青森県知事・青森県立美術館館長
三村申吾様
時下、益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
私は、福島県立医科大学医学部で歴史および生命倫理を担当しております講師の末永恵子と申します。さて、5月24日より青森県立美術館で開催予定の人体の不思議展に関しまして、2、3お伺いいたしたく、お手紙を差し上げました。箇条書きで質問させていただきます。
1、 ご承知のように人体の不思議展は、実物の人間の死体を展示するものですが、青森県立美術館条例第一条は、美術館の設置目的を「美術その他芸術の鑑賞及び学習の機会並びに創作活動の場の提供を行うことにより、県民の芸術に関する活動への参画を支援し、もって文化の振興を図るため」としています。人体の不思議展の開催と美術の鑑賞・学習・創作という美術館設置の目的は、齟齬を来たす恐れがあると考えますが、いかがでしょうか。ご見解をお示しください。
2、 文部省告示の「公立博物館の設置及び運営に関する基準」の第七条一項には、資料の展示に当たって「確実な情報と研究に基づく正確な資料を用いること」に努めるべきとあります。しかし、これまで人体の不思議展の主催者は、死体標本の献体証明書の開示を拒否しております。以前私は、個人情報の部分を削除して開示するように求めましたが、拒絶されました。死体標本は、弓を射るポーズをとらされたり、観客に触られたりしておりました。「献体者」からそこまでの同意を得ているのか否かについて「確実な情報」を欠いた標本展示を行うならば、文部省告示を無視することになるかと存じますがいかがでしょうか。
3、 美術館の設置運営を法的に規定する「博物館法」は、「博物館」とは、「歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、あわせてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関」と定義しております。すなわち、展示には一定の教育的配慮を求め、一般公衆の利用として適切なものを供給する責務があることを示しています。果たしてその責務遂行上、人間の死体標本を上記のような方法で展示することが妥当かどうか、ご見解をお示しいただきたくお願いいたします。
なお、同封しました文書を参照いただけるとわかりますように、現在愛媛県で開催中の人体の不思議展に対して、愛媛新聞に市民から批判の投書が掲載されています。松山市の古刹石手寺の門前の掲示板には、「人体の冒涜展だ」と書かかれていますし、同じく観音寺でも「花の風情を知る人に似合わぬ人体の冒涜展」」という住職の筆による掲示を出すなど、批判の声が大きく挙がっております。
この不思議展について、論文・論考なども出ておりますので、同封いたします。どうぞ、お目を通された上で、回答下さいますようよろしくお願い申し上げます。
2008年5月15日
末永恵子
(住所削除)
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