「人体の不思議展」の開催中止を求める
2008年7月16日
全国保険医団体連合会
会長 住江憲勇
「人体の不思議展」は、地方の新聞社などマスコミ関係の主催により、これまで全国各地で開かれ、今年は愛媛県松山市に続いて、青森市で開催中で、今後、岩手県盛岡市でも開催が予定されている。プラストミックと呼ばれる技術で防腐処置を施した実物の人体十数体を使い、全身の皮を剥がれた状態で立っていたり、各臓器毎にバラバラにされ展示されている。
この展示については、これまでも、多くの団体から問題視する声が起こっており、各地で県や市、教育委員会、医師会、歯科医師会などが後援団体を降りるという状況も生まれている。現に、日本医師会、日本歯科医師会、日本看護協会等は後援を取り止めている。
標本はすべて国内法の適用を受けない中国人のものである。仮に、日本の国民が医学教育用に献体の意思を示しても、こうした標本化と展示は「死体解剖保存法」と「医学及び歯学の教育のための献体に関する法律」により実質的に不可能である。しかも、献体が本当にインフォームド・コンセントを経たものかどうか不明確で、国際的にも人道上大きな問題を有している。
死後遺体であっても、人間としての尊厳が守られ丁重な扱いを受けるのが当然であるが、一般市民から高額な入場料を徴収するなど金儲けの道具になっている。献体という故人の奇特な意志を踏みにじる冒涜であり、ましてやコマーシャルベースに乗せるということは非人間的、反人権的行為である。
また、多くは自治体や教育委員会が後援しているため、小中高の生徒・学生には教育的な展示と思われているが、人体の有機性・複雑性を学ぼうとする若い人々にはむしろ有害でしかない。学問的欲求や、軍部、国家権力によって医学、医療にとっての倫理が如何に歪曲されるかは、歴史的な教訓である。
このように、模型ではなく本物の人間の死体を標本として一般公開している「人体の不思議展」は、倫理上、教育上、看過できない大きな問題点を有しており、新聞社やテレビ局が主催者に名を連ねたり、自治体や医療関係団体が後援団体となることは取り止めるとともに、展示そのものを中止すべきである。