(声明)
疑惑の「人体の不思議展」は中止せよ
「標本一新。総展示数170余点。もう見られない、あなた自身のからだの不思議」との宣伝のもと、来る12月4日から来年1月23日の期間、京都市勧業館で「人体の不思議展」(以下「不思議展」と略)が開催される。実物の人体を樹脂加工した様々な標本の展示で、全国各地をめぐり、京都では2005年4月の開催に続くものだ。
しかしこの展示に関しては、これまでに多くの団体から疑問が出され、医学・医療研究者などが2006年に「“人体の不思議展”に疑問をもつ会」(代表=刈田啓史郎・東北大学元教授)を立ち上げ、主催団体に標本の経路やそのインフォームドコンセントなどについて問い合わせても、確たる回答が未だにないという。また、これまで無批判に「不思議展」を後援・協賛してきた行政や医学会・医師会などの医療団体、マスメディアなどに対しても、同会が後援等の根拠などに関し公開質問状を送るなどした結果、日本医学会(06年8月28日)をはじめ医師会、行政、大手マスコミが次々と後援を取り消すなどしてきている。そして今回の京都での主催実行委員会については、どのような関係者によるものかを一般には明らかにしていない。
地域住民の命と健康に日々携わる医師の団体である大阪府保険医協会は、2008年の理事会で「不思議展」の問題点を議論して批判の立場を確認し、保険医協会の全国組織である全国保険医団体連合会(保団連)も2008年7月に理事会討議を踏まえ、東北や四国で開催されつつあった「不思議展」に対し、中止を求める会長談話を発表した。これを受けて以後、島根、愛知、石川、山口、新潟県、そして今回(10年10月)京都府の保険医協会などが中止を求める声明を出してきた。
私たちは未だに、「疑問をもつ会」が提示している疑念、「標本はどのようにしてきたのか?」「標本となった故人には、自由な自己決定がありえたのか?」「遺体があなたの大切な人のものだったら?」「私たちの社会は、死体の展示商品化を許すままにしておいてよいのでしょうか?」と同じ疑問をぬぐえない。人間の死体のこのような見世物興行的利用は、標本とされている個々人の尊厳の重大な冒涜の疑惑と共に、広くこの社会の倫理崩壊に通じかねない危惧をもつ。
よって、私たちは京都で計画中の「不思議展」の中止を強く求めるとともに、今後もあらゆる場所での同様の展示に断固反対していくものである。
2010年10月28日
大阪府保険医協会 第2回理事会