう。

さらに、実力があり名が知れ渡っているカービィたちも姿を消し始めた。

彼らとてエゴや欲望はある。高みに上ったものは落ちること、失うことを非常に恐れる。

よって死を克服できるという言葉は何と甘美に聞こえただろうか。

だが、

「だが!」

ドラヴィオが吹き出した炎が拡散する。

舞い広がる火が浮き塞がるダークマターなどを遠ざけていく。

「行け!ここは引き受ける!」

その間をすかさずカビンとジュビィが走り抜ける。

追跡しようとする信者やダークマターたち。

彼に背を見せれば、一瞬にして焼き尽くされるのに。

「…来いよ」

挑発するように、持っている剣を振るドラヴィオ。

敵は多勢にして無数。対して自分はこの身が一つ。

恐怖は無い。むしろ高揚している。






「…上だ!」

ジュビィの叫び声に、カビンは確認もせず横っ飛び。

直後にカビンが走っていただろうと思われる場所に何かが降ってくる。

鈍い音と共に地面を抉る影。

土煙から現れたのは、一体のカービィ。

「空から降ってきたか…?」

ジュビィが見上げると、宙には小さなピンクの影。

おそらく、空にいるカービィが今目の前にいる茶色いカービィを落としたのだろう。

「…退け、邪魔だ」

「…そうはいかない。ここからは通さん!」

静かに言い放つと、その茶色のカービィは無手でカビンに飛び掛る。

「やれやれ、面倒なことになったね…で、僕の相手は君ぃー?」

相手が空中にいるため、ジュビィはやや声を上げて呼びかける。

「そうよ〜ん」

帰ってきた返事があまりにも間抜けで、さすがのジュビィも帽子がずれる。

「私の名前はワイス、で下の相方がシュターン。ごめんなさいね、彼口数少なくて」

「いやいや、そんなこといったらカビンもあんまり喋んないし、冷たいからねぇ」

「それは私も同じ、お互い苦労すわね」

と、お互い顔に手をやりオヨヨと泣き始める。

非常に冷たい視線を感じたので、泣き真似もいい加減にしておく。

「…邪魔するの?」

「ええ、もちろん」

そう答えて、お互い獲物を手にする。

ジュビィは杖を、ワイスは弓。

先ほどまでのオトボケはどこへやら、受け答えは氷のように冷たい。

「…やっと真面目になったか、ハッ!」

カビンの剣がシュターンに突き刺さる。

いや、突き刺さる筈だった。

切っ先は鋭い音を立てて弾かれ、反撃に拳が飛んでくる。

ストーン能力者。初撃と体の色でそこまでの判断はできた。

それだけではない。

「フンッ!」

振り落とし気味の拳が地面にぶつかる。

土が固いため拳を止めるかと思えば、そのまま大地にたたきつけた。

鈍い音と共に地面が抉られ、土が弾け跳ぶ。

「ドラヴィオと同じか…」

再び剣を振るう。これもシュターンに当たるが、固いものに弾かれる。

切られたハズの場所だけ、石になっている。

能力を発展させた者。局部のみを石化させ、全身をストーン化させて動きが止まるリスクを回避している。

防御する場所のみ石化、攻撃を加える部分のみを石化。

ストーンは石に変化した重量で相手を押しつぶす技だが、弱点がある。

長時間の変身はできず、また相手の頭上へ一々移動しなければ攻撃できないのだ。

その点この能力の使い方は非常に合理的。

必要最低限の場所だけ石化させれば全身をストーン化させて敵が離れるのをいつまでも待たなくて済む。

また攻撃する部分のみを石化すれば十分ダメージとなるので、わざわざ敵の頭上まで移動する必要が無い。

カビンが苦戦している間、ジュビィもまた手こずっていた。

「ホラホラ、守ってるだけじゃだめよ!」

空中からいくつもの矢を放つワイス、ジュビィもただ黙っているわけでもない。

ミラー能力で身を守りつつ、相手の攻撃を反射させるという方法をとっているのだが。

ワイスはその白い翼で空を縦横無尽に駆け巡る。

「まったく、黙って堕ちてくれないかな!」

愚痴を言いながらガードをとき、波動ビームを連発する。

三つの光弾が螺旋を描きながら飛んでいくが、難無くよけられてしまう。

元々スピードの無い攻撃であるため、回避は容易だ。

「そうは問屋が卸さない、ってね!」

鮮やかに交わしながら矢を番え、放つ。

対してジュビィは打って変わってよけ始める。

リフレクトガードとて無敵ではない。体力も消費する。

次第に業を煮やし始めたワイスは何本のもの矢を手に取り、狙いをつけた。

「踊りたいなら踊らせて上げる!シュツルムボーゲン!」

切っ先がハート型の矢が嵐の如く降り注いでいく。

傘も差していないジュビィにはそれを防ぐ術無いように思われた。

「それを待ってた!」

振り返り杖を振る。その軌跡に巨大な鏡が現れる。

鏡にぶつかった無数の矢は、勢いもそのままに飛んできた方向に跳ね返っていく。

「しまっ!?」

自分の攻撃に晒され慌てて翼をはためかせる。

何本か体を掠めていったが、何とか無傷で済む。

一安心、そう思ったところで。

目の前に光。

「キャ!?」

慌てて体を翻し、落下するように翼を動かす。

寸前で額の上で焼ける音、どうやら装飾である輪っかが消炭になったのだろう。

「…し、死ぬかと思ったわ」

「そりゃ、狙ったんだからしょうがないでしょ」

プラズマ波動弾を撃ち終えたジュビィは漂々としながらも、内心避けられたことが意外であった。

五分と五分。共に実力が拮抗している。

「とはいえ、こんなところで足止めされると正直困るね」

「…ああ」

カビンとジュビィは背中合わせに信者である2体と対峙する。

時折火柱が立つ。ドラヴィオが奮闘しているのだろう。

「ジュビィ、ひきつけるだけでいい。10秒くれ」

「…そんなんでいいの?」

カビンは答えない。

「…いつでもどうぞ」

「ああ!」

シュターンは大地を蹴り、ワイスはすでに矢を構えている。

「…砕け散れ!」

「ほら、余所見しちゃやーよ!」

今まさに、挟撃せんとしたところ。

閃光。

目が眩むがそれも一瞬。狙いはすでについている。

「こちこちブリザード!」

ジュビィの杖が青く輝き、辺り一帯の景色が変った。

自分の周囲だけに猛吹雪を起こすアイス能力。ジュビィのはそれをさらに広げたものだ。

とはいえ元のダメージ量はそれほど大きくない。せいぜい目くらまし程度。

「…構わん、潰す!?」

目の前に突然迫る影。それがやっとジュビィだとわかる。

迷わずに拳を固める。相手が誰であれ躊躇はしない。

「…て、え!?」

ワイスも驚き矢を取りこぼしそうになる。

何せ飛べないジュビィが空高くいる自分に急接近していたのだ。

矢を放つが弾かれる。

違和感を覚え距離を置き、その体当りを避けた。

余りにも芸の無い、ただの体当り。

「…そゆことね!」

落ち着いてシュターンの方を見るとトリックがわかり、矢を構える。

そして何も無い場所に矢を放った。

その前にジュビィがスッと移動し始める。

2体いたジュビィが、一直線上に引き寄せられていく。

「ちっ!」

そして2つの姿が重なりあい、ジュビィが実体と戻ったところへ矢が刺さる。

ミラー分身。映し出された幻影が体当りを仕掛けるというもの。

出現した像は両方とも幻であるため、それ自体が傷を追うということは無い。

だが、戻る瞬間は無防備なものだ。

矢はジュビィの帽子に突き刺さるだけ、未だ吹き荒れる吹雪で狙いが逸れたようだ。

そこで雪が止む。

そこにいたのは、ジュビィのみ。

「な、もう一体は!?」

「あそこ」

と、ジュビィが指した先は魔方陣。

そして、剣を振り下ろそうとするカビンの姿が。





鬱蒼とした森を抜ける。

教団がテントを張っていた跡が見られるが、今は関係ない。

重なり合う影と光を踏みながら、駆け抜ける。

太陽が眩しい、先ほどまでずっと浴びていたのに。

向こう側では炎が舞い上がり、吹雪が起こっている。

恐らく、いや確実にドラヴィオとジュビィだ。よくやってくれる。

ならば答えねばなるまい。

カビンは剣を握る手に力を込める。

魔方陣は目の前。

これを消せばダークマターは立ち去る。

引き寄せるものがなくなるのだ。彼らの興味が無くなれば、ここにいる道理は無い。

剣を振り上げる。

「…ソードビーム!」

切っ先から、剣状の光線が放たれる。

鈍い光を放つ魔方陣が、地面ごと抉り取られていった。





「…まあ、キレイにいなくなるもんだね」

ぼやくのはジュビィ。それが仕事だと言わんばかりに堂々と疲れた仕草をする。

空は突き抜けた青。気持ちのいいほど深い青。

遮るものは何も無い。

魔方陣が崩れると、ダークマターたちは蜘蛛の子を散らすように空へと消えていった。

防衛に回っていた教団のカービィたちも気づけば消えており、残ったのは彼らだけ。

「しかし、どうする?今回みたいに実力のあるカービィたちが敵に回ると面倒だぜ?」

「…だが、やらねばならない」

それだけ言うと、カビンは黒いマント翻してしまう。

「忙しいね、過労で倒れちゃうよ」

「寝たきゃ寝ればいいだろ?」

「そう思うでしょ?でもねー、カビンって何処行くかわかったもんじゃないから…て、待て」

すでに小さくなりかけたカビンの背。

疲れた素振りを見せながらも、仕方が無いとという顔でジュビィは追いかけていく。





相容れぬ者たちは、どちらかが折れるまで争い続ける。

仇敵を崇める信者たちがいる限り、彼らに、プププランドに安寧は訪れない。

もし訪れるとしたら。





みながダークマターを崇めるか、または…。

















後書き





シュターンはシュタイン(ドイツ語で石)、ワイスはヴァイス(ドイツ語で白)が名前の元となっています。

当初の予定ではシュターンの名前をアルトにして、寡黙とノリの軽いコンビに・・・ってどこのスパロボ?

ワイスとジュビィの戦いは私の中でヴァイスとR-2の模擬戦に変換されていたのは悪しからず。

彼らの戦闘が始まるあたりで「白銀の堕天使」でも聞いてください。

さて、戯言はさておいて。

やっぱり私、戦闘大好き。当初の予定の2倍近くなっていました。

争いこそが人間を発展させるんですね、うん。

でもまだ文がグダグダしつこいです、反省。

こうもっと、平和な小説も作りたいです。

でもそうすると、もっとグダグダで頭の悪い言い回し使ってダメになりそ。

とりあえず、ダクマ教の組織もハッキリとし始め、好敵手も現れてきたので話がうまく回りそうです。

・・・まあ、錆付いた機械に舐める程度の油をさしただけですけど。






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