愛知県内の各医療機関に、「人体の不思議展」実行委員会から招待券・チラシ等が送付されているが、愛知県保険医協会は、同展の開催中止を求め、荻野理事長名でコメントを11月2日に実行委員会に送付している。また同日、広く県民にも知らせるためマスコミや各種団体にも送付した。

 下記に全文を掲載する。

「人体の不思議展」の開催中止を求めます

2009年11月2日

愛知県保険医協会 理事長 荻野高敏

 

 「人体の不思議展」が2009年11月14日より2010年1月11日まで、愛知県産業労働センター8階にて開催予定であるということを知りました。「人体の不思議展」は、これまで2回も名古屋で開催されていますが、地方の新聞社などマスコミ関係の主催により全国各地で開かれてきました。

 これはプラストミックと呼ばれる技術で、防腐処置を施した実物の人体十数体を使い、全身の皮を剥がした状態で立っているものや、各臓器をバラバラにされ展示されているものです。展示物は毎回同じでないと思いますが、弓を持たせポーズをとらせているものや、男女の性交を模型化したものまで展示されていたとのことです。

 「献体は生前の意志にもとづくもの」と紹介されていますが、上記のような扱いを受けることまで納得しているとは到底思えません。仮に同意が得られていたとしてもすべての人は死後も人間としての尊厳が守られなければなりません。興味本位、儲けの手段として死体を展示することは許されることではありません。

 標本はすべて国内法の適用を受けない中国人のものであるとも言われています。仮に、日本の国民が医学教育用に献体の意思を示しても、こうした標本化と展示は「死体解剖保存法」と「医学及び歯学の教育のための献体に関する法律」により実質的に不可能であります。しかも、献体が本当にインフォームド・コンセントを経たものかどうか不明確で、国際的にも人道上大きな問題を有しています。

 この展示については、ドイツでは各地で展示禁止が決定されており、わが国でも多くの団体から問題視する声が起こっており、各地で県・市や教育委員会などが、後援団体を降りるという状況も生まれています。わが国でも日本赤十字社、日本医学会、日本医師会、日本看護協会、日本歯科医師会などが後援を取りやめています。

 多くは自治体や教育委員会が後援しているため、教育的な展示と思われていますが、人体の有機性・複雑性を学ぼうとする若い人々にはむしろ有害でしかありません。単なる狭義の学問的欲求や、軍部・国家権力によって医学・医療にとっての倫理が如何に歪曲されるかは、歴史的な教訓でもあります。

 このように、模型ではなく本物の人間の死体を標本として一般公開している「人体の不思議展」は、倫理上・教育上看過できない大きな問題を有しています。本会は、いのちと健康を守る医師・歯科医師の団体として、名古屋での「人体の不思議展」の開催の中止を求めるものです。

 

以上