屋敷の怪奇







長く住み着くと、何かが潜んでいるような気がする。





気のせいか?










「ち。ったく、何でオレが…」

かび臭い蔵の中、開けた戸から差し込む光が引き裂くように伸びていく。

くじ引きに負けたカビオは渋々漬物の壺を引っ張り出すという大役を仰せつかってしまった。

不本意である。

「で、どれがどれだ?」

蔵の中にズラッと並んだ壺壺壺壺壺。

ざっと見ただけでも嫌気がさしてくる。

奥にある壺、といってはいたが、どこが奥なのか見当もつかない。

屋内に漂う様々な漬物臭が頭を痛くさせてくる。

「壺に色でもつけろってんだ」

ぶつくさ言いながらとりあえず奥に進むカビオ。

光源が開け放してある戸と窓から零れる僅かな光りなだけに、蔵の端の壺など見えないほどに暗い。

どれを持っていっても問題ないだろう、と段々自暴自棄に考え始める。

「…ん?」

何か気配を感じて振り返ってみるが、誰もいない。

余りにも静か、というより暗がりが音を吸い込んでしまったかのように無音。

何者かが悪戯で入ってきたとしても、カビオならすぐに察せる。

ラビチャや気配の読めないヘビチャならともかくとして、まず彼らがその程度の用件でこんなところには来ない。

第一、 両者とも今は別所にいるはずだ。

「気のせいか…」

再び壺の探索に戻る。

よく見れば蓋をされた上に置かれた石の大きさなどが微妙に違う。

わかるかどうかの微妙さ。結局区別がつかない。





ゴトッ。





「…誰だ!?」

厳しい声が蔵の中に響く。

あからさまな音。カビオが壺を動かしたわけではない。

振り返った先には当然ながら誰もいなかった。

ふとそこで違和感を覚える。

石の乗っていない、蓋をされていない壺があるのだ。

これでは漬けた意味がないではないか。

カビオはその蓋のされていない壺に近づく。

見れば見るだけ変な壺である。

他の壺に比べてざらついた表面。古ぼけたように見える。

せっついてみるが、壺は動かない。

少し強めに押してみると動く、だが中身は無いようだ。

何で空の壺があるのか、不思議に思いカビオは掌にかいた汗を拭く。

ちょっとつま先立ちをして、壺の中を見る。





赤く、爛々とした目がカビオを見据えていた。










「ふぅ、これで一段落」

蔵の整理をしていたラビチャは一息つこうと大きめな葛篭の上に腰掛けた。

蔵の中にある調度品は定期的に手入れをしなければならないものが多い。

鉄は錆びるし、本は虫に食われてしまう。

他のカービィたちもチェックはしているが、家主として蔵主として怠るわけにはいかない。

それに、物の扱いについてもっとも詳しいのがラビチャなため、仕事がなくなることは無い。

「それにしても、また増えたか…」

天井高く積まれた箱を見て嬉しいやら悲しいやら。

カービィたちが各地で集めてきたガラクタ兼宝物を保管しているのだからしょうがない。

特にヘビチャの収集率が尋常ではないので増える増える。

「いかんいかん」

痛くなってきた頭を振るいながら友への恨み言をかき消す。

鼠を持ってくる猫の類だと思えばかわいいものだ。

自分に言い聞かせながらもう一度蔵の中を見渡す。

「…おや?」

古ぼけた宝箱が目についた。

何か大事なものでも入っているのだろうかと、丈夫そうなその箱に歩み寄る。

特に鍵がかかっているわけでもない。

心当たりの無いラビチャはその宝箱を開ける。





開いた宝箱は、大口を開けた怪物のように鋭い牙と舌を覗かせていた。










「ヘビチャ、カビール?」

庭先の井戸。

水汲みをしようとしたカビチャは井戸の傍で佇む彼らに声をかける。

「どうかしたの?」

「うん、ボールで遊んでたら落っことしちゃった」

「だめだよ〜、そんな補給率じゃバッテリーなんて夢のまた夢だよ」

「何の話デスカ?とにかく、ホップするストレートなんて投げないでよ」

「…ライズボール?」

カビチャも井戸の中を覗きこむ。

深いのか、底が真っ暗で見えない。

「…変だね」

「こんなに深かったっけ?」

日も高い今のうちなら僅かに光る水面が見えてもおかしくないはずである。

「枯れた?」

「まさか。ここらは草原地帯だよ、砂漠ならいざ知らず」

三体で頭を寄せ合って井戸の中を見る。

半ば身を乗り出せばもっと奥が見えるのではないかと試みたりしながら。

「あ」

何かが光る。水面が見えたのだろうか。

「…下がって!」

ヘビチャの叫びと共にカビチャは井戸から飛びのいた。

カビールとは言うと、ヘビチャに引っ張られて「ぐえ」と生々しい悲鳴を上げている。

離れた井戸から何かが飛び出す。

それは井戸から半身を乗り出し、体を青い鱗で覆った巨大な何か。

2本の屈強な腕を地面につけ、肩で荒々しく息を吐いている。

「…何スカ、アレ?」

「井戸の神様」

「あれが神様!?コワ、神様コワ!」

魚類を思わせるような口が、凶悪に歪んだ。

下半身と思しき部分が井戸の中にあるにも関わらず、上半身を素早く伸ばして腕を振り上げる。

飛びのいたカビチャの元いた場所に井戸の怪物の拳が振り下ろされた。

重い音共にくぼむ地面。一撃もらえばかなり手痛い。

「井戸から体が出ないのかな?」

「どっちにしたって、あいつがいると水が汲めないんだけど…」

切実な問題を口にしながら、カビチャは剣を抜いた。





「っるあ!」

狙い済ましたとび蹴りを避ける壺。意外と俊敏である。

機動力のある謎の壺にカビオは攻めあぐねていた。

何せ早いに付け加え、遮蔽物がムダに多いのである。

その上、こう暗がりでは壺が他の壺にカムフラージュされてしまう。

「ち、だが、面白いじゃねぇか!」

壺を追いながらカビオは笑みを浮かべた。

道場で他のカービィと手合わせするのも飽きてきたところ、いい気晴らしになる。

直線で補足したところ、壺が光を放った。

青い光は一直先に伸びて、鋭く尖った氷柱となる。

素早く直角に曲がるカビオ。元いた通路を冷たい刃が通り過ぎていく。

壺を盾にしながら様子を伺うと、先程の場所から動いていない。

好機と見て躍り出る。そのままぶん殴ってやろうとしたところ。

壺が何かしらを呟いていた。

何を言っているのかわからない、むしろ壺が喋っているという現象自体おかしい。

かまわずダッシュ。渾身のパンチが

「こ…な、に?」

止まる。

意志とは反対に体が動きを止める。

壺の独白は続く。

その間にも体の自由は効かなくなり、完全に停止しようとしている。

「ま、まずい、か」

体から何かが抜け出ていく。それがこの束縛感と関係しているのか。

完全に体がとまったとき、どうなるかまったく予測つかない。

わかっているのは、これは壺がおこなっている何かしらの攻撃であるという点。

「ちぃ…いいい!」

拳はすでに突き出した状態。セメントで固められたような腕をギリギリと推し進める。

全身を踏ん張る。手が届かない。

「す、マッシュパンチ!」

冷たくなっていく体に鞭打ち気迫で叫ぶ。

応じるように拳から拳大の光が飛び出す。

大きさとしては小さめだが、壺を突き飛ばすには十分な威力。

スマッシュパンチを受けた壺がゴロゴロと転がっていく。

同時に体の硬直がとける。

「おかえしだ、オルァア!」

壁にぶつかりようやく止まった壺に飛び掛る。

足を振り上げ、そのまま踵を振り落とすと、派手な音を立てて襲い掛かってきた壺は砕け散った。










「またか!」

宝箱の体当りを避けながらラビチャはクナイで応戦する。

このような事態には慣れているが、今回は場所が悪い。

宝箱がはみ出した歯をガチガチ鳴らしながら淡い光に包まれる。

「ち!?しまった」

宝箱から火の玉が飛び出し、ラビチャの元へ一直線。

火球に対してラビチャは大量のクナイを構え、炎に向かって投げつける。

無数のクナイに突き破られた火は空中で削られるように消えていった。

「まったく、燃えやすいものもあるのだぞ!」

クナイを投げつけながら蔵を駆ける。

宝箱は身を守るように蓋を閉めて刃を防ぐ。

その蓋の上にはラビチャ、いつのまにか曲芸師のように宝箱の上に逆立ちしていた。

「はぁ!」

宝箱を掴んだまま、前転宙返りをするように地面に降り立つ。

その反動で宝箱を持ち上げ、思い切り固い床にたたきつけた。

木造の宝箱は衝撃に耐え切れずに四散する。

「…床が凹んだな」

静かな蔵の中で、また一つ悩みの種が増えた。










井戸から身を乗り出した化け物が腕を振るう。

俊敏で、巨体によるリーチの長さのおかげで攻めにくい。

「せい!」

「ホイサ!」

外れた拳目掛けてカビチャは剣を、ヘビチャは槌を叩きつける。

腕を押さえながら身を翻させる怪物。効果はあったようだ。

「カビール!」

ホイールとなり、井戸の周りを疾走していたカビールが化け物に向かって一直線。

ホイールは高速で走るタイヤへと身を変じて体当りする能力。

このまま進んでも井戸の淵にぶつかるだけで怪物へは届かない。

十分な速度を保つと、カビールはホイールを解いた。

減速はしない。そのため弾き出されるように体が飛んだ。

そこで再び変身、ただし次は丸いピンクの球体へだ。

ボール能力。カビールの持つもう一つの力。

そのまま地面に激突。ゴムまりのように高くはねて怪物の腹にぶつかった。

本体へのはじめての打撃。カビールはぶつかった勢いと同じように跳ね返って距離をとる。

呻きながら怪物は腕を地面に突き立てる。

砂場の砂でもつかむように岩を掴み取るとカビチャたちに向かって投げつけた。

「カビチャ、任せて!」

カビチャの前に立ちはだかるヘビチャ、その目の前には迫る土の塊。

ヘビチャの体が一瞬にして土色に染まり、動きが固まる。

ストーン化したヘビチャにぶつかって粉々になる岩。

その背に隠れていたカビチャは一気に井戸に駆け寄っていった。

迎え撃とうと鱗に包まれた怪物は腕を振り上げる。

「はい、ちょっと黙ってて、ね」

石化を解いたヘビチャはハンマーを勢いよく振るう。

自分を軸として砲丸投げでもするかのように、投げた。

爆裂ハンマー投げ。勢いのついた槌が飛んでいく。

井戸から身動きができない怪物は避けることができないため、両腕を交差してこれを防いだ。

その間にもカビチャはさらに接近、地面を蹴り飛ばして体を燃えあがらせる。

バーニングによる体当り、これを打ち払おうとした化け物は背中からの衝撃に身を揺らせた。

背後から再びカビールの体当り、この隙を逃がさず炎を纏ったカビチャの体当り。

地面に降り立ったカビチャは剣を下段に構え、見上げる。

苦悶する怪物が見下ろす視線と交じあう。

目に灯った爛々とした敵意。

カビチャは意を決する。

地を蹴り、怪物目掛けて高く飛ぶ。

ハイジャンプから繰り出さられる強烈な切り上げが怪物の体を引き裂いた。

怪物は吼えるように身を強張らせると、徐々に姿が薄れていき、霧散していった…。










「とまあ、屋敷のあちこちで何か出るから気をつけるように」

「出てから言わないで!」

「昔は枕の位置が変わったり、誰もいないのに廊下が鳴るだけだったのに…」

「いや、それこそおかしいって」


















後書き





ドラクエはXとYが好きです。やっぱりモンスターを仲間にできるっていいですねぇ。

そういうわけです(何が

世界観でコピー能力をもったキャラがいないことになってますからね、完全にオリジナルで敵を考えないといけないんですよ。

・・・そこでこのネタは非常に危険だと思うのが。

パッと出の敵キャラの想像とか、難しいことできれば素敵。

完全に新しい生態系考えた方がいいですかね?

とにかく全員の戦闘シーンが書けてよかった。特にカビール、今までバトル場面なかったし(ぉ






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