グンター・フォン・ハーゲンス博士の

悪名高いボディーワールドショーに関する

解剖学会の声明書

テキスト ボックス: IFAA (国際解剖学会)のNews Letter『Plexus 2004 年12 月号』より(下記の「注」を参照のこと)
IFAA  http://www.ifaa.net/

 

 

 

G・フォン・ハーゲンス博士によるボディーワールドショーについて公的に議論を行った結果、解剖学会の評議会に、以下の声明を発表するよう主張します。

 

人体解剖の仕事は、ヒトの一般的な形態学的なパターン、および機能と機能障害に対する洞察を得るために解体によって人体の構造を分析することです。解剖学者は、学生と医師、そして自分自身の身体と生物学に興味があるすべてに人々に、自分の研究の結果を伝えなければなりません。解剖学的知識は現代医学を支えており、人類の構造学的・生物学的性質を理解するために不可欠です。解剖学的研究は、厳しい科学的な規則に従います。現代の解剖は体の肉眼で見える検査のみで成り立っているわけではなく、最新技術を用いて、あらゆる生理学的ないしは病理学的プロセスにでもおいても不可欠の関与をするものとしての細胞と分子を分析します。解体と肉眼解剖学の科目は、解剖学が理解され、そして教えられるために明らかに必要なものです。しかし、この肉眼で見える様子とは、「一貫した」全体的アプローチを採用する解剖学的カリキュラムのほんの初歩的部分に過ぎないのです。その、全体的アプローチとは、肉眼で見えるレベル(生体に関する自己検査とデモンストレーションを含む)から細胞の生理的かつ分子レベルまで、空間の寸法測定(組織学的そしてトポグラフィックな解剖学)から現代的計測(発生学的そして進化論的解剖学)までも志向するものです。この概念上の統合は、現代の解剖学を理解し教えることにとって主要なことです。

 

解剖を教えるには、学生の注意と関心をとらえる必要があります、しかし、聴く者を没頭させるためには、真の仕事 知識の伝達 をしなければなりません。教育的な原則は、昔の見世物のような解剖から絶対に借りてくることができません。現代科学的な解剖学を市民に示すためには、それは概念と、解体という行為を結合する必要があります。このやりがいのある仕事には、高度で教育的な方法と、教師および聴衆両者の関与が求められます。

 

医学の規律において、解剖学は厳しい倫理コードを尊重しなければならなりません。解剖学的解体は、提供者の書面による同意があってのみ実行しうるものです。この原則のもとに、ドイツの解剖学界は、非営利の「献体プログラム」を発展させてきました。(このプログラムは、)遺体が火葬されるか、埋められるか、あるいは長らく保存して使用されることになるかもしれないかどうかを提供者自身が決めることを認めています。

 

グンター・フォン・ハーゲンス博士のボディーワールドショーは、これらの解剖学会の原則にことごとく違反します。

 

The Board of the Anatomische Gesellschaft:(解剖学会委員会:)

教授B・クリスト博士(フライブルグ)

教授D.Drenckhahn博士(ブルツブルグ)

教授R.ファンク博士(ドレスデン)

教授B.テルマン博士(キール)

教授W.キューネル博士(リューベック)〔教授H.W. Korf博士(フランクフルト/N)と教授W.Neuhuber博士(エルランゲン)と協力〕

Professor DR W. Kühnel(教授W.キューネル博士)

Universität of Lübeck(リューベック大学解剖学部)

                          Ratzeburger Allee 160,D-23538  Lübeck

Email: kuehnel@anat.uni-luebeck.de

(訳 末永恵子)

 

注:IFAA (国際解剖学会)のNews Letter である『Plexus 2004 12 月号』に掲載されたドイツ解剖学会委員会によるGunter von Hagens 博士の”Body-World Show“に対する抗議声明の全文を訳出した。声明はGunter von Hagens 博士の”Body-World“を”  Show“であるとし、非営利の「献体プログラム」の原則にことごとく違反すると抗議している。

Hagens 博士の作製したプラスティネーション人体標本(本物の死体にプラスティックを浸透させ、耐久性があって手で触ることができるようにした人体標本)は1995年、日本の国立科学博物館で行われた「人体の世界」で一般公開された。

その後、Hagens 博士は20012月にドイツのベルリンで”Body-World“として展示会を開催し、2004年にはアメリカのロサンゼルスにあるカリフォルニア科学センターで開催するなど世界各地で開催するようになった。

日本の「人体の不思議展」に展示されている人体標本は、2002年当時、Hagens 博士が作製した「プラスティネーション人体標本」だったが、2003年以降は「プラストミック人体標本」と呼ばれるようになり、ドイツで作製されたものではなく、中国で作製されているという。    

              2006106日    (川村一之 記)