昔のみんな







退け!逃げるんだ!

私は叫んだ。

見聞にない未知の相手、その攻撃に私たちは窮地に立たされることとなった。

10名ほどで行動していた仲間のうち、2名が星に帰した。

悲しいことだ、この集団で大分長い間旅を続けてきたのに。

涙を流す時間すら惜しい。幸いなことに、相手は遅い。

とはいえ攻撃範囲が広い。放たれた光線で危ういところだった。

額宛が欠けたのか、頭の上から何か落ちてくる。

急ごう、しかし負傷したカービィが多い。

私は巨大な相手のほうに向き直った。

クナイを投げつけるが高い金属音と共に跳ね返るばかり。

踏み潰されないように少しずつ後退しながら様子を伺う。

手はあるはず。

どのような譜面でも悪手が見られるはず。

めげずにクナイを投げるが効果が無い。

少しくらい自分に注意が向けばと思ったが、完全に無視。

さしずめ、象にたかる蟻程度か。

無駄だとわかり、急いで逃走中の仲間に追いついた。

ふらつく友に肩を貸して走り続ける。

必死に呼びかけて意識が飛ばないようにさせる。

せめて、敵が遠方からの攻撃をしてこないようにと願い―





ラビチャは打開策を探り出そうとしていた。










ぼくらは6こ。トマトが1こ。

みんなボロボロだった。ぼくも体中がギシギシ言っている。

よくわかんないやつに襲われて、必死で逃げ切ったところまでは覚えている。

そこでトマトを見つけた。変な模様が入ってるトマト。

これを食べれば傷も塞がり元気がみなぎってくる。もう一回襲われても逃げ切れる。

でも1こ。ぼくらは6こ。

後5こあればいいのに、残念。

逃げる時に持っていたハンマーを投げつけてやったから体が軽い。でもちょっと疲れちゃった。

ぼくもみんなも今かけっこしたらビリになる。みんなビリならビリも無いけど。

誰がトマトを食べるか迷っている。

みんな食べたがっている。お腹も空いているのだからしょうがない。

云々唸って頭を抱えだす。

食べればいいのにね。でも1こしかない。

そっか。1こじゃなければいいんだ。

ぼくは大きな鍋をどこからともなくとりだした。

どこ?よくわかんないけど出てくるんだ。

ハンマーも欲しい時に出てくるよ、ちょっと疲れるけど。

というわけで、ぼくはトマトを鍋の中に放りこんだ。

みんな凄い顔をしてるけど、いいや。

ぐつぐつ煮込んでできあがったのは、ただのトマトスープ。上品な薄味。

器にもってみんなに配る。ほら、これで6こになった。

肉とかマカロニはいつ入れたの?とか聞かれたけど、作った方も知らないというばかり。

おいしいとは思わなかったけど、おいしかった。

ちょっとだけお腹が膨れて元気になる。

これならもう一回くらい、みんなで生き延びられそう。





ヘビチャはスープを飲み干した。










恐い、怖い、こわかった。

いっぱいいっぱい逃げたけど、まだ体がガタガタ震えている。

自分をホイールに変身させて、脇目も振らずに疾走してきた。

大丈夫、大丈夫、アイツは遥か彼方にいる。

何とか自分を安心させようとしたけど、駄目だ。今にも泣きだしそう。

初めて見たやつだった。ホイールで体当りしたけどあまり効いてなかったみたい。

しかも、カーブでスピードが落ちてきた瞬間ばかり狙ってくる。

移動中は何でも跳ね飛ばせるけど、速度が落ちている時は無防備に近い。

痛む体をさすりながら自分の体を抱きしめる。

よかった、まだ生きている。

死ぬのは嫌だ。死ななくてよかった。

安堵すべきことなのに、死の淵に瀕した恐怖した事実が拭えない。

大丈夫、大丈夫、ボクは生きている…。

ハッとする。

地響き。

アイツだ。

隠れていてよかった。これなら少しは見つかりにくい。

もしかすると気のせいかもしれない。ストーンのように身をこわばらせながら耳を澄ます。

ガチガチと震えだす。足は遅いはず。

隠れ場から身を乗り出そうかと考えた。ちょっとくらいなら気づかれない。

見ようとした。

体を少しずらして、隠れ場からできるだけ体を出さないようにする。

それだけなのに、それができなかった。

再びアイツを目にしなければならないのか。それだけで体が凍りついた。

見ないと、早く見ないと。早く安心しないと。早く気づいて早く逃げ出さないと。

じりじりと隠れ場に体を這わす。遮られていた視界が徐々に開けていく。

地響き。

アイツだ。

もう少しで見える、もう少しで見えてしまう。

でも、でも、でも、早くしないと―。

悲鳴。

ビクリとして再び隠れ場に体を完全に潜ませる。

何だ?気づかれた?いや、大丈夫。自分は声を出していない。

じゃ、誰?

再び音。剣戟、爆音、怒声に悲鳴。

全部効き覚えがある音だ。

戦っている。他のカービィたちが戦っている。

そうとわかれば怖くない。隠れ場から顔を出して様子を伺った。

アイツと、ボロボロのカービィたち。

アイツはとても大きい。ちょっとやそっとの攻撃では蚊ほどにも感じていないのだろう。

カービィたちも健闘しているが、やはり勝てそうにも無い。

駄目だ、そいつには勝てない。

言ったところで間に合うだろうか?ホイールなら逃げ切れるだろう。

凸凹が多いから速度は出せないかもしれない。それでも平野までいけば逃げ切れる。

でも、彼らの傷ついた足では距離をおくことすら難しいかもしれない。

ああ、ほら。痛い、今のは痛いって。ああ、もう肩を貸してもらわないと立てないカービィが。

さっきの自分と姿が重なった。

怖い、恐い、敵は手強い。

みんな、みんな死んじゃう、星になっちゃう。

嫌だ、嫌だ、傷つくのは嫌だ、痛いのは嫌だ。

嫌だ、嫌なんだ。胸が痛い、息ができない、吐きそう。

赤い帽子を被ったカービィは飛び出した。

ホイールに変身、尻尾を巻いて逃げてきたのに。せっかくここまで離れたのに。

恐い怖いこわいコワイコワイコワイ。

混乱、酩酊、動揺、錯乱。

恐怖で頭がミキサーだ。

それでもわかっていることがある。

絶対勝てないということ。

そして…。

それでも同族を助けたいと願っていること―。





だからカビールは敵に向かって突撃した。










強いな。

ファイター能力を持ったカービィがまず思ったことだ。

先刻、数体のカービィが全力で走り去るのを見かけた。

彼らを追ってくるのは、見たことも無い敵。

体が鈍っていたので相手にしてみたところ、思った以上の難敵であった。

攻撃が効いていないのか。

背丈はカービィよりも遥かに高い。山のようである。

そうなると必然的に足元へしか攻撃できなくなる。効果があまり見られない。

となると、上半身への攻撃へと転じたくなるのだがそうもいかない。

この敵の攻撃は上半身から離れる光線と巨体による体当り。

体当りは遅いので問題ないが、この光線がなかなかに侮れない。

命中した地面は大爆発を起こし、大きく抉られてしまっている。

これを小さなカービィに直撃すれば明らかに星になってしまうだろう。

闘気を放つ技で遠距離から狙うという方法もあるが、これもまた失敗。

まだコントロールがうまくいかず、届いたとしても空気砲程度の効果しかない。つまり皆無。

接近したいところだが踏み潰されるのがオチ。

のたのたと上半身に狙いをつけている間に光線で狙われるよりはマシか。

青い瞳のカービィはハチマキを翻させながら敵に接近する。

至近距離で足元にスマッシュパンチを放つ。拳から飛んだ光の弾が爆発を起こす。

無傷。

ここまでは想定内だ。

踏み潰そうとして動き出すが鈍い。バックステップで飛びのき、見上げる。

上半身目掛けて、跳躍。

目指すは光線を放つ部分。狙いを済ませて拳を突き上げるアッパー。

スカ。

と、気持ちのいい音がしたような。

ぶつかる寸前相手が身を引いたのだろう、あと少しというところだったのに。

このままでは空中で狙い撃ちにされてしまう。現に光線を放つ予兆の光が零れだしている。

青い瞳のカービィは心の中でほくそえんだ。

あと少しというところ。

今の攻撃は完全に失敗だ。この距離は敵の間合い。

しかし、自分の間合いでもある。

つまり、…オレの勝ちだ。

スマッシュパンチと同じ要領で、下半身を思いっきり捻って蹴りだす。

蹴りは空振り、しかし足から放たれた光の弾は直撃。

ダブルキックを食らった敵はよろめいて後退する。

手応えは十分、初めて使った技だがうまくいった。

軽やかに地面に降り立ち距離をとる。

油断してはいけない。下手にたたみかけようとして思わぬ反撃を食らうかもしれない。

ダメージによって攻撃手段を変えてくる可能性もある。

なら変えて来い。オレはそれを乗り越える。

オレは強い、オレはもっと強くなる、オレはテメェを倒す―。





カビオの闘志はさらに燃え上がった。

















後書き

カビチャの昔話は書いたので、他の面子も書きたいなー。という感じで作りました。

一人称の方が筆が進むのですが、どうしても途中から三人称が混ざるというか何と言うか。

白状すると、ヘビチャがどうして汁物にこだわるかを書きたかったのですよね。結局よくわからずじまいですが。

そして何故かカビールの所が一番分量が多いです。扱いは悪い子ですけど、いいやつなんですよ・・・そこそこは(コラ







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