スターロッド強奪







暴君によって奪われた夢。

夢を取り戻す戦士の物語。





その話すら、夢のように虚ろで遠い。





ここレインボーリゾート。

日が巡ることの無い、夜の世界。

空気が氷水のようで少し吸いづらいが、気持ちよかった。

青い、蒼い、澄んだ空。

空には、ガラス片を振りまいたような星々。

目を細めるほどでもない、柔らかな光。

ふと、シン、と響く自分の名前。

呼ばれた方に振り向くと、ラビチャがいた。

「まだ起きてたのかい、カビチャ」

「うん。ここ、ずっと夜だからいつ寝たらいいのか困っちゃうんだ」

「そうか、やっぱり太陽が無いと落ち着かないのかな?」

「うん…でも、ここの光も優しい感じがして好きだよ。」

「優しい、か」

同じ言葉を口にして、ラビチャも意味をかみ締める。

「ねえ、ラビチャ。どうしてここはずっと夜なの?」

「う〜ん…ちょっと難しい説明になるんだよね、長くなるよ」

「いいよ、長くなっても」

「そうか。ではまずどうして昼と夜があるかを話そうかな…」

ラビチャはゆっくりと語りだす。

地軸、自転…知らない単語を詳しく教えてくれる。

わかりやすいと思った。よくわからなかったが。

ラビチャのように知識があるわけではない、ちゃんと理解するためには何度も聞く必要があるだろう。

それはラビチャも知っている。

それでも最後まで教える。

静まりかえった星空の下。

ただ話しているだけでも楽しかった。





「…寝すぎた」

ヨダレを拭いながらカビールは起き上がる。寝返りのせいで脱げた帽子を被り、ボンヤリとしてみる。

真っ暗な室内。

ゴロゴロと転がるピンクの球体。

規則正しくない無数の寝息。

このような家屋はここら一帯に多数ある。

夢の泉。

ここではその恩恵により心地よい夢を見ることができる。

快眠を求めこの泉を訪れるカービィも少なくは無く病み付きとなってしまい、このような住居を構えてしまうものまでもいる。

適応能力の高いカービィではあるが、さすがに寒空の下でぐっすり眠れるほど図太くはない。

カビールは目をこする。

夢の世界に浸りたい。あのご馳走はボクのもの。

暫く目を瞑っていたが、再び見開いて起き上がる。

静かな寝息がうるさく感じてしまう。

目がさえてしまっていた。

隣で寝ているヘビチャは一向に起きる気配が無い。何とも羨ましいことだ。

光の差し込む窓を覗くと、見知った姿があった。

夢の魅力は捨てがたい。

夢と眠るために費やす労力とを天秤にかける。

結果、カビールは他のカービィたちを起こさないようにそっと外に出ることにした。





杖の先端が星の形をしている。

スターロッド。

泉の噴水を浴びてキラキラと光っている。

煌く粒子が新たな星々を生み出しているような。

その幻想的な光景の下に、何とも場違いな集団が訪れていた。

真っ黒なローブを纏ったカービィたち。泉の光は黒坊主たちさえもロマンチックに見せさせる。

「…あれ、何の集まりなんだろう?」

泉を取り巻くようにして黒装束のカービィたちが立ち並び、低い声で一斉に歌い出す。

それは空よりも大地に深く沈んで消えていくような重々しい声。

振り付けでもあるのか時折黒い影たちが揺れる。

一笑に付すに惜しいほど、揃いも揃った見事な動作。

「うむ、ああいう輩がいるとしたら研究委員会かもしれないが…これは、どうだ?」

ラビチャも奇行の最中であるカービィたちを怪訝な顔で見つめている。

その集団に近づいてくるカービィがいた。

「他にもいた…!?」

声につまるカビチャにラビチャが声をかけようとしたとき、事は起こった。

ローブを纏ったカービィたちが宙を舞い、地面に落ちる。

無事だった集団は我先と駆け出し、負傷して動けるものはのろのろと逃げ始める。

カビチャたちは走り出した。

黒装束のカービィたちを追い払った、カビンたちの下へ。





「カビン!」

カビチャの怒声。まだ逃げ惑うカービィたちを背にして立つ。

「カビチャか…そっちはラビチャだね。そちらにいるということは、ジュビィの話は聞いてもらえなかったみたいだね」

「話だけは聞かせてもらった。だが、賛同はしなかった」

カビンの背後にいたジュビィはやれやれ、と言わんばかりのジェスチャーをする。

「そういうことだよ、カビン。門前払いにされたわけじゃないよ」

「そうか…多くのカービィと過ごしている君ならわかってくれると思ったが、残念だ」

「僕らカービィが堕落している…君だって同じカービィなのにどうしてそう悪く言えるんだ」

「…さっきの奴らが何なのか、君らはわかっているのかい?」

「さっきの?」

突如としてあらわれた黒装束の集団。夢の泉で何かをしていたが、何をしていたのかはわからない。

「…緩慢な時間に浸りきったものが、どのような愚行を働くのかも知らない。無知である君らは無力だ、カビチャ」

「危うく彼らに星の杖を奪われるところだったんだから」

夢の泉の杖。星の杖は夢を見させる力があると言われている。

かつて泉から杖が失われたことにより夢を見ることがなくなったという歴史が今日に伝えられており、星の杖に触れることはタブー視されていた。

「馬鹿な…杖を抜くということは、つまり」

「まあ所詮は不文法だからね、やったら駄目ということでもない」

「だが、やつらにこの杖は渡せない」

そう言い、カビンは泉へと近づいていく。

「だから…杖は僕らが預からせてもらう」

「な…!待て!」

阻止せんと駆け出したカビチャたちの前にジュビィと、沈黙を守っていた赤いカービィが立ちはだかる。

「杖を抜くということは、夢を失わせること意味するのだぞ!」

「そういわれてるけど、試したことがあるの?それに、あの杖はそれだけの道具じゃないよ」

「そういうわけで、黙ってな。カビチャ」

「え…ドラヴィオ?」

聞き覚えのある赤いカービィの声。

見慣れぬ鎧を纏っているが、確かにその声の主はカビチャの知る者であった。

「伝承にもあるだろ。プププランド全土を覆いつくそうとした悪夢を打ち払ったのもあの杖だ。それだけの力、悪用させるわけにはいかない」

「待って、ドラヴィオ。どうして、何で…」

宙を漂うカビチャの言葉。聞きたいことが多すぎて、指摘したい点が定まってくれない。

「落ち着けカビチャ」

「ちっ!」

舌打ちするような声の直ぐ後に、爆発が起きた。

場所は夢の泉。土砂降りの如く水しぶきが降り注ぐ。

「カビン、どうした?」

「…邪魔が入ったようだ」

星の杖が刺さっている台座に近づいていたカビンはずぶ濡れになっている。

爆発には巻き込まれていなかったのか、特に怪我をしている様子はない。

「ったくよ、ボンヤリしてんじゃねぇよ、テメエら」

いつの間にか台座の上に立っていたカビオは右手を振りぬいた格好でいた。

「この杖を渡すわけにはいかねえんだろ?だったらやることは一つだ」

飛び上がったカビオは泉の外、台座とカビンを挟むような位置に降り立つ。

「…戦えばいい」

「邪魔立てするのなら、容赦はしない…!」

「カビン、熱くなるな」

「僕らは後手に回っている。杖までも取られるわけにはいかない」

「ならば、決まりだな」

ドラヴィオが言い終えると、カビンたちは次々と獲物を手にした。






「まさか、お前と戦う日がくるなんてな」

剣を抜いた赤いカービィはしみじみと語りだす。

「最後にあったのは、大分前だな。お互いに能力のことを話し合ったりして…

お前にファイア能力の使い方を教えても一向に変化がなくて、実際はバーニング能力だとわかるまでしばらくかかったな」

「うん、覚えてる。ドラヴィオが一生懸命教えてくれてるのに、どうしてだろうって僕も思ってたよ」

お互いの口元に笑みが浮かぶ。

カビチャとドラヴィオ。ラビチャのようによく顔をあわせることはないが、気心の知れた中だ。

ファイア能力の熟達者であるドラヴィオは、その経験を活かして後輩カービィの指導にも積極的に関わった。

その折、カビチャが炎を伴う力を持ったと知った時には喜んだものだ。

友と共にする力がある。

よほどのことだったのか、しばらく他のことを一切放り出してカビチャに付っきりの指導を行うほど。

はたから見れば拷問ともとれる特訓の成果、驚くほど短期間でカビチャは新たな能力に順応できた。

ファイアとは似て非なる能力と判明したものの、その成長を見守ってきたドラヴィオの喜びようといったら。

「でも、どうして、カビンと一緒に…?」

カビチャの知る友は、少なくともあの白いカービィとは道を共にするようなことはないはずだった。

「ハッキシ言うとな、自分でもよくわからんさ。でもカービィという種が今のままでは駄目だという意見には賛成だ。さっきのやつらも見たろ?

己が非力さを補うための鍛錬の代わりに道具を頼るようなやつらだ。…こんなものを持ってる俺が言えた義理じゃないけどな」

自嘲気味に剣を揺らしながら笑う、が。

剣を持つ手が震ていた。

長年の鍛錬をもってして今に至るドラヴィオには気に入らないことなのだ。

経験と修練によって培うべきものを道具一つで済ませようとする考え、そして。

「そして見たろ…!カビンのやり方は気に食わないが、あいつら…傷ついた仲間をほっぽっといて逃げやがった!何のために仲間でいやがる!」

言葉が徐々に荒くなっていく。

同種を思うが故にわが身を粉にしてきた立場として、

「許すわけにはいかない!だから、あの杖は俺らが預かって管理させてもらう!…だから、どいてくれ、カビチャ」

蝋燭の火が吹き消されるように、ドラヴィオは声を和らげた。

同族同士で戦う、そういったことさえ考えられるはずのないカービィたち。

さらに親しい者ともなれば気が退けることも当然だろう。

だが、きっと引き下がらない。一度決めたらやり遂げるか、燃え尽きるまで突き通す。

「駄目だよ、できない」

「現実を見ろカビチャ、夢を見るためには今を見据えることが必要なんだ。だから、杖は俺が責任を持って…」

「だから、できない。夢があるから今を生きることができる。明日があるから、今日という日が楽しいと思える。だから…」

だからカビチャは剣を抜いた。

「…そういう考え、好きなんだけどな」

互いに手にした刃を構えた。

カビチャは退かない。剣を交えないで済むはずはない

予め剣を握ったのは、既にこのことが見通せたから。

それがカビチャを悲しくさせる。

「みんなの夢は…僕が守る!」





風を切る黒い影。

「無駄だよ!」

ジュビィを覆うガラス玉のような膜が、飛び交うクナイを弾き返す。

それだけではなく、ミラーガードは文字通り刃を反射させる。

投げ返されたのかと錯覚するようなクナイ。ラビチャは軽々と避ける。

素早く近寄るも、ジュビィの持つ杖が青く輝くと猛吹雪が起こり視界が真っ白となる。

風に身を預けるようにバックステップを踏むと、金色に輝く杖から特大のビームが打ち出された。

「芸が細かいな、ハッ!」

身軽なラビチャは横目で避けた光線を見送る。

元の距離を保つ。

帽子とローブで身を包んだジュビィの能力。

今のでわかったことはミラー、アイス、ビーム能力を使いこなしているということだ。

複数の能力を持つカービィは珍しいが、自身もそうであるため驚くことはない。

だが、大抵の場合使い慣れた一つの能力に遅れて身についた能力を補うようにして使うことの方が圧倒的に多い。

今この相手のように全てを同水準で使用するということはまずないことだ。

「さて、難しいところだな…」

互いに動きが止まる。

初撃で判断できた材料が少なすぎる。それがラビチャの手を止めさせた。

今のやりとりは初手、駒が一つ進んだだけ。

見知った相手とは言えダークマターなどを相手にするのとは勝手が違う。

カービィが持つコピー能力は数十種類、組み合わせも考えれば理屈上数百数千の戦法があるだろう。

それら全てを予測することは無理だ。一試合の棋譜ですら覚えることは容易くないというのに。

「来ないなら…こっちからやらせてもらうよ!」

杖が金色に輝くと、再び特大の光線が放たれる。それも連続で。

「波動ビーム、しかも溜めが早いな」

息もつかせぬ攻撃をラビチャは漂々と避ける。

凝縮したエネルギーを放つ波動ビーム。ある程度気を練らなければ撃てないはずなのだが。

「こうも乱発されると、ありがたみが無いな…ん?」

余裕有りげに呟いたラビチャは、ジュビィの姿がないことに気づく。

その代わりに、迫ってくる炎の弾。

バーニングアタックで接近したジュビィもラビチャは宙返りをして避ける。

炎の中から姿を現すジュビィ、突撃の勢いを殺すための隙を逃しはしない。

「みじんぎり!」

「ミラーぎり!」

ラビチャのクナイが振り向きざまに振るわれた杖に遮られる。このまま力の押し合いが続くかと思われた、が。

バチン。

クナイが手から弾かれる。

貫かれるような激しい痛み。それは手に衝撃のように伝わり、痺れを伴い。

そこでラビチャは、仄かに白い光に包まれ、帯電しているジュビィに気がついた。

「プラズマ波動弾!」

ジュビィの溜め込んだ電気エネルギーが巨大な光の弾へと姿を変えて撃ちだされる。

プラズマが通り過ぎた大地はえぐれ、あっという間に目に届かぬ光となり消えてしまっていた。

「まったく…手間をとらせるね」

ジュビィは不満げにもらすと、睨みつけた。

「なんであそこで避けられるのかな?」

平然と額を拭う動作が癪に障る。

一方は、拭う手で凍りついた表情をほぐすようにしながら答えた。

「長年の勘と言うものさ」

寸でのところで回避に成功していたラビチャは、再びクナイを構えた。





輝く泉の下ですれ違う影。

ピンクと、純白のカービィ。

激突しては、剣を交えた火花が散る。

カビンが剣を振るい、カビオも刃を走らせる。

「…愚かなことをするものだ」

カビンはカビオの持つ剣を見て肩を落とす。

カビオの剣は、青く透き通った刀身を持ち、白い冷気を放っている。

アイス能力で作られた擬似的な剣。今のところ本物のソードと打ち合っても砕けないが。

カビオの剣を持つ手は、赤く腫れあがっていた。

「まあ、確かに慣れないことはしないもんだけどな」

もはや握る手に感覚は無い。痛みなど通り過ぎて無痛だ。

元々薄い肌の色が、一部だけ色濃く染まっているの我ながら痛々しいと他人事のように思ってしまう。

「第一、君が僕らの邪魔をする理由がない」

「へ、その通りだ。夢なんてオレにとっちゃあどうでもいい。だが前にも言ったよな」

カビオは青い剣を構える。様になっていないのはソード能力を持っていないから。

才能のない力を見よう見まねでこなすことができることは、賛辞を送るべきだろう。

「…オレは弱い奴には従わない。それに、オレはテメェとも戦ってみたかった!」





ドラヴィオの口から炎が吐き出される。それは意志を持ったように生みの親の手元に漂う。

そうやっていくつもできた火の玉が、カビチャに向かって放たれいく。

意志持つ獣のように襲い掛かる炎が剣によってかき消されていく。

すかさず息を呑んだドラヴィオは、口から火の玉を吐き出す。

一旦はカビチャのもとを通り過ぎるが、ひきつけられるようにその背後に迫る。

「くぅ!?」

背中で起きた小さな爆発に、カビチャは膝をついてしまう。

ドラヴィオのファイア能力。炎を纏うだけでは飽き足らず、我が身から出した炎を自在に操ることができる。

炎を極めし者、とさえ称されるドラヴィオの由縁である。

「まったく、温すぎるぞ、カビチャ!」

叫んだドラヴィオの体から火が噴出す。それに呼応するようにカビチャも体から炎を噴出させる。

やることは一つ。相手の炎で傷つけられないためには、己から発する炎で防がなければならない。

炎の弾が2つ、激突する。

膨大な熱量を持った光が交錯し、眩い光を放つ。

互いに背を向けて着地。ドラヴィオは振り向くと纏っていた炎を操り、巨大な火の玉を投げつけた。

カビチャは燃え上がる炎をすべて刀身に集める。炎に包まれる剣、いや剣が燃えている。

そのまま気迫を込めて剣を振るった。

半月状の光線、ソードビーム。唯一つ違うのは、光が炎に包まれている点。

燃え盛る光の刃は、巨大な火の玉を意に介さず通り抜けてしまう。

残ったのは寒空に散り散りとなる赤い火と僅かな熱気。そして、

カビチャの放った渾身の一撃が、炎の中に消えてしまった。

「な…!?」

光の刃すらも飲み込むドラヴィオの炎。先ほどまでの火とは比べものにならないほどの。

肌寒いとさえ思っていた空気が熱帯夜の如く温まっている。

それほどの熱量が。

「がっくりだぜ、俺とお前…こんなに開きがあったなんてな」

「ドラヴィオ…」

「これで終わりだ、カビチャ!…イグニィッション!」

さらに燃え上がる炎。昼の訪れない世界に太陽が降ってきたと錯覚してしまう。

「エグゼキューション、ブレイドォッ!」

恒星と化したドラヴィオが飛び上がる。

剣の先に集まった火炎が、眩い光の玉へと変じる。

剣と共に振り下ろされる光。

それを仰ぐカビチャには、太陽が降ってきたとさえ思わせた。

自分の下へと落ちてくるハズなのに、とても危険なハズなのに。

燃え上がる星のような明かりに、見とれてしまっていた。

我を取り戻しすカビチャ。それでも迫り来る光景に唖然とするしかなかった。

例え忘我の境地へ陥らずとも結果は変わらなかったかもしれない。

昼から逃れられないように、この炎からも逃れられない。

脅威を目前として思いに耽ってしまうカビチャは、激突する痛みでようやく自分を取り戻した。





熱風が唸りをあげ、夢の泉を波立たせる。

炎をまとった風がその場に居合わせたものを飲み込まんばかりに襲い掛かる。

「何だ…あっちは、カビチャ!?」

岩陰に隠れたラビチャの上を熱い風が吹き抜ける。

「ちぃ、何だ!?」

顔を防ぐ腕の間からカビオは光を凝視しようとする。





大地が焼け焦げる。

中心部は真っ黒となり、煙が立ち昇る。

焦土と化した箇所から離れた先で、2体のカービィが倒れていた。

「そ、そんな…カビール」

ススまみれたになった体を引きずるように、倒れたカビールの下へとカビチャは近づく。

炎がぶつかる寸前、ホイールに変身してカビチャを突き飛ばしたカビール。

おかげで直撃を避けられたカビチャだが。

カビールを揺り動かす。返事が無い。まるで…。

「あ、っっっっつぅー!」

「うわぁ!」

飛び起きた様子にカビチャはひっくり返らんばかりに驚いた。

「あー、死ぬかと思ったー。あ、大丈夫だった、カビチャ?」

「あ、あ、うん。ありがとう。それよりも、カビールこそ大丈夫?まだブスブスいってるけど…」

「いやいや、鍛えてマスカラ」

グッ、と謎のポーズをとるカビール。

脳裏にカビオにどつかれたり、ラビチャにしごかれたり、ヘビチャに巻き込まれる姿がよみがえる。

何だか変な気がしたが、妙に納得のいく返事だった。

ともかく、無事な様子に安堵する。

そして、ドラヴィオの姿が見当たらないことに気づく。

泉の台座から、杖が無くなっていたことにも…。





杖を失ったことにより光を失った泉。水面は静かに星の明かりだけを映している。

泉を囲っている白い塀も、黒くすすで覆われてしまった。

「く、済まないカビチャ。杖を守れなかった」

熱風を避けている間に、星の杖はカビンらと共に消えてしまっていた。

申し訳なさそうに謝るラビチャに首を振るカビチャ。

悔しそうに拳を握り宙を睨むカビオ。その手の色が微かにおかしいことに気づく。

「カビオ、手にケガ…」

「んあ?ああ、これか。大したことねえよ」

「馬鹿を言え、凍傷だぞ」

うるさいぞラビチャ、と一悶着起こしている傍で寝息を立てるカビール。

「って、こいつは呑気だな」

「こっちは火傷か…ん、そういえば」

「生命の危機が近いと、眠って体力を回復させようとするんだ…っけ?」

顔を見合わせるカビチャたち。

どうもカビールはこういう目にあいやすいような。

「って、うわー!うわー!」

「起きろ、寝たら死ぬぞー!」

その後、火傷を治すためだとカビールは泉に放りこまれる。

水が大分蒸発しており、カビールはまた新たな意味で生死の境を彷徨ったそうな。

















後書き





やっと再びカビンが出せました。

予定ではカビールも戦うはずだったのですが、対戦相手がおらずにこんな役目に。

これから先もずっとこれだと救われないですな・・・いつか活躍させてあげたいです。

おいしいと言えば、おいしい役ですけどね。

新キャラのドラヴィオは、いつの間にか職人気質の熱いやつになってしまいました。

書いてる内にキャラが固まるだろうとは思っていましたが・・・まあ、「炎使うからいいや」という感じです。

ちゃんとキャラクター掴まないといけないんですけどね。

ただでさえ私のオリカビは加工部分が少ないんですから(笑







ブラウザを閉じてお戻りください