
| ラビチャとカビオ 友達はいるか? 私にはいる。 だが、いつ友達になったかと聞かれると、答えるのは難しい。 きっかけというものなら、何とか思い出すことができる。 確か、私がカビチャと共にいた時だ。 愚かしくも、無数の敵に飛び込んでいく一体のカービィがいた。 気でも触れたかと思い、私たちは彼を救おうとした。 孤軍奮闘という言葉がピッタリ。 追いかけたのはいいが私たちまで危険に晒されることとなった。 ミイラ取りがミイラとなる。 まさにそんな状況の中。 やつは笑っていた。 襲い来る敵と戦えることをさぞ嬉しがっていた。 何だこいつは? バカとしか例えようが無い言動。私たちが危険を犯して追いかけてきたというのに。 その時は事なきを得たが、彼に対する私の第一印象はすこぶる悪い。 私はともかく、親友までも巻き込んでいたのにこいつときたら。 感謝するどころか迷惑そうな顔をして。 カビチャとは知り合いだったということだが、それで私の気が晴れるわけではない。 それからだろうか、そいつと交友関係を持ったのは。 カビチャに敵対心を持っているようで、自然カビチャと同行することの多い私と顔を合わす回数も増えた。 嫌がるカビチャにケンカを売り、出会いかしらのカービィにもケンカを売り、私にも売ってきた。 私はもちろん拒んだ。やつの方が力量が高いとか、怖いとかは抜きにして別の理由があった。 カビチャが嫌がる。 一番大事なことだった。顔見知りが傷つけあうのは嫌がるのだ。 粗雑なそいつとの関係はそれからも続き、次第に丸くなってきたように思う。 体型上そうなるのは仕方が無いのかもしれない。 それほど使うことの無い道場で他の者に指南を施すようになった、昔の彼からは想像がつかない。 ストリートファイタージャンキーでしかなかったのに、教える側に回るとは。 基本がスパルタなので、荒々しい印象は変っていないが大分落ち着いてきた。 粗雑な言葉遣い、礼儀など聞いたことが無いといった立ち振る舞い。 気に食わない点は大いに多い。 それでも、カビオのことは好きだった。 すかした野郎だ、俺はまずそう思った。 いつも知ったかぶったような面しやがって、自分だけ違うんだってツンとしていた。 しかもカビチャに金魚の糞みたいつき回ってよ。 屋敷を持ってからは変ったみたいだが、暇な野郎だ。 一日中盆栽につきっきりだったり、置石や苔の生え具合を見たり。 道場で体術の指南もしていたから、それなりに出来るやつだとは思ってたがよ。 オレが勝負を売っても買ってこねえ。 オレの方が強いからだ…なんてうそぶいて。 やつ自身相当な手馴れだ。同じ戦場の上にも立ったからよく知っている。 身のこなしの軽さは、随一のものだと算段している。 お互い考えやら何やら気に食わないことが多いので、話をしたことは少ない。 意見が合わないことに関してはカビチャも同じなんだが、こっちとはよく話す。 この違いは何だ? 何だかんだ言っても、結局やつとはよく出会う。無論、カビチャとセットで。 よくよく考えたら、口論とかもあまりしなかったな。 口げんかになったら売り言葉に買い言葉で収集つかねぇだろうな。 拳で殴るのは慣れてるけどよ、言葉で殴るのはやつの方が得意そうだ。 変なヤツなんだけどよ、ラビチャのことは嫌いじゃねえ。 ズズー…。 縁側に一体のカービィ。 荒廃した屋敷の軒下で、やけに間抜けな音がした。 カラッと晴れた日の影で、湯飲みからは湯気が立ち上っている。 先日あった騒動で、ラビチャの屋敷は半壊。 当の家主も大怪我を負い、包帯でぐるぐる巻きにされている。 安静にしていなければいけない身であるが、どうにも落ち着かない。 いつもは誰かに入れてもらっているお茶を久しぶりに入れなおし、一服してみている。 目に映る風景は、我が家であることを疑わせるようなもの。 塀は崩れ、木は折れ、庭は抉られている。 落ち着いた雰囲気だった庭園は、寒々しいほどに悲惨だ。 どこからか聞こえてくる金槌の音。 屋敷を修繕、いや、建て替えにきた者たちが作業している。 自分が率先すべきことなのに、何も出来ないことが歯がゆかった。 ズズー…。 焼けるような喉越しが、いくらか楽になっていた。 向こう側から来るカービィが一体。 ラビチャの隣まで来ると、ピタリと立ち止まった。 肩当をつけた、水色の瞳のカービィ。 ドスン、とラビチャと同じ方向を向いて座った。 「…」 「…」 しばし無言。 互いにどう堰を切るべきか迷っているようにも見える。 ズズズー…。 「…悪かったな」 先に言葉を発したのは、カビオ。 さもすれば聞き逃しそうなほど小さな声。 「…気にするな。カビチャならそう言う」 「…なら、テメェならどう言う?」 あえて遠回しに励まそうとしたのに、話を混ぜっ返そうとする。 「…気にするな、と言うさ。第一アレは、君の意思でやったことではないだろう」 ダークマターに取り付かれたカビオ。 来客していたユニコスのおかげで事なきを得たが、もし彼がいなければ。 「…だからどうしたってんだ?何にしたって俺のせいには変わらねぇよ。 泥棒したヤツが、悪いのは自分ではなくて盗ったこの腕だ、 だといって通じるわけねえだろ!」 「なら何だ!?お前はこういわれれば気が済むのか!全部、お前のせいだと!」 ワナワナと拳を振るわせるカビオと、湯飲みを握り締めるラビチャ。 いつの間にか太陽は雲に隠れて、鈍い陽光が当たりを照らしていた。 「…悪ぃ、こんなこと、話すつもりじゃなかったんだ」 「私こそ、気を荒立ててすまない」 視線を交えぬまま、荒れ果てた庭を眺める。 塀の一角に爆破されたような跡、カビオとラビチャが死闘を繰り広げた場所だ。 意識を乗っ取られたいたカビオは覚えていないことだが。 「カビールから聞いたぜ」 「…」 すっかり温くなった湯飲みを置いて、次の言葉を待つ。 「テメェが怒って本気でオレと戦ったってな」 「…そうか」 特に感慨もなく、ただ肯定する。 「…今でも憎いだろ」 「だから…」 「…カビチャを傷つけたオレが」 「っ!?」 友の豹変に戸惑い、打ちのめされたカビチャ。 その時に浮かんだのは、一度として抱いたことはなかったが、余りにも明確な感情。 我を忘れるほどの激情。 「…ああ、憎いさ。だが、それはお前がカビチャを傷つけたからではない。 お前を止めることが出来ず、カビチャを守れなかった私が…腹立たしい」 「オレも憎い」 「ん?」 「意志を奪われた自分が不甲斐ねぇ、この体を好き勝手されていたかと思うと情けねぇ…」 ポツリポツリと語るたびにカビオは拳を振るわせる。 戦うために鍛えてきた自身が、誰かに利用されて戦わされたというのは屈辱でしかない。 「それも、オレの知らないところで戦いたかったやつと決着つけようとしていたことが許せねぇ」 「…お前らしいな」 罪悪感でも覚えたかと思えば、これである。 お互い、どこまで行っても相容れないだろうけど。 そんな馬鹿馬鹿しさに安堵してしまう。 気後れするほど引きずるものなど、お互い残してはいない。 腹が立つ時は腹が立ち、憎いと思ったときは憎いのだからしょうがない。 たった一時の感情。 全てを壊すほどの想いであり、取るに足らない些細な想い。 雲は去り、晴れやかな陽光が庭を照らした。 曇りのち晴れ。 適度に眩しい空を、期せずして同時に見上げていた。 「…で、結局何を話しに来たんだ?」 「ああ、昼飯ができたから呼びにきた」 「…それだけなのに、どうしてこんな話しになったんだ?」 「オレが知るか」 後書き 走り出したら止まれなくなりました。 時間軸としては『ラプソディ』の後日談。 あんな激闘をしたらもう話しづらくってしょうがないだろうと。 仲直り・・・したのか、これ? まあ、お互いどこに非があったのかはわかってると思うので大丈夫でしょう。 大丈夫でないのは、私の文章能力だけですから。 ブラウザを閉じてお戻りください |